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アルトと共にミルアージュ、クリストファーは領主が亡くなった部屋に行った。
まだ罪に問われる前のため、貴族用の部屋に見張りがいる程度の軟禁状態だった。

領主の遺体は床に倒れており口から血が垂れている。顔は変色しており、生きているとは到底思えない状態だった。
苦しかったのか喉元を掻きむしった跡がある。

「…毒ね。」
テーブルの上に置かれている食事やワインボトルを見てミルアージュは呟いた。

床には飲んでいたと思われるワインがこぼれグラスは粉々に割れていた。

今から罪に問われるとは思えないほど豪華な食事。
ミルアージュは飢え死にそうな領民達を思い出してため息をついた。

「なんの毒か、何に混入されていたのか調べております。」
監察官の一人が答える。

「まぁ、こんな食事に仕込まれていたなら自殺は考えにくいか?最後の晩餐にするつもりならもう少し食べてるだろう?」
クリストファーは監察官と話している横でミルアージュがワインボトルの中身を少し出し飲んだ。

「姫?何をするのですか!」
アルトが大声でワインボトルをはたき落とした。

王太子妃のマナーができていないと言っている場合ではない。
毒が何に含まれていない中、その中にある物を口にするなどあり得ない行為だった。

「ミア!今すぐ吐き出せ!医師を呼べ!」
クリストファーはミルアージュに駆け寄ると大声で指示を出す。

「大丈夫よ。」
ミルアージュの声にクリストファーやアルトはホッとした。

「ワインではなかったのだな。良かった。」

「毒が入っていたのはワインよ。元々のボトルに入っていたようね。持ち込んだ者を調べた方がいいわ。」
ミルアージュは淡々と話している横でクリストファーやアルト、監察官も真っ青になっている。

「なぜ…」
クリストファーの呟きが聞こえる。
どうしてこんな危険な事ができる?
クリストファーはミルアージュの行動に怒り心頭だった。

「ワインのグラスを落として散乱しているし、飲んだ直後に倒れたのよ。グラスに毒が付着していた訳でも後からグラスに入れたのではないみたい。」
なぜという言葉を勘違いしたミルアージュが答えた。

「そういうことではない!なぜ飲んだのかと言っている!本当に大丈夫か?」

「もちろん、手に入りやすい毒だからしっかりと耐性はつけているわ。それにこんな少量だと致死量にもならないし。」

平和ボケしているルーマンでは考えられないような発言が飛び出してクリストファーやアルトは固まった。

では少量で致死量となる毒だったらどうするつもりだったのだと言いたい。

ミルアージュは領主の状態よりある程度毒の種類を特定していた。
だからこそ、口につけたのだ。
それが伝わる訳でもなく…

ミルアージュは皆がこの反応をする意味がわからず首を傾げた。

「ミアはこの場から離れていろ。現場に近づくことは許さない。アルトはミアを見張っておけ。」

「えっ、ちょっとクリス!」
クリストファーの命令の後抵抗したミルアージュだが、アルトにより部屋から引っ張り出された。

こういう時だけはクリストファーとアルトの連携が早い。

「とりあえず医師の診察を受けよう。」
アルトは心配そうな目をミルアージュに向けていた。

「心配いらないわ。私も医師だから。しかも毒に詳しいの。」
ミルアージュはフフフと微笑んだ。





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