『私はただのブスだったはずなのに、異世界では「天使様」と呼ばれてます〜女神ルミエールの祝福〜』

透子(とおるこ)

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「秘書の仕事は詩の後始末」セレヴィス視点

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今日もまた――ヴィルゼル様の“詩の時間”が始まった。



深くため息をつきながら、私は書斎の隅に散らばった紙片の山を見つめる。

昨日書いたらしい“恋文”を添えた詩の束だ。しかも封筒の端には、なぜか小さなハートの落書きがある。

……魔族の上位種がやることではない。



「ヴィルゼル様、本日の予定表でございます」



私が声をかけると、彼は筆を止めて顔を上げ、にやりと笑った。

「セレヴィス、僕の詩の感想を言ってくれるのは、君だけだろう? 頼むよ」



――いや、それは断固無理だ。

だが、彼の頼みを無下にできない私は、結局静かに頷く。



ヴィルゼル様は、朗々と一節を読み上げる。

「君が笑えば、この胸がきしむ――どうだい?」



「……耐久性の低い胸をお持ちなのですね」



「おや、僕の胸板は君も知ってるだろう? 硬いはずだが」



――なぜそんなことを自信満々に言えるのか。しかも私に。

心の中で頭を抱えつつ、主の背中を見つめる。

この人の奇行と情熱は、もはや芸術か狂気か、その境界線上にある。



その時、書斎の扉が静かに開いた。

「セレヴィス、さっきの詩の返事はまだかい?」



「まだ読了しておりません、ヴィルゼル様」



「では、今ここで読んでくれ。君の声で」



「……なぜ、私が」



「君の声は落ち着くからね。僕の詩と相性がいいんだ」



――そんな理由で部下に恋文朗読をさせる主が、この世にどれほどいるだろうか。

しかし視線を逸らすと、彼はわずかに口元を緩めた。



「それに……君が読んでくれると、本当に胸がきしむんだ」



……やめてほしい。言葉の意味も、声色も。

私の耳が熱を帯びるのを悟られぬよう、無表情を装い、詩の紙束を手に取った。



この先も、彼の詩の後始末――そして時折、心臓の後始末も――続くのだろう。

今日も一日、静かに覚悟を決める。





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