わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

文字の大きさ
149 / 252

149

しおりを挟む
アルトと共にミルアージュ、クリストファーは領主が亡くなった部屋に行った。
まだ罪に問われる前のため、貴族用の部屋に見張りがいる程度の軟禁状態だった。

領主の遺体は床に倒れており口から血が垂れている。顔は変色しており、生きているとは到底思えない状態だった。
苦しかったのか喉元を掻きむしった跡がある。

「…毒ね。」
テーブルの上に置かれている食事やワインボトルを見てミルアージュは呟いた。

床には飲んでいたと思われるワインがこぼれグラスは粉々に割れていた。

今から罪に問われるとは思えないほど豪華な食事。
ミルアージュは飢え死にそうな領民達を思い出してため息をついた。

「なんの毒か、何に混入されていたのか調べております。」
監察官の一人が答える。

「まぁ、こんな食事に仕込まれていたなら自殺は考えにくいか?最後の晩餐にするつもりならもう少し食べてるだろう?」
クリストファーは監察官と話している横でミルアージュがワインボトルの中身を少し出し飲んだ。

「姫?何をするのですか!」
アルトが大声でワインボトルをはたき落とした。

王太子妃のマナーができていないと言っている場合ではない。
毒が何に含まれていない中、その中にある物を口にするなどあり得ない行為だった。

「ミア!今すぐ吐き出せ!医師を呼べ!」
クリストファーはミルアージュに駆け寄ると大声で指示を出す。

「大丈夫よ。」
ミルアージュの声にクリストファーやアルトはホッとした。

「ワインではなかったのだな。良かった。」

「毒が入っていたのはワインよ。元々のボトルに入っていたようね。持ち込んだ者を調べた方がいいわ。」
ミルアージュは淡々と話している横でクリストファーやアルト、監察官も真っ青になっている。

「なぜ…」
クリストファーの呟きが聞こえる。
どうしてこんな危険な事ができる?
クリストファーはミルアージュの行動に怒り心頭だった。

「ワインのグラスを落として散乱しているし、飲んだ直後に倒れたのよ。グラスに毒が付着していた訳でも後からグラスに入れたのではないみたい。」
なぜという言葉を勘違いしたミルアージュが答えた。

「そういうことではない!なぜ飲んだのかと言っている!本当に大丈夫か?」

「もちろん、手に入りやすい毒だからしっかりと耐性はつけているわ。それにこんな少量だと致死量にもならないし。」

平和ボケしているルーマンでは考えられないような発言が飛び出してクリストファーやアルトは固まった。

では少量で致死量となる毒だったらどうするつもりだったのだと言いたい。

ミルアージュは領主の状態よりある程度毒の種類を特定していた。
だからこそ、口につけたのだ。
それが伝わる訳でもなく…

ミルアージュは皆がこの反応をする意味がわからず首を傾げた。

「ミアはこの場から離れていろ。現場に近づくことは許さない。アルトはミアを見張っておけ。」

「えっ、ちょっとクリス!」
クリストファーの命令の後抵抗したミルアージュだが、アルトにより部屋から引っ張り出された。

こういう時だけはクリストファーとアルトの連携が早い。

「とりあえず医師の診察を受けよう。」
アルトは心配そうな目をミルアージュに向けていた。

「心配いらないわ。私も医師だから。しかも毒に詳しいの。」
ミルアージュはフフフと微笑んだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...