僕は亡者だから(戯れる)。

鹿

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 ここに来て、どれだけの時間が経ったのだろうと、詮ない事を考えた。
 なぜカキには、架の面影があるのだろう。
 お前がジキだったら、僕はカキを愛するだろうか。


 ここに架はいない。地獄に来た意味が無い。
 だから僕は、架に似た鬼に愛着してしまっている。
 死にたい。
 でも、嵐が来たら、また僕は蘇る。

 架はどこにいるのだろうか。
 あの、赤白い空の下にいるのだろうか。
 それとも、この岩屋のどこかに。果てなく広い、この岩屋のどこかに。


「お前、俺が好きなんだろ?」


 左腕を落とされた痛みに耐えている僕に、カキが尋ねてきた。
 
 どういう顔をしていいか分からない。好きかどうかさえ分からないから。
 カキは僕の左腕を足で払いながら、僕にキスした。

「カキ。やめたほうがいい」

「こいつが先に、こうしてきたんだ。ジキだって見てただろ。俺に罪はない」

 カキの言う通りだ。僕がカキに口づけたんだから、カキに罪はない。
 あるとしたら、僕に。
 
 カキの腕が大きくなっていた僕の股間を触って来る。
 危うく声が出そうになる。

「顔を見せろ。お前の窮まった顔は好きだ」

 やめてくれ。お願いだから、好きだなんて言わないでくれ。壊れそうになる。
 それでもカキは僕の耳元で言葉をやめない。

「お前の声を聞かせてくれ」

 僕は右腕をカキの胸に押し当てて、カキの身体をはがそうとあがいた。
 なんて非力なのだろう。カキの身体はびくともしない。
 架に似ているのはその顔と、この髪だけ。


「やめ、」


 左肩に激痛が走った。


「アアアアアアアアアッ!」


 どいてくれ。カキ。
 ここから逃げ出したいんだ! 
 僕は狂ったように押し退けようともがいても、カキの手は僕の陰茎をしごいてくる。


「もっと叫べ」


 やめてくれ。
 やめてくれ。僕が云った言葉をお前が使わないでくれ。
 それは僕と架だけの。
 
 自分の手の平が汗で滑り、地面に落ちた。
 地肌を触る。
 ザラっとした感覚の向こうで、子供が僕を見ている。
 見ないでくれ。


「人の液も白いのか」


 カキの空言で、僕はイったのだと分かった。


 僕の右手は、カキの性器へ運ばれた。


 熱い。これが鬼の。
 カキは僕の右手首を掴んだまま、自身の茎を触らせる。


「冷たいな」


 カキもイキたいのだろうか。僕なんかを対象として。やっぱり悲しい。
 僕は少しだけ、カキを刺激するように、指を動かした。


「あ」


 初めて聞くカキの喘いだ声。鬼もまた、人と同じなのか。
 なんで鬼に陰茎があるんだ。鬼にも身体の性が。
 だったら何で、僕でイこうとするんだ。どこかに女の鬼がいるんだろう。

「カキ」

 ジキの声。この無様な光景を見かねたか。
 それは無いだろう。お前が子供を殴っているのだって、無様極まりない。


「お前の名前を、教えてくれ。呼びたい」


 カキの震える目が僕を見据えている。
 僕がゆっくりと手の動きを変えると、手首を掴む力が強まり、カキの腰がガクつき始めた。


「ん」


 カキの陰茎から精液が飛んだ。
 激しい勢いで僕の上方へ飛んで、残りが僕の顔にかかった。首と胸にも滴り落ちる。
 カキの後悔に染まった顔は、あまりにも僕を悦ばせた。
 緩んだカキの手の平から、僕は右腕を下げて、彼の陰茎を撫でた。


「や、めろ」


 本当にやめてほしいなら、右腕を切り落とせ。
 僕は撫でるのをやめ、精液まみれの手を、彼の脇腹から背中へと回した。
 さっきまでの重さはどこへ。カキの身体は簡単に寄せることができた。


 天井に靄が立ち込めている。


 ジキは子供を殴るのをやめて、こちらを見ている。子供もこちらを見て、笑っている。


 カキの息が落ち着き始めるのと一緒に、雨の滴が落ちてきて、その音が強まった。


「よすが。僕の名前」


「ヨスガ」


 僕が彼の唇を舐めると、彼もまた、僕の唇を舐めた。
 また硬くなり始めた彼の股間を感じながら、僕は彼の髪を撫でた。


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