僕は亡者だから(戯れる)。

鹿

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 喋らないほうがいい。


 地獄に導いた鬼の言葉を思い返しながら、僕はカキに犯されていた。

 カキの陰茎が腹部を触る。
 架が演技してくれていたのだと分かる。気持ち良さなど微塵もない。
 分かるのは、カキが我を忘れて、性処理に明け暮れていることだけ。
 僕のほうもそれでいいと割り切っているから。こうやってカキに身を任せている。
 身体を割かれるよりは、まだこっちのほうがいい。

「生きている人間の中は、熱いんだな」

 そういう風に思うのか。架には、そんな感覚を抱かなかった。
 架といれば、それで良かった。
 カキは汗を顎から垂らしながら、僕の脇腹を掴んで、僕をつき続ける。
 隣を見ると、感化されたのか、ジキも子供を犯している。
 いや、むしろ愛し合っているのは、向こうじゃないか。ジキと子供は見合って、絡んでいる。

「おい」

 声に向くと、カキは動きを止めていて、たらたらと褐色の肌に汗を流し、僕を見ていた。

「殺すぞ」

 お前も執着するのか。脅しの言葉が陳腐過ぎて、笑ってしまいそうになる。


「もっと、突いて、くれ」


 カキは表情を変えないままに、再び突き始めた。
 また腹が痛くなる。
 僕は汗で滑りながらも、カキの両手首を掴んだ。
 それを振りほどくように、カキは僕の上に倒れ込むと、僕を抱くように、腕を動かして来た。


「はあ、はあ」


 何を我慢することがあるのだろう。
 所詮、性処理。さっさとイけばいいのに。
 僕の言葉を無視したように、カキの腰使いはゆったりと僕を突き続ける。


「イかないの?」

「黙れ」


 挑発までも無視されて、僕は虚しくなり、天井を見上げた。
 天井が揺れているように見える。
 ここには穏やかな瞬間など無いのだろう。そう思いながら、カキの背中を撫でていた。


「ヨスガ。俺の事が好きなんだろう」

「う、ん」


 理性の飛んでいる生物には、嘘をついても分からないだろう。
 僕がカキの身体を抱きよせると、腰使いが不均一になり始めた。
 あまりにも、動物過ぎる。


「ヨスガ。好きだ」


 空虚な言葉。
 陰茎を持つ生物が、性行為に吐く言葉として、最も気味が悪い。
 そんなに人間なんかの愛が欲しいのか。それも同じく雄の人間の。
 僕は涙を流していた。


「早く、出して。カキのが、欲しい」


 カキの髪をかき上げて囁くと、腹の痛みが強まり、カキの息遣いが荒くなった。
 

 そう。僕を壊してくれ。内側からもっと。

 僕はその思いで、カキを掴んだ。


「ヨスガ。好きだ」


 分かったよ。だから僕を。


 腹に違和感を覚えて、カキは動きを止めた。
 
 イったか。でも僕は壊れていない。
 僕はカキの髪を撫でた。穏やかな目が僕を見た。
 お前は仕事を。

 僕を、殺せ。


「ヨスガ」


 カキが僕の唇を舐める。濡れた鼻が、僕の鼻に触れる。

 カキ。お前はあまりにも純粋過ぎる。まるで昔の僕だ。
 だからお前を好きになり切れない。
 お前は架でも無ければ、まして、僕でも無い。


 なんでお前は鬼なんだ。なんで人間じゃない。
 お前はこの岩屋以外の世界を知っているのか。
 ジキ以外に友人はいないのか。人間と同じような生殖器があるのなら、お前にだって、親はいるだろうに。

 カキの舌に、僕は自分の舌を絡ませた。
 僕はお前の寄る辺になったんだろうか。
 僕は目を開けた。カキは目を閉じて、舌を動かし続ける。僕の目線はカキの後ろにある長刀へと向いた。

 あれがあれば、カキを殺せる。


「俺を殺す気か」


 カキの言葉で総毛だった。
 向くと、閉じていたカキの目が、赤く染まり始め出している。

 肌の逆立ちが収まるのを待って、応えた。


「そのつもりだと言ったら?」


 カキの顔が遠のくと、風が吹き始めた。ジキと少年は、まだ体を重ね合っている。


「俺はもう、ヨスガを殺したくない」


 何故だろう。嬉しくて、悲しい。僕は僕じゃなくなって、カキはカキじゃなくなる。
 雨が降り始めて、ついていたカキの匂いがなくなっていく。
 あまりに冷静になってしまったと思っていると、カキが僕を抱いた。


「殺したくない」


 震えるカキを、僕も抱くしか出来ない。


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