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ミルアージュが扉を開けて開くとアルトが気まずそうに立っていた。
「アルトどうしたの?緊急事態が起こった?」
ミルアージュはアルトに声をかける。
アルトは少しホッとしたような表情を浮かべてから声を出した。
「お忙しい中、申し訳ありません。至急の用がお二人にできてしまい、止められなくなる前にと…」
頭を下げるアルトにミルアージュはプッと吹き出した。
「アルトにそう言われるのは気持ち悪いわ。前のように普通に話して。」
「…姫がそう望むなら。」
アルトもフッと笑った。
切り替えが早いのもアルトの良さである。
そもそも敬語を得意としていないのだから元に戻せというミルアージュの言葉を素直に受け取った。
「クリストファー様と姫、王から今すぐ戻ってくるようにと命じられた。本来、こんな伝言は俺の仕事じゃないんだが、誰も行きたがらなくて。」
そりゃそうだろう。
先程、一週間の休みを王から許可されたばかりだ。
クリストファーの様子を見ていた者達はそんな伝言を言いに来れるはずがない。
怒りをかうのをわかっていて呼びに行きたがる人間などいないのだから。
「アルトも貧乏くじを引いたわね。」
フフフとミルアージュは笑った。
「いや、そんな事はない。」
そこにクリストファーがヒョイっと扉を開けて大きく開けて顔を出した。
機嫌がものすごく悪いのは誰が見てもわかるくらい表情にありありと出ている。
「お前はその方が好都合だろう…良かったな、お前の姫を独占されなくて。」
クリストファーの言葉に毒がある。
「…そんな事を望んでいない。俺が望むのは姫にお仕えすることだけだ。」
アルトは膝をつき忠誠を誓うポーズをした。
「それならば良いがな。で、何があった?」
「領主を裁く臨時議会が中止になった旨を伝えにきた。」
「中止?ありえない。あれほど証拠も証人もいたのだ。罪に問えないはずはない。」
クリストファーもミルアージュもアルトが何を言っているのかわからなかった。
アルトは厳しい顔つきになる。
「証拠不十分ではない。もう裁く意味がなくなったといえば良いだろうか?」
「…それって…」
ミルアージュは嫌な予感がした。
アルトの表情がそう物語っている。
「領主が亡くなった。今のところ他殺なのか自殺なのかは調査中だ。」
「あの領主が自殺するとは思えない。よほど追い詰められたか消されたか…どこが管理していた?まさか第二とは言わないよな?」
クリストファーの圧が強まった。
「第三部隊の管轄、つまり俺の管轄で起こった事だ。罰なら後からいくらでも受ける。」
「まさかとは思うがお前はこの件に関与はしていないな?」
クリストファーがアルトに聞いた。
「ちょっと何を言っているの?アルトがそんな事する訳がないじゃない。」
ミルアージュは呆れたように言った。
「いや、こいつは領主への罰が甘いと思っていたからな。裏でこっそりって事があり得るぞ。」
「クリス!」
「確かにあの領主は極刑に値する。俺が手を出せば姫に迷惑をかけるからそんな事はしない。」
アルトはまっすぐにクリストファーを見つめた。
「アルトどうしたの?緊急事態が起こった?」
ミルアージュはアルトに声をかける。
アルトは少しホッとしたような表情を浮かべてから声を出した。
「お忙しい中、申し訳ありません。至急の用がお二人にできてしまい、止められなくなる前にと…」
頭を下げるアルトにミルアージュはプッと吹き出した。
「アルトにそう言われるのは気持ち悪いわ。前のように普通に話して。」
「…姫がそう望むなら。」
アルトもフッと笑った。
切り替えが早いのもアルトの良さである。
そもそも敬語を得意としていないのだから元に戻せというミルアージュの言葉を素直に受け取った。
「クリストファー様と姫、王から今すぐ戻ってくるようにと命じられた。本来、こんな伝言は俺の仕事じゃないんだが、誰も行きたがらなくて。」
そりゃそうだろう。
先程、一週間の休みを王から許可されたばかりだ。
クリストファーの様子を見ていた者達はそんな伝言を言いに来れるはずがない。
怒りをかうのをわかっていて呼びに行きたがる人間などいないのだから。
「アルトも貧乏くじを引いたわね。」
フフフとミルアージュは笑った。
「いや、そんな事はない。」
そこにクリストファーがヒョイっと扉を開けて大きく開けて顔を出した。
機嫌がものすごく悪いのは誰が見てもわかるくらい表情にありありと出ている。
「お前はその方が好都合だろう…良かったな、お前の姫を独占されなくて。」
クリストファーの言葉に毒がある。
「…そんな事を望んでいない。俺が望むのは姫にお仕えすることだけだ。」
アルトは膝をつき忠誠を誓うポーズをした。
「それならば良いがな。で、何があった?」
「領主を裁く臨時議会が中止になった旨を伝えにきた。」
「中止?ありえない。あれほど証拠も証人もいたのだ。罪に問えないはずはない。」
クリストファーもミルアージュもアルトが何を言っているのかわからなかった。
アルトは厳しい顔つきになる。
「証拠不十分ではない。もう裁く意味がなくなったといえば良いだろうか?」
「…それって…」
ミルアージュは嫌な予感がした。
アルトの表情がそう物語っている。
「領主が亡くなった。今のところ他殺なのか自殺なのかは調査中だ。」
「あの領主が自殺するとは思えない。よほど追い詰められたか消されたか…どこが管理していた?まさか第二とは言わないよな?」
クリストファーの圧が強まった。
「第三部隊の管轄、つまり俺の管轄で起こった事だ。罰なら後からいくらでも受ける。」
「まさかとは思うがお前はこの件に関与はしていないな?」
クリストファーがアルトに聞いた。
「ちょっと何を言っているの?アルトがそんな事する訳がないじゃない。」
ミルアージュは呆れたように言った。
「いや、こいつは領主への罰が甘いと思っていたからな。裏でこっそりって事があり得るぞ。」
「クリス!」
「確かにあの領主は極刑に値する。俺が手を出せば姫に迷惑をかけるからそんな事はしない。」
アルトはまっすぐにクリストファーを見つめた。
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