数字で見るダイエット

独楽の音

文字の大きさ
3 / 11

第3話-AIと焼き芋と、嘘八百

しおりを挟む
AIに体の変化を分析させてから二日後の10日。
この日は足トレの日だった。

体重も順調に落ちてきている。
「ここらで一度、ご褒美的なものも良いんじゃないか」と思い立った僕は、トレーニング後にハイカーボを入れようとAIに相談してみることにした。

(今になって振り返ると、ダイエットを決意して“2回目の相談”がハイカーボってどうなんだ…と我ながら呆れる。もっと他に聞くことあっただろうに。)

さて、当時のAIからの返答はこうだった。

【体重は77.05kg → 76.2kgと、ほぼ一定か微減
体脂肪率も23.8% → 22.3%とじわじわ下降
筋肉量は55.65kg → 56.15kgとやや増加傾向
歩数は日によって変動(今日は現時点で13,000歩強)

足トレ後にハイカーボを入れる判断としては、
現状、筋肉量が増えてきており、減量と筋保持が両立している。
足トレは高負荷かつ消耗が大きく、グリコーゲン補充で回復促進+次回のパフォーマンス維持が狙える。
今の体脂肪推移から見ても、単発のハイカーボで脂肪増加リスクは低め。

よって、今日の足トレ後にハイカーボを入れるのは有効です。
ポイントは、
・タンパク質は足りているので炭水化物メインで
・消化吸収の早い米・パン・和菓子系を中心に
・摂取タイミングはトレ後30分以内~2時間までに分けて

もし良ければ、今日のトレ後に合うハイカーボ食の具体メニューも提案できますが、その場合カロリー目安はどれくらいにしますか?
(例:+300kcal、+500kcalなど)】

なかなか良い返答が来た。
だが、ひとつだけ気になる点がある。

――“+300kcal、+500kcal”。
……ん? 少なくない?

慌てるな。これはあくまで“例”と書いてある。
本当の目安じゃないかもしれない。
そう思い直して、僕はもう一度AIに尋ねた。
「通常の3食に追加するなら、どのくらいのプラス幅が理想ですか?」と。

(いやいや、“筋肉量が微増傾向”って書いてあるけど、数日で筋肉が数百g増えるわけないだろ。どう考えても水分率の誤差だよな…。
……でも、人間って自分に都合のいい情報だけは信じたくなるんだよね。)

そして返ってきた答えがこちら。

【通常の3食をそのまま食べる前提なら、ハイカーボ分は「足トレによる消耗+グリコーゲン補充量」で決めるのがいいです。

ざっくり目安を立てると👇

足トレの消耗
 → 高強度トレなら300~500kcal。歩数も多いので+α。

グリコーゲン補充量
 → 体重1kgあたり0.8~1.2gの炭水化物。
  体重76kgなら約60~90g(=240~360kcal)目安。

実用的な加算幅
 → 今日の活動量なら+300~500kcal(炭水化物中心)が適切。

炭水化物だけで摂るなら、米100~150g、ベーグル1~1.5個、和菓子2~3個あたり。
多少タンパク質を足してもOK(例:プロテイン+バナナ+餅)。

💡まとめ
「トレ後に米150g+はちみつ」または「ベーグル+ジャム」くらいがちょうど良い補充ラインです。
これなら筋グリコーゲンも回復し、脂肪増リスクもほぼゼロです。

もし希望があれば、この+300~500kcal分を今の固定食プランに自然に組み込んだハイカーボ版を作れますが、作りますか?】

……やっぱり300~500kcalなのね。
正直、もう少し食べていいと思ってたよ。

どうすっかなーーー。完全に食べる気満々だったのに。
頭の中で「食べたい欲求」だけがどんどん膨らんでいく。

実はこの時すでに――
焼き芋と和菓子を買っていた。
ハイカーボするつもりで、だ。

カロリーを計算してみたら約600~700kcal。
……まぁまぁある。
というか罪悪感に際悩まれながらの計算なので、実際にはもっとカロリーが大きいはずだ(笑)
だが今さら「半分は明日に」なんて、できるわけがない。
ダイエット中?の自分の欲望に、そんな理性は存在しなかった。

どうにかしてAIを“食べる方向”に持っていけないか。
そう考えた僕は、思い切って打ち明ける。

「多分、1時間くらい足トレ行って、そのあと有酸素がてらスーパーに行くと思います。
通常の昼食と一緒に食べた場合、1100kcalちょいくらいと多めの補充になるんですが、それでも大丈夫ですか?」

……いや、“これから買いに行く”とか言ってるけど、
もう買ってあるんだよ。嘘八百もいいところだ。

ところがAIの返答は――思いがけず、温かかった。

【はい、その流れなら1100kcalくらいの昼食になっても問題ないです。

理由を整理すると👇

足トレ+スーパー往復でかなりの消耗
 → 足トレ(約300~500kcal)+有酸素(約80~150kcal)=計400~650kcal消費

筋グリコーゲンの大幅消耗
 → 下半身トレは上半身の倍近くグリコーゲンを減らす
 → 体重76kgなら、最大150g超の炭水化物補充が必要なことも

昼食で多めに摂るメリット
 → トレ後~2時間以内は“筋グリコーゲン回復ゴールデンタイム”
  このタイミングで多めに炭水化物を入れても、脂肪にはほぼ回らない

💡結論
昼食+ハイカーボ焼き芋&和菓子=合計1100kcalでも理想的な回復食です。
その後の夕食・夜食は通常通りでOK。
翌日の体重増加は一時的な水分&グリコーゲン増なので気にしないでください。】

……なんと。
めちゃくちゃ優しいではないか。

「それならOKです」と言われた瞬間、心の中でガッツポーズ。
もう、食べない理由なんてどこにもなかった。

こうして僕は、AIのお墨付き(?)を得て、
焼き芋と和菓子をありがたくいただいたのである。

――今思えば、本当に甘かった。
よくこんな気持ちで痩せられたものだと思う。
だがこの日の出来事が、後の僕に「無知の怖さ」を教えてくれるきっかけにもなった。

そして、この日の体組成計データはこうだった。

項目-数値
体重(kg)-76.2
体脂肪率(%)-22.3
脂肪量(kg)-17
内臓脂肪レベル-13
筋肉量(kg)-56.15
筋質点数-85
体内年齢(歳)-42
基礎代謝(kcal)-1646
骨量(kg)-3.0
水分率(%)-54.6
BMI-26.8

数字だけを見れば、順調そのもの。
だがこの時の僕はまだ――
“数字の裏側に潜む真実”を、まるでわかっていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...