わがまま妃はもう止まらない

みやちゃん

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「わかっているわ。だけど、不思議だったの。どうしてルービオにこんなわかりやすい毒を使ったのかって。」

領民に殺させるのが目的だったから弱らせるだけにしたかった。
あの手の毒は調整がしやすいのは事実。

だが、バレやすいのだ。
毒に詳しいミルアージュでなくてもすぐにわかっただろう。

少し毒について学んだ者なら誰でもわかる毒。
特徴がありすぎて区別がつきやすく、一番最初に習うほどだ。

ルービオの死亡届を不審に思われれば、不正が一瞬で暴かれてしまう。

そのリスクがあるのに、あえて使うしかなかったのか…

知識がなかった?
動けなくなるギリギリの調整ができるくらいだ。
この毒を選択したのも理由があったはずだ。

「領主が倒れたのは半年前って言ってたわね。原因はわかっているのかしら?」

ミルアージュはルービオを見つめて質問した。
ミルアージュのあまりに真剣な眼差しにルービオも身構えた。

「…原因ははっきりとわかっていませんが、主治医から年のせいだと言われました。」

「その主治医は信用できる人?」

「父上の幼馴染で兄弟のように育ったと聞いています。」

そうルービオが答えるとミルアージュはまた考え込んだ。

狭い室内に沈黙が続いた。

「一度、あなたのお父様に会うことができないかしら?」
ミルアージュがボソリと呟く。

ルービオ達は驚いた表情をしていたが、クリストファーは予測していたように「言うと思った…」とため息をついた。

「ミア、私も一緒に行くぞ。それが条件だ。」

呆れ顔のクリストファーにミルアージュはニッコリ笑った。

「もちろんよ、忍び込むのはあなたが一番上手だものね。」
クリストファーはアンロック王城に忍び込めるのだ。
それに比べれば守りも警備も簡単なものだろう。

「それは嫌味か?」
クリストファーは怪訝そうにミルアージュを見た。

ミルアージュはまだニコニコと微笑んでいる。

「違うわよ、事実を言っただけ。まぁ、警備の兵たちには同情はしていたけどね。」
クリストファーに侵入されるたびに軍部大将にしごかれたのはいうまでもない。
たまたま勤務の時にクリストファーが来た。
運が悪かっただけだ。

「ルービオは今戻らない方がいいから、ここにいて。ちょっと行ってくるわね。」

ミルアージュはルービオのベットに近づき、抱きしめた。

「あなたはよく頑張っていたわね。」
あんな風に領民に殺させようとする。
そんな扱いを腹違いとはいえ、血のつながった兄から受けていた。

きっと今に始まった事ではないはずだ。
ルービオはフラフラになりながらも他者が自分に関わるのを嫌がった。

領民が助けに来なくても恨む様子もない。
もう覚悟を決めていた。

意識を保つのがやっとの中でも、そんな強い思いを感じた。

「領民があなたに向ける視線でどれだけ慕って心配していたのかがわかった。あなたが私にしたように領民を突き放していたのでしょう?でもね、本当にそれは正しかった?」

「…どういう事ですか?」
ルービオは不思議そうな顔をして聞き返した。

「怖くてあなたを助ける事ができなかった領民達は大丈夫かしら?もし本当にあなたを失ったら後悔しないかしら?」

「私が勝手にした事です。領民達に僕に何があっても気にするなと言ってあります!」

領民達はそんなルービオに甘えた。
ルービオが言うのだから従えばいい。
ルービオの味方になり、ルービオの兄に敵対しなくてもいいと。
それはただ目を背けたいものに蓋をしただけだったと後から気づく。

その時にはもう遅いが…

「あなたのお兄さんは実の父親から見放されるくらい領地を治める力がないのよ?内部から崩れていくこの領に残った領民はあなたを失ったらいけなかったと気づくわ。あなたを見捨てた事を後悔しながら生きていくしかない。あなたならこの地を愛し、領主を立派に努められるのを知っているから…」

「それは…」

ミルアージュに抱きしめられながらルービオの体はこわばった。

ルービオの体が小刻みに揺れていて、声を殺して泣いているのが誰の目にもわかった。

ミルアージュは背中をトントンと優しく叩き、ルービオに寄り添った。






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