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第4章「好きじゃない」⑦
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配信ライブはやり方も含めてほとんど普段と変わらなかった。ライブハウスに行くと、岡村さんから預かってもらっていた衣装を受け取る。どうやら私を目的に電子チケットを買った人が結構いたらしく、岡村さんからお礼を言われた。前回はライブハウスの使用料が払えるか心配だよ、と冗談まじりの中に焦りの色が見えたけれど、今日はこの間より顔が穏やかに見えた。それなりに見通しが立ったのか、それとも覚悟を決めたのか、私には知る由もなかった。それから私はセットリストをシートに書き込む。ここまでも同じ。特に意識せずに書き込もうとしたけれど、ふと、配信だと音響や照明の感じをそれ用に変えた方が良いかもしれない、と思った。音響はリハがあるから、その時に微調整できるけれど、照明は予め相談をしておいた方が良いかもしれない。私は岡村さんに訊いて照明担当のスタッフさんのところへ連れて行ってもらった。こうして照明スタッフの人に相談をしに行くのは初めてだった。普段は曲の感じと色と強さを指定したら、それに合わせて良い具合に仕上げてくれていた。それを当たり前のように感じていたのかもしれない。もちろん感謝がないわけではなかった。ただ馴染みのライブハウスで同じ曲を何度も歌っているうちに、こちらが言わなくてもわかってくれているだろう、という気持ちはあったかもしれない。照明スタッフさんは若い女性だった。勝手に男の人だと思っていたので少し面食らったけれど、思う存分質問することができた。当たり前だけれど、照明を当てる場所ひとつで印象が大きく変わるらしかった。ライブハウス内で観るのであれば、広角的に見えることが前提になるけれど、後方の定点カメラと前方のカメラの2台を使用するらしく、それに合わせた照明づくりが必要だ、と言われた。顔をしっかりと見せるなら、照明は舞台の前方から。逆に顔をぼやかしたい、敢えて見せないのであれば、舞台の後方から。サスを使う方が便利だけれど、サスは立つ位置が少しずれるだけで照明の当たりが大きく変わってしまう。確実に見せたいなら、ピンスポの方が良いのではないか。色々な話を聞きながら、私は自分の曲の具合を説明して、調整していった。今回は3曲ともミディアムかバラードだったので、寒色をベースにした。
岡村さんはその様子を興味深そうに見ていた。岡村さんが照明のことを知らないはずがなかったし、「今日はやけに熱心だね」と言っていたので、単に私の様子が珍しかったのかもしれない。後で望月さんに教える気なのだろう。
3曲の打ち合わせが終わると、私は深々と頭を下げてお礼を言った。2曲目の終わりから3曲目の終わりにかけて、敢えて顔を見せないような照明にしてもらった。歌詞を渡して、この部分からだんだん見えるようにしてほしいとお願いした。ここまで細かいお願いはなかなか珍しいものであることは承知していたけれど、快く引き受けてくれた。
「この曲、今まで聴いたことないわね」
と言われたので、私は、
「2,3曲目は新曲なんです」
と答えた。岡村さんが驚いて、
「その新曲って、この間のかい?」
と訊いてきたので、私は、そうです、と答えた。岡村さんはとても驚いていた。そんなに早く詞が仕上がったこともそうだし、こんなに早く披露するのにも驚いたようだった。
「望月は知ってるの?」
「いいえ、知りません」
と私があっけらかんと言ったのにも驚いていた。了解を取った方が良いんじゃないか、という真っ当なアドバイスも、私は大丈夫です、と言って跳ね除けた。
「望月さんには内緒にしたいんです。驚かしたいとか、そういうことじゃなくて、望月さんにもこのライブを通じて初めて訊いてもらいたいんです」
と言うと、岡村さんは、不思議がりながらも、私の熱意に、わかった、と了承してくれた。
打ち合わせが終わり、リハーサルまで終わると、私は楽屋でCD音源を聴きながら、歌詞の最終確認をしていた。本番では歌詞を見ながら歌うことができない。歌詞を確認しながら、この間のことを思い出していた。
-あなた、望月君のことが好きなのね-
そんなことなんて考えたことがなくて、言われて私はびっくりして、咄嗟に「違う」と答えた。その答え合わせはまだ出来ていない。考えたことのないものに答えなんてあるはずがなかった。それから一人になってゆっくりと考えてみた。多分、私は望月さんのことが嫌いじゃないと思う。これから一緒にいろ、と言われたらいることができるし、何かムカつくことをされても、数時間したら許せるかもしれない。というよりも修復不可能な裏切りをするイメージが望月さんには無い。言われたときも思ったけれど、これは「愛情」というよりは「信用」なんじゃないかって思う。私が望月さんのことを信用しているのは間違いがない。
けれど、じゃあ「愛情がないのか」と問われると、これはまた返答に困る。「信用」と「愛情」は両立できるものだからだ。「信用がある」ことが「愛情がない」ことの証拠にはならない。
結局、最後まで結論は出なかった。保留にするしかない。自分の気持ちは自分が一番分かりづらい。自分の気持ちほど言葉にできない。
そっか、だから自分の気持ちは歌詞にできないんだ。「好きに書いて良い」って望月さんから言われて、私は冗談めかして「歌詞書くの苦手なんです、やり方を教えてください」って訊いてみた。望月さんは「やり方なんてないよ」って言ってたけれど、「自分の気持ちを無理に言葉にしようとしないことかな」とアドバイスはくれた。聞いた時は、そんなアドバイスは役に立たないな、と失望した。そもそも自分の気持ちを歌詞にしなければ、何を歌詞にするというのか。その歌詞は嘘になるんじゃないか、と私は反論しかけるほどだった。
でも今ならわかる。言葉にできない自分の気持ちを「無理に」言葉にしても何処かで歪みが生じる。言葉には感情が乗る。言葉にすれば感情が生まれる。私はそれを歌わないといけない。答え合わせの結果、それが違うものだったとしても、一度言葉にしてしまったら、変えられない。間違ったことを歌い続けないといけない。そんなこと、心が保てるはずがない。私は望月さんの書く歌詞に乗った感情に合わせて歌っていた。だから上手くいってたんだ。
だとしたら、私は私のことを歌えない。けれど、誰かの気持ちを自分に置き換えて歌うことならできるかもしれない。私がいつもそうであるように。
望月さんのことを考えているうちに、歌詞の方向が決まってしまった。元々書こうとしているものは決めていたけれど、どうしても上手くいかなかった。これで出来る気がした。
そうして出来上がった歌詞を見て、私は改めて思った。やっぱり彼女は望月さんのことが好きだったんだって。レストランで大見得切ったことは間違ってなかったんだって。それは私の願望も含まれているかもしれない。それもまだ言葉にはできない。そのうちわかってくるものなのだろう。
私はステージに立つ。打ち合わせた通りの色が私を覆う。目の前には数人のスタッフさんと、前方でカメラを持った岡村さんしかいない。定点カメラを中心に目線を送るようリハで言われた通りにして歌う。変な感じ。私はこのレンズを通した向こうの人たちに向けて歌えているのだろうか。
実感のないまま1曲目を終えた。
ここから2曲は新曲だ。
今日のための新曲。
望月さんの記憶を取り戻す最初のトリガー
「残り2曲は初披露する新曲です。初めて作詞にチャレンジしました。この歌が届いてほしい人にきっと届くと信じて、歌います」
「聴いてください、『二目惚れ』」
記憶が戻った望月さんはどんな風なのだろう。変わってしまうのだろうか。それとも相変わらず世捨て人みたいな振る舞いをするのだろうか。私はこれからの新しい未来のことを考える。全てがわかった後で、残ったものと生まれたもので私たちは今日と明日を紡いでいく。私と望月さん。望月さんと彼女。誰かが誰かと何かを積み上げていく。それは誰にも、何にも邪魔をすることはできない。邪魔なんかさせない。今、私たちの状況を大きく変えているものにだって決して変えることができないんだ。
最後の1曲の前に私はもう一度強く語りかける。
「この歌が誰かの新しい未来を作っていくと信じて歌います。聴いてください」
『君が最後にいなくなった』
僕と君が紡いできたものは
幻だったのかもしれない
確かな日々も君の笑顔も
その手の暖かさも
実感はあるのに
目の前に浮かんでこないんだよ
君じゃない誰かのものになってしまいそう
流線形を帯びたみたい
つつがなく日々は流れたけれど
たとえどんなことを思い出したって
君のことを忘れられるわけないよ
上書きなんてさせやしない
そう言ったら君は信じてくれる?
君は何も言わずに
最後にいなくなった
私が君と紡いできたものは
幻なんかじゃ決してない
確かな日々も君の笑顔も
その手の暖かさも
離したくないのに
君の胸を離れていきそうなんだよ
私じゃない誰かの記憶になってしまうのに
流線形を帯びれない
まだあの日から進めないまま
たとえどんなことを思い出したって
私のことを忘れないでいてくれる?
上書きするつもりじゃなかった
そう言ったら君は信じてくれる
君が何か言う前に
最後にいなくなろう
「これまでの日々は
全部嘘だったんだ
バイバイ、ごめんね、大好きだった」
岡村さんはその様子を興味深そうに見ていた。岡村さんが照明のことを知らないはずがなかったし、「今日はやけに熱心だね」と言っていたので、単に私の様子が珍しかったのかもしれない。後で望月さんに教える気なのだろう。
3曲の打ち合わせが終わると、私は深々と頭を下げてお礼を言った。2曲目の終わりから3曲目の終わりにかけて、敢えて顔を見せないような照明にしてもらった。歌詞を渡して、この部分からだんだん見えるようにしてほしいとお願いした。ここまで細かいお願いはなかなか珍しいものであることは承知していたけれど、快く引き受けてくれた。
「この曲、今まで聴いたことないわね」
と言われたので、私は、
「2,3曲目は新曲なんです」
と答えた。岡村さんが驚いて、
「その新曲って、この間のかい?」
と訊いてきたので、私は、そうです、と答えた。岡村さんはとても驚いていた。そんなに早く詞が仕上がったこともそうだし、こんなに早く披露するのにも驚いたようだった。
「望月は知ってるの?」
「いいえ、知りません」
と私があっけらかんと言ったのにも驚いていた。了解を取った方が良いんじゃないか、という真っ当なアドバイスも、私は大丈夫です、と言って跳ね除けた。
「望月さんには内緒にしたいんです。驚かしたいとか、そういうことじゃなくて、望月さんにもこのライブを通じて初めて訊いてもらいたいんです」
と言うと、岡村さんは、不思議がりながらも、私の熱意に、わかった、と了承してくれた。
打ち合わせが終わり、リハーサルまで終わると、私は楽屋でCD音源を聴きながら、歌詞の最終確認をしていた。本番では歌詞を見ながら歌うことができない。歌詞を確認しながら、この間のことを思い出していた。
-あなた、望月君のことが好きなのね-
そんなことなんて考えたことがなくて、言われて私はびっくりして、咄嗟に「違う」と答えた。その答え合わせはまだ出来ていない。考えたことのないものに答えなんてあるはずがなかった。それから一人になってゆっくりと考えてみた。多分、私は望月さんのことが嫌いじゃないと思う。これから一緒にいろ、と言われたらいることができるし、何かムカつくことをされても、数時間したら許せるかもしれない。というよりも修復不可能な裏切りをするイメージが望月さんには無い。言われたときも思ったけれど、これは「愛情」というよりは「信用」なんじゃないかって思う。私が望月さんのことを信用しているのは間違いがない。
けれど、じゃあ「愛情がないのか」と問われると、これはまた返答に困る。「信用」と「愛情」は両立できるものだからだ。「信用がある」ことが「愛情がない」ことの証拠にはならない。
結局、最後まで結論は出なかった。保留にするしかない。自分の気持ちは自分が一番分かりづらい。自分の気持ちほど言葉にできない。
そっか、だから自分の気持ちは歌詞にできないんだ。「好きに書いて良い」って望月さんから言われて、私は冗談めかして「歌詞書くの苦手なんです、やり方を教えてください」って訊いてみた。望月さんは「やり方なんてないよ」って言ってたけれど、「自分の気持ちを無理に言葉にしようとしないことかな」とアドバイスはくれた。聞いた時は、そんなアドバイスは役に立たないな、と失望した。そもそも自分の気持ちを歌詞にしなければ、何を歌詞にするというのか。その歌詞は嘘になるんじゃないか、と私は反論しかけるほどだった。
でも今ならわかる。言葉にできない自分の気持ちを「無理に」言葉にしても何処かで歪みが生じる。言葉には感情が乗る。言葉にすれば感情が生まれる。私はそれを歌わないといけない。答え合わせの結果、それが違うものだったとしても、一度言葉にしてしまったら、変えられない。間違ったことを歌い続けないといけない。そんなこと、心が保てるはずがない。私は望月さんの書く歌詞に乗った感情に合わせて歌っていた。だから上手くいってたんだ。
だとしたら、私は私のことを歌えない。けれど、誰かの気持ちを自分に置き換えて歌うことならできるかもしれない。私がいつもそうであるように。
望月さんのことを考えているうちに、歌詞の方向が決まってしまった。元々書こうとしているものは決めていたけれど、どうしても上手くいかなかった。これで出来る気がした。
そうして出来上がった歌詞を見て、私は改めて思った。やっぱり彼女は望月さんのことが好きだったんだって。レストランで大見得切ったことは間違ってなかったんだって。それは私の願望も含まれているかもしれない。それもまだ言葉にはできない。そのうちわかってくるものなのだろう。
私はステージに立つ。打ち合わせた通りの色が私を覆う。目の前には数人のスタッフさんと、前方でカメラを持った岡村さんしかいない。定点カメラを中心に目線を送るようリハで言われた通りにして歌う。変な感じ。私はこのレンズを通した向こうの人たちに向けて歌えているのだろうか。
実感のないまま1曲目を終えた。
ここから2曲は新曲だ。
今日のための新曲。
望月さんの記憶を取り戻す最初のトリガー
「残り2曲は初披露する新曲です。初めて作詞にチャレンジしました。この歌が届いてほしい人にきっと届くと信じて、歌います」
「聴いてください、『二目惚れ』」
記憶が戻った望月さんはどんな風なのだろう。変わってしまうのだろうか。それとも相変わらず世捨て人みたいな振る舞いをするのだろうか。私はこれからの新しい未来のことを考える。全てがわかった後で、残ったものと生まれたもので私たちは今日と明日を紡いでいく。私と望月さん。望月さんと彼女。誰かが誰かと何かを積み上げていく。それは誰にも、何にも邪魔をすることはできない。邪魔なんかさせない。今、私たちの状況を大きく変えているものにだって決して変えることができないんだ。
最後の1曲の前に私はもう一度強く語りかける。
「この歌が誰かの新しい未来を作っていくと信じて歌います。聴いてください」
『君が最後にいなくなった』
僕と君が紡いできたものは
幻だったのかもしれない
確かな日々も君の笑顔も
その手の暖かさも
実感はあるのに
目の前に浮かんでこないんだよ
君じゃない誰かのものになってしまいそう
流線形を帯びたみたい
つつがなく日々は流れたけれど
たとえどんなことを思い出したって
君のことを忘れられるわけないよ
上書きなんてさせやしない
そう言ったら君は信じてくれる?
君は何も言わずに
最後にいなくなった
私が君と紡いできたものは
幻なんかじゃ決してない
確かな日々も君の笑顔も
その手の暖かさも
離したくないのに
君の胸を離れていきそうなんだよ
私じゃない誰かの記憶になってしまうのに
流線形を帯びれない
まだあの日から進めないまま
たとえどんなことを思い出したって
私のことを忘れないでいてくれる?
上書きするつもりじゃなかった
そう言ったら君は信じてくれる
君が何か言う前に
最後にいなくなろう
「これまでの日々は
全部嘘だったんだ
バイバイ、ごめんね、大好きだった」
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