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「ちょっとクリス!」
ミルアージュはクリストファーに引っ張られて私室に戻った。
侍女も護衛も中に入る事は許されず、ミルアージュとクリストファーの2人だけになった。

2人だけになるとクリストファーはミルアージュをギュッと抱きしめた。

「早く2人だけになりたかった。ミア、愛してる。」
抱きしめるクリストファーの手の力が強まる。

「ええ、私もよ。」
ミルアージュは目を閉じてクリストファーを抱きしめ返した。

こんな時間がずっと続けば良いのに…

ミルアージュとクリストファーの想いは一つだった。

「ミア、今幸せか?」
クリストファーの癖のような質問。
何かある事にこの質問をしてきた。
いつも幸せだと答えていた。

だが、今までように答えたくないとミルアージュは思った。
今までとは違っているこの想いがどうすれば伝わるのかがわからなかったから。

ミルアージュが黙り込んで考えてしまったため、クリストファーの瞳は不安そうに揺れた。

そんなクリストファーをみてミルアージュは慌てて言葉を出した。
「クリス、誤解しないで。幸せすぎてどう表現していいかわからなかっただけなの!」

「ミア…」

「今までだって幸せだって答えてたけど、その時と気持ちが違うというか。不安が全くないというか…心がとてもあたたかいのをどう表現したら伝わるのか、今までの答えとは違うってちゃんと伝えたいのに。」

オロオロとするミルアージュにクリストファーは微笑んだ。

王族としてのミルアージュじゃない。
こんな風に困った顔が見れるとは思わなかった。
愛おしい。
クリストファーは膝をつき、ミルアージュの手を取り甲にキスをした。

「ミアの想いは十分伝わった。ありがとう、私の気持ちに応えてくれて。あなただけを生涯愛すると誓う。一生そばにいて欲しい。」
クリストファーの熱い眼差しがミルアージュに向けられる。

「クリス、私も愛しているわ。あなたのそばに一生いる。約束するわ。」
ミルアージュは素直に返答した。

ミルアージュの顔を見ればクリストファーもそれが本心であるとわかる。
顔を赤らめ恥ずかしそうにいうミルアージュのこんな表情をクリストファーは初めて見た。
こんなに可愛らしい表情を忘れるものかと胸に刻み込んだ。

クリストファーは立ち上がり、深いキスをする。
「ミア、もう我慢できない。早く愛し合いたい。」
クリストファーの切なそうな表情にミルアージュもうなづいた。

クリストファーがミルアージュを抱き抱え、寝室に移動しようとしたその時、部屋のドアがノックされた。

「…」
ミルアージュとクリストファーは無言で見つめ合った。

なぜいつもこのタイミングなんだ?
クリストファーは無視する事にした。
ルーマン国王からも一週間の休みをもらっている。
今さら邪魔されるなどあり得ないのだから。

クリストファーがミルアージュをそのまま連れて行こうとした時にもう一度ノックする音が聞こえた。
さっきよりも強く叩いているのがわかる。

「…よほど死にたい奴がいるようだ。」

「冗談を言っている場合じゃないわ。急用かもしれないでしょう。」

ミルアージュがクリストファーの腕からおりてドアの方に向かった。

冗談などではない。
この間からミルアージュと関係を深めようとすると邪魔が入る。
この場に入ってきた者を許さない。
クリストファーに我慢の限界に達していた。



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