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Epilogue.4(2007/12/24 Side.藤井香織)
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2007年12月24日
「クリスマスに呼び出してすみません」
「どうしても早く伝えたくて。えぇ、ようやくわかったんです。どうして先輩が小説という手段を取ったのか」
「ここから話すのは仮説です。全てに於いて確証はありません。けれど、色々な状況証拠や佑矢先輩、あなたの言葉を併せたら、これしかないと思いました」
「あれからたまたま朝美さんを見かけたんです。…いや、嘘をつきました。会いに行きました。とても綺麗な方ですね。私は朝美さんの昔を知りませんが、あんな人が学校にいたら好きになっても仕方ないと思います」
「朝美さん、佑矢さんの名前を出した途端にすごく機嫌が悪くなって、ほとんど話せませんでしたけど、これだけはわかりました。朝美さんは佑矢さんに少しも感謝なんかしていない。小説なんか出されて迷惑してる、って。人の過去を赤裸々に載せるなんて最低って言ってました。小説を読む限り、佑矢先輩が竹下さんのフリをして手紙を書いたことで記憶が戻ったのにですよ。直接書かれていなかったですけど」
「だから、私ちょっと悔しくなって言ってやったんです。『佑矢先輩のおかげで記憶が戻ったんじゃないんですか』って。私も都合良すぎですよね。小説にしたこと、私も怒ってたはずなのに。見事に棚上げしちゃいました」
「朝美さん、佑矢さんの手紙では断片的にしか記憶が戻らなかったみたいです。その後、篠塚准教授でしたっけ、あの論文を発表した人のお世話になって大まかに記憶を戻したそうです。だから佑矢先輩には感謝してないって。あの小説でむしろ思い出したくないことまで補完されて、それも迷惑だったって言ってました」
「驚かないんですね、まぁいいです。とにかくあの小説は朝美さんの為になっていなかった」
「先輩は昨日『朝美さんのためにしか行動しない』と言いました。これじゃ正反対です。佑矢先輩の頑張りは報われなかった」
「けれど本当にそうなのか、こんな単純なことなのか、と思いました。確かに先輩朝美さんのことになると後先考えずに突っ走るところがあります。小説でもそうでした。けれど、先輩ならあんな全員実名の小説をだせば、朝美さんに嫌われることくらい容易に想像出来たはずです」
「だから私はやはり、あの小説は佑矢先輩が何らかの目的で『朝美さんのために書いた』のだと思いました。何度も言いますが、嫌われたくないならば、小説にしなければ良いし、しても実名にする必要がありません」
「そう、これは実名が出てくる小説なんです。実名である以上、読む人はこれが実話だと思うでしょう。けれど、先輩は一貫してこれを『半自伝小説』、つまり『半分が実話』だと言い張りました」
「私はきっと訴えられた時の逃げに使う文句だと思っていました。私には何がフィクションかわからなかったですし。だから、私はあの話が全部実話という前提で考えていたんです」
「けれど、その前提が間違っているとしたら」
「あの小説にはフィクションの部分があるに違いない、そしてそこにきっと謎を解く鍵があるんだと」
「朝美さんにはもう訊けそうになかったので、私は図書館に向かいました。新聞記事です。まずは客観的事実を検証しました」
「朝美さんが事件に遭った記事…ほとんど書いてある通りでした。残念ながら詳細が書いてあるものが無かったので状況の検証はできません。1つだけ発見された場所が出ていたので地図で確認しました…まぁ新宿の外れ、なんですかね、小説にはそうありましたけど。入り組んだ路地の駐車場でした」
「違っていたのは竹下という人が捕まった記事です。小説にもあるように新聞の地方欄に1社だけありました。竹下という人は捕まったときに暴れて逃亡したところを捕まった、とありました」
「私はここで『おかしいな』と思いました」
「小説では店から出された時にはもう錯乱状態で、話すことはおろか、動くこともままならなかったはずです。逃亡できるとは思えません」
「どうしてそんな違いが生まれたのか」
「色々な断片がパズルになっていくのを感じました。この違いも私にはピースの1つでした。そのピースを繋いだ先に、1つの仮定が生まれました」
「私はそれを確かめるためにさくらさんに会いに行きました。えぇ、塾に行きましたよ」
「でもさくらさんは、あの日のことはほとんど話してくれませんでした。私が訊きたいことは2つでした。竹下という人は本当は話せたのか、話したとしたら何を話したのか」
「記事を見せたら、竹下という人が話せたことは認めてくれました。でも、何を話したのかまでは教えてくれませんでした」
「私の仮説の核心には辿り着けなかったものの、竹下という人が話せた、という事実だけで充分でした」
「先輩、あの日先輩は竹下という人と朝美さんのことについて話したんですよね。そうですね…たとえば、先輩は訊いたんじゃないですか、朝美さんが事件に遭ったことについて何か知らないか、と」
「先輩、汗をかいているじゃないですか、冬ですよ、熱でもあるんですか」
「そこで先輩は朝美さんについて知りたくなかったことを知った。そして先輩は掴みかかり、警察が呼ばれた。警察は薬物で追っていた竹下を捕まえた。それがあの事件です」
「ところで先輩は朝美さんの何を知ったのか。これはもう話した人にしかわかりません。竹下は捕まってしまったし、さくらさんは教えてくれませんでした。もちろん先輩も私に言うつもりはないんでしょう」
「だってそれが全ての原因なんですから」
「朝美さんが発見された時の場所、地図で確認して違和感を覚えたんです。普通人は逃げようとするときに、人に助けを求めようと大通りに出るんじゃないかと思うんです。私ならそうします」
「よく映画では裏路地に逃げ隠れしますが、それは自分にもやましいところがあって逃げなくてはいけない場合です。朝美さんは普通に警察にでも何でも逃げ込めるはずです」
「けれど朝美さんが逃げ込んでしまったのは入り組んだ先の駐車場です。もちろん必死で逃げて、そんなこと考える余裕がなかったのかもしれません。けれど、さすがに知らない土地で行き止まりのリスクのある裏路地なんて咄嗟でも行かないと思うんです」
「わかりません。本当に必死に逃げた結果かもしれません。けれど、あの准教授の論文、あの内容を思い出したんです」
「被験者はみんな私に近い年齢の女性でした。始めはその中に朝美さんがいるのかどうかわかりませんでした。けれどあの准教授と先輩に繋がりがあるとすれば、きっとあの被験者の中に朝美さんがいたんでしょう。記憶を失くした理由はそれぞれに様々でしたが、その中に性的暴行が原因という人がいました」
「先輩、朝美さんはあの場所に逃げたのではなく、捕まって連れ込まれたのではないですか。そして暴行を受けた」
「やめません。先輩が解けと言ったんです」
「そう考えると全ての辻褄が合うんですよ。それがわかった以上は先輩は論文で発表することが出来ません。先輩の被験者が朝美さんであることは周知の事実です。論文である以上、内容の改竄は許されない。当然原因を書くことになれば、朝美さんが暴行をされたことが知れ渡ってしまう。だから書けなかったんです」
「例の准教授の論文であれば、被験者は複数いるでしょう。どれが朝美さんのものかはわからない。だから論文はその人に託したんです」
「でもそうだとしても小説にする理由がない。私はもう一度小説を読みました」
「そしたらそこに書いてありましたね。私は鳥肌が立ちました」
「1980年代のアメリカの研究で、思い込みや催眠療法によって失われていた幼少期の記憶を捏造した、と。どういう方法を使ったのかはわかりません。きっとその准教授の協力があったんだと思います。実験結果を提供し、論文も自分は手を引くことを条件にでもしたのでしょう」
「とにかく先輩は記憶を捏造しようと考えた」
「そして仕上げに小説を利用したんです。断片的に思い出した朝美さんがあの小説を読み、その内容を自身の記憶として補完する。朝美さんはあの小説を自身の記憶と思っている。あの小説には朝美さんが暴行をされたことがすっかり抜け落ちている。つまり、朝美さんから暴行の記憶を消すことが出来るんです」
「そんなことがあり得るのかはわかりません。でも実際に朝美さんは先輩の小説で記憶を補完しています」
「私はずっと勘違いしていました。『半自伝小説』というのは、先輩にとっての半自伝だと思っていました」
「けれど違ったんですね。あの小説は朝美さんにとって『半自伝小説』だった」
「先輩が小説を書いたのは、朝美さんの悪い記憶を上書きするためですね」
先輩は泣いていた。何も言わなかった。
長い沈黙の後でゆっくりと言った。
誰にも言わないつもりだった。
けれど朝美のために生きたことを残したかった。
だから小説にヒントを残した。
誰も気づかないと思っていたけれど
君は気づいた。
聴こえるか聴こえないかの声で
先輩が、ありがとう、と言った気がした。
「私以外でも気づいていると思いますよ。どこまで知っているかは別として。でないとさくらさんは佑矢先輩を庇って隠したりしません」
「あと、本人からは聞けませんでしたが、塾長から聞きました。先輩の生徒…遠山さんでしたっけ、先輩の小説を悪くいう塾生に啖呵を切ったそうですよ。『佑矢さんはそんなことしない、きっと理由があるに違いない』って」
「先輩のことをわかってくれる人はいます。そして、少なくともこれは言えます」
「あの小説は『朝美さんのためになった』んです」
「たとえ本人にそれが伝わらなかったとしても」
「クリスマスに呼び出してすみません」
「どうしても早く伝えたくて。えぇ、ようやくわかったんです。どうして先輩が小説という手段を取ったのか」
「ここから話すのは仮説です。全てに於いて確証はありません。けれど、色々な状況証拠や佑矢先輩、あなたの言葉を併せたら、これしかないと思いました」
「あれからたまたま朝美さんを見かけたんです。…いや、嘘をつきました。会いに行きました。とても綺麗な方ですね。私は朝美さんの昔を知りませんが、あんな人が学校にいたら好きになっても仕方ないと思います」
「朝美さん、佑矢さんの名前を出した途端にすごく機嫌が悪くなって、ほとんど話せませんでしたけど、これだけはわかりました。朝美さんは佑矢さんに少しも感謝なんかしていない。小説なんか出されて迷惑してる、って。人の過去を赤裸々に載せるなんて最低って言ってました。小説を読む限り、佑矢先輩が竹下さんのフリをして手紙を書いたことで記憶が戻ったのにですよ。直接書かれていなかったですけど」
「だから、私ちょっと悔しくなって言ってやったんです。『佑矢先輩のおかげで記憶が戻ったんじゃないんですか』って。私も都合良すぎですよね。小説にしたこと、私も怒ってたはずなのに。見事に棚上げしちゃいました」
「朝美さん、佑矢さんの手紙では断片的にしか記憶が戻らなかったみたいです。その後、篠塚准教授でしたっけ、あの論文を発表した人のお世話になって大まかに記憶を戻したそうです。だから佑矢先輩には感謝してないって。あの小説でむしろ思い出したくないことまで補完されて、それも迷惑だったって言ってました」
「驚かないんですね、まぁいいです。とにかくあの小説は朝美さんの為になっていなかった」
「先輩は昨日『朝美さんのためにしか行動しない』と言いました。これじゃ正反対です。佑矢先輩の頑張りは報われなかった」
「けれど本当にそうなのか、こんな単純なことなのか、と思いました。確かに先輩朝美さんのことになると後先考えずに突っ走るところがあります。小説でもそうでした。けれど、先輩ならあんな全員実名の小説をだせば、朝美さんに嫌われることくらい容易に想像出来たはずです」
「だから私はやはり、あの小説は佑矢先輩が何らかの目的で『朝美さんのために書いた』のだと思いました。何度も言いますが、嫌われたくないならば、小説にしなければ良いし、しても実名にする必要がありません」
「そう、これは実名が出てくる小説なんです。実名である以上、読む人はこれが実話だと思うでしょう。けれど、先輩は一貫してこれを『半自伝小説』、つまり『半分が実話』だと言い張りました」
「私はきっと訴えられた時の逃げに使う文句だと思っていました。私には何がフィクションかわからなかったですし。だから、私はあの話が全部実話という前提で考えていたんです」
「けれど、その前提が間違っているとしたら」
「あの小説にはフィクションの部分があるに違いない、そしてそこにきっと謎を解く鍵があるんだと」
「朝美さんにはもう訊けそうになかったので、私は図書館に向かいました。新聞記事です。まずは客観的事実を検証しました」
「朝美さんが事件に遭った記事…ほとんど書いてある通りでした。残念ながら詳細が書いてあるものが無かったので状況の検証はできません。1つだけ発見された場所が出ていたので地図で確認しました…まぁ新宿の外れ、なんですかね、小説にはそうありましたけど。入り組んだ路地の駐車場でした」
「違っていたのは竹下という人が捕まった記事です。小説にもあるように新聞の地方欄に1社だけありました。竹下という人は捕まったときに暴れて逃亡したところを捕まった、とありました」
「私はここで『おかしいな』と思いました」
「小説では店から出された時にはもう錯乱状態で、話すことはおろか、動くこともままならなかったはずです。逃亡できるとは思えません」
「どうしてそんな違いが生まれたのか」
「色々な断片がパズルになっていくのを感じました。この違いも私にはピースの1つでした。そのピースを繋いだ先に、1つの仮定が生まれました」
「私はそれを確かめるためにさくらさんに会いに行きました。えぇ、塾に行きましたよ」
「でもさくらさんは、あの日のことはほとんど話してくれませんでした。私が訊きたいことは2つでした。竹下という人は本当は話せたのか、話したとしたら何を話したのか」
「記事を見せたら、竹下という人が話せたことは認めてくれました。でも、何を話したのかまでは教えてくれませんでした」
「私の仮説の核心には辿り着けなかったものの、竹下という人が話せた、という事実だけで充分でした」
「先輩、あの日先輩は竹下という人と朝美さんのことについて話したんですよね。そうですね…たとえば、先輩は訊いたんじゃないですか、朝美さんが事件に遭ったことについて何か知らないか、と」
「先輩、汗をかいているじゃないですか、冬ですよ、熱でもあるんですか」
「そこで先輩は朝美さんについて知りたくなかったことを知った。そして先輩は掴みかかり、警察が呼ばれた。警察は薬物で追っていた竹下を捕まえた。それがあの事件です」
「ところで先輩は朝美さんの何を知ったのか。これはもう話した人にしかわかりません。竹下は捕まってしまったし、さくらさんは教えてくれませんでした。もちろん先輩も私に言うつもりはないんでしょう」
「だってそれが全ての原因なんですから」
「朝美さんが発見された時の場所、地図で確認して違和感を覚えたんです。普通人は逃げようとするときに、人に助けを求めようと大通りに出るんじゃないかと思うんです。私ならそうします」
「よく映画では裏路地に逃げ隠れしますが、それは自分にもやましいところがあって逃げなくてはいけない場合です。朝美さんは普通に警察にでも何でも逃げ込めるはずです」
「けれど朝美さんが逃げ込んでしまったのは入り組んだ先の駐車場です。もちろん必死で逃げて、そんなこと考える余裕がなかったのかもしれません。けれど、さすがに知らない土地で行き止まりのリスクのある裏路地なんて咄嗟でも行かないと思うんです」
「わかりません。本当に必死に逃げた結果かもしれません。けれど、あの准教授の論文、あの内容を思い出したんです」
「被験者はみんな私に近い年齢の女性でした。始めはその中に朝美さんがいるのかどうかわかりませんでした。けれどあの准教授と先輩に繋がりがあるとすれば、きっとあの被験者の中に朝美さんがいたんでしょう。記憶を失くした理由はそれぞれに様々でしたが、その中に性的暴行が原因という人がいました」
「先輩、朝美さんはあの場所に逃げたのではなく、捕まって連れ込まれたのではないですか。そして暴行を受けた」
「やめません。先輩が解けと言ったんです」
「そう考えると全ての辻褄が合うんですよ。それがわかった以上は先輩は論文で発表することが出来ません。先輩の被験者が朝美さんであることは周知の事実です。論文である以上、内容の改竄は許されない。当然原因を書くことになれば、朝美さんが暴行をされたことが知れ渡ってしまう。だから書けなかったんです」
「例の准教授の論文であれば、被験者は複数いるでしょう。どれが朝美さんのものかはわからない。だから論文はその人に託したんです」
「でもそうだとしても小説にする理由がない。私はもう一度小説を読みました」
「そしたらそこに書いてありましたね。私は鳥肌が立ちました」
「1980年代のアメリカの研究で、思い込みや催眠療法によって失われていた幼少期の記憶を捏造した、と。どういう方法を使ったのかはわかりません。きっとその准教授の協力があったんだと思います。実験結果を提供し、論文も自分は手を引くことを条件にでもしたのでしょう」
「とにかく先輩は記憶を捏造しようと考えた」
「そして仕上げに小説を利用したんです。断片的に思い出した朝美さんがあの小説を読み、その内容を自身の記憶として補完する。朝美さんはあの小説を自身の記憶と思っている。あの小説には朝美さんが暴行をされたことがすっかり抜け落ちている。つまり、朝美さんから暴行の記憶を消すことが出来るんです」
「そんなことがあり得るのかはわかりません。でも実際に朝美さんは先輩の小説で記憶を補完しています」
「私はずっと勘違いしていました。『半自伝小説』というのは、先輩にとっての半自伝だと思っていました」
「けれど違ったんですね。あの小説は朝美さんにとって『半自伝小説』だった」
「先輩が小説を書いたのは、朝美さんの悪い記憶を上書きするためですね」
先輩は泣いていた。何も言わなかった。
長い沈黙の後でゆっくりと言った。
誰にも言わないつもりだった。
けれど朝美のために生きたことを残したかった。
だから小説にヒントを残した。
誰も気づかないと思っていたけれど
君は気づいた。
聴こえるか聴こえないかの声で
先輩が、ありがとう、と言った気がした。
「私以外でも気づいていると思いますよ。どこまで知っているかは別として。でないとさくらさんは佑矢先輩を庇って隠したりしません」
「あと、本人からは聞けませんでしたが、塾長から聞きました。先輩の生徒…遠山さんでしたっけ、先輩の小説を悪くいう塾生に啖呵を切ったそうですよ。『佑矢さんはそんなことしない、きっと理由があるに違いない』って」
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