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第6話-グリコーゲンという名前の正体

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今回のハイカーボの目的は、何も自分の欲求を満たすだけじゃない。
AIとのやり取りの中で、「糖質補給によって体の中のグリコーゲンという物質を補充すること」が主な目的だと教えてもらった。

……とはいえ、正直グリコーゲンについて詳しく知っているわけではない。
せっかくの機会だから、もう少し深くAIに聞いてみることにした。

最初に返ってきたのは、こういう説明だった。

「糖質をグリコーゲン1gにすると、水分約3gが一緒に抱き合うんです。
だから体重が1kgくらい増えても普通ですよ。」

その理由はシンプルだという。

「筋グリコーゲン1gは水分約3gと一緒に筋肉に貯蔵されます。
糖質400gを全部グリコーゲンにできるわけじゃないけど、筋トレ後のハイカーボならかなり効率よく筋肉に入ります。
仮に400g中300gがグリコーゲンになったとすると──
300g ×(1+3)=約1,200gの重さ増加。
つまり翌日の体重増加はほぼ水分と糖質で、脂肪はほとんど増えていないというわけです。」

塩分を多く摂るとさらに細胞外水分が増えて、むくみが出やすくなるらしい。
このあたりまで聞いて、ようやく理解できた。
「ハイカーボ=太る」ではなく、「ハイカーボ=水分と糖質の一時的な増加」だったのだ。

もう少し深く聞いてみると、さらに興味深い話が返ってきた。

「教科書的には筋グリコーゲン1gに対して水分約3gが結合します。
これは筋肉内の浸透圧バランスの性質で、
グリコーゲンは水を引き込む力を持つ。
だから糖質を多く摂った翌日に体重が1kgほど増えるのは、ほとんどが水分です。
実際の比率は1:2.7~1:3.5くらいで、筋トレ直後のように枯渇している状態だと上限近くまで行きやすいんです。」

「カーボディプリート」という言葉も出てきた。
ボディビルの選手が一時的に炭水化物を断つ、あの状態だ。
つまりグリコーゲンと水の比率はおおむね1対3だが、体のコンディションによって上下するということだろう。
そして、枯渇している状態ほど水を多く引き込めるわけだ。

自分はボディビルをやっているわけではない。
だから、そこまで極端なことをするつもりはない。
でも、原理としては面白い。
そういえば動画サイトで、カーボディプリートからの“カーボアップ”を撮影している人を見たことがある。

ふと疑問が浮かんだ。
カーボディプリート後に糖質と水を入れると、体組成計上では筋肉量として見られるのだろうか?

聞いてみると、AIの答えはこうだった。

「体組成計は筋繊維そのものではなく、“水分を含めた除脂肪組織量”を推定しています。
グリコーゲンが補充されると筋肉内の水分が増え、電気抵抗が下がります。
すると体組成計は『筋肉量が増えた』と判定するんです。
だからハイカーボ翌日に筋肉量が1~2kg増えて見えるのは、水分とグリコーゲンによる一時的な増加なんですよ。」

なるほど、これは納得だ。
見た目のパンプアップや体組成計の数値上昇は、“筋肥大”ではなく“水分回復”。
とはいえ、筋肉が満たされる感覚は確かにある。
だから多くの人がハイカーボを「ご褒美」と感じるのだろう。

それでも気になることがある。
このグリコーゲン補充の流れは、どのくらいの時間で行われるのか?

再び尋ねると、AIはこう答えた。

「ざっくり言うと──
筋トレ直後から2時間がピーク。
“グリコーゲン合成酵素”が最も活性化して、1時間あたり5~10gの筋グリコーゲンが合成されます。
2~6時間で速度は半分に落ち、6~24時間かけて通常状態に戻ります。
だから実感的には、筋トレ後1~3時間が“爆速吸収タイム”。
全補充には20~24時間ほどかかります。」

なるほど、と同時に「ちょっと待てよ?」とも思った。
グリコーゲンは体のエネルギー源。
ということは、トレーニングで使う分も、どこかで補給しておかなければならない。

ならば、トレーニング前の数時間前に糖質を摂るのが理想なのか?
あるいは、前日の夜に入れておくべきなのか?
トレ中に燃料を補いながら行うのか、それとも空腹で臨むべきなのか。

考えれば考えるほど、答えはひとつに定まらなかった。
ダイエット中の自分は、当然カロリーを制限している。
それでも、効率よく動けるようにグリコーゲンを使いこなしたい。

「トレ前か、トレ後か」──。
頭の中で何度も往復しながら、自分は久しぶりに長い時間考え込んでいた。

ハイカーボという言葉の裏側に、これほど多くの“仕組み”があったとは。
少しずつではあるけれど、体の中のことを理解するほどに、
この減量が「実験」でもあり「学び」でもあるように思えてきた。
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