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第4章「好きじゃない」④
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「あなた、望月君の高校時代って知ってる? あなたの話を聞く限り、前に出ることが嫌いで、自信も執着も無い世捨て人みたいな人に今はなっているみたいだけれど、高校時代はそれはもう自信家だったんだから」
「あー、もちろん出たがりではなかったのかもしれない。いや、そうだったのかな。高校内では目立たないようにしてたみたいだけれど、高校では結構名が通ってたみたい。地元の高校演劇界ではちょっとした有名人だったのよ。引退した後も大会に行けば握手を求められてたしね。そういえば今も演劇には拘りがあるんでしたっけ。多分、それは当時の名残ね」
「私はそんな彼のことを最初はすごく嫌な奴と思っていたわ。私? 私は演劇部じゃなくて軟式テニス部よ。運動部と文化部では部室が違う場所にあるんだけど、何故か演劇部と軟式テニス部は同じ場所にあったのよ。校舎脇にある立体駐輪場の2階ね。確か他には・・・地歴部だったかしら、他にもあった気がするけれど・・・まぁ活動しているのはうちと演劇部くらいだったわ。普段、演劇部は教室割り振りされてるし、うちも活動はコートだから会うことはないんだけど、休日になるとね、教室が使えないから部室前の駐輪スペースで練習するのよ。全面使ってやるものだから、道具の出し入れの時に邪魔で邪魔で。だからね、私、言いに言ったのよ。『道具の出し入れの時は道を空けて』って」
「そしたらね、『気をつける』って素っ気なく言ったのよ。素っ気ないのは気になったけれど、案外素直に聞くものねと思ったわ。でもね、それから、ほんの少しだけの道ができたのよ。本当にほんのちょっとよ。ボールを入れたカゴがギリギリ通るくらいの。もう私頭に来て、文句言ってやろうと思ったら、こっちが言う前に凄い顔で私を見るのよ」
「まるで『道を空けたんだからいいだろ』って言わんがごとくだったわ。それから『演出の邪魔をするな』って顔をするものだから、私はそれからしばらく嫌な奴としてクラスでも無視していたわ。部活の時の態度も変わらないまま。態度が大きかったって話はさっきした通りよ」
「後で聞いた話だと、なんでも1年生の時に書いた脚本が話題になったらしくて、当時は調子に乗っていたって自分でも言っていたわ。私にしてみたら、それを話している時にも十分調子に乗っていたように見えたけどね」
「2年生になってクラスが離れてからは、いよいよ部室前でしか見なくなったわね。クラスで見なくて良いってなったから清々したわ。でもね、それからすぐに軟式テニス部内で噂になったのよ、『あの望月に彼女が出来たらしい』って」
「私、どんな物好きなんだろうって調べてみたら、それが緑川恵美、そう恵美だったの」
「恵美は帰宅部だったから、時々演劇部の練習を観に来てたわ。ずっと見ていたわけじゃないから詳しくは知らないけれど、練習を黙って観ているだけ。練習中に話しているところは見たことないわね。黙って駐輪場の端に座っていたわ」
「あんな男の何処がいいんだろう、と思って、ある日私は恵美に話しかけた。それが最初。『ねぇ、どうして彼と付き合っているの?』って。今思えば失礼な質問よね。でも、恵美はクスクス笑って、『そう?』って言ったの。それから望月君の良いところを言ってくれたわ。脚本のことは何か言ってた気がする。他にもつらつらと色々言ってたけれど・・・ごめんなさい、あまり覚えてないわ」
「それから私たちは一緒に話したり遊んだりするようになった。恵美が話すのはいつも彼のことばかり。何処に行って、何を話して、どんな喧嘩をして・・・ていうね。正直、望月君のことはどうでも良かったわ。あの変な奴を好きな恵美のことが気になって仕方がなかったのよ。恵美の話す望月君は私の知るのとは全然違っていて、それは面白かったけどね」
「お好み焼き屋の話もクレープ店の話も、もともとは恵美から聞いた話よ」
「夏休みに入ったばかりの頃、恵美は入院することになった。膝が痛いってずっと言ってたから、1回病院に行ったら、って言ったの。筋肉痛かもとは言ってたけれど、時間が出来行くって言うから、夏休みに行ったのね。私は何も知らなかったわ。学校が始まってから恵美が休んでいることを知った。恵美に電話しても出ないし、先生も体調不良としか言わないし。恵美から連絡が来たのはその後、もう手術も終わってからだったわ。私、慌てて病院に行ったの。恵美は静かにベットに座っていたわ。病名は行ってくれなかったけれど、もう既に治療が進んでいたみたい。夏なのにニット帽を被っていたから、私はピンと来たわ。ひどい病気なんだって」
「恵美は、しばらく入院しなきゃいけないから、私に頼みたいことがある、って。そのために私を呼んだみたい。私は病気のことがショックで、二つ返事でOKした。私にできることがあれば、何でも言って、って」
「恵美はね、私に学校での望月君のことを観察して報告してほしい、って頼んだわ。望月君はここには来ないの? って言ったら、『たまに来る』って。それならその時に話せばいいじゃない、言ったの。そしたら『浮気しちゃうかもしれないから』って」
「私は望月君に限ってそれはないって思ったわ。学校でも全然モテなかったもの。でも、恵美はね、大真面目に言うのよ。『望月君の才能は本物よ、真奈ちゃんは知らないかもしれないけれど、他の高校には彼のファンクラブも出来たほどなの。きっとうちの高校でも望月君は気づかれるわ』って」
「私はにわかには信じられなかったけれど、それで気が済むなら良いかと思って了解した。次の日から私は彼を見張ることにしたの。恵美には、くれぐれも自分が頼んだことがバレないようにって釘を刺されたから、最初は様子見程度だったけど」
「そしたらしばらくしないうちに望月君が脚本で賞を獲って全校で表彰されたのよ。そう、さっき話した表彰はそれね。恵美の言った通りになったものだから、私、驚いちゃって。『そんなに凄い人なの?』って思って、それから思い切って練習中の彼に話しかけたの。そしたら『青山さんも脚本書きたいの?』って。もう、絶対にそんなことあるはずないじゃない。演劇バカっていう感じだったわ」
「賞を獲って校内で有名になったけれど、恵美の言うような展開にはならなかったわ。モテることはなかったわね。むしろ、ちょっと変な人、って思われてたかもしれない。恵美も想定外って笑ってたわ。けれど、確かに恵美が言うように望月君は面白い人だった。脚本もあの望月君からは想像もできないくらいに繊細なものだったわ。練習も何回か観たんだけど、拘り方が半端じゃなかった。台詞の言い回しはもちろん、間の取り方1つにも意図があった。それでいて、役者にそれを押し付けるというよりは、それを何度も役者と話し合いながら、自然とキャラクターとして出来るように構築していく感じね。初めて恵美の言うことが少しわかったような気がしたわ。その頃から、私は役割でなくても好きでお芝居を観に行くようになったわ。大袈裟に言うと、いちファンとしてとでも言うのかしら」
「いや、それと恋愛の好きとは違うからね、言っておくけど」
「そんなことも含めて望月君のことを報告すると、恵美はすごく喜んでいたわ。でもね、恵美はどんどん体調が悪くなっていったの。詳しくは言わないんだけど、どんどん痩せていっていたし、少し話すと疲れて横になっちゃうの。回復していないことはわかったわ」
「そして、遂に冬も本番になった頃、私は恵美から次のお願いをされたの」
「まず恵美は私に言ったわ『私はもう治ることはないし、恐らくもうすぐ死んでしまう』って」
「それは正直驚かなかったわ。さっきも言った通り、恵美が重病なことは何となくわかっていたし、回復していないことも気づいていた。それでもショックではあったけどね。まだ実感が無かったのよ、近しい人がいなくなるってことが」
「私は、『望月君は知っているの?』と訊いた。彼女は、言ってないし、言うつもりもないって言った、そして『さっき、彼とは別れた』って」
「私はそっちの方が驚きだった、何で、って矢継ぎ早に質問したわ。けれど、彼女は笑うばかりだった。『だって私がいなくなったら、私を忘れてほしいんだもん』って」
「そして彼女は私に頭を下げて言ったわ」
「『私が死んだら、望月君と付き合ってほしいの、そして、望月君の中から、私を完全に消してほしいの』」
「あー、もちろん出たがりではなかったのかもしれない。いや、そうだったのかな。高校内では目立たないようにしてたみたいだけれど、高校では結構名が通ってたみたい。地元の高校演劇界ではちょっとした有名人だったのよ。引退した後も大会に行けば握手を求められてたしね。そういえば今も演劇には拘りがあるんでしたっけ。多分、それは当時の名残ね」
「私はそんな彼のことを最初はすごく嫌な奴と思っていたわ。私? 私は演劇部じゃなくて軟式テニス部よ。運動部と文化部では部室が違う場所にあるんだけど、何故か演劇部と軟式テニス部は同じ場所にあったのよ。校舎脇にある立体駐輪場の2階ね。確か他には・・・地歴部だったかしら、他にもあった気がするけれど・・・まぁ活動しているのはうちと演劇部くらいだったわ。普段、演劇部は教室割り振りされてるし、うちも活動はコートだから会うことはないんだけど、休日になるとね、教室が使えないから部室前の駐輪スペースで練習するのよ。全面使ってやるものだから、道具の出し入れの時に邪魔で邪魔で。だからね、私、言いに言ったのよ。『道具の出し入れの時は道を空けて』って」
「そしたらね、『気をつける』って素っ気なく言ったのよ。素っ気ないのは気になったけれど、案外素直に聞くものねと思ったわ。でもね、それから、ほんの少しだけの道ができたのよ。本当にほんのちょっとよ。ボールを入れたカゴがギリギリ通るくらいの。もう私頭に来て、文句言ってやろうと思ったら、こっちが言う前に凄い顔で私を見るのよ」
「まるで『道を空けたんだからいいだろ』って言わんがごとくだったわ。それから『演出の邪魔をするな』って顔をするものだから、私はそれからしばらく嫌な奴としてクラスでも無視していたわ。部活の時の態度も変わらないまま。態度が大きかったって話はさっきした通りよ」
「後で聞いた話だと、なんでも1年生の時に書いた脚本が話題になったらしくて、当時は調子に乗っていたって自分でも言っていたわ。私にしてみたら、それを話している時にも十分調子に乗っていたように見えたけどね」
「2年生になってクラスが離れてからは、いよいよ部室前でしか見なくなったわね。クラスで見なくて良いってなったから清々したわ。でもね、それからすぐに軟式テニス部内で噂になったのよ、『あの望月に彼女が出来たらしい』って」
「私、どんな物好きなんだろうって調べてみたら、それが緑川恵美、そう恵美だったの」
「恵美は帰宅部だったから、時々演劇部の練習を観に来てたわ。ずっと見ていたわけじゃないから詳しくは知らないけれど、練習を黙って観ているだけ。練習中に話しているところは見たことないわね。黙って駐輪場の端に座っていたわ」
「あんな男の何処がいいんだろう、と思って、ある日私は恵美に話しかけた。それが最初。『ねぇ、どうして彼と付き合っているの?』って。今思えば失礼な質問よね。でも、恵美はクスクス笑って、『そう?』って言ったの。それから望月君の良いところを言ってくれたわ。脚本のことは何か言ってた気がする。他にもつらつらと色々言ってたけれど・・・ごめんなさい、あまり覚えてないわ」
「それから私たちは一緒に話したり遊んだりするようになった。恵美が話すのはいつも彼のことばかり。何処に行って、何を話して、どんな喧嘩をして・・・ていうね。正直、望月君のことはどうでも良かったわ。あの変な奴を好きな恵美のことが気になって仕方がなかったのよ。恵美の話す望月君は私の知るのとは全然違っていて、それは面白かったけどね」
「お好み焼き屋の話もクレープ店の話も、もともとは恵美から聞いた話よ」
「夏休みに入ったばかりの頃、恵美は入院することになった。膝が痛いってずっと言ってたから、1回病院に行ったら、って言ったの。筋肉痛かもとは言ってたけれど、時間が出来行くって言うから、夏休みに行ったのね。私は何も知らなかったわ。学校が始まってから恵美が休んでいることを知った。恵美に電話しても出ないし、先生も体調不良としか言わないし。恵美から連絡が来たのはその後、もう手術も終わってからだったわ。私、慌てて病院に行ったの。恵美は静かにベットに座っていたわ。病名は行ってくれなかったけれど、もう既に治療が進んでいたみたい。夏なのにニット帽を被っていたから、私はピンと来たわ。ひどい病気なんだって」
「恵美は、しばらく入院しなきゃいけないから、私に頼みたいことがある、って。そのために私を呼んだみたい。私は病気のことがショックで、二つ返事でOKした。私にできることがあれば、何でも言って、って」
「恵美はね、私に学校での望月君のことを観察して報告してほしい、って頼んだわ。望月君はここには来ないの? って言ったら、『たまに来る』って。それならその時に話せばいいじゃない、言ったの。そしたら『浮気しちゃうかもしれないから』って」
「私は望月君に限ってそれはないって思ったわ。学校でも全然モテなかったもの。でも、恵美はね、大真面目に言うのよ。『望月君の才能は本物よ、真奈ちゃんは知らないかもしれないけれど、他の高校には彼のファンクラブも出来たほどなの。きっとうちの高校でも望月君は気づかれるわ』って」
「私はにわかには信じられなかったけれど、それで気が済むなら良いかと思って了解した。次の日から私は彼を見張ることにしたの。恵美には、くれぐれも自分が頼んだことがバレないようにって釘を刺されたから、最初は様子見程度だったけど」
「そしたらしばらくしないうちに望月君が脚本で賞を獲って全校で表彰されたのよ。そう、さっき話した表彰はそれね。恵美の言った通りになったものだから、私、驚いちゃって。『そんなに凄い人なの?』って思って、それから思い切って練習中の彼に話しかけたの。そしたら『青山さんも脚本書きたいの?』って。もう、絶対にそんなことあるはずないじゃない。演劇バカっていう感じだったわ」
「賞を獲って校内で有名になったけれど、恵美の言うような展開にはならなかったわ。モテることはなかったわね。むしろ、ちょっと変な人、って思われてたかもしれない。恵美も想定外って笑ってたわ。けれど、確かに恵美が言うように望月君は面白い人だった。脚本もあの望月君からは想像もできないくらいに繊細なものだったわ。練習も何回か観たんだけど、拘り方が半端じゃなかった。台詞の言い回しはもちろん、間の取り方1つにも意図があった。それでいて、役者にそれを押し付けるというよりは、それを何度も役者と話し合いながら、自然とキャラクターとして出来るように構築していく感じね。初めて恵美の言うことが少しわかったような気がしたわ。その頃から、私は役割でなくても好きでお芝居を観に行くようになったわ。大袈裟に言うと、いちファンとしてとでも言うのかしら」
「いや、それと恋愛の好きとは違うからね、言っておくけど」
「そんなことも含めて望月君のことを報告すると、恵美はすごく喜んでいたわ。でもね、恵美はどんどん体調が悪くなっていったの。詳しくは言わないんだけど、どんどん痩せていっていたし、少し話すと疲れて横になっちゃうの。回復していないことはわかったわ」
「そして、遂に冬も本番になった頃、私は恵美から次のお願いをされたの」
「まず恵美は私に言ったわ『私はもう治ることはないし、恐らくもうすぐ死んでしまう』って」
「それは正直驚かなかったわ。さっきも言った通り、恵美が重病なことは何となくわかっていたし、回復していないことも気づいていた。それでもショックではあったけどね。まだ実感が無かったのよ、近しい人がいなくなるってことが」
「私は、『望月君は知っているの?』と訊いた。彼女は、言ってないし、言うつもりもないって言った、そして『さっき、彼とは別れた』って」
「私はそっちの方が驚きだった、何で、って矢継ぎ早に質問したわ。けれど、彼女は笑うばかりだった。『だって私がいなくなったら、私を忘れてほしいんだもん』って」
「そして彼女は私に頭を下げて言ったわ」
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