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魔術講義

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翌朝、講習を受ける為、役所に向かった俺は、講師がいるという街の外郭地帯に案内された。

「それでは、これより講習を始める」

講師は何故か、黒いハードレザーのボンテージを着ている。これで手に鞭を持っていたら、見た目は完全にSM嬢だ。

それは別に良い。

印象的なキャラにする為の、演出なのだろう。

だが、周りにいる奴らまで、同じような格好をしているのは、おかしい。

俺の他に講習会に出席しているのは、5人の男なのだが、全員、講師のような黒いハードレザーを着用している。

しかも、口に口枷を付けている。

「~~~~っ!」

講義が始まる少し前に、何かしら話しかけられているみたいだったが、何を言っているのかわからない。

街の人たちからは、奇異な視線を受けるし、すごく帰りたい。早く終わらないものだろうか。

「さて、知っての通りだが、この世界には魔物がいる。これは、危険な特定の異種族と同様、私たちを襲ってくる。目的は、捕食、縄張りの主張、遊びとされているが、大事なことは一つ、命を狙われているということだ」

色々と余計なことを考えていたが、講義は普通に始まった。

正直、あまり頭に入らないが、今回の講義の意味や目的を説明していた。

役所で受ける仕事には、野外活動が必要なものが多い。

特定の植物の採集や、鉱石の採掘、中には、魔物を倒すことを目的とした依頼も少なくない。

魔物を倒すことが、目的とされていなくとも、野外には魔物がいる為、身を護る術が必要とのことだった。

「しかし、この講習では、武器の扱い方や、ましてや格闘術を教えることは無い。なぜなら、そんなもの数時間学んだ所で、何の役にも立たないからだ。よって、私が教えるのは、初歩的な魔術と、その説明になる」

どうやら魔術が、このゲームでの主な戦闘方法となるようだ。

このゲームでは、お馴染みのライフゲージや精神力とさらるMPのゲージは見つけられなかったが、発動する段階になれば見えるのだろうか。

「魔法には5種類の属性があり、風、土、火、水、雷が存在する。どれを扱えるのかは個人により違い、それぞれ一つの属性しか使えない。それでは、一旦説明はここまでにして、実技に入って貰う。魔術の発動にはこれを使ってくれ」

渡されたのは、一つの指輪。何の装飾もなく、単なる金属の輪にも見える。

指に嵌めても、特に何も起こらない。

「指輪を着けた者から、始動と発言してくれ。それと、指輪を着けた手は突き出すように」

「始動…っ!?」

発言と同時に、俺の手には炎で出来た、剣が握られていた。

「諸君等に渡した指輪は、リングソードという魔道具だ。発動に成功していれば、発動者の属性に対応した魔法剣が握られている筈だ」

見ると、周囲も同じように、それらしい剣が握られている。

随分、あっさりと発動するものだ。

拍子抜けした気もするが、これぐらい簡単でないと、それはそれで厄介だしな。

「さて、体験して貰ったように、単一の魔術発動であれば、始動と発言すれば良い。だが、魔道具は複数所持して、対応力を上げるのが基本とされている。そうなった場合は、魔道具の固有名を告げることで、個々に発動することができる」

講師も同じ魔道具を装備していたようで、リングソードと発言すると、俺たちと同じように魔法剣が、手に握られていた。

「さて、それでは講義は終了だ。その魔道具は、この街に滞在する限り貸与されるので、最低限それで身を護ること。ただし、先程も言った通り、魔道具は複数所持することが一般的だ。比較的に安価で手に入る物から集めることを推奨する。特に、最近は魔物の動きも活発なので注意するように」

街の内部に戻った俺は、一度、チンチラの家へ戻った。

というのも、講習の後、話があると言われていたからだ。

「あ、ナグモさん。おかえりなさい」

おかえりなさいって、なんか破壊力あるな。
「はい、ただいま」
「それで、話っていうのは、仕事のことなの」
「仕事?」
「街の外から来た人は、外で仕事をするでしょう?私も外で仕事をしたいと思っていたんだけど、一人でするのは不安だし、お母さんも許してくれなくて。だから、ナグモさんと一緒に出来ればなって」
「なるほど…」

話によると、実はこういうことらしい。

ラビットホールでの仕事は多々あるが、外部から来た者たちは基本的に、街の外で行う採集などが主だったものとなる。

逆に、街の住民は、内部での仕事を主とする。

住民と外部の人で仕事を分けることによって、牌の奪い合いを避ける、といった所だろうか。

危険な仕事を外部の人に任せることで、住民との折り合いを付ける意味合いもあるのかも知れない。

「ひょっとして、他所の人があまり来ないって言っていたことと、何か関係します?」
「最近、魔物の動きが活発になっているって話は聞きました?」
「はい、それとなく」
「その影響もあって、他所から来る人も少なくなっているんです」
「そうなんですね」
「それで、外で仕事をしたくても、同じ様な新人が居なくて。街のみんなは外に出たがらないし」
「そういうことなら、喜んで。でも、僕で大丈夫ですか?見ての通り、あまり強くはないですよ」
「そこは、私も一緒ですからっ。二人で一緒に強くなっていきましょ?」

こうして俺は、チンチラとパーティを組むことになった。






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