ポインセチアの咲く頃に

白石華

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もう一度ポインセチアの咲く頃に

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「正さん。」

「どしたの?ミズキ。」

「実は正さんに言わなければならないことが。」

いつになく真剣なミズキ。じっと俺を見ていて。

「うん……聞くよ。」

「はい。実はそろそろポインセチアにも寿命が来ています。」

「えっ、そうなの?」

「はい。元々クリスマスシーズンのための植物ですから、正さんの協力もありますが、今までよく保った方だと。」

「えーと、それじゃあミズキはどうなるの?」

「稲荷神社にある仲見世通りの花屋に戻り、植物に宿ろうかと。」

「戻る……ミズキが。」

元々そういう話で俺の部屋に来ていたのだが、俺は寂しさを感じてしまう。

「しかしクリスマスまであと1ヶ月しかありません。つまりシーズンは始まっています。
 私はまたポインセチアの妖精をしようと思っています。」

「あ、そうなの?」

俺が買い直せば大丈夫な話なだけで今までと大して変わらない事にガクッと身体の力が抜ける。

「それと、正さんに確認したい事が。」

「えっ、何?」

「私はいつ、寄り代の植物が枯れて、この場を後にするかも分からない妖精です。
 今は正さんが……えっと。」

「うん。配慮しなくて大丈夫だよ。独り身だから俺の所にいられるけど、俺のところにいる間は、俺が焦らないし彼女作らないし、結婚のけの字も見せる気がしないから」

「そこまで思ってません。どれだけですか。」

俺が言う途中でミズキが遮った。

「どうでしょう。ズルズル行くより、ここいらで一旦、距離を置いてみるのは。」

「え?」

「私は正さんが花屋に寄ろうと思えば何時でも会えます。
 でも……えっと。」

「彼女は作ろうと思わなければ作れない訳だしね。うん、ミズキが俺を心配してくれているのは分かるし。」

「はい。ではお別れです正さん。」

言い終えるや否やミズキの身体が透けていき……消えた。

「いなくなっちゃった。本当に。」

俺の元には正に枯れかけのポインセチアだけが残り。ミズキがいなくなったからかやけに侘びしくみえて。

「ん……とりあえず親に電話してみるか。それから実家に帰省してみて。」

俺は独り言を呟く。

「うん……2人に慣れちゃったんだなー……。」

俺の心はスッカリ変わってしまったようだった。

―それから―

「ふう……寒いな。」

今日は12月24日。クリスマスの飾り付けがされた神社前の通りを歩き、ライトアップがなされた狐の篭型オブジェを眺める。

「よし。後はポインセチアを買って帰ればクリスマスの買い物はこれで終わりか。」

両手に買い物袋をぶら下げた俺は仲見世通りの前で歩く足を止めた。そして―

「正さん、まだ1ヶ月しか経ってませんよ。」

「だって、クリスマスに独り身だけは耐えられなかったんだってば!」

アパートに戻り、ポインセチアをテーブルに置くなり呆れたようなミズキと心の叫びを言う俺だった。
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