7 / 33
第1章「失敗」⑥
しおりを挟む
芽以を見送ると、僕は裏に引っ込むことにした。とはいえ、楽屋に入るのは嫌だったので、楽屋のもっと奥にある裏口から出たところにある喫煙所に行く。ちょうど良いブロックがあって、僕はそこに腰を落ち着けた。禁煙ブームと言われていながら、この業界には喫煙者が少なくない。とはいえ、中で吸うには肩身が狭い世間体でこうして裏口に喫煙所を設けるライブハウスが増えた。僕は禁煙ブームとは別に大学時代に禁煙して以来、もう十数年吸ってはいない。どうして吸い始めたのかも忘れてしまったが、どうして止めてしまったのかも忘れてしまった。どうせ好きな女の子が煙草嫌いだった、っていう類のものだろう。思い出す価値すらない。
しかし、こうして何もせずにただ座っているとさっきの出来事を思い出してしまう。思い出すのも気分が悪い出来事だった。できれば思い出したくはない、こんなことならいざという時のために煙草を1箱でも用意しておくんだった。仕方がないから気分は悪いが、さっきの出来事を振り返ってみる。真奈は芽以に僕に関わるとロクなことがない、と言った。真奈は僕と関わったことでロクでもない目に遭ったということだろうか。はっきりとは覚えていないけれど、真奈と明確な喧嘩をしたことはなかったし、真奈と別れた後も僕たちは何もなかった。何もないまま僕は故郷を飛び出してきた。それ以降の真奈の消息は分かっていなかったし、僕が関わっていたとしても直接的ではない。それを僕のせいにされても困る。
だから思い返してみても、言い争いになった、と言えば別れ話の時くらいしかない。でも、あれもほぼ一方的に別れを切り出されただけで、何も答えてはくれなかった。一体僕は真奈に何をしてしまったのだろう。そんなことを考えているうちに物販を終えた芽以が裏口にやってきた。やっぱりここだと思いました、と物販道具の入ったトランクケースを預かり、いつものところにお願いしますね、と言い残すと、芽以は着替えのために楽屋に戻っていった。
トランクケースを手に主催者や他の事務所の人に挨拶をしながら僕はライブハウスを後にした。駐車場に戻り車に乗り込むとライブハウス近くの開けたスペースに車を寄せる。しばらくすると芽以が衣装を手にドアを叩き、車に乗り込んでくる。これから僕は芽以の住む登戸まで彼女を送っていく。芽以は慣れた手つきで乗り込むと、いつものところまでお願いします、と前を向いたまま言った。あいよ、と簡単な返事の後、車を出す。神宮通りから国道246号線に入る。心なしか国道の渋滞もいつもより緩和されているように感じる。まだまだ自粛ムードなのか、渋滞にいらいらせずに済むのは好都合だった。芽以はスマホを片手に写真とにらめっこをしている。SNSに載せる写真を選んでいるのだ。大抵これで移動時間の多くは費やされる。2人で移動しているからといって、特に会話をするというわけではない。到着間際に次のスケジュールの確認やらなんやらをちょっと話して終わりだ。正直これは助かる。いくら所属タレントと事務所の人間とはいえ、年齢が親子ほど離れているというわけでもなく、ましてや成人した女性が相手である。変に仲良くなりすぎて距離感が近くなりすぎてはいけない。恋人だの愛人だの疑われることは絶対にあってはならない。もちろん同じ事務所なのである程度の信頼関係は必要なのだけれど、それ以上は必要ない。そういう意味でも僕は始め、芽以を車で送っていくのには抵抗があった。けれど、その辺は芽以の方がずっと弁えていて、僕たちはあくまで仕事上のパートナーであり、それ以上ではない関係が維持できている。芽以のファンも最初は僕に警戒をしていたようだけれど、芽以が「社長とは車の中で特に会話をしない」と積極的に言っているようで、今では話のネタにされることはあっても警戒されることはない。助かる限りだ。
けれどこの日は写真選びもそこそこに芽以はスマホをカバンにしまった。まだ目的地までは30分以上かかりそうである。
「今日のことなんですけど」
芽以は先ほどの真奈との出来事を切り出した。
「ごめんね、変なことになって、
あれから大丈夫だった?」
「はい、『昔の女性が文句言いに来たらしいよ』
って言ったら、みんな『ありえるー』とか
『ぽいわー』って笑ってました」
その時の光景が目に浮かぶ。きっと、あーあいつならあり得るわーくらいのテンションで笑っていたに違いない。正直僕の何を知ってるんだ、と思うけれど、今日に限ってはそれでうまく切り抜けられたので許すことにする。
「それで、ほら、『詳しいことは後で話す』って」
そっか、そんなことも言ったなと思って、うまくはぐらかせば良かったと後悔したけれど、芽以の物販をあと少しで台無しにするところだったこともあって、僕は正直に芽以に話すことにした。彼女が高校時代に付き合っていた恋人だったこと。うまくいっていると思っていたけれど、高3のある日突然振られてしまったこと。それから僕は地元を離れて一度も会っていなかったこと。昨日急に高校時代の友人から連絡が来て、同窓会に誘われたこと。その時に亡くなった同級生がいたけれども、すっかり忘れてしまっていること。同級生が真奈に連絡をして今日来てしまったこと。真奈は最後に僕に同窓会へ出席しないように言ったこと。ここまで話す必要はなかったかもしれないけれど、普段芽以と話さないこともあって、何故か饒舌になっていた。芽以もうんうん、と言いながら聞いていた。
「同窓会に出るな、ってどういうことでしょうね」
一通り聞いた後で、芽以は首をひねりながら言った。その佇まいはさながら若き名探偵のようである。
「さあ・・・オレにはなんとも」
ですよね、と言って芽以が笑う。歌っているときの芽以も良いけれど、こうして無邪気に笑っている芽以も良い。長年のファンが少なくないのも納得である。
「にしても、望月さんの忘れ具合も大概ですね。
亡くなった同級生を忘れるなんて」
そうなんだよな、と運転をしながらため息をつく。
「そんな具合であの彼女さんに何かしたのも
忘れてるんじゃないですか」
若き名探偵は現状で最適解と思われる答えを出す。僕も覚えてこそいないけれど、それが正解のような気がしてならない。忘れてるんだよな、きっと、とちょっと重く言ってしまったので、芽以はそれ以上追い打ちをかけてはこなかった。まずかった、と思った。急に車内を沈黙が支配する。これまではそれが当たり前だったのに、これまでとの落差でこの沈黙が急に重苦しいものに感じる。何か話さないと、と巡らせて、忘れっぽいといえばさ、と言って一昨日の駅ビルでの出来事を話した。急に久しぶりと言われたけれど、誰だか分からないんだよね、と。芽以もその重苦しさを感じていたのか、すぐに相槌を打ってきた。それから車内はその時の女性の話で持ち切りだった。サービスまでしてもらって人違いですかね、と芽以が言う。でも20年前にはオレは地元にいたしな、と返す。それからクイズのように、この時の人じゃないですか? と芽以が言ってくれるけれど、僕はとうとう最後までその時の女性が誰なのかを導き出すことができなかった。でもそれで良かった。答えを出すために会話をしていたんじゃなくて、沈黙しないために話をしていたのだから。
府中街道に出て、多摩川沿いを進み、いよいよ着くぞというところまで話は続いた。それ以降沈黙になることはなかった。最後に次のスケジュールを確認する。次のライブは20日。同窓会の日だ。このライブは外せないものだった。あ、ここでいいですよ、と言って芽以はいつもの場所で降りようとする。車を寄せていると、
「同窓会、行った方がいいですよ」
と芽以が急に真剣な顔で言った。いや、ライブはどうするの、と言うと、何とかしますからと笑った。
「『行くな』って言われたら行かなきゃでしょ」
とんでもない論理だとは思ったけれど、確かに僕も真奈に「行くな」と言われて、何としても行ってやろうという気持ちになったことは間違いない。それに、と芽以は続ける。
「『失敗だった』って。あの言葉の意味、
私も知りたいんですよ。何となくですけど、
同窓会に行けば分かる予感がします」
何を根拠に言うのかは分からなかったけれど、芽以は妙に自信満々だった。
「もしあれが単に私に対しての言葉だったら
文句を言いたいんで教えてくださいね」
芽以はそう言い残して自宅へと向かって消えていった。
しかし、こうして何もせずにただ座っているとさっきの出来事を思い出してしまう。思い出すのも気分が悪い出来事だった。できれば思い出したくはない、こんなことならいざという時のために煙草を1箱でも用意しておくんだった。仕方がないから気分は悪いが、さっきの出来事を振り返ってみる。真奈は芽以に僕に関わるとロクなことがない、と言った。真奈は僕と関わったことでロクでもない目に遭ったということだろうか。はっきりとは覚えていないけれど、真奈と明確な喧嘩をしたことはなかったし、真奈と別れた後も僕たちは何もなかった。何もないまま僕は故郷を飛び出してきた。それ以降の真奈の消息は分かっていなかったし、僕が関わっていたとしても直接的ではない。それを僕のせいにされても困る。
だから思い返してみても、言い争いになった、と言えば別れ話の時くらいしかない。でも、あれもほぼ一方的に別れを切り出されただけで、何も答えてはくれなかった。一体僕は真奈に何をしてしまったのだろう。そんなことを考えているうちに物販を終えた芽以が裏口にやってきた。やっぱりここだと思いました、と物販道具の入ったトランクケースを預かり、いつものところにお願いしますね、と言い残すと、芽以は着替えのために楽屋に戻っていった。
トランクケースを手に主催者や他の事務所の人に挨拶をしながら僕はライブハウスを後にした。駐車場に戻り車に乗り込むとライブハウス近くの開けたスペースに車を寄せる。しばらくすると芽以が衣装を手にドアを叩き、車に乗り込んでくる。これから僕は芽以の住む登戸まで彼女を送っていく。芽以は慣れた手つきで乗り込むと、いつものところまでお願いします、と前を向いたまま言った。あいよ、と簡単な返事の後、車を出す。神宮通りから国道246号線に入る。心なしか国道の渋滞もいつもより緩和されているように感じる。まだまだ自粛ムードなのか、渋滞にいらいらせずに済むのは好都合だった。芽以はスマホを片手に写真とにらめっこをしている。SNSに載せる写真を選んでいるのだ。大抵これで移動時間の多くは費やされる。2人で移動しているからといって、特に会話をするというわけではない。到着間際に次のスケジュールの確認やらなんやらをちょっと話して終わりだ。正直これは助かる。いくら所属タレントと事務所の人間とはいえ、年齢が親子ほど離れているというわけでもなく、ましてや成人した女性が相手である。変に仲良くなりすぎて距離感が近くなりすぎてはいけない。恋人だの愛人だの疑われることは絶対にあってはならない。もちろん同じ事務所なのである程度の信頼関係は必要なのだけれど、それ以上は必要ない。そういう意味でも僕は始め、芽以を車で送っていくのには抵抗があった。けれど、その辺は芽以の方がずっと弁えていて、僕たちはあくまで仕事上のパートナーであり、それ以上ではない関係が維持できている。芽以のファンも最初は僕に警戒をしていたようだけれど、芽以が「社長とは車の中で特に会話をしない」と積極的に言っているようで、今では話のネタにされることはあっても警戒されることはない。助かる限りだ。
けれどこの日は写真選びもそこそこに芽以はスマホをカバンにしまった。まだ目的地までは30分以上かかりそうである。
「今日のことなんですけど」
芽以は先ほどの真奈との出来事を切り出した。
「ごめんね、変なことになって、
あれから大丈夫だった?」
「はい、『昔の女性が文句言いに来たらしいよ』
って言ったら、みんな『ありえるー』とか
『ぽいわー』って笑ってました」
その時の光景が目に浮かぶ。きっと、あーあいつならあり得るわーくらいのテンションで笑っていたに違いない。正直僕の何を知ってるんだ、と思うけれど、今日に限ってはそれでうまく切り抜けられたので許すことにする。
「それで、ほら、『詳しいことは後で話す』って」
そっか、そんなことも言ったなと思って、うまくはぐらかせば良かったと後悔したけれど、芽以の物販をあと少しで台無しにするところだったこともあって、僕は正直に芽以に話すことにした。彼女が高校時代に付き合っていた恋人だったこと。うまくいっていると思っていたけれど、高3のある日突然振られてしまったこと。それから僕は地元を離れて一度も会っていなかったこと。昨日急に高校時代の友人から連絡が来て、同窓会に誘われたこと。その時に亡くなった同級生がいたけれども、すっかり忘れてしまっていること。同級生が真奈に連絡をして今日来てしまったこと。真奈は最後に僕に同窓会へ出席しないように言ったこと。ここまで話す必要はなかったかもしれないけれど、普段芽以と話さないこともあって、何故か饒舌になっていた。芽以もうんうん、と言いながら聞いていた。
「同窓会に出るな、ってどういうことでしょうね」
一通り聞いた後で、芽以は首をひねりながら言った。その佇まいはさながら若き名探偵のようである。
「さあ・・・オレにはなんとも」
ですよね、と言って芽以が笑う。歌っているときの芽以も良いけれど、こうして無邪気に笑っている芽以も良い。長年のファンが少なくないのも納得である。
「にしても、望月さんの忘れ具合も大概ですね。
亡くなった同級生を忘れるなんて」
そうなんだよな、と運転をしながらため息をつく。
「そんな具合であの彼女さんに何かしたのも
忘れてるんじゃないですか」
若き名探偵は現状で最適解と思われる答えを出す。僕も覚えてこそいないけれど、それが正解のような気がしてならない。忘れてるんだよな、きっと、とちょっと重く言ってしまったので、芽以はそれ以上追い打ちをかけてはこなかった。まずかった、と思った。急に車内を沈黙が支配する。これまではそれが当たり前だったのに、これまでとの落差でこの沈黙が急に重苦しいものに感じる。何か話さないと、と巡らせて、忘れっぽいといえばさ、と言って一昨日の駅ビルでの出来事を話した。急に久しぶりと言われたけれど、誰だか分からないんだよね、と。芽以もその重苦しさを感じていたのか、すぐに相槌を打ってきた。それから車内はその時の女性の話で持ち切りだった。サービスまでしてもらって人違いですかね、と芽以が言う。でも20年前にはオレは地元にいたしな、と返す。それからクイズのように、この時の人じゃないですか? と芽以が言ってくれるけれど、僕はとうとう最後までその時の女性が誰なのかを導き出すことができなかった。でもそれで良かった。答えを出すために会話をしていたんじゃなくて、沈黙しないために話をしていたのだから。
府中街道に出て、多摩川沿いを進み、いよいよ着くぞというところまで話は続いた。それ以降沈黙になることはなかった。最後に次のスケジュールを確認する。次のライブは20日。同窓会の日だ。このライブは外せないものだった。あ、ここでいいですよ、と言って芽以はいつもの場所で降りようとする。車を寄せていると、
「同窓会、行った方がいいですよ」
と芽以が急に真剣な顔で言った。いや、ライブはどうするの、と言うと、何とかしますからと笑った。
「『行くな』って言われたら行かなきゃでしょ」
とんでもない論理だとは思ったけれど、確かに僕も真奈に「行くな」と言われて、何としても行ってやろうという気持ちになったことは間違いない。それに、と芽以は続ける。
「『失敗だった』って。あの言葉の意味、
私も知りたいんですよ。何となくですけど、
同窓会に行けば分かる予感がします」
何を根拠に言うのかは分からなかったけれど、芽以は妙に自信満々だった。
「もしあれが単に私に対しての言葉だったら
文句を言いたいんで教えてくださいね」
芽以はそう言い残して自宅へと向かって消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています
鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」
そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。
お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。
「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」
あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。
「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。
戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」
――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。
彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。
「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」
「……本当に、離婚したいのか?」
最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。
やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる