TowerDungeonOnline(タワーダンジョンオンライン)

小佐古明宏

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1章 始まりの街

4話 懐かしい友人

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 昼食はそーめんを冷蔵庫に冷やしていたので、それを食べた。食べながらスマホを操作し、亜里沙にLINEを送る。選んだ職業を教えて、夜に会う時間を確認し合う。

『そうなんだ。お姉ちゃんも初めての職業を選んだんだね!』

 その返事を見て理沙は首を傾げる。

『亜里沙は魔法少女だろ? 広まっている職業じゃないのか?』

 ネットの掲示板でも魔法少女の衣装を着たプレイヤーがSSを挙げている。亜里沙がLINEで送ってきたのも似たような衣装だ。フリルの付いた可愛らしいスカートを履いていた。

『違うよ。私の職業は魔砲少女だよ。砲撃魔法を得意とする職業で、すっごく強いんだから!』

 思わずそーめんを喉に詰まらせかけた。

『そ、それは楽しみだな』

『うん、お姉ちゃんのゴーレムも楽しみにしているよ! じゃ、夜の20時に、始まりの街の中央の噴水前で!』

『了解、その間、レベルを上げておくよ』

『うん、一緒に狩りに行ける程、強くなっててね!』

 亜里沙とのLINEを終わらせて、昼食の片づけを済ませる。亜里沙の期待に応える為に、レベル上げを行おうと、ログインをしようと思った時、

「うん?」

 綾からLINEが届いた。

『こんにちは理沙ちゃん、少し、聞きたい事があるのだけどいいかな?』

『別にいいけど。何を聞きたいんだ?』

 困った顔の顔文字付きで送られてきたメッセージに返事をする。

『タワーダンジョン・オンラインって、ゲーム、理沙ちゃんはプレイしてる?』

 思いもよらない質問に、理沙は驚く。

『今日からプレイし始めた』

『そうなんだ! じゃ、一緒にプレイしない?』

 どうやら綾もTDOをプレイしているようだ。

『いいけど、始めたばかりで弱いぞ』

『大丈夫だよ。私もつい最近始めたばかりだから』

 初心者だと話す。聞いてみると亜里沙と同じ時期、1週間前に始めたようだ。出版社に持ち込みした漫画が採用されて、専属の編集者が付いたらしく、その人に勧められて始めたらしい。

 その編集者曰く、TDOを題材にした漫画を描かないか? という話で、実際にプレイするように言われ、始めたらしい。TDOの人気に乗ろうという魂胆で、同人誌でも題材にされている。

 それを本格的にコミック化させるには同人誌以外の話題が必要である。その話題を探す為にTDOを始めるように言われたらしい。

『それで、漫画の主人公を、理沙ちゃんにしたいのだけど…』

『恥ずかしいけど』

 暫く返事がない。

『恥ずかしいって、私の方が恥ずかしいよ! 襲われた動画と写真が世間に広まるし、私の事、知っている人もいたんだよ! それに、ストーカーに合うし、警察のお世話になっているし、今も、家の周りには警察の人が見張りをしてるんだよ!』

 久しぶりに綾の愚痴を聞いた気がする。

『理沙ちゃんが恥ずかしくないのは不公平! だから、理沙ちゃんを主人公にした漫画を描くの! だから、協力してよ!』

 理沙に拒否権は無い。そう自覚した。今の綾の状況を作り出したのは自分だからだ。本人の許可を得たからと言って広めたが、今では後悔している。離れ離れになり、凄く、後悔している。

『わかった。始めたばかりで弱いけど、漫画? の創作に協力するよ。もうすぐログインするけど、綾はどうする?』

『私も入るよ。理沙ちゃんは…始めたばかりだから、始まりの街にいるよね?』

 ログアウト場所はチュートリアルの空間だが、外に出ればすぐに街へ戻れる。

『そうだな。待ち合わせ場所は、噴水があるらしいから、そこでいいか?』

『うん、いいよ。理沙ちゃんのプレイキャラ名を教えて?』

『リサ、分かりやすくていいだろ?』

『そうだね。私は、アヤネだよ。職業は…見てからのお楽しみだね』

 ニヤリと笑う顔文字が付いていた。

『なら、私も内緒だ。楽しみにしている』

『うん、私もだよ!』

 満面の笑顔の顔文字だ。

『じゃ、先にログインしてるね。噴水の場所で待ってるね』

『了解』

 綾とのLINEを終えると、理沙はスマホを持ってベッドへ向かう。時刻は14時前でLINEをしていてログインが遅くなった。理沙は、ヘルメットの端末を被ると、ベッドに横になり、電源を起動させた。

 再び、電脳世界、TDOの世界へと戻っていく。

                     ▽

「ん?」

 意識が覚醒すると、ログアウトしたチュートリアルの空間だった。リサは光る場所へと歩いて行くと、通常の空間へと帰還する。出て来た場所は、始まりの街の出入り口で、複数のプレイヤーが門を行き来していた。

 リサは邪魔にならない様に端へと寄ると、周辺を見渡す。誰も目につかないような場所を選ぶと、MPゴーレム作成を行う。街中で2mになるゴーレムを連れて歩くのは目立つ。

 なので、サイズを小さくしたストーンゴーレムの作成に取り掛かった。一度作成したストーンゴーレムの情報はリストに登録されており、いつでも呼び出して作成できる。

 今から作るのは15㎝ぐらいのサイズで、人形の様なストーンゴーレムだった。しかし、石の素材では15㎝ぐらいのサイズのゴーレムが作れなかった。石以外の素材で作れる事に気づく。

「石を素材にする以外には…」

 チュートリアルではストーンゴーレムを作成したが、人形サイズとなると、別の種類のゴーレムになる。素材は木を使用しており、軽くて持ち運びが可能なゴーレムになる。

「ウッドゴーレム作成」

 手ごろなサイズの木の枝を集めて、MPゴーレム作成を行う。木の枝同士が融合しだし、人型を作り出す。持ち運びができる15㎝サイズの木で出来たゴーレム、ウッドゴーレムが完成した。

 消費したMPはストーンゴーレムより少なめの100を消費する。綾に見せる為なので、強くなくても良いと考えた。

 ウッドゴーレム
 種族:ゴーレム
 HP:420/420
 MP:620/620
 STR:160
 VIT:210
 AGI:210
 DEX:150
 INT:310
 LUK:120

 共有スキル
 全属性耐性:LV1

 弱点:炎

 強くなくても良いと思っても、素のリサのステータスを元にMPが足されて作られたウッドゴーレムは、初心者プレイヤーの脅威になりそうな強さだった。

「ステータスは高くても、弱点を狙われるとすぐに倒されるしね」

 ウッドゴーレムは木で出来ている為、炎の攻撃に弱い。その代わり水の攻撃には強い。TDOには属性補正と言うシステムがあり、不利な属性に大きなダメージを与える。

 なので、ウッドゴーレムには共有スキルで、全属性耐性のスキルを付けた。これで少し、燃えにくくなる。

「そろそろ、行こうか」

 ウッドゴーレムに命じて歩かせると、大きくジャンプさせる。木を材料に使っているだけあり身軽な動きだ。ウッドゴーレムを右肩に乗せると、リサは街の中へと入っていく。

 待ち合わせの中央にある噴水には、多くのプレイヤーが集まっていた。始まりの街のシンボルとなる大きな噴水は、目立って分かりやすい。リサは先に待っていると思われる綾を探す為に周辺を見渡す。

「……あのプレイヤーか?」

 綾から聞いた名前、アヤネと付いたネームのキャラを見つけた。そのキャラはリサとは異なり長身でグラマーなパンツスーツ姿の女性だった。リサは、他にアヤネというプレイヤーがいない事を確認すると、噴水の淵に座りスケッチブックを開いている女性プレイヤーへと話しかけた。
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