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第7話 あんたの物はあたしの物
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有が姉の服で鼻をかみ、一通り姉に撫でられ終えた後、2人は朝食を取ることになった。
いつも有は朝食を自分で作っている。元々、仕事が忙しく家を開けがちだった有の両親は、有が中学校に上がると同時に2人とも単身赴任。初めこそ慣れない生活であったが、今では家事全般なんでもこなせる立派な中学生なのだ。
トースト、ベーコンエッグ、サラダにコーンスープ。食卓に並ぶ王道の朝食に明理は目を輝かせる。
「これ、有くんが作ったの!?」
弟の思わぬ成長ぶりに驚きと喜びが溢れている様子の明理。そんな姉を見て、有の心の中はとても暖かかった。
明理は悪魔であるため、本来ならば食事は必要ない。しかし、愛する弟の手料理であれば話は別だ。明理は有の隣に座り、一緒に朝食を食べる。
有がもぐもぐとトーストを頬張っている様子を見て、明理は泣きそうになってしまう。そのまま、手を伸ばし有の頭を撫でる。
有が上目遣いで明理の方を見る。他界している間に、見違えるほど成長した有に明理はさらに目頭が熱くなる。有から見えないように涙を拭くと、明理もトーストをかじった。
そして、いよいよ有が学校に行く時間がやってきた。有が1番危惧していた時間だ。制約上、明理と一緒に学校に行かねばならない。
明理は、自分は姿を消すし、脳内で直接有くんと会話できるから学校については心配しないで!と事前に言っていたが、有にとって心配事はそれだけではなかった。
有にとって、1番の心配はもちろん冬葉であった。彼女にいじめられている自分を姉に見られるのも嫌だったし、怒った姉が冬葉に何かしてしまうかもしれないという恐れもあった。
心にモヤモヤを抱えながら、玄関を開ける有。明理も有の後をついて歩く。通学路を歩いていく2人。明理は、久しぶりの故郷の景色にテンションが上がり、ひたすら辺りを見回している。
有は、昔と変わってしまった場所、2人で遊んだ児童公園、昔作った秘密基地など姉と思い出話に花を咲かせながら、通学路を歩く。最初のモヤモヤなどなかったように、楽しい時間が過ぎ、あっという間に学校に着いてしまった。
有は、自分の席に座り、スクールバックから教科書を取り出す。明理は、昔の自分が見ることのできなかった学校にいる時の有を見る事ができ、感無量であった。ありがたや、と手を合わせる明理とそんな姉を見て少し気恥ずかしそうに笑う有。平穏な時間が過ぎる。
「なーんか楽しそうね、有。」
そんな平穏な時間は突如破られる。有に声をかけてきたのはもちろん冬葉であった。冬葉と有は幼馴染であるため、明理も冬葉の事を知っている。冬葉ちゃんも大きくなったねぇ。と感慨深そうな明理を尻目に、有の気分は徐々に沈んでいく。
契約で有と結ばれている明理にとって、有の気分の浮き沈みは手にとるようにわかる。何か異常な事態を察した明理は、冷静に冬葉と有を観察する。
「お、おはよ。冬葉ちゃん。」
冬葉はにんまりと笑う。取り巻きの女子2人もニヤニヤと笑っている。これはもしや...。と勘ぐる明理。
「有。朝の挨拶は、『おはようございます。冬葉様。』でしょ?」
冬葉は指を振り、さぁもう一度!と有に朝の挨拶を強要する。いつもなら、有はその挨拶をしてしまっただろうが、今日からは明理が側にいるのだ。そんな事はできない。
「冬葉ちゃん。それは...できない...。」
絞り出すような声で答える有。そのまま有はじっと冬葉を見つめる。いつもとは違った様子の有に戸惑いつつも、まぁそんな日があってもいいわよね!と冬葉はあくまでも余裕を装う。
「あの、冬葉ちゃん。そんなことより、昨日貸したハンカチを返して欲しいんだけど...。」
そんな有の言葉を聞き、ニヤニヤする冬葉。
「それはできない相談ねぇ。」
冬葉の言葉に、下を向いてしまう有。そんな有を見て、さらに冬葉は言葉を続ける。
「理由を聞きなさいよ。」
有は顔を上げた。くいっくいっと手招きする冬葉。さぁ、早く。と冬葉は有を急かす。
「その、ど、どうして?」
有は不思議そうな顔で冬葉を見つめる。冬葉は、大きく息を吸うと、有に向かって指さす。
「なぜなら!あんたの物はあたしの物だからよ!それに!あんた自身だって、あたしの物みたいなもんなんだからね!!!」
大声で有にそう告げた後、振り返って有を背に恥ずかしそうにもじもじとする冬葉。取り巻きの女子2人はきゃーーー!と叫びながら頬に手を当てる。有は、そんな冬葉の姿を見て不思議そうに首を傾げた。
一部始終を見ていた明理は、なるほどなぁ。と上を向き、ため息をつく。最初は、冬葉に有がいじめられているのかと思った明理であったが、事態は遥かに複雑である事を察する。
明理自身も、中学時代に有との接し方で悩んでしまった分、冬葉に深い同情を寄せざるを得なかった。さらに、問題なのは有が冬葉の行動の意図とは完全に真逆の感じ方をしている事だ。
有の事が大好きな明理としては、鈍感な弟というのは理想的なのだが....。
明理は、静かに目を瞑った後、優しく弟の頭を撫でた。
いつも有は朝食を自分で作っている。元々、仕事が忙しく家を開けがちだった有の両親は、有が中学校に上がると同時に2人とも単身赴任。初めこそ慣れない生活であったが、今では家事全般なんでもこなせる立派な中学生なのだ。
トースト、ベーコンエッグ、サラダにコーンスープ。食卓に並ぶ王道の朝食に明理は目を輝かせる。
「これ、有くんが作ったの!?」
弟の思わぬ成長ぶりに驚きと喜びが溢れている様子の明理。そんな姉を見て、有の心の中はとても暖かかった。
明理は悪魔であるため、本来ならば食事は必要ない。しかし、愛する弟の手料理であれば話は別だ。明理は有の隣に座り、一緒に朝食を食べる。
有がもぐもぐとトーストを頬張っている様子を見て、明理は泣きそうになってしまう。そのまま、手を伸ばし有の頭を撫でる。
有が上目遣いで明理の方を見る。他界している間に、見違えるほど成長した有に明理はさらに目頭が熱くなる。有から見えないように涙を拭くと、明理もトーストをかじった。
そして、いよいよ有が学校に行く時間がやってきた。有が1番危惧していた時間だ。制約上、明理と一緒に学校に行かねばならない。
明理は、自分は姿を消すし、脳内で直接有くんと会話できるから学校については心配しないで!と事前に言っていたが、有にとって心配事はそれだけではなかった。
有にとって、1番の心配はもちろん冬葉であった。彼女にいじめられている自分を姉に見られるのも嫌だったし、怒った姉が冬葉に何かしてしまうかもしれないという恐れもあった。
心にモヤモヤを抱えながら、玄関を開ける有。明理も有の後をついて歩く。通学路を歩いていく2人。明理は、久しぶりの故郷の景色にテンションが上がり、ひたすら辺りを見回している。
有は、昔と変わってしまった場所、2人で遊んだ児童公園、昔作った秘密基地など姉と思い出話に花を咲かせながら、通学路を歩く。最初のモヤモヤなどなかったように、楽しい時間が過ぎ、あっという間に学校に着いてしまった。
有は、自分の席に座り、スクールバックから教科書を取り出す。明理は、昔の自分が見ることのできなかった学校にいる時の有を見る事ができ、感無量であった。ありがたや、と手を合わせる明理とそんな姉を見て少し気恥ずかしそうに笑う有。平穏な時間が過ぎる。
「なーんか楽しそうね、有。」
そんな平穏な時間は突如破られる。有に声をかけてきたのはもちろん冬葉であった。冬葉と有は幼馴染であるため、明理も冬葉の事を知っている。冬葉ちゃんも大きくなったねぇ。と感慨深そうな明理を尻目に、有の気分は徐々に沈んでいく。
契約で有と結ばれている明理にとって、有の気分の浮き沈みは手にとるようにわかる。何か異常な事態を察した明理は、冷静に冬葉と有を観察する。
「お、おはよ。冬葉ちゃん。」
冬葉はにんまりと笑う。取り巻きの女子2人もニヤニヤと笑っている。これはもしや...。と勘ぐる明理。
「有。朝の挨拶は、『おはようございます。冬葉様。』でしょ?」
冬葉は指を振り、さぁもう一度!と有に朝の挨拶を強要する。いつもなら、有はその挨拶をしてしまっただろうが、今日からは明理が側にいるのだ。そんな事はできない。
「冬葉ちゃん。それは...できない...。」
絞り出すような声で答える有。そのまま有はじっと冬葉を見つめる。いつもとは違った様子の有に戸惑いつつも、まぁそんな日があってもいいわよね!と冬葉はあくまでも余裕を装う。
「あの、冬葉ちゃん。そんなことより、昨日貸したハンカチを返して欲しいんだけど...。」
そんな有の言葉を聞き、ニヤニヤする冬葉。
「それはできない相談ねぇ。」
冬葉の言葉に、下を向いてしまう有。そんな有を見て、さらに冬葉は言葉を続ける。
「理由を聞きなさいよ。」
有は顔を上げた。くいっくいっと手招きする冬葉。さぁ、早く。と冬葉は有を急かす。
「その、ど、どうして?」
有は不思議そうな顔で冬葉を見つめる。冬葉は、大きく息を吸うと、有に向かって指さす。
「なぜなら!あんたの物はあたしの物だからよ!それに!あんた自身だって、あたしの物みたいなもんなんだからね!!!」
大声で有にそう告げた後、振り返って有を背に恥ずかしそうにもじもじとする冬葉。取り巻きの女子2人はきゃーーー!と叫びながら頬に手を当てる。有は、そんな冬葉の姿を見て不思議そうに首を傾げた。
一部始終を見ていた明理は、なるほどなぁ。と上を向き、ため息をつく。最初は、冬葉に有がいじめられているのかと思った明理であったが、事態は遥かに複雑である事を察する。
明理自身も、中学時代に有との接し方で悩んでしまった分、冬葉に深い同情を寄せざるを得なかった。さらに、問題なのは有が冬葉の行動の意図とは完全に真逆の感じ方をしている事だ。
有の事が大好きな明理としては、鈍感な弟というのは理想的なのだが....。
明理は、静かに目を瞑った後、優しく弟の頭を撫でた。
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