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君と桜が咲く頃に
今も君と桜が咲く頃に
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「んっふっふ。ランラン。そろそろお花見がしたいと思わないかね?」
「リンリン。ソファに座って女王様スタイルで言うことがそれかね?」
「ムキーッ! それって何さ! 女王様じゃないもん! 女帝だもん!」
「違いが分からん。しかも女帝の方が凄そうだ。」
「正確には違いはないけどね。字面の気分の違い?」
「ふーん。」
話は今に戻って桜の咲く季節を無事迎え。リンリンがソファにくつろぐように座って妖しげな目で俺を見ていたから、アッサリとかわす俺。
「何よー。ランランは花見したくないの?」
「したーい。」
ちょっと浮かれた女子っぽく言う俺。
「そうだよねー。お花、綺麗だもんねー。
それでどこに行く?」
リンリンはアッサリ機嫌を良くし、やはり女子っぽい口調に乗る。
「うーん。どこって聞かれてもな。あ、そうだ。
自然公園とかどう?」
「よし。それじゃあ、さっそく自然公園にゴーだ!」
「え、今日なん?」
という訳でリンリンとお花見に行くことになった。
「ランラン、きれー。」
「そうだなー。」
自然公園に来た俺たちは、中央広場を囲むように桜が等間隔に植えられた満開になって咲き乱れる桜を眺めていた。自然公園と言うだけあって、チューリップやスイセンと言った球根植物にタンポポの仲間っぽい、もっと小さなたくさん付いた花や、ネモフィラ、サクラソウ、芝桜など他の草花の花畑や樹木の新緑が既に生い茂って木陰を作っている場所に、藤棚を屋根にしたベンチ休憩所など。歩いて、ちょっと休憩して自然を眺めるのに丁度良さそうな造りになっている。
俺たちがいるのは桜から僅かに離れて藤棚のベンチ休憩所になっている場所。真ん中にはテーブルがあるから軽食を摘まみながら花見をするのにいいところであった。
「お花見だから、お茶は緑茶がいいと思って持ってきました。」
「ナイス。」
「あとはねー。桜の形の練り切りと。
薄いピンクのおもちで桜餡を包んだのに桜の小さな練り切りが乗っかったのと。
何といっても桜餅(長命寺)!」
「道明寺は無いの?」
「売ってなかった。不思議だねー。」
「これだけ甘いのがあると抹茶も欲しくなるな。」
「野点を所望ならよそへお行き。」
「うん。緑茶でいいけどさ。」
桜をボーっと眺め、リンリンから貰った桜のお菓子を眺め、また桜を眺める。そういう、目に桜を存分に入れた辺りで。
「頂きます。」
「いただきます。」
ようやく、ペットボトルの緑茶を開け、ナイフ形の楊枝でお菓子を食べることにした。
「甘い。あんこがねりねりしていて餅が柔らかい。」
「見た目が可愛いからしばらく眺めてから食べないと勿体ないよねー。
うまいうまい。一口で食べられちゃいそう。」
リンリンはそう言って、長命寺桜餅には手を着けたが、練り切りとおもちには全く触れない。
「まだ食えないな?」
「あたぼーよ。そう簡単に消せるかってんだい。」
「俺はおもちを食べるけどな。」
「クッ……こっちが躊躇している行為を簡単にやってのけた?」
「食えないものは買っても勿体ないだろ。食べなさい。」
「やーだー。もうちょっと眺めてるー。」
「スマホあるんだから写真で我慢しなさい。」
「しょうがないなー。」
リンリンは名残惜しそうにパシャパシャと角度を変えてお菓子の写真を撮っていた。そんなにか。
「そう言えばランラン。」
「ん?」
「ランランは、今も桜の声、聞こえてる?」
「ああ……桜の声。あと他の草花の声だっけ。」
「風の声と、川の水の声と。」
「こっちで付けたイメージだからな。
聞こえているというか、イメージ付けと言うか。」
「うん。あんなに乗ってくれたのはランランだけだったから。
焚き付けられて燃えちゃったんだよね。」
「ああ。朗読ってそこまでするんだって、その頃なんも知らんかったから。
そういうモンだと思って部長に乗せられたんだけどね。」
「そう。それからの私たちは、割と無茶をさせた。」
「無茶だったのか。」
「でも、楽しかったんだよ。そういうことをサークルでやれて。
本を朗読しようって人は私と先生だけだったしさ。」
「無茶と言えば、最初から無茶だったぞ。いきなり読めって。」
「あーん、その話は何度も聞かされたー。
私が言いたいのはですね、ランラン。」
「うん。」
「ランランと過ごしたサークルの日々が、楽しかったってこと。」
「お、おう。」
「こういうのは、ちゃんと言っておかないとね。
あと無茶もさせたってのも。」
「うーむ。」
俺はリンリンのすることに付いてこれたからいいが、あれって無茶だったのか。最初から無茶だったけど、その後でも無茶だったのか。
「俺さー。何で俺がリンリンと付き合えたのか不明だったんだけど。
リンリンのすることに付いてこれたからなのか?」
「そうでしょ。なんでここに、こんないい人が入ってくれたのか。
こっちはずっと疑問だったよ。」
都市伝説が俺の身に起こったと、ずっと思っていた俺の疑問にあっさり答えるリンリン。
「そうだったのか……。」
「楽しかったもーん。」
その後は、リンリンの前で練り切りをうまそうに食べて、また食えなくてギリギリしているリンリンを眺めて花見は終わった。
「リンリン。ソファに座って女王様スタイルで言うことがそれかね?」
「ムキーッ! それって何さ! 女王様じゃないもん! 女帝だもん!」
「違いが分からん。しかも女帝の方が凄そうだ。」
「正確には違いはないけどね。字面の気分の違い?」
「ふーん。」
話は今に戻って桜の咲く季節を無事迎え。リンリンがソファにくつろぐように座って妖しげな目で俺を見ていたから、アッサリとかわす俺。
「何よー。ランランは花見したくないの?」
「したーい。」
ちょっと浮かれた女子っぽく言う俺。
「そうだよねー。お花、綺麗だもんねー。
それでどこに行く?」
リンリンはアッサリ機嫌を良くし、やはり女子っぽい口調に乗る。
「うーん。どこって聞かれてもな。あ、そうだ。
自然公園とかどう?」
「よし。それじゃあ、さっそく自然公園にゴーだ!」
「え、今日なん?」
という訳でリンリンとお花見に行くことになった。
「ランラン、きれー。」
「そうだなー。」
自然公園に来た俺たちは、中央広場を囲むように桜が等間隔に植えられた満開になって咲き乱れる桜を眺めていた。自然公園と言うだけあって、チューリップやスイセンと言った球根植物にタンポポの仲間っぽい、もっと小さなたくさん付いた花や、ネモフィラ、サクラソウ、芝桜など他の草花の花畑や樹木の新緑が既に生い茂って木陰を作っている場所に、藤棚を屋根にしたベンチ休憩所など。歩いて、ちょっと休憩して自然を眺めるのに丁度良さそうな造りになっている。
俺たちがいるのは桜から僅かに離れて藤棚のベンチ休憩所になっている場所。真ん中にはテーブルがあるから軽食を摘まみながら花見をするのにいいところであった。
「お花見だから、お茶は緑茶がいいと思って持ってきました。」
「ナイス。」
「あとはねー。桜の形の練り切りと。
薄いピンクのおもちで桜餡を包んだのに桜の小さな練り切りが乗っかったのと。
何といっても桜餅(長命寺)!」
「道明寺は無いの?」
「売ってなかった。不思議だねー。」
「これだけ甘いのがあると抹茶も欲しくなるな。」
「野点を所望ならよそへお行き。」
「うん。緑茶でいいけどさ。」
桜をボーっと眺め、リンリンから貰った桜のお菓子を眺め、また桜を眺める。そういう、目に桜を存分に入れた辺りで。
「頂きます。」
「いただきます。」
ようやく、ペットボトルの緑茶を開け、ナイフ形の楊枝でお菓子を食べることにした。
「甘い。あんこがねりねりしていて餅が柔らかい。」
「見た目が可愛いからしばらく眺めてから食べないと勿体ないよねー。
うまいうまい。一口で食べられちゃいそう。」
リンリンはそう言って、長命寺桜餅には手を着けたが、練り切りとおもちには全く触れない。
「まだ食えないな?」
「あたぼーよ。そう簡単に消せるかってんだい。」
「俺はおもちを食べるけどな。」
「クッ……こっちが躊躇している行為を簡単にやってのけた?」
「食えないものは買っても勿体ないだろ。食べなさい。」
「やーだー。もうちょっと眺めてるー。」
「スマホあるんだから写真で我慢しなさい。」
「しょうがないなー。」
リンリンは名残惜しそうにパシャパシャと角度を変えてお菓子の写真を撮っていた。そんなにか。
「そう言えばランラン。」
「ん?」
「ランランは、今も桜の声、聞こえてる?」
「ああ……桜の声。あと他の草花の声だっけ。」
「風の声と、川の水の声と。」
「こっちで付けたイメージだからな。
聞こえているというか、イメージ付けと言うか。」
「うん。あんなに乗ってくれたのはランランだけだったから。
焚き付けられて燃えちゃったんだよね。」
「ああ。朗読ってそこまでするんだって、その頃なんも知らんかったから。
そういうモンだと思って部長に乗せられたんだけどね。」
「そう。それからの私たちは、割と無茶をさせた。」
「無茶だったのか。」
「でも、楽しかったんだよ。そういうことをサークルでやれて。
本を朗読しようって人は私と先生だけだったしさ。」
「無茶と言えば、最初から無茶だったぞ。いきなり読めって。」
「あーん、その話は何度も聞かされたー。
私が言いたいのはですね、ランラン。」
「うん。」
「ランランと過ごしたサークルの日々が、楽しかったってこと。」
「お、おう。」
「こういうのは、ちゃんと言っておかないとね。
あと無茶もさせたってのも。」
「うーむ。」
俺はリンリンのすることに付いてこれたからいいが、あれって無茶だったのか。最初から無茶だったけど、その後でも無茶だったのか。
「俺さー。何で俺がリンリンと付き合えたのか不明だったんだけど。
リンリンのすることに付いてこれたからなのか?」
「そうでしょ。なんでここに、こんないい人が入ってくれたのか。
こっちはずっと疑問だったよ。」
都市伝説が俺の身に起こったと、ずっと思っていた俺の疑問にあっさり答えるリンリン。
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その後は、リンリンの前で練り切りをうまそうに食べて、また食えなくてギリギリしているリンリンを眺めて花見は終わった。
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