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王命だから断る事はできない。
だが…アビーナルはいくら考えてもいい案など浮かばない。
時間が足りなさすぎる。
「無理ですよ。もうすぐクリストファー様達の帰還です。間に合う訳ないです。」
アビーナルはため息をつき、早々に王命を諦めた。
「ふっ、大丈夫だ。クリストファー達はすぐには戻らないから。」
ルーマン国王はククッと笑った。
「何故ですか?貴族達はクリストファー様達のお戻りを首を長くして待っていますよ。」
なんの自信があって国王はそう言っているのだろう?
今、クリストファー様とミルアージュ様がルーマンに向かっていると報告が来ている。
どうやって足止めをするのだ?
アビーナルは無表情を貫いたが、アルトは思っていることがすぐに顔に出た。
「貴族たちはミルアージュ妃が持つ利益を待っているだけだろう?あの2人が帰国を望んでいるわけではない。そして、3カ国同盟が成立した今、すぐに戦争は始まらない。国内事に集中できる時間ができた。」
「確かにそうでしょうけど、それがクリストファー様が戻らないのとどう関係がありますか?」
アビーナルは国王の意図が読めない為、慎重に話を進める。
突拍子もない事を命令される可能性がありそうだ…
アビーナルの横でアルトは訳がわからないという国王を見つめている。
これはこれから訓練をしなくては…
アビーナルは表情にすぐ出るアルトに苛立ちを感じていた。
「クリストファーはミルアージュ妃を守るためだけに動く。今ここにいても役に立たない。」
国王はそう言い切った。
アビーナルとアルトも同意して頷いた。
役に立たないどころか貴族達を皆殺しにするかもしれない。
王族への反発、国の滅亡なんてどうでもいいと思っているのだから。
「…そうかもしれませんが…」
アビーナルも容易にその状態を想像できた。
だが、クリストファーは次期国王だ。
感情任せに貴族を潰すなんてあって良いはずがない。
ミルアージュ様さえ絡まなけば、そんなことにはならない。
優秀な方だ。
それがわかっているだけにクリストファーへの残念感だけは否めない。
「次期国王としての適性はこの際置いておこう。ミルアージュ妃さえ、害されなければ問題ないのだから。そして、今からクリストファーとミルアージュ妃はしばらく旅に出る。」
国王も疲れ切っている。
クリストファーを王太子から外した方が精神的な負担は減りそうだと思ってしまうのは仕方がないことだろう。
「旅ですか?」
アビーナルとアルトは同時に声を出した。
「お前達は息がぴったりだな。」
ルーマン国王は笑いながら一枚の書状をアビーナルに渡しアルトも目を通した。
「そうだ、先延ばしにしていた新婚旅行のプレゼントだ。」
「新婚旅行ですか?クリストファー様はともかくミルアージュ様が同意するとは思えませんが。」
「ミルアージュ妃には正直に言うつもりだ。王城内が血の海になるとな。」
クリストファーを止められないと堂々とその妃に言うのは国王としてどうなのかと若干引っかかりはするが、ミルアージュを引き込んでおくのは最善の手だ。
「こうでもしないとミルアージュ妃はこの国の争いに巻き込まれる。今までも無理させてきた彼女にこれ以上は迷惑はかけたくない。私の代で解決をしたいんだ。」
国王は苦笑いをした。
衰退させてしまったルーマン王国、そして次代のクリストファー以上にミルアージュ妃への負担が大きくなっしまっている現状…
いくら後悔してもどうしようもない。
だから、少しだけでも2人でのんびり過ごせる時間を作って欲しかった。
ルーマンの国王となるクリストファー、同盟主となったミルアージュ妃。
きっともう、2人でのんびり過ごす時間などなかなか取ることができないだろう…
クリストファー様が困るとか言いながらこれ以上、ミルアージュ様を苦しめたくない。
国王のその思いはアビーナルとアルトにも伝わっていた。
ミルアージュ様のためなら…できる限りの国王に協力をしようとアビーナルとアルトは思った。
だが…アビーナルはいくら考えてもいい案など浮かばない。
時間が足りなさすぎる。
「無理ですよ。もうすぐクリストファー様達の帰還です。間に合う訳ないです。」
アビーナルはため息をつき、早々に王命を諦めた。
「ふっ、大丈夫だ。クリストファー達はすぐには戻らないから。」
ルーマン国王はククッと笑った。
「何故ですか?貴族達はクリストファー様達のお戻りを首を長くして待っていますよ。」
なんの自信があって国王はそう言っているのだろう?
今、クリストファー様とミルアージュ様がルーマンに向かっていると報告が来ている。
どうやって足止めをするのだ?
アビーナルは無表情を貫いたが、アルトは思っていることがすぐに顔に出た。
「貴族たちはミルアージュ妃が持つ利益を待っているだけだろう?あの2人が帰国を望んでいるわけではない。そして、3カ国同盟が成立した今、すぐに戦争は始まらない。国内事に集中できる時間ができた。」
「確かにそうでしょうけど、それがクリストファー様が戻らないのとどう関係がありますか?」
アビーナルは国王の意図が読めない為、慎重に話を進める。
突拍子もない事を命令される可能性がありそうだ…
アビーナルの横でアルトは訳がわからないという国王を見つめている。
これはこれから訓練をしなくては…
アビーナルは表情にすぐ出るアルトに苛立ちを感じていた。
「クリストファーはミルアージュ妃を守るためだけに動く。今ここにいても役に立たない。」
国王はそう言い切った。
アビーナルとアルトも同意して頷いた。
役に立たないどころか貴族達を皆殺しにするかもしれない。
王族への反発、国の滅亡なんてどうでもいいと思っているのだから。
「…そうかもしれませんが…」
アビーナルも容易にその状態を想像できた。
だが、クリストファーは次期国王だ。
感情任せに貴族を潰すなんてあって良いはずがない。
ミルアージュ様さえ絡まなけば、そんなことにはならない。
優秀な方だ。
それがわかっているだけにクリストファーへの残念感だけは否めない。
「次期国王としての適性はこの際置いておこう。ミルアージュ妃さえ、害されなければ問題ないのだから。そして、今からクリストファーとミルアージュ妃はしばらく旅に出る。」
国王も疲れ切っている。
クリストファーを王太子から外した方が精神的な負担は減りそうだと思ってしまうのは仕方がないことだろう。
「旅ですか?」
アビーナルとアルトは同時に声を出した。
「お前達は息がぴったりだな。」
ルーマン国王は笑いながら一枚の書状をアビーナルに渡しアルトも目を通した。
「そうだ、先延ばしにしていた新婚旅行のプレゼントだ。」
「新婚旅行ですか?クリストファー様はともかくミルアージュ様が同意するとは思えませんが。」
「ミルアージュ妃には正直に言うつもりだ。王城内が血の海になるとな。」
クリストファーを止められないと堂々とその妃に言うのは国王としてどうなのかと若干引っかかりはするが、ミルアージュを引き込んでおくのは最善の手だ。
「こうでもしないとミルアージュ妃はこの国の争いに巻き込まれる。今までも無理させてきた彼女にこれ以上は迷惑はかけたくない。私の代で解決をしたいんだ。」
国王は苦笑いをした。
衰退させてしまったルーマン王国、そして次代のクリストファー以上にミルアージュ妃への負担が大きくなっしまっている現状…
いくら後悔してもどうしようもない。
だから、少しだけでも2人でのんびり過ごせる時間を作って欲しかった。
ルーマンの国王となるクリストファー、同盟主となったミルアージュ妃。
きっともう、2人でのんびり過ごす時間などなかなか取ることができないだろう…
クリストファー様が困るとか言いながらこれ以上、ミルアージュ様を苦しめたくない。
国王のその思いはアビーナルとアルトにも伝わっていた。
ミルアージュ様のためなら…できる限りの国王に協力をしようとアビーナルとアルトは思った。
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