石になった少女

雲黒斎草菜

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7)松の湯。紀元前4百万年バージョン

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 テントから顔を出すと、強い朝陽を逆光にして、ピョンピョン飛び回っている女性が視界に入った。遠めで見る限り、その人は黒いレディーススーツと短いスカート姿というフォーマルな装いだ。でもなぜか子供のようにスキップをしており、リズミカルに黒髪を跳ね上げていた。

「………誰だろ?」
 女性は背の低い雑草の広場を周回していたが、ほどなくするとテントから顔を覗かせている俺に気づき、こちらに駆け寄りながら明るい声で手を振った。

「おはようございまぁす。テルさまぁ」

 服装はリクルートスーツだ。しかも記憶にはっきりと焼きついている。それはさくら姉ちゃんが大学在学中に就職活動をしていた時、そのものだ。

「マジかよ………………」

 溜め息と共に、声を漏らす。
「スカートが短すぎるぜ」
 ──ということは、俺の頭の中をスキャンしやがったんだ。姉ちゃんの姿を見てそんな妄想をした記憶がある。

「これって──プライバシーの侵害だ」

 ようするにタイトなミニスカート姿の女性はクルミだった。昨日より身長が伸びており、艶かしく伸びた素足が眩しく、グラマラスなボディをギュウギュウに押し込んだスーツの胸がはち切れそうになっている。でも身体に似合わない幼(いと)けない表情は、そのまんまクルミで、スーツの胸ポケットには、布で拵えた人形の顔が覗いていた。

「テルさまぁ~」
 長い黒髪を風に踊らせ、こっちに向かって駆けて来ると、膝からダイブ。土煙を上げて地面に正座。普通なら擦り傷だらけで血を流しているところだが、その女性はけろっとしている。ついでに付け加えると、ミニスカートの中が丸見えだった。

「だよな……」
 期待外れ感が半端無い。やっぱり黒いスパッツだった。

「すけべシスコン……」
 俺の脇から顔を出したサクラの機嫌が悪い。
 急いで平静を装い、大人の色気を振りまく女性に、念のため尋ねる。

「あんた……クルミ……だよな?」
「そうぉ~でぇす。わたしはテルさまのインスタンスれーす」
「なんで、姿が変わってるの? 背も伸びてるし……」
 まだサクラは憮然としている。

「そんなに変わったんですぁ?」
 長い黒髪をワサワサ振って、クルミは自分自身を眺めようと顎を引いた。
「ほんとだぁ。黒い服を着ていますぅ」

 サクラは俺にギラリとした視線を這わせて、
「こういうのが好みなんだ、テルは……」
「ち、ちがう。俺は知らん」
「だってあんたのお姉さんが就職活動してたときの、まんまじゃない」

 ちっ、憶えてやがったのか……。
 ヤツのセリフは間違っちゃぁいない。まったくそのとおりだ。しかしこの姿は度を越していないか?
 確かにさくら姉ちゃんも美人で、まぁまぁグラマーだったが、ここまではち切れていなかった。

「姫様のインスタンスはお前の潜在意識のデータが基礎になっている」
 ──って、乾いた声で言うなよイチ。どこに隠れてやがったんだ。

「オマエらが寝ると精神波が途絶え、我々は再生されずに消えている。起きると再生が始まる」
 DVDプレーヤーみたいなヤツだな……て言うか、お前は何も変わらないのはどういうわけだ?

 イチに尋ねているのにサクラが答える。
「あたしの精神が安定しているという、確固たる証拠よ」
 なんだ、偉そうに……。
「俺だっていつも冷静だ。動じたことなど無いワ」
 と言いつつも、ちらりとクルミの胸の谷間を覗いて、ドキドキしてしまう俺だった。

 説得力ねぇ~し。

「しかしひと晩で育ったなぁ……いでででで。やめろサクラ、耳が千切れるってばぁ!」
 へんな妄想が立ち昇る俺を覚醒させるべき、サクラが耳をぐいぐい引っ張る。
「このヘンタイオヤジ。ちょっと色っぽいからって鼻の下伸ばして……こっちおいで、反省させてあげる」

 それを見てクルミがニコニコ。
「うふふ。楽しそうですね。テルさまぁ~」
「どこ見て言ってんだ。楽しくなんかねえぞ。いでででで」

 悲鳴を上げる俺を面白そうに見ていたクルミは、ピョンと立ち上がり、草っ原でスキップを始めた。

 裾の割れたタイトスカートでスキップをして踊る女性を初めて拝んだ。長い黒髪も一緒に跳ね上げて、人の頭の中に浮かぶワードを次々と暴露していく。
「すんごい。あたし大人っぽいの? ねぇテルさま。色っぽいの?」
 ごめんなさーい。やめてくれ。
 その言葉はとても火に油を注ぐわけでして……。

「よからぬ考えをすると、思考波となって姫様に届くぞ」
 とか、イチもくだらんことを言うもんだから。

「あんたが変な妄想を続けるから、クルミちゃんがおかしんじゃない。その根性、成敗してあげるわ」

「あででででで……って、サクラ……許して…………」
 格闘技の師範代の腕を持つこいつから受けるヘッドロックはプロ級の痛みが脳天に走る。ただしオマケとして肩にはプリンみたいなやたらと柔らかい物体がポヨンポヨンと……。

「サクラさんのおっぱいが柔らかいで~す」

「ば、ばか。クルミ! 痛ぇぇぇぇぇぇぇ」
 さらに締め上げられた。



「朝からうるせぇなぁ」
 クルミが跳ね回っている向こうの茂みから藤吉が上半身を起こして、背筋を伸ばした。

「そんなところで寝ていたのか……」

 それにしてもこの男、野武士の頭領だけのことはある。クルミのこの変貌振りを見てもちっとも動じていない。

 それともこいつもバカなのだろうか?

 少しして遠くの茂みから耳をピンと伸ばし、銀色に光る毛並みを風になびかせた狼の顔もぬんと出た。太い肢で立ち上がると、とすとすとイチの前へ歩み寄り。ちょんと、尻を落としてお座りをした。

「──────────」
「そうか。リロード完了したか」

 今日もイケメン忍者野郎は、その容姿とは似合わない英語を、しかも狼に向けて発しているし、狼はピンと立てた耳を左右に向けたままこくりとうなずき、その向こうでは藤吉とサクラが棒切れ使って素振りを始めていた。
 バリバリ現役、しかも実践派の師範を得たんだ。サクラにしたらこの上もないチャンスだとは思うが──にしたってよ。
「どいつもこいつも、能天気なヤツばっかりだ。状況を把握してない」
 俺は落ちていた石を拾い、サクラめがけて投げながら叫んだ。
「こら~。ここは剣道部の夏季合宿じゃねえ!」

 かんっ!

 短い音を上げて、投げた石をサクラが打ち返してきやがった。
「うぉぉ危ねえ」
 こっちへ向かってストレートに飛んで来る石から、急いで身を避(よ)ける。

「なんちゅう運動神経してんだあいつ……」
 遠くからおちょくってくるような、サクラの高笑いに肩をすくめていると、
「朝食の準備ができたぞ」
 何の抑揚もない忍者野郎の声に、ゆるゆると首をねじって視線を合わせた。

「なぁ。これからどうすんだ? 早く家に返してくれよ」
 反政府ゲリラの人質になった要人の気分だ───あ。要人の部分は各自で削除しておいてくれよな。

「お……」
 風に乗って何ともいえない美味そうな香りが漂って来た。
「おい。この匂い……」
 焚き火のそばに駆け寄って、湯気を上げている俺のアルミ製のコッヘルの中を覗き込む。
「味噌汁じゃないか!」
 ついでに……。
「美味そう──」
 さらに。
「腹減ったぁ」
 だいぶ経って、
「味噌なんてどうしたんだ……あっ」
 俺のリュックが開けられていた。

「ど、泥棒みたいな真似しやがって……」
「気にするな。ある物は使わせてもらった」
「ということは……」
 味噌汁と共に漂う純日本風の香り。
「米を……あぁぁ。全部使いやがって」
 怒り心頭に発するちゅうものだ。
「バカ野郎。考えも無しで食料全部使ったのか! お前もサクラ並みに脳天気な、」
 と言いかけて声を飲み込んだ。

 サクラの分身だから、そのままんま極楽トンボなんだ。
「ぁぁぁぁ………このトンボ野郎。明日から何を食うんだ」
 一気に脱力して、ぺたんと焚き火の前で尻を落とした。

 そこへ、
「わぁぁ。お味噌汁よ~」
 もう一人のトンボ女が手を出した。
 そして陽に焼けた太い腕にもアルミのコッヘルが、
「おぅ、これは美味(うま)そうだ。いい匂いがしておるな」
 当たり前だ。二十一世紀製の無添加熟成味噌だからな。十六世紀の田舎味噌とは香りが違うワ。

「このお肉も美味しそうぉでぇぇす」
 焚き火の横では、黒猪の肉塊がシズル感的な音を上げている。
 白米と味噌汁。なぜか朝からステーキだ。ある意味豪華といえば豪華だ。遭難中に味わえる食事ではない。

「では頂きましょう」
 リクルート姿のクルミの声に合わせて朝食が始まった。
「美味しいー」
 満足そうなサクラの叫びに続けて、こくりとうなずいた藤吉が、
「うむ……コクは堪らなく深く、香りも芳醇(ほうじゅん)だ。だが塩気が少し濃すぎるな。これではせっかくの大豆の味を殺しておる」
「いや……」
 忍者野郎は小さく頭を振り、
「……この野生の芋の味を美味く引き出すにはこれぐらいの塩気は必要だ。それより鼻を抜ける香りと、このシャケの身の旨みを楽しまなくてはいけない」
「シャケとは? ほう、この桃色の魚か。こんなのは食ったことが無い」

 お前らは美食倶楽部の会員か!!

「美味しいねぇ、クルミちゃん」
「はぃ~。生まれて初めてですぅ」

 どいつもこいつも………………。

「みんなして脳天気に食通ゴッコしている場合じゃねえだろ! 食料を全部使い切りやがって……。イチ! これからどうすんだよ」
 サクラがきょとんとした目を俺に向け、イチは黙々と白米を噛んでいる。
 視線だけは俺から外さずに、「……………………」だった。

 黙秘かよ───。

 焚き火が爆ぜる音だけになった。
「なんで全員で黙り込むんだ!」

 焦っているのはお前ひとりだ、とでも言いたげな視線の集中砲火を痛く感じながら、口の中に残っていた白米を飲み下した。

「……それよりさぁ」
 と切り出し、何やら文句を垂れるサクラ。
「テル。臭いよ」
「なんだよ、こんな時に?」
 サクラは自分の腕やら、クルミのさらさらした頭を嗅いでは「臭い臭い」と連呼した。

 クルミも臭いなんて分かるのかどうだか知らないが、一緒になって可愛い鼻をくんくんとさせ、風に黒髪をはためかし顔を上げて、告げるかのように、
「テルさま、くさ~い」
「な、何言ってんだ。デリケートな問題だぞ。そう連呼するなよ」
 と言い返すが、やっぱり気になり自分の身体を嗅いでみる。

 なるほど臭いな。二日間風呂に入らず、焚き火の煙を浴びていると人間も燻製になる、ということに気づいた。
「──ほんとだ。炭臭いな」
「どこかでお風呂入りたい、テル」
「入りたぁーい」
 クルミも声を揃えた。

「拙者も湯船に入るのは十日ぶりだ」
 堂々と宣言する野武士。
「きたねぇなぁ」
「何が汚い。お主、考えが短絡的過ぎる。湯船に入ったのは十日前と言ったが、日々毎日、川の流れで身を清めておるワ」
「じゃテルが一番バッチィね」
 サクラめ、人をバイ菌みたいに言うんじゃない。

「はっ、そんな悠長なことを言っている場合じゃない。俺たちは遭難した上に、大事な食料を全部使い切られたんだ。もう風呂どころじゃねえ」

「───────────」
 無言でテツが立ち上がり、シダの林の奥をギンッと睨んだ。
 まぁ狼がペラペラ喋ったら、それはそれでとても困るわけで──。

 イチもぐいっと、その細身の体を直立させた。
「いいところがあるらしい。食事が済んだら移動するぞ。早く食え」

「いいところってどこだろね、テル」
「知るかよ。でも話題からいって、風呂屋じゃないか」
「え? お風呂屋さんですか。クルミ初めてでぇす」
「いやいや。紀元前四百万年に風呂屋は無いから」
「時代を飛ぶの? クルミちゃん」
 尋ねるサクラに、クルミはポカンとしている。その気はないらしい。空は晴れ渡り、とうぶん霧が降りてきそうな気配は無かった。


 小一時間して───、
 二十一世紀の高校生男女ペアと、十六世紀の野武士の頭領、そしてリクルートスーツ姿の少女と得体の知れない忍者。先頭を切るのは銀のたてがみも勇壮な狼。という、とっても素敵なパーティを組んだ俺たちは、ジャングルを一列になって進んだ。

 まるでRPGの移動シーンだと?
 ばーか。ゲームばかりやってんじゃねえぞ。こっちはマジでリアリティだからな。

 もちろん先頭はテツで、二番手が藤吉、そしてサクラとくるみ、少し離れて俺。しんがりから全体を見張るように忍者野郎だ。テントはテツが首に掛けているので、サクラはまた手ぶらで口笛を吹いて、気楽な散歩気分だ。

 鬱蒼と茂るシダのジャングルを抜け、山を二つ三つ登り下りする。周りは緑一色で、さすがにここまで来ると飽き飽きしてくる。たまには赤色とか黄色とか原色を目に流し込みたくなる。

「おい。どこへまで行くんだ。黙って付いて来たけど、さっきの場所からだいぶ離れたぞ。これって広野ダムの方角へ戻っていないか?」
 いいかげんくたびれたところで、俺が頭をもたげた。

 その声にテツが振り返り、イチが代わりに答える。
「もうそこだ」
 さっきの場所よりも、さらに蒸し暑く感じるのは気のせいか?
 それとも、まさか……。

 ──そのまさかだった。

「温泉よ、テル!」
 そのとおりだ。時おり鼻をきつく刺す硫黄の臭いが漂い、いたるところか湯気らしき蒸気が立ち込めている。

「お風呂屋さんですかぁ?」
 クルミもダッシュで先頭のテツに駆け寄り、一言二言会話すると、ピョンピョンと跳ね戻り、そのまま俺に飛びついてきた。

「お風呂に入れますよぉ。嬉しいですねテルさまぁ?」
 どうもその大人びいたボディでしがみ付かれると、無性に鼓動が高鳴る。ここでよからぬことを考えるとクルミが口に出す。あるいは先にサクラに感付かれるので、とりあえず引き離し、
「シャンプーもあればいいんだがな」
 その長い黒髪を見て言う。
 キャンプにそんなモノを持ってくるヤツはお子様キャンパーだけだ。などと自分の漏らしたひとりゴチを慌てて取り消し、シダの林を掻き分ける進軍を追った。


「やっぱりこいつ何があっても動じないな」
 俺の前を進むちょんまげ姿へ、呆れの視線を向けた。
 長い刀を差した藤吉は、手ぬぐいを肩に掛け、銭湯へ向かう時代劇映画の大部屋役者みたいな顔をして歩いている。

「その手ぬぐいどうしたんだよ?」
「武士たるもの身だしなみも大切なんじゃ。肌身離さず持っておるワ。ほれ、これでヒゲも剃れる」
 小さな短刀も懐から出して見せた。

 ───トンボ野郎め。

 そこから数分後、小高い登り斜面を越えた辺りでテツが立ち止まり、長い鼻面をこちらにひねった。
「着いたようだ」
 狼は何も言わないが、イチに言われなくても解かる。それほどにテツの表情からは感情が溢れている。代わりに、忍者野郎からは何の気配もうかがえなかった。

「つまらねぇヤツ……」
 クルミはほがらかに微笑んでテツの頭を撫で回しているというのに、イチの野郎は相変わらずの無表情で、さらにつまらなさそうに、
「そこに川が流れている。うまくうめながら利用するといい。まずは姫様とサクラ殿からだ。テツ。お供をするんだ。それがしはコイツを見張る」
 銀狼は大きな頭で俺の腰をぐいぐいと押して二人から引き離すと、お座りをして鋭い目でこっちを睨み上げた。

 イヌ科特有の裂けた口からは、真っ白で鋭く尖った牙が覗いている。
 それ以上クルミたちに近づくと容赦しないと、言いたげな眼光で俺を串刺しにすると、二人を護衛するかのように振る舞い、茂みの奥へ歩み出そうとした。

「ふんっ。命まで賭けてノゾキをする気はねえぜ……」
 苦言を漏らしつつも、俺はリュックの中から石鹸とタオルを取り出してサクラに放り投げた。

「エロテル! 見に来ないでよ」
 両手で受け取り、そう言い捨てるサクラと一緒にクルミも可愛い声を上げる。
「こないでくださぁーい」
 口調は小学生、容姿は就職活動の女子大生、その正体はタイムトラベラーという、何だかよくわらない少女に苦笑いを向け、やるせなさに肩をすくめた。


◇ ◇ ◇ 


「はぁ~い、こっちですよぉ」
 一時間ほどして、茂みの奥がガサガサと揺れ、湯上がりのタオルを旗代わりに振ったサクラが先頭になって出て来た。
 二人とも頬を赤く染め、髪をしんなり下ろし、濡れた髪から湯気をほこほこ昇らせている。サクラはともかく、幼げな面立ちのクルミには、似合わない色気が漂っていた。

 連中が湯を浴びている間に、俺は気になる案件がふつふつと溜まってくるストレスを無性に感じており……。
「サクラ、サクラ。ちょっと来い」
 腕をぐいぐい引っ張り、こっちへ寄せる。
「なによテル。あんたも早く入ってきたら? いいお湯よ」

 何を温泉気分でいるんだ。というか、温泉だったな──なんてことはどうでもいい。

 引っ付けた人差し指と親指をほんの少し離して、不埒(えっち)の尺度がとても低いことを示してから、一応念を入れる。

「サクラ……よぉ~く聞けよ。俺は科学的興味から訊くんだ。やましい気持ちなど、これっ、ぽっちも無いからな」
「なによ?」
「いや。俺は連中がどこまで人間を忠実に形成しているか……どうかを……だな」
 サクラは何かを嗅ぎつけたように、すんっと鼻を鳴らし、
「イチさんと入って来ればいいじゃない」
「バカヤロ。男なんか興味あるか!」
「科学的興味じゃないの?」

「………………っ。まぁそうだが、俺は生物学的にだな……異性学というか……そんな学問ねえ……のか?」
 サクラは呆れた風に、かつ淡白に答えた。
「すごくツルツルしてて、綺麗いだったよ」
「ツルツル?」
 気になる……。とても気になる。ツルツルとは? 何が? どこが?
 サクラの怖い顔を見ていると、それ以上訊くことが出来なかった。

 すまん同士よ。
 ……後は想像に任せる。


「さ、それでは男の番だ」
 修学旅行生の引率教師みたいな言葉を吐いて、イチが立ち上がった。
「ムサイ男どうしで風呂というのもな……」
 気乗りのない返事をする俺の肩を、頭領がパシリと叩(はた)いて、
「戦国の世に、湯船に浸かれるなど、めったにない。入れる時に入っておくものじゃ」
 ここは戦国時代でもねえし、お前は俺と同(おな)い年なんだ、なんでそんなおっさん臭いんだ?

 藤吉は、ぐはははは、と豪快な笑い声とイチを引き連れて、茂みの奥へと消えた。あのおっさん、もうこの事態に慣れてきている。この適応能力の高さが、厳しい時代を生き抜く術なのかもしれない。

 茂みを掻き分けて進むこと数分。目の前が開け、湯気の雲と川の流れ落ちる音がしてきた。

「おおぉ。こりゃまこと天然の湯船じゃ」

 大きな岩が流れを堰き止め、それを越えてあふれ出した水が滝となって流れ落ちて、ちょうどいい大きさの透き通った深みが青々としている。そこへと噴出した出湯(いでゆ)が流れ込み、あたりはもうもうと湯気が立ち込めていた。手を入れると、本当に心地よい湯加減だった。

 見ると、藤吉はもうフンドシ一丁姿で仁王立ちしている。片手に長い刀を握っているのは、武士として手放すことはないのだろう。

 引き締まった藤吉のケツを拝みながら、俺は何となく躊躇している……そうさ。ジーンズは脱いだが、パンツを脱ぐタイミングを見計らっているんだ。だって銭湯なんて行ったことないし……。

 さっきから氷のような冷たい目で据えてくる忍者野郎が気になった。
「なんだよ、そんなトコに突っ立って、何か言いたそうだな」
「別に……」
 イチは興味無しの素振りを貫くと、針の先みたいな尖った視線を藤吉へと移動させ、知らぬ振りをかましている。
「お前は入らないのか?」
「それがしは入らぬ。入る必要が無い。代謝機能など持たぬ時間族に、風呂など無意味だ」
 イチの視線はあっちを向いたままで、声だけを俺へと注いでいた。

「クルミは入っていたぜ?」
「姫様は社会勉強の一環として体験されているだけだ。お前ら動物共はさっさと洗浄して来い」
「洗車機にクルマを通すみたいに言いやがって……」
 文句を垂れつつ、パンツのゴムに手を掛け、一気にずりおろす。二十一世紀と十六世紀の青年が、紀元前四百万年の川原で仁王立。真っ裸でプラプラさせて……。時を越えた壮観なプラプラだぜ。

 互いに顔を見合わせて、「がはははははは」と笑う。
 豪快で爽快だった。
 藤吉も両手を腰に当て、胸を反らして大笑い。

「ケケケケケケケケケ」

「何だよその変な笑いは?」
 ヤツも呆けたような顔して俺を見た。
 藤吉はっていない……。

「クケケケケケケケケケ」
 またもや不気味な笑い声──。

 とうとうと流れ落ちる水と、湧き出たお湯がぶつかって、モクモクと湯気を上げている茂みの奥からだ。

「えっ?」
 と思考が滞った次の瞬間、

「グケケケケケケッ!」
「うぁぁぁぁぁぁっ!」
 目の前に茂ったシダの隙間から、でっかい顔が突き出た。
 岩みたいな褐色の肌にはゴツゴツ尖ったヒダが何本も走っており、首から頭にかけて灰褐色の短い毛を生やした顔には赤い目玉が二つ。そいつにギロリと睨まれた。

「どぁぁぁ、きょ、恐竜だぁ!」
 俺の大声に驚いたのだろう。巨体を大きく左右に振って、後ろ肢を一歩前に出した。

 シダの葉を派手に引き千切って茂みから出て来たヤツは二足歩行をしており、前肢が不気味に短く、ほとんどお飾り程度だが、太い後ろ肢と長く濃い緑色の尻尾が特徴的だ。この体形は有名なティラノサウルス……にしてはやけに小さい。大型バイクのボディに、太い首と長い尻尾をくっ付けたほどだ。
「刺激するな!」
 叫んだのは藤吉だった。イチはじっと睨んでいるだけ。

 真っ裸(ぱ)の藤吉は、筋骨隆々の体で俺に手のひらを向けて静かに下がれと指示を出し、そしておもむろに刀を抜いた。
「藤吉! 殺してはならぬ」
 鋭く威嚇するような声は忍者野郎だ。
「しかし時と場合によっては致し方なかろう」
「だめだ。この世界では我々が異時限の者。この時間域の生命体には、いかなることがあっても手出しをしてはいかん。絶対禁止だ!」

「グケケケケケケケッ!」

「だってよー。脳ミソなんかあるかどうか解からないトカゲ野郎だぜ」
 さらに二歩。俺たちに迫るので、こっちも二歩退く。
「それからそれはティラノサウルスではない。この地域でかろうじて生き延びた滅び行く恐竜だ」


──
《テルたちが飛ばされた四百万年前と言うと、新生代と言われる時代で、寒冷化が進んだこの年代では恐竜族はとっくの大昔に絶滅しているのであーる。では何故生き残りが居たのか……それはこの先の伏線なので悪しからずであ~る》 


「つまり絶滅危惧種というわけか……」
 いやしかし。絶滅寸前の恐竜だと解かっても、危機が去るわけでもなく、そいつは雄叫びと共に、さらに数歩近づいてきた。

「うわぁぁ。怖ぇぇ。どうすんだイチ! 俺たちだってこいつに食われるわけにいかないだろ」
 ふためく俺に向かって、藤吉が叫んだ。
「慌てるな! この獣は生まれて間もない未熟な体をしておる。まだ子供だ。ワシにまかせろ」
 どこをどう見たらそう思えるのかさっぱりだ。

「お前は動物学者か。何で言い切れるんだよ?」
「目だ。目の焦点が定まっておらぬ。まだよく見えていない」

 子供だか、何だか知らないが、絶滅危惧種だと言っても相手は恐竜だ。そりゃ迫力が半端ねえ。そいつが一歩足を踏み出すたびに、水しぶきが派手に上がり、振り回した尻尾で岩が砕ける。

「うぁぁぁっ!」

「グゲゲゲゲゲーッ!」
 俺の悲鳴にさらに興奮したのか、変な鳴き声を上げて体をぐももももと反り返らせた。

「そっとしておけ。すぐにもとの巣に帰る」
 と、藤吉は言うが、恐竜は一向に引き下がろうとしなかった。

 それどころか大きな口を開け真っ赤な喉の奥を曝け出したり、体の割に大きな顔をブンブン振り回したり、このポーズは威嚇しているか、攻撃態勢に入ったかどちらにしか思えなかった。

「グガァァァオ」
 巣に帰るどころではない。涎(よだれ)を垂らした大きな口を思いっきり開けて、藤吉を襲った。
「はぁっ!」
 バネが撥(は)ねたような動きで真横に飛び、刀を上段に構えた。

「藤吉! 絶対に殺(あや)めてはならん!」
「いずれ絶滅するのなら、ここでいっそ!」
 凍てつく冷然としたイチの口調に、険しい声で返す野武士。

「馬鹿なことを申すな。数少ない個体ほど歴史的価値があり、時間流的にも意味を持っている。絶対に殺してはならぬ」

 厳しい言葉で藤吉を制するイチ。野武士は眉を歪めて半拍ほど睨み返したが、ひとうなずきすると、茂みの中に飛び込んだ。

「すんげーー」
 真剣(しんけん)があれほど切れ味がいいとは思ってもいなかった。まるで伐採機だ。みごとな切れ味でシダの太い幹がスパスパと切り落とされていく。藤吉はその枝に絡みつくツタを解くと手際よくねじり、ロープ状のものを作り出した。

 完成したその端を握ると、刀の柄を銜えて風のように舞い戻り、青黒い恐竜の背に飛び移った。
「せぇぇいっ!」
 涎(よだれ)を滴(したた)らす真っ赤に裂けた口に、ツタのロープを噛(かま)し、それをぐいっと引いた。
「どうぅどうぅ!」
 片手でツタの束を引き、片手を高だかと挙げてバランスを取る。まさにロデオだ。

 異物が背に乗った不快感を払拭しようと、恐竜の子は暴れるが、藤吉は野生の馬でも馴らすかのような素振りで、ゴツゴツした硬いヒダの首をなだめるように叩き、声をかける。

「どうっ、はぁっ、ほら、静まれ、だぁぁっ!」
「グケケケケケケ」
「うあぁぁ!」
 トカゲ野郎は背中に藤吉を乗せたまま、後ろ肢でそそり立ち、俺へとめがけて突進してきた。
 大型バイクといっても、天に向かってそそり立てば、そこそこでっかい。

「テルそこをどけ! まだ操縦でききぬ」
 片手でバランスを取り、立ち上がった恐竜から振り落とされないように声を上げる、カウボーイさながらの藤吉だ。度胸があるのか無鉄砲なのか。

「わぁぁぁぁ」
 俺は自分が真っ裸(ぱ)なことを忘れて、下流へと走った。
 その後をツタのロープを轡(くつわ)にしたでっかい爬虫類が、藤吉を乗せて追いかけてくる。

「でわぁぁぁぁ!」
 サクラたちが輪になって楽しんでいるところへ転がり込んだ。

「きゃぁぁ」
 サクラの妙に艶かしい声など耳に入らない。

「お、おい。お前ら逃げろ。恐竜だ。恐竜が追いかけてくる」
「て、テルぅ……」
 片手で目を隠した真似をし、キッチリ隙間から覗き続け、
「あんたも恐竜が出てるよ」
 上半身より、やや下方を指差しやがった。

「わぉぉぉ」

 両手で自分の恐竜を隠し、足をバタバタしているところへ、本物の恐竜にまたがった藤吉登場。その前へテツが飛び出し、全身の毛を逆立て唸りを上げた。

「うわぁおぉぉぉぉぉぉぉ!」
 こっちも仰天だ。

 毛を逆立てたテツのボディは倍ほどに膨れ上がり、壮絶なオーラみたいな風が辺りを吹き荒らした。
「なんだよコイツ……」
 大型重機の先っぽにも似た頑強な爪を岩に喰い込ませて、白い粉塵を舞い上がらせ、双眸は紅蓮(ぐれん)のごとく燃え上がり、真っ白な牙をザンッと突き出した。それはいままで見せたことも無い恐ろしい表情だった。

 そのとてつもなくパワフルな威嚇は、恐竜をも静寂へと導いた。
「どうどう」
 そして野武士の慣れた手つきでさらにおとなしくなり、太い腕で握られた手綱で頭を左右に振られ、尻をひと蹴りされると、そいつはトツトツと歩き出した。

「よし。もう少しだ。テル。その肉の塊をこっちへ放ってくれぬか」
 俺はケツ丸出しのまま、黒猪の片股の肉を恐竜の前に放った。
「ほら。腹が減っておったのだろう。好きなだけ食え」
 手綱で誘導して、その横へと飛び降りた藤吉が、肉塊を手で掴み、恐竜の口の中に投げ込んでやる。
 そいつは、キューとか可愛い鳴き声を上げると、むしゃりむしゃりと猪肉に牙を差し込んでいった。

「騒がせたな……」
 ふうと一呼吸の野武士と、
「よかろう。問題ない」
 弛緩したイチは刀を背中に戻し、テツも岩から爪を引き抜き、一瞬で温和な姿に戻すと、クルミの前へ歩み、すとんと、お座りをして彼女の様子をうかがった。

「問題有りありだぜ!」
 股間を両手で隠しながら叫ぶのは俺さまだ。

 藤吉は子恐竜の向こうに隠れていて上半身しか見えていないが、俺は真っ裸(まっぱ)のまま、サクラたちの前で立ち尽くすという醜態を曝しながら息巻いた。

「あんな緊急時でも現時の生き物に手出し無用なのかよ? なのに俺たちの命は軽視すんだなお前」

 ついでに俺の可愛い恐竜ちゃんを隠すものは無いかと地面を探るが何も無い。
 二個目の猪肉の片股を子恐竜に与えていた藤吉も、女性二人の前でいつまでも裸体を曝け出している場合ではない、と悟ったのだろう。
「これを使え」
 大きなシダの葉を刀で切り落として、俺へと投げて寄こした。
 それを拾い上げ、前を隠しつつ、
「俺だってこれから先、何かをやらかす人物になるかもしれないじゃないか。こんな恐竜とどっちが影響あるんだ。えらい迷惑だぜ」

「お前の将来は、たいしたことは無い」
 と言ってから、ちらりとサクラを見据えてから、
「だがその子供は重要だ……」
「俺の子? 結婚すんのか俺……だ、誰とすんだろ」
 この手の話しに興味が無いはずがない。できたらクラスのアイドル、野々村みなみちゃんぐらいの子がいいな。

 イチはちらりと意味ありげにサクラの顔を見て、さっと視線を逸らした。
「……ぐっ。マジかよ」

 ──ま、この話題はよしておこう。将来が不安になることは避けておきたい。


「どしたの?」
 サクラの顔がまぶし過ぎてよく見れなかった。

 全裸をサクラに披露してから、何か吹っ切れたのか、気分が落ち着いた。アイツもなんだかご機嫌な様子だし。ま、当たり障り無しということで収めておこう。それよりもだ。

「うむ。なかなかなよい乗り心地であるぞ」

 問題はこいつだな。藤吉だ。
 馬に乗り慣れているとはいえ、爬虫類をその代わりにしやがって……。これでいいのか?
 恐竜って毛が生えてんだ──という新たな事実を目の当たりにして、片目ですがめる。

 俺たちも荷物をすべてそのゴツゴツした背中の突起物に引っ掛けて、ちょっとは利用しているけど……。
「イチ、これでいいのか?」
「問題ない」
 白磁のような滑々した面(つら)は何の感情も浮かべてなかったが、切れ長の目尻がわずかに穏やかだったので、まずは問題ないのだろう。だけどそれに熱い視線を飛ばしたのはサクラだった。

「すごいなぁ。本物の恐竜だよテル。うちの弟に見せてやりたいなぁ」
「中二のくせにいまだに恐竜オタクの、あのバカか」
「うん。すごい本たくさん持ってるんだよ………」

 写真でも取っておくか?
 と訊ねようとするが、彼女は思案顔で小首を傾けている。

「どうした?」
「うん。あのね……」
 何かを思い出したのだろうか、視線を少し持ち上げて、
「たしか恐竜って六千五百万年前に絶滅したんだよ。ここって紀元前四百万年って言ってたよね」
「ああ。言っていたな」
「計算合わないじゃん」
 二人して互いにイチへと振り返る。

「………………………」

「こら、イチ、黙り込んでいる場合じゃないぞ」
 トボトボ俺の後ろから付いてくる忍者野郎に目を吊り上げてやった。

 ヤツは白い顔を地面に向けたまましばらく黙り込んでいたが、
「さっき絶滅危惧種だと言った」
 何だか投げやりな返事をした。

「六千万年もズレている理由はどう説明すんだ」
「そなたらには関係が無い。こちらサイドの問題」

 やっぱこいつバカなんだ。無表情を貫き通そうとしているが、微妙にうそっぽい言い訳が、何かをごまかそうとしている気配で満ちていた。

「その問題とやらに、俺たちはまた付き合わされたんだな?」

「……………………………」
 俺の問いかけに、イチはびっくりしたような目をした。

 解りやすいヤツ──訳ありだと自ら白状してやがる。

「で、その問題とは何だよ」
「その恐竜は六千万年前から誤ってこの時代に連れてこられた。迷い恐竜だ」
 ベラベラと吐露しているけど──とんでもないことを言っているということを認識してんだろうか?

「それではここにいるワシらと同じ、住む時代が異なるということだな」
 迷い恐竜の背にまたがっていた野武士の頭領がひょいと飛び降り、そして続けて言う。
「このトカゲも連れて、ワシらはどこへ向かって歩いておるのだ?」

「────────」
 先頭のテツが振り返り、イチの目をじっと見た。何かを命じている気配が漂う。

 俺の読みもまんざらではないようで、イチはきゅっと結んでいた薄い唇を解くと、
「その恐竜を無事に送り届けるのが、姫様に与えられたもう一つの課題だ」

 まさに社会勉強か………。それに俺らまで巻き込まれて──。

 ……ん?
 送り届ける?
 どこへ?

 ちゅうか、宅配便まがいのことを俺たちにやらせるのか?
 何ぬぅぅぅーーっ!


「えれぇぇぇー、迷惑だぜ!」
 叫ばずにいられなかった。

「テル………」
「ん? 何だよ、サクラ?」
「パンツはいてよ」

「どぁぁぁぁぁ!」
 またもや俺の恐竜がシダのあいだから顔を出していた。
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