【完結】可哀想なSubインキュバスが可愛いから独占溺愛しちゃう

ユネ

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ウィラの腕の中で、ユアは微睡んでいた。
​彼女の魔力は、冷えた体と砕けた神経を優しく修復している。ユアは、人生で初めて、自発的な服従(Submission)の衝動ではなく、絶対的な安心で泣きそうになった。
​「ウィラ……」
​「眠りなさい、私の可愛いSub。全ては私が引き受けたわ」
​ウィラはそう言って、ユアの額にキスをした。その瞬間、ユアの全身に温かい魔力が流れ込み、長年眠っていた彼のインキュバスの核が、初めて健全な音を立てて鼓動した――。


ユアは次に目覚めたとき、既に体力が回復していた。ウィラの魔力による短時間の濃密な治癒のおかげだろう。
​傍らにはフィオとセティが、ユアのカルテのようなものを覗き込んでいた。フィオは相変わらず深刻そうな顔で、ユアの右手の神経画像を指差している。
​「神経の損傷は深く、修復には時間がかかる。特に魔力回路の修復は、継続的な……」
​フィオが言い淀むと、ウィラが静かに引き継いだ。「継続的な、私のDom性による魔力供給と愛情が必要だ、ということね」
​ウィラはベッドサイドに座り、ユアの顔を見つめた。
​「ユア。あなたは今日から、私の**『専属のSub』**よ。あなたのケアは、私の絶対的な責務。全てを私に委ねて」
​ユアは力なく頷いた。抑制剤の残滓がまだ精神に影響し、感情の起伏は少ない。しかし、ウィラを見つめる瞳には、深い信頼が宿っていた。
​「フィオ。まずは抑制剤のデトックスだ。症状が強く出るだろうが、ウィラがそばにいる」
​フィオの言葉通り、デトックスは過酷だった。抑制剤はユアの魔力生成を歪めるだけでなく、感情の蓋を無理やり閉じていた。薬が抜けるにつれて、ユアは激しい吐き気と、コントロール不能な不安に襲われた。服従飢餓の衝動と、過去のDomから受けた罰の記憶がフラッシュバックする。
​「うっ……!や、やめて、ドレイク……!僕に触らないで……!」
​ユアが夜中に錯乱し、暴れだしたとき、ウィラは即座に彼を抱きしめた。
​「落ち着きなさい、ユア。Breathe。もうドレイクはいない。ここは安全な場所よ」
​ウィラはユアの抵抗を許容し、彼が落ち着くまで、ただ強く抱きしめ続けた。そして、ユアの耳元に、絶対的な Dom の慈愛を込めたコマンドを囁いた。
​「Good Sub。あなたは勇敢で、私にとって必要な存在よ。あなたの苦痛は、今日ここで終わりを告げる」
​ウィラの声が、ユアの錯乱した神経を強引に引き戻す。ユアは、ウィラのDom性が持つ揺るぎない保護と安定性を感じ、意識が遠のく。
​数日後。抑制剤が完全に身体から抜け、ユアは初めて、真のSubspaceを経験した。
​ウィラはユアを、清潔なソファに座らせていた。彼女の左手はユアの右手——神経損傷で震えがちな利き手——を優しく包み込み、ゆっくりと魔力を流し込んでいる。
​「ユア。私を見て」ウィラは穏やかに、しかしDomとして命令した。「あなたの右手は、美しい。そして、あなたの過去の傷は、私たちが共に乗り越えるべき証よ」
​ウィラはユアの震える右手に、そっとキスをした。
​Good Boy.
​そのシンプルな報酬が、ユアの魂を揺さぶった。ウィラからのキス、そして「Good Boy」という褒め言葉。それは、彼が一生を通して求めてきた、**「 Dom からの無条件の承認」**だった。
​身体中に、薬では決して得られなかった、純粋な歓喜と安堵感が駆け巡る。ウィラの優しさと強さが、ユアの全身の細胞を愛で満たしていく。意識は、ウィラに支配される心地よさに溶け出し、周囲の音が遠ざかる。
​(これだ……僕が求めていたのは、これなんだ……!)
​恍惚と安堵の中で、ユアは涙を流した。これは悲しみの涙ではない。長年の渇きが満たされ、魂が救済された歓喜の涙だった。彼は、ウィラの膝に顔を埋め、ウィラのDom性に完全に身を委ねた。
​ウィラはユアの頭をゆっくりと撫で、その状態が健全なSubspaceであることを確認した。
​「よく頑張ったわ、ユア。私の元に来てくれてありがとう」
​彼女は、静かにセティに命じた。
​「セティ。準備は整った。ドレイクの訓練場を抑える。私のSubの魂を傷つけた代償を、彼らに支払わせる時よ」
​ウィラの瞳は、ユアを慈しむ光から、冷酷な正義の炎へと瞬時に変わった。

ユアが深いSubspaceの余韻に包まれ、静かな寝息を立てている頃、アジトの一室ではウィラ、フィオ、セティの三者が作戦会議を開いていた。
​「ドレイクはまだ、ユアが自分の訓練場に向かっていると信じているはずです。彼が木箱の紛失に気付き、激怒するのは時間の問題」セティが、魔界の地図に示されたドレイクの私設訓練場を指差しながら言った。「彼の弱点は、権力への執着と、自分こそが『真のDom』であるという歪んだ優越感です」
​フィオが端末を操作しながら付け加える。「訓練場は評議会から半ば公認の場所で、Dom性の強奪や虐待が常態化している。証拠を消される前に、ウィラが直接介入するしかない」
​ウィラは立ち上がった。その全身から放たれるDomの魔力は、先ほどユアを優しく包んでいた慈愛の光とは打って変わり、冷たく鋭利な鋼の刃のようだった。彼女の瞳は、ベリアル族の「法則の支配者」としての、絶対的な正義感に燃えていた。
​「ドレイクの目的は、ユアの身体だけでなく、ユアのSubとしての精神を完全に破壊することだった。その罪は、魔界のどんな法律をもってしても裁ききれない」ウィラは低く、揺るぎない声で宣言した。「私が、この魔界に蔓延る『虐待の法則』を書き換える」
​数分後。ウィラは、ユアが運べずに路地に放置した拘束具と鞭の木箱を、背中のマントの下に隠して、ドレイクの私設訓練場の入り口に立っていた。
​訓練場の中からは、複数のSubの悲鳴と、Domたちの下卑た笑い声が響いている。ウィラは一歩、敷居を踏み越えた。
​「おい、誰だ貴様は!」
​警備の悪魔が警戒する暇もなく、ウィラはベリアル族の瞬間移動能力で、最も広大な訓練室の中央に現れた。
​そこには、数人のDomがSubを痛めつける光景があった。そして、ウィラを見た瞬間、彼らは顔色を変えた。
​「ウィ、ウィラ様……!?なぜ、このような場所に……」
​「静かに」
​ウィラの声一つで、訓練場の喧騒が魔法のように止む。彼女の絶対的なDom性が、その場にいるすべてのDomとSubを沈黙させた。
​そして、部屋の奥から、怒りに顔を歪ませた男が現れた。ドレイクだ。彼は、ユアが消えたことと、道具の木箱がないことに気付いていた。
​「ウィラ。何のつもりだ?ここは私の訓練場だぞ。勝手にSubを回収したのだろう?あいつは評議会に登録された**『管理 Sub』**だぞ!」
​ドレイクは攻撃的なグレア(Domが放つ威圧の視線)を放った。それはユアをフラッシュバックさせていた強烈なものだったが、ウィラには微塵も効果がない。
​「管理 Sub?私には、ただの虐待の被害者に見えるわ」ウィラは冷笑した。
​「貴様!」
​ドレイクは激怒し、ウィラに突進しようとする。その瞬間、ウィラは隠し持っていた重い木箱を、ドレイクの足元に投げつけた。
​ガシャン!
​中から飛び散ったのは、ユアの体に痛みを刻んできた拘束具や鞭だった。ウィラは、それらをドレイクに指差す。
​「ユアは私のSubになった。そして、彼を傷つけた罪は、あなたに返上される」
​ウィラは自身のDom魔力を集中させ、ドレイクの体に触れることなく、彼の全身を鋼のように固く、屈辱的な姿勢で拘束した。ドレイクは、自分の体に対する制御を完全に失い、屈服させられた。
​「や、やめろ!ウィラ!貴様、この魔界の法則を……!」
​「法則?あなたが作り上げた法則は、**『偽りのDomが弱者を搾取するためのゴミ』**よ」
​ウィラはドレイクにゆっくりと近づくと、彼の Dom の核が宿る胸元に、冷たい指先で触れた。
​「私、ベリアル族のウィラ・クライムが、法則の支配者として宣言する」
​ウィラの言葉は、訓練場全体、さらには魔界のシステムにまで響き渡るような、絶対的な魔力の波動を伴っていた。
​「ドレイク、あなたとユアの間に存在したすべての契約は、『虐待』と『搾取』に基づいた無効なものであり、今、永久に消滅する」
​「あなたのDomとしての地位は剥奪される。そして、あなたの魔力と魂は、あなたが痛めつけた Sub たちへの贖罪のために、これから利用される」
​ウィラの指から放たれたベリアル族の浄化の魔力が、ドレイクの胸を貫通する。ドレイクは絶叫を上げ、彼のDomとしての威厳と力が、彼の体から急速に吸い出されていくのを感じた。
​彼は、自分がユアに課した苦痛を、何倍にもした屈辱的な形で味わった。そして、ウィラの冷酷な瞳を見て、初めて理解した。
​この女は、自分が知る魔界の Dom の誰よりも、強く、そして恐ろしい、真の支配者であることを。
​訓練場に残されたDomたちは、恐怖でウィラに平伏した。ウィラは、自由になったSubたちに背を向けたまま、最後のコマンドを与えた。
​「自由になったSubたちよ。あなたはもう、怯える必要はない。あなたの Dom は、悪を許さない」
​ウィラは、ドレイクが意識を失い倒れたのを確認すると、すぐにその場から姿を消した。
​彼女が目指すのは、アジト。最も愛すべき、彼女の Sub の元だった。
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