194 / 252
194
しおりを挟む
「わかっているわ。だけど、不思議だったの。どうしてルービオにこんなわかりやすい毒を使ったのかって。」
領民に殺させるのが目的だったから弱らせるだけにしたかった。
あの手の毒は調整がしやすいのは事実。
だが、バレやすいのだ。
毒に詳しいミルアージュでなくてもすぐにわかっただろう。
少し毒について学んだ者なら誰でもわかる毒。
特徴がありすぎて区別がつきやすく、一番最初に習うほどだ。
ルービオの死亡届を不審に思われれば、不正が一瞬で暴かれてしまう。
そのリスクがあるのに、あえて使うしかなかったのか…
知識がなかった?
動けなくなるギリギリの調整ができるくらいだ。
この毒を選択したのも理由があったはずだ。
「領主が倒れたのは半年前って言ってたわね。原因はわかっているのかしら?」
ミルアージュはルービオを見つめて質問した。
ミルアージュのあまりに真剣な眼差しにルービオも身構えた。
「…原因ははっきりとわかっていませんが、主治医から年のせいだと言われました。」
「その主治医は信用できる人?」
「父上の幼馴染で兄弟のように育ったと聞いています。」
そうルービオが答えるとミルアージュはまた考え込んだ。
狭い室内に沈黙が続いた。
「一度、あなたのお父様に会うことができないかしら?」
ミルアージュがボソリと呟く。
ルービオ達は驚いた表情をしていたが、クリストファーは予測していたように「言うと思った…」とため息をついた。
「ミア、私も一緒に行くぞ。それが条件だ。」
呆れ顔のクリストファーにミルアージュはニッコリ笑った。
「もちろんよ、忍び込むのはあなたが一番上手だものね。」
クリストファーはアンロック王城に忍び込めるのだ。
それに比べれば守りも警備も簡単なものだろう。
「それは嫌味か?」
クリストファーは怪訝そうにミルアージュを見た。
ミルアージュはまだニコニコと微笑んでいる。
「違うわよ、事実を言っただけ。まぁ、警備の兵たちには同情はしていたけどね。」
クリストファーに侵入されるたびに軍部大将にしごかれたのはいうまでもない。
たまたま勤務の時にクリストファーが来た。
運が悪かっただけだ。
「ルービオは今戻らない方がいいから、ここにいて。ちょっと行ってくるわね。」
ミルアージュはルービオのベットに近づき、抱きしめた。
「あなたはよく頑張っていたわね。」
あんな風に領民に殺させようとする。
そんな扱いを腹違いとはいえ、血のつながった兄から受けていた。
きっと今に始まった事ではないはずだ。
ルービオはフラフラになりながらも他者が自分に関わるのを嫌がった。
領民が助けに来なくても恨む様子もない。
もう覚悟を決めていた。
意識を保つのがやっとの中でも、そんな強い思いを感じた。
「領民があなたに向ける視線でどれだけ慕って心配していたのかがわかった。あなたが私にしたように領民を突き放していたのでしょう?でもね、本当にそれは正しかった?」
「…どういう事ですか?」
ルービオは不思議そうな顔をして聞き返した。
「怖くてあなたを助ける事ができなかった領民達は大丈夫かしら?もし本当にあなたを失ったら後悔しないかしら?」
「私が勝手にした事です。領民達に僕に何があっても気にするなと言ってあります!」
領民達はそんなルービオに甘えた。
ルービオが言うのだから従えばいい。
ルービオの味方になり、ルービオの兄に敵対しなくてもいいと。
それはただ目を背けたいものに蓋をしただけだったと後から気づく。
その時にはもう遅いが…
「あなたのお兄さんは実の父親から見放されるくらい領地を治める力がないのよ?内部から崩れていくこの領に残った領民はあなたを失ったらいけなかったと気づくわ。あなたを見捨てた事を後悔しながら生きていくしかない。あなたならこの地を愛し、領主を立派に努められるのを知っているから…」
「それは…」
ミルアージュに抱きしめられながらルービオの体はこわばった。
ルービオの体が小刻みに揺れていて、声を殺して泣いているのが誰の目にもわかった。
ミルアージュは背中をトントンと優しく叩き、ルービオに寄り添った。
領民に殺させるのが目的だったから弱らせるだけにしたかった。
あの手の毒は調整がしやすいのは事実。
だが、バレやすいのだ。
毒に詳しいミルアージュでなくてもすぐにわかっただろう。
少し毒について学んだ者なら誰でもわかる毒。
特徴がありすぎて区別がつきやすく、一番最初に習うほどだ。
ルービオの死亡届を不審に思われれば、不正が一瞬で暴かれてしまう。
そのリスクがあるのに、あえて使うしかなかったのか…
知識がなかった?
動けなくなるギリギリの調整ができるくらいだ。
この毒を選択したのも理由があったはずだ。
「領主が倒れたのは半年前って言ってたわね。原因はわかっているのかしら?」
ミルアージュはルービオを見つめて質問した。
ミルアージュのあまりに真剣な眼差しにルービオも身構えた。
「…原因ははっきりとわかっていませんが、主治医から年のせいだと言われました。」
「その主治医は信用できる人?」
「父上の幼馴染で兄弟のように育ったと聞いています。」
そうルービオが答えるとミルアージュはまた考え込んだ。
狭い室内に沈黙が続いた。
「一度、あなたのお父様に会うことができないかしら?」
ミルアージュがボソリと呟く。
ルービオ達は驚いた表情をしていたが、クリストファーは予測していたように「言うと思った…」とため息をついた。
「ミア、私も一緒に行くぞ。それが条件だ。」
呆れ顔のクリストファーにミルアージュはニッコリ笑った。
「もちろんよ、忍び込むのはあなたが一番上手だものね。」
クリストファーはアンロック王城に忍び込めるのだ。
それに比べれば守りも警備も簡単なものだろう。
「それは嫌味か?」
クリストファーは怪訝そうにミルアージュを見た。
ミルアージュはまだニコニコと微笑んでいる。
「違うわよ、事実を言っただけ。まぁ、警備の兵たちには同情はしていたけどね。」
クリストファーに侵入されるたびに軍部大将にしごかれたのはいうまでもない。
たまたま勤務の時にクリストファーが来た。
運が悪かっただけだ。
「ルービオは今戻らない方がいいから、ここにいて。ちょっと行ってくるわね。」
ミルアージュはルービオのベットに近づき、抱きしめた。
「あなたはよく頑張っていたわね。」
あんな風に領民に殺させようとする。
そんな扱いを腹違いとはいえ、血のつながった兄から受けていた。
きっと今に始まった事ではないはずだ。
ルービオはフラフラになりながらも他者が自分に関わるのを嫌がった。
領民が助けに来なくても恨む様子もない。
もう覚悟を決めていた。
意識を保つのがやっとの中でも、そんな強い思いを感じた。
「領民があなたに向ける視線でどれだけ慕って心配していたのかがわかった。あなたが私にしたように領民を突き放していたのでしょう?でもね、本当にそれは正しかった?」
「…どういう事ですか?」
ルービオは不思議そうな顔をして聞き返した。
「怖くてあなたを助ける事ができなかった領民達は大丈夫かしら?もし本当にあなたを失ったら後悔しないかしら?」
「私が勝手にした事です。領民達に僕に何があっても気にするなと言ってあります!」
領民達はそんなルービオに甘えた。
ルービオが言うのだから従えばいい。
ルービオの味方になり、ルービオの兄に敵対しなくてもいいと。
それはただ目を背けたいものに蓋をしただけだったと後から気づく。
その時にはもう遅いが…
「あなたのお兄さんは実の父親から見放されるくらい領地を治める力がないのよ?内部から崩れていくこの領に残った領民はあなたを失ったらいけなかったと気づくわ。あなたを見捨てた事を後悔しながら生きていくしかない。あなたならこの地を愛し、領主を立派に努められるのを知っているから…」
「それは…」
ミルアージュに抱きしめられながらルービオの体はこわばった。
ルービオの体が小刻みに揺れていて、声を殺して泣いているのが誰の目にもわかった。
ミルアージュは背中をトントンと優しく叩き、ルービオに寄り添った。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる