TowerDungeonOnline(タワーダンジョンオンライン)

小佐古明宏

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1章 始まりの街

7話 決闘

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「別にいいよ。クエストは私達だけで十分」

 声をかけてきた男性プレイヤーの実力は不明だが、課金プレイヤーだと推測できた。腰に剣をぶら下げて、装飾の施された鎧を身に着けているが、これはネットで調べた課金装備だ。もう1人は、柔道着を着ているが、これはリアルコスチュームと言う課金装備だ。アバターの見た目を変える物だった。

「見たところ君は初心者だろ? ここは先輩の言う事を聞くべきだぜ」

「そうそう、俺達が守ってやるからよ。だから、付き合えよ」

 強引に誘ってくるので、リサは、振り返りもう一度受付嬢に話しかける。

「テンプレだけど、ここは力ずく、拒否してもいいのか?」

「はい。初心者への決闘によるペナルティはありませんし、初心者が受けるペナルティもありません。ここは、テンプレを乗り切ってください。手段は問いません」

 ギルドカードを手に入れて早々没収されるのは勘弁してほしい。リサの問いかけに受付嬢のNPCは応え、内容を理解すると、

「付き合うのは面倒だ。それに、弱い奴に守られたくない」

 リサは見下す様にして男性プレイヤーに返事をした。

「おい、弱いとかどういう事だ」

「俺達は弱くないぜ」

 実際、2人の男性プレイヤーは弱くはなかった。課金プレイヤーであり、金の力で冒険者ランクを上げている。

「そりゃ、課金していたら強いでしょう。でも、しょせんはお金の力による強さ。そんな、課金プレイヤーの手助けなんて受けたくないよ。面倒だし、私達はのんびりと、プレイしたいの」

 リサは話をしながら、MPゴーレム作成を使用する。右肩に乗るウッドゴーレムのステータスを引き上げる。リサがウィンドウを開いている仕草をして、男性プレイヤーは警戒するように構える。

 しかし、既に遅く、ウッドゴーレムには追加で400のMPを注ぎ込んだ。これで、ウッドゴーレムのステータスは、チュートリアルの時に作成したストーンゴーレムと同じ強さになる。

「俺達が弱いかどうか、決闘してみるか?」

「2対1は卑怯だから、後ろの女性も参加させるか?」

 リサの後ろにはアヤネが蒼褪めた顔で立ち尽くしていた。

「いいよ。私にはこの子がいるし、1人じゃない」

 右肩のウッドゴーレムが床に飛び降りる。見下ろした男性プレイヤーの目で、ウッドゴーレムがシャドウボクシングをしていた。切れのいいパンチを繰り出している。

「ふん、そんな木の人形に何が出来るというんだ」

「俺達を馬鹿にしてんじゃねぇ」

 リサと男性プレイヤーのやり取りを、野次馬と化したプレイヤー達が眺めていた。ギルド内での起きたトラブルに誰もが興奮していた。

「おいおい、初心者相手に大人げないぞ」

「そうそう、可愛い女の子をいじめて楽しいのか~」

 男性プレイヤーに対する批判が多い。

「うるせぇ! 外野は黙ってろ」

 男が腰にぶら下げていた剣を抜いた。その剣が炎に包まれる。

「俺は魔法剣士だ。そんな木の人形、焼き切ってやるぜ」

「その人形を合わせて2対2の決闘を挑むぜ」

 ふと、リサの目の前にメッセージが表示される。『ジョージ&タクマから決闘を申し込まれました。承認しますか? YES/NO?』と表示され、リサは当然、YESを選択した。

 3人と1体を取り囲むように、ギルドの床に巨大な魔法陣が出現した。決闘を行う為のフィールドが完成する。これで外部からの干渉は一切できなくなり、手助けも受けれなくなる。

「リサちゃん…」

 アヤネが我に返り、フィールドの外で不安そうに声をかけてきた。

「大丈夫、問題ない。相手、弱いから」

 挑発により、相手を怒らす。リサの喧嘩するパターンだ。怒れば動きが単調になる。読みやすくなり、攻撃もかわしやすい。リサは剣を持つ相手に素手で挑む程、愚かではない。

「ウッドゴーレム、魔法剣士を攻撃」

 命令するとウッドゴーレムが魔法剣士へ走り出す。リサは柔道着を着た男性プレイヤーと対峙する。

「俺の相手は、本人かよ。はぁ~女は殴りたくないぜ!」

「!?」

 咄嗟に体をひねり避けたが、リサは小さな衝撃を受けて後ずさりする。HPが少し減っていた。

「拳圧による衝撃波を見切るのか。なかなかやるね!」

 そう言いながら、右、左と腕を伸ばして拳から衝撃波を放つ。リサはAGIの高さを利用して回避するが、完全に避け切れていない。初心者装備に傷が少し付くが、ダメージは10ぐらいで小さい。しかし、確実にHPは減っている。

 だが、リサのステータスは通常のLV:1のプレイヤーより遥かに高い。相手も、一向に命中判定が当たらない事に、怪訝そうな顔を示す。

「ちょこまかと…いい加減に…ぶべぇえ!?」

 大きく背中を反らした男性プレイヤーは、そのまま割れるようなエフェクトを作るとその場から消えた。刹那、『勝者! リナ&ウッドゴーレム』と表示され、決闘は終了した。

「ほら、弱かった」

 リサは手招きすると、少し焦げ目の付いたウッドゴーレムを抱きかかえる。

「ごくろうさま。ありがとう」

 軽く突くと、意志を持っているかのように照れ臭そうに頭を撫でていた。リサは柔道着を着た男性プレイヤーの相手をしている間、ウッドゴーレムは魔法剣士を倒していた。

 炎の包まれた時は一瞬焦ったが、ウッドゴーレムのHPは自動で回復していた。これもHP自動回復のスキルのおかげである。弱点も、全属性耐性を共有させたおかげで、軽減されていた。

 柔道着の男の後ろで繰り広げられていた魔法剣士とウッドゴーレムの戦いは、リサの予想通りの結果となり、時間稼ぎの末、もう1人の男性プレイヤーを倒した。

「すげぇええ!!!」

「何なんだよ! あの木の人形!」

「マジか!? 焼かれたのにピンピンしてる」

 決闘のフィールドは消え去り、野次馬達がリサの元に集まる。リサは、ウッドゴーレムを右肩に乗せると、溜息を吐く。

「友達の所に行きたいのだけど」

 取り囲む野次馬達を睨むと、ウッドゴーレムが動き、リサの頭の上に乗り、シャドウボクシングや、蹴りのモーションを行い威嚇した。決闘を申し込んだプレイヤーと同じようになりたくなければ道を開けろという、無言の威圧が放たれていた。

 野次馬達が道を開けると、呆けているアヤネの元へと歩きだす。

「うん? どうかした?」

「え、いや。リサちゃんの人形、強いんだね」

「丹精込めて作ったから」

 実際にMPを大量に使っている。リサは周りの空気に気まずくなると、

「そろそろクエストに行こうか」

「そ、そうだね」

 苦笑いを浮かべてアヤネが隣に並ぶ。ギルド内で起きた、初心者に対する決闘は、誰もが、課金プレイヤーが勝つと思っていた。予想は裏切られ、初心者のプレイヤーが勝った。

 リサの勝利は、始まりの街に直ぐに広まり、ゲームにログインした初日で、有名人となった。その事をリサは知らない。

                       ▽

 決闘に敗れたプレイヤーはどうなったか?

 2人はそれぞれのスタート地点に復活した。リサと同じ、初めてログインした殺風景な部屋で目を覚ます。各々、部屋は隔離されているが、目を覚ました魔法剣士のジョージと、格闘家のタクマは同じ事を口にした。

「「木の癖に強すぎだろ!!!」」

 実際、リサの作ったウッドゴーレムは2人の実力でも、倒す事は出来なかった。課金をしていても勝てない相手に、

「「もう、関わるのは止そう」」

 もう関わらないと心に決めた。幸い、初心者相手に挑んだ決闘なので、ペナルティは無かった。これが、普通のプレイヤーだと、ペナルティを受けている。その受ける内容は様々だが、所持金の半減、レアアイテムの紛失、ステータス値の半減24時間、等がある。

 今回はリサという初心者相手への決闘なので、何度も言うが、ペナルティが無くて非常に助かった。しかし、2人は別の意味で困る事になる。

 初心者相手に負けたプレイヤー。

 そのレッテルが付きまとう事になる。だが、これを気に、ジョージとタクマは、初心者、特に、女性や少女に対する強引な誘いを行わないようになった。リサが受けた決闘は、2人を更生させ、良きプレイヤーへと生まれ変わらせていたが、当の本人はその事を知るのは、もう少し先になるようだった。
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