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1章 始まりの街
21話 GM
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カフェに到着すると、時間的に人が少なく好きな席に案内された。このカフェはプレイヤーとNPCが共同で経営しており、マスターがプレイヤーらしい。今は、リアルの方で店を切り盛りしている。
マスターは女性のプレイヤーらしく、カエデ曰く、凄くきれいな女性らしい。エレナとカエデはこの店を知っていたらしく、メニューも詳しかった。
「奢るから好きなの頼んで」
「良いの?」
「良いのですか?」
「良いよ。儲けたから」
合成の巻物を購入しても1千万ギルがまだ残っている。リサとしては、お金の使い道は今のところあまりない。ゴーレムにかかる費用もMPで済むので、お金は装備品ぐらいしか必要ない。
(そういえば、装備品を買ってないな…)
未だにリサは初心者装備で、鎧など何も身に着けていない。最初にログインした装備のままだ。よく見ると、エレナもカエデも、それぞれ違う衣装を身に着けている。
「その装備、課金装備か?」
「いいえ、NPCのコスプレ店で購入しました」
「いろんな職業の服装があります。性能は低いですけど」
初心者装備より補正はあるらしい。リサはそれを聞きながら、2人にポイントの振り分けを支持する。
「クエストの報酬で称号と共にポイントを貰ったと思う。どういう振り分け方にするか、考えて振る様に」
「はい!」
「わかりました」
2人もウィンドウを開いているのか真剣な表情で作業をしている。リサも自分のステータス画面を表示して、ポイントの振り分けを行う。
リサ
種族:人間
職業:ゴーレムクリエイター
LV:45
HP:870/870
MP:2110/2110
STR:95
VIT:280
AGI:170
DEX:80
INT:700
LUK:60
ステータスポイント:0【1225】
共通スキル
HPアップ:LV3…+300【25】
MPアップ:LV7…+700【325】
STRアップ:LV2…+20【15】
VITアップ:LV3…+30【25】
AGIアップ:LV2…+20【15】
DEXアップ:LV2…+20【15】
INTアップ:LV3…+30【25】
LUKアップ:LV4…+40【45】
全異常耐性:LV3【45】
全属性耐性:LV3【45】
専用スキル
MPゴーレム作成:LV3【80】
HP自動回復:LV1【50】
MP自動回復:LV3【80】
共有スキル:LV3【80】
ゴーレムクリエイト:LV1【50】
魔改造強化:LV1【50】
パーツ作成:LV1【50】
ゴーレム格納庫:LV1【50】
ゴーレムBOT:LV5【150】※プレゼントスキル
スキルポイント:5【1225】
称号:ゴブリンハンター【100/100】ホブゴブリンハンター【100/100】王殺【100/100】獣ハンター【100/100】ダンジョンマスター【0/0】
称号で得たポイントでステータスとスキルを上げた結果、MPが2000を超えた。これで、オプションスキルを2つ付与する事が出来る。リサは、作業を終えると、注文がいつの間にか届いていた。
「リサさん、終わりました?」
「ん? ああ…待たせたか?」
エレナとカエデの前にも注文の品が置かれていた。好きなのを頼んでいいと言ったので、2人が選んだのは3段重ねのパンケーキだった。ドリンクは果汁ジュースを選択していた。
「美味しいな…甘くて」
「はい! リアルの店でも提供しているらしいですよ。遠いから行けませんけど…」
エレナは残念そうに言いながら、パンケーキをナイフで切り口に運ぶ。甘いシロップにとろけたバターを絡めて食べると、凄く美味しい。果汁ジュースもリンゴを絞っており美味しかった。
(明日、アヤネとアリサとリコを連れてこよう)
リサは食べながらメールを開き、入力を行う。
件名:ごめん、手伝えないかも
差出人:リサ
宛先:アリサ
本文:ギルドで予想以上に時間をかけてしまった。明日も、バイトだからもうすぐログアウトする。戻る事は出来ないから、トウジョウ君だけを返そうと思う。後、エレナとカエデの都合を聞き、彼女達を向かわそうと思う
送信すると、暫くして返事が届く。
件名:しょうがないね~
差出人:アリサ
宛先:リサ
本文:わかったよ。こっちも、アヤネお姉ちゃんと、リコがログアウトするから、私も落ちようと思うの。後、ゴブリンキングの魔石を40個、ゴブリンキングの骨格を40体、ゴブリンキングの左耳をドロップアイテムで回収したよ!
リコがLUK高かったから、ドロップしたね!
ドロップアイテムは全て貰ったから、明日、渡すね
ゴブリンキングを倒す手間が省けた。アリサたちもログアウトするとなると、トウジョウ君を向かわせても意味はない。
「……2人の時間はいつまでだ?」
「ええと…お母さんが24時にはログアウトしなさいって…」
エレナは母親に言われてそろそろ落ちるらしい。既に24時を10分程過ぎていた。
「私も、親が煩いので、落ちます」
カエデも親との約束があるのか、ゲームの時間が決められていた。リサは、メールで、アリサに2人もログアウトする事を伝え、自分はトウジョウ君をBOT化させて狩り放置をする事を伝える。
アリサからずるい! と件名で届き、本文は、おやすみと書かれていた。フレンドリストのアリサの表示がログアウトに変わった。アヤネもリコも既にログアウトしている。
「2人共、明日は何時にログインする?」
「ええと…20時ぐらい?」
「私は19時半ぐらいです」
時間を聞き、少し遅いが20時にログインする約束を交わした。
「ごちそうさまです。ありがとうございました!」
「ありがとうございます」
会計を済ませるとリサは2人をギルドへと連れて行く。2階の個室まで見守ると、リサはモックンを連れて街の中を歩く。
(ついて来ているな)
カフェを出た時から、リサは視線を感じていた。不快な視線で、まるで獲物を見つけたような感じの視線だった。しかも、1つじゃない。複数感じる。リサは、適当に人の少ない場所を選び、誘い込む。
「そろそろ出て来たら?」
リサは、移動しながらモックンをバージョンアップさせていた。万が一、襲われそうになればモックンに守ってもらう。その為に追加でオプションスキルも付与した。MPも2100までつぎ込んだ。
モックン
種族:ウッドゴーレム
HP:5070/5070
MP:6310/6310
STR:2215
VIT:2380
AGI:2290
DEX:2180
INT:2800
LUK:2160
共有スキル
全属性耐性:LV3
AGIアップ:LV2…+20
STRアップ:LV2…+20
弱点:炎
オプションスキル
木飛剣…MP100消費する毎に、消費したMP×STR値に匹敵する木で出来た剣を飛ばす。MPが続く限り、いくらでも出せて飛ばせる
木壁…MP100消費する毎に、消費したMP×VIT値に匹敵する木製の壁を召喚する。縦横2m、厚さ30cmになり、MPが続く限り、いくらでも設置できる。炎に弱いが、全属性耐性の効果を得られる。
攻撃と防御を兼ね揃えたモックンが完成した。始まりの街でステータスが2000を超えているプレイヤーはいないと思う。モックンが負ける事はないと思うが、リサは警戒しながら、相手の動向を見守る。
「気づいてたのか」
建物の影から出てきた男は、スーツの様な服を着ており、金縁の眼鏡を掛けていた。ハーベルというプレイヤーだが、リサは見ながら少し違和感を覚えた。
(おかしい? 視線はたくさんあるが、気配はこの男しかない)
見られている視線はたくさんあるが、気配は1つ。目の前の男のものしかない。
「初めまして、リサさん」
「初めましてだな」
特に命令していないのにモックンが自発的にリサの前に立つ。
「そう、警戒しないでください。私は話をしに来ただけです」
愛想の良い笑みを浮かべハーベルが話し出す。
「この度、TDOをプレイしていただきありがとうございます」
リサは不思議そうに首を傾げる。まるでGMの様な発言だった。否、よく見ると、ハーベルの後ろにGMと書かれていた。
「GMが私に何の様だ? まさか、BOTが不味かったか?」
「いいえ、そうではありません」
BOTの件が咎められると思っていたが違っていた。
「リサさんに、お願いがあり参りました」
ウィンドウを開くようなそぶりを見せると、インベントリから用紙を取り出した。
「今後、予定されている大型のアップデート後に、是非、リサさんに参加してほしい事があり、参りました」
取り出したカードをリサへ差し出す。モックンが受け取り、リサに手渡される。その用紙には、【4国対抗タワー強奪戦】と書かれていた。
「マンネリ化したTDOで大規模なイベントを考えております。そのイベントへの参加者を探しており、是非、リサさんにも参加して頂きたいのです」
リサは受け取って用紙を見ながら、話を聞く。内容的には、特別なフィールドを用意し、4国に属するプレイヤーがタワーを奪い合い競うというイベントらしい。
国に属せば、1年間他の国へ移住する事が出来ないという縛りがTDOにある。その縛りが嫌で、国に属さないプレイヤーもいるが、ボーナスを受ける事が出来ない。
国に属せばステータスの上昇や、国が所有するメインタワーの攻略が可能となる。メインタワーは国の首都に設置され、首都に入るには、国に属さなければならない。
メインタワーを攻略して、ディアナのタワーに挑む権利が得られる。別に、ディアナのタワーを目指さず、メインタワーも挑ます、各国のサブタワーを攻略するだけなら、別に属さなくてもいい。
「企業との契約の為、一度国に属すると1年間は離れる事が出来ません。その為、他の国へ行く事が出来ず、不満を持つプレイヤーが増えました。そして、属さないプレイヤーも増え、国の利益が減少し、投資してくださる企業への利益も減りました」
話を聞くと、国に属しているプレイヤーが課金をすると、その課金額の半分が、投資している企業の利益になるらしい。属さないプレイヤーが課金すれば、TDOの運営が全額利益になるが…。その事で、投資している企業と揉めているらしい。
聖王国ベリアルは、チケット販売の企業、宗教団体が投資をしている。原則、企業からの投資のみ受け入れているが、聖王国ベリアルには、宗教団体が関わっている。ゲームの中にまで宗教を持ち込むのはどうかと? 運営側で話し合ったが、面白そうと言う事になり受け入れた。
その為、聖王国ベリアルは人族至上主義の国と言う設定が設けられ、人間以外の種族を受け入れないようになった。職業でも勇者、賢者、聖女を多く勧誘し、勇者PTがいくつも存在する。
エドリア王国は、飲食企業が投資をしており、リアルで提供している料理をゲーム内でも取り扱っている。食べた時に味と触感はあるが、本物を食べたいと思うプレイヤーがおり、実際にリアルの店に行く事がある。宣伝効果もあり、課金以外でも利益を得ている。
セイブン工業国は家電製品を扱う企業が投資しており、タワーを攻略すると、リアルで安く電化製品が購入できる。最近、印刷業界が加わり、アヤネの専属の編集者、リコの出版社も投資をしたようだ。
「そこで、国同士でタワー強奪戦を行い、奪った国のタワーを1カ月、使用できるというイベントを考えました。これで、国に属さないプレイヤーも属すようになると考えましたが…」
リサの持つ用紙には、所属してほしい国名が書かれていた。エルフレア王国であり、投資しているのが企業ではなく、農業・畜産業・酪農業・林業などを仕事としている者たちからの投資だった
「投資額が低く、報酬に魅力を感じない為、エルフレア王国に属するプレイヤーが少ないのです。リサさんには、是非、この国に属して頂きたく…」
エルフレア王国のタワーで得られる報酬は、各業種が栽培、飼育した物が貰えるが、魅力はあまり感じない。貰える量も少ないように思える。他の国の報酬を考えると、貧相に見える。
「強奪戦を始めても、エルフレア王国のプレイヤーが少ないから、直ぐに負けてしまう。戦力のバランスを調整したい為、私に属してほしいと」
「はい、リサさんのゴーレムなら戦力として十分に補えますから、それに、我々としても、面白い対戦を提供したいですし」
不敵に笑うハーベルにリサも小さく笑みを浮かべる。
「私も協力したいけど、ログイン時間は短い。私の代わりにゴーレムを操ってくれるサポート的な存在が欲しいと思う。それが可能なら、エルフレア王国に属しても構わない。只、課金はしないけど」
課金すればエルフレア王国に投資している各業種の人達へ利益が送られる。しかし、リサは課金する気は全くない。
「ええ、別に構いません。投資してくださっている方々も、利益はあまり求めてません。只、自分たちの作った物、育てた物を食べてもらい、口コミでいいので広めてほしい。そう言っておりました」
課金で得られる利益より、自分たちの物を直接購入して得る利益の方が、生産者としてモチベーションになる。やる気が出るという話だ。
「なら、協力するよ。そのイベントはいつ開催される?」
「リサさんがエルフレア王国に属してから1週間後に開催する予定です。それまで、システムの調整や、強奪戦を行うフィールドの開発を行います」
リサは、まだ、エルフレア王国に行くつもりは無かった。始まりの街で、出来るだけ戦力の増加を図ろうと考えていた。
「対戦国の戦力は? 運営なら把握しているだろ?」
「そうですね。100を目安に言いますと、聖王国ベリアルが50、セイブン工業国が20、エドリア王国も20、エルフレア王国は10という感じですね」
凄く戦力負けしている。
「一応、国に属しているプレイヤーを対象にしたイベントですので、属していないプレイヤーは参加出来ないようにしようと考えてます」
「それだと、不満が出ると思うぞ」
「はい、ですので傭兵という形で参加資格を与えようと思ってます。只、国に属せれる期間は1カ月だけと言う制限付きで、同じ国へ属するには3カ月の期間は必要。こうすれば、戦力が一時的に増加しますが、1カ月すれば減ります。その間に属したら意味がありませんが…」
傭兵制度はいい考えだと思う。1カ月しかその国に属す事が出来ず、過ぎれば、3カ月経過しないと同じ国へ属せない。お試しのつもりで、国に属せば、そのまま永住するかもしれない。
「戦力の偏りが酷くなりそうな気がするが…。それをぶち壊すようなゴーレムを作ればいいか」
「そうですね。ぜひお願いします」
「なら、もう少し、ゴーレムを作りやすいように緩和をしてほしいな。ゴーレムクリエイトを使いたいけど材料が足らない。もっと、楽に…」
「今でも、リサさんはチート的な存在ですから、ゴーレムクリエイトの条件を緩和させる事は出来ません」
出来ないと言われリサは溜息を吐く。
「その代わり、サポートゴーレムについては考えておきます。どのようなタイプをご希望ですか?」
「HP、MPが無限で、それ以外は0でも構わない。MPゴーレム作成しか出来なくていいので、レベルの制限を無くしてほしい」
「つまり、死なないMPタンクゴーレムですね。自分では戦えない、MPゴーレム作成をレベル制限なしで行い、大量のゴーレムを作成すると言う事ですね」
リサの考えを把握しハーベルは怪訝そうな表情を見せる。
「その条件ですと、MPゴーレムの強さが無限になり、倒せない存在になりますね」
「それは、私が作ったMPゴーレムと同じステータスでどうだ?」
「なるほど、それでは、複製と言う事で構いませんね?」
「ん~そうだな? 複製でもいいかな? ゴーレムの兵隊を大量に作りたいし」
今のリサでは、MPゴーレムの数に制限がある。その制限無視して、同じステータスのゴーレムを大量に持つ事が出来れば? それで、リサの戦力は増す。
「わかりました。そのようにサポートゴーレムを調整いたします。入手はチュートリアルタワーを全てクリアした時、と条件を付けましょう」
「出来れば、可愛いゴーレムを希望する。見た目、人間の様なゴーレムがいいな」
「畏まりました。そのように調整いたします」
ハーベルはウィンドウを操作するような仕草をすると、リサにフレンド申請を送ってきた。
「GMなのにいいのか?」
「ええ、定期的に連絡をしたいですから、メールのやり取りで」
承認すると、リサは時刻を確認する。既に25時を過ぎていた。バイトの事を考え、そろそろログアウトしたい。
「それでは、呼び止めてしまい申し訳ございません。わたしはこれで失礼します」
「ああ、私も落ちるよ」
ハーベルはログアウトしたのか目の前で消えると、リサは急いでギルドへと向かう。今からトウジョウ君を出して狩りをする気は起きない。早くログアウトして寝たい。そう思い、2階の個室へと入ると、直ぐにログアウトを行った。
マスターは女性のプレイヤーらしく、カエデ曰く、凄くきれいな女性らしい。エレナとカエデはこの店を知っていたらしく、メニューも詳しかった。
「奢るから好きなの頼んで」
「良いの?」
「良いのですか?」
「良いよ。儲けたから」
合成の巻物を購入しても1千万ギルがまだ残っている。リサとしては、お金の使い道は今のところあまりない。ゴーレムにかかる費用もMPで済むので、お金は装備品ぐらいしか必要ない。
(そういえば、装備品を買ってないな…)
未だにリサは初心者装備で、鎧など何も身に着けていない。最初にログインした装備のままだ。よく見ると、エレナもカエデも、それぞれ違う衣装を身に着けている。
「その装備、課金装備か?」
「いいえ、NPCのコスプレ店で購入しました」
「いろんな職業の服装があります。性能は低いですけど」
初心者装備より補正はあるらしい。リサはそれを聞きながら、2人にポイントの振り分けを支持する。
「クエストの報酬で称号と共にポイントを貰ったと思う。どういう振り分け方にするか、考えて振る様に」
「はい!」
「わかりました」
2人もウィンドウを開いているのか真剣な表情で作業をしている。リサも自分のステータス画面を表示して、ポイントの振り分けを行う。
リサ
種族:人間
職業:ゴーレムクリエイター
LV:45
HP:870/870
MP:2110/2110
STR:95
VIT:280
AGI:170
DEX:80
INT:700
LUK:60
ステータスポイント:0【1225】
共通スキル
HPアップ:LV3…+300【25】
MPアップ:LV7…+700【325】
STRアップ:LV2…+20【15】
VITアップ:LV3…+30【25】
AGIアップ:LV2…+20【15】
DEXアップ:LV2…+20【15】
INTアップ:LV3…+30【25】
LUKアップ:LV4…+40【45】
全異常耐性:LV3【45】
全属性耐性:LV3【45】
専用スキル
MPゴーレム作成:LV3【80】
HP自動回復:LV1【50】
MP自動回復:LV3【80】
共有スキル:LV3【80】
ゴーレムクリエイト:LV1【50】
魔改造強化:LV1【50】
パーツ作成:LV1【50】
ゴーレム格納庫:LV1【50】
ゴーレムBOT:LV5【150】※プレゼントスキル
スキルポイント:5【1225】
称号:ゴブリンハンター【100/100】ホブゴブリンハンター【100/100】王殺【100/100】獣ハンター【100/100】ダンジョンマスター【0/0】
称号で得たポイントでステータスとスキルを上げた結果、MPが2000を超えた。これで、オプションスキルを2つ付与する事が出来る。リサは、作業を終えると、注文がいつの間にか届いていた。
「リサさん、終わりました?」
「ん? ああ…待たせたか?」
エレナとカエデの前にも注文の品が置かれていた。好きなのを頼んでいいと言ったので、2人が選んだのは3段重ねのパンケーキだった。ドリンクは果汁ジュースを選択していた。
「美味しいな…甘くて」
「はい! リアルの店でも提供しているらしいですよ。遠いから行けませんけど…」
エレナは残念そうに言いながら、パンケーキをナイフで切り口に運ぶ。甘いシロップにとろけたバターを絡めて食べると、凄く美味しい。果汁ジュースもリンゴを絞っており美味しかった。
(明日、アヤネとアリサとリコを連れてこよう)
リサは食べながらメールを開き、入力を行う。
件名:ごめん、手伝えないかも
差出人:リサ
宛先:アリサ
本文:ギルドで予想以上に時間をかけてしまった。明日も、バイトだからもうすぐログアウトする。戻る事は出来ないから、トウジョウ君だけを返そうと思う。後、エレナとカエデの都合を聞き、彼女達を向かわそうと思う
送信すると、暫くして返事が届く。
件名:しょうがないね~
差出人:アリサ
宛先:リサ
本文:わかったよ。こっちも、アヤネお姉ちゃんと、リコがログアウトするから、私も落ちようと思うの。後、ゴブリンキングの魔石を40個、ゴブリンキングの骨格を40体、ゴブリンキングの左耳をドロップアイテムで回収したよ!
リコがLUK高かったから、ドロップしたね!
ドロップアイテムは全て貰ったから、明日、渡すね
ゴブリンキングを倒す手間が省けた。アリサたちもログアウトするとなると、トウジョウ君を向かわせても意味はない。
「……2人の時間はいつまでだ?」
「ええと…お母さんが24時にはログアウトしなさいって…」
エレナは母親に言われてそろそろ落ちるらしい。既に24時を10分程過ぎていた。
「私も、親が煩いので、落ちます」
カエデも親との約束があるのか、ゲームの時間が決められていた。リサは、メールで、アリサに2人もログアウトする事を伝え、自分はトウジョウ君をBOT化させて狩り放置をする事を伝える。
アリサからずるい! と件名で届き、本文は、おやすみと書かれていた。フレンドリストのアリサの表示がログアウトに変わった。アヤネもリコも既にログアウトしている。
「2人共、明日は何時にログインする?」
「ええと…20時ぐらい?」
「私は19時半ぐらいです」
時間を聞き、少し遅いが20時にログインする約束を交わした。
「ごちそうさまです。ありがとうございました!」
「ありがとうございます」
会計を済ませるとリサは2人をギルドへと連れて行く。2階の個室まで見守ると、リサはモックンを連れて街の中を歩く。
(ついて来ているな)
カフェを出た時から、リサは視線を感じていた。不快な視線で、まるで獲物を見つけたような感じの視線だった。しかも、1つじゃない。複数感じる。リサは、適当に人の少ない場所を選び、誘い込む。
「そろそろ出て来たら?」
リサは、移動しながらモックンをバージョンアップさせていた。万が一、襲われそうになればモックンに守ってもらう。その為に追加でオプションスキルも付与した。MPも2100までつぎ込んだ。
モックン
種族:ウッドゴーレム
HP:5070/5070
MP:6310/6310
STR:2215
VIT:2380
AGI:2290
DEX:2180
INT:2800
LUK:2160
共有スキル
全属性耐性:LV3
AGIアップ:LV2…+20
STRアップ:LV2…+20
弱点:炎
オプションスキル
木飛剣…MP100消費する毎に、消費したMP×STR値に匹敵する木で出来た剣を飛ばす。MPが続く限り、いくらでも出せて飛ばせる
木壁…MP100消費する毎に、消費したMP×VIT値に匹敵する木製の壁を召喚する。縦横2m、厚さ30cmになり、MPが続く限り、いくらでも設置できる。炎に弱いが、全属性耐性の効果を得られる。
攻撃と防御を兼ね揃えたモックンが完成した。始まりの街でステータスが2000を超えているプレイヤーはいないと思う。モックンが負ける事はないと思うが、リサは警戒しながら、相手の動向を見守る。
「気づいてたのか」
建物の影から出てきた男は、スーツの様な服を着ており、金縁の眼鏡を掛けていた。ハーベルというプレイヤーだが、リサは見ながら少し違和感を覚えた。
(おかしい? 視線はたくさんあるが、気配はこの男しかない)
見られている視線はたくさんあるが、気配は1つ。目の前の男のものしかない。
「初めまして、リサさん」
「初めましてだな」
特に命令していないのにモックンが自発的にリサの前に立つ。
「そう、警戒しないでください。私は話をしに来ただけです」
愛想の良い笑みを浮かべハーベルが話し出す。
「この度、TDOをプレイしていただきありがとうございます」
リサは不思議そうに首を傾げる。まるでGMの様な発言だった。否、よく見ると、ハーベルの後ろにGMと書かれていた。
「GMが私に何の様だ? まさか、BOTが不味かったか?」
「いいえ、そうではありません」
BOTの件が咎められると思っていたが違っていた。
「リサさんに、お願いがあり参りました」
ウィンドウを開くようなそぶりを見せると、インベントリから用紙を取り出した。
「今後、予定されている大型のアップデート後に、是非、リサさんに参加してほしい事があり、参りました」
取り出したカードをリサへ差し出す。モックンが受け取り、リサに手渡される。その用紙には、【4国対抗タワー強奪戦】と書かれていた。
「マンネリ化したTDOで大規模なイベントを考えております。そのイベントへの参加者を探しており、是非、リサさんにも参加して頂きたいのです」
リサは受け取って用紙を見ながら、話を聞く。内容的には、特別なフィールドを用意し、4国に属するプレイヤーがタワーを奪い合い競うというイベントらしい。
国に属せば、1年間他の国へ移住する事が出来ないという縛りがTDOにある。その縛りが嫌で、国に属さないプレイヤーもいるが、ボーナスを受ける事が出来ない。
国に属せばステータスの上昇や、国が所有するメインタワーの攻略が可能となる。メインタワーは国の首都に設置され、首都に入るには、国に属さなければならない。
メインタワーを攻略して、ディアナのタワーに挑む権利が得られる。別に、ディアナのタワーを目指さず、メインタワーも挑ます、各国のサブタワーを攻略するだけなら、別に属さなくてもいい。
「企業との契約の為、一度国に属すると1年間は離れる事が出来ません。その為、他の国へ行く事が出来ず、不満を持つプレイヤーが増えました。そして、属さないプレイヤーも増え、国の利益が減少し、投資してくださる企業への利益も減りました」
話を聞くと、国に属しているプレイヤーが課金をすると、その課金額の半分が、投資している企業の利益になるらしい。属さないプレイヤーが課金すれば、TDOの運営が全額利益になるが…。その事で、投資している企業と揉めているらしい。
聖王国ベリアルは、チケット販売の企業、宗教団体が投資をしている。原則、企業からの投資のみ受け入れているが、聖王国ベリアルには、宗教団体が関わっている。ゲームの中にまで宗教を持ち込むのはどうかと? 運営側で話し合ったが、面白そうと言う事になり受け入れた。
その為、聖王国ベリアルは人族至上主義の国と言う設定が設けられ、人間以外の種族を受け入れないようになった。職業でも勇者、賢者、聖女を多く勧誘し、勇者PTがいくつも存在する。
エドリア王国は、飲食企業が投資をしており、リアルで提供している料理をゲーム内でも取り扱っている。食べた時に味と触感はあるが、本物を食べたいと思うプレイヤーがおり、実際にリアルの店に行く事がある。宣伝効果もあり、課金以外でも利益を得ている。
セイブン工業国は家電製品を扱う企業が投資しており、タワーを攻略すると、リアルで安く電化製品が購入できる。最近、印刷業界が加わり、アヤネの専属の編集者、リコの出版社も投資をしたようだ。
「そこで、国同士でタワー強奪戦を行い、奪った国のタワーを1カ月、使用できるというイベントを考えました。これで、国に属さないプレイヤーも属すようになると考えましたが…」
リサの持つ用紙には、所属してほしい国名が書かれていた。エルフレア王国であり、投資しているのが企業ではなく、農業・畜産業・酪農業・林業などを仕事としている者たちからの投資だった
「投資額が低く、報酬に魅力を感じない為、エルフレア王国に属するプレイヤーが少ないのです。リサさんには、是非、この国に属して頂きたく…」
エルフレア王国のタワーで得られる報酬は、各業種が栽培、飼育した物が貰えるが、魅力はあまり感じない。貰える量も少ないように思える。他の国の報酬を考えると、貧相に見える。
「強奪戦を始めても、エルフレア王国のプレイヤーが少ないから、直ぐに負けてしまう。戦力のバランスを調整したい為、私に属してほしいと」
「はい、リサさんのゴーレムなら戦力として十分に補えますから、それに、我々としても、面白い対戦を提供したいですし」
不敵に笑うハーベルにリサも小さく笑みを浮かべる。
「私も協力したいけど、ログイン時間は短い。私の代わりにゴーレムを操ってくれるサポート的な存在が欲しいと思う。それが可能なら、エルフレア王国に属しても構わない。只、課金はしないけど」
課金すればエルフレア王国に投資している各業種の人達へ利益が送られる。しかし、リサは課金する気は全くない。
「ええ、別に構いません。投資してくださっている方々も、利益はあまり求めてません。只、自分たちの作った物、育てた物を食べてもらい、口コミでいいので広めてほしい。そう言っておりました」
課金で得られる利益より、自分たちの物を直接購入して得る利益の方が、生産者としてモチベーションになる。やる気が出るという話だ。
「なら、協力するよ。そのイベントはいつ開催される?」
「リサさんがエルフレア王国に属してから1週間後に開催する予定です。それまで、システムの調整や、強奪戦を行うフィールドの開発を行います」
リサは、まだ、エルフレア王国に行くつもりは無かった。始まりの街で、出来るだけ戦力の増加を図ろうと考えていた。
「対戦国の戦力は? 運営なら把握しているだろ?」
「そうですね。100を目安に言いますと、聖王国ベリアルが50、セイブン工業国が20、エドリア王国も20、エルフレア王国は10という感じですね」
凄く戦力負けしている。
「一応、国に属しているプレイヤーを対象にしたイベントですので、属していないプレイヤーは参加出来ないようにしようと考えてます」
「それだと、不満が出ると思うぞ」
「はい、ですので傭兵という形で参加資格を与えようと思ってます。只、国に属せれる期間は1カ月だけと言う制限付きで、同じ国へ属するには3カ月の期間は必要。こうすれば、戦力が一時的に増加しますが、1カ月すれば減ります。その間に属したら意味がありませんが…」
傭兵制度はいい考えだと思う。1カ月しかその国に属す事が出来ず、過ぎれば、3カ月経過しないと同じ国へ属せない。お試しのつもりで、国に属せば、そのまま永住するかもしれない。
「戦力の偏りが酷くなりそうな気がするが…。それをぶち壊すようなゴーレムを作ればいいか」
「そうですね。ぜひお願いします」
「なら、もう少し、ゴーレムを作りやすいように緩和をしてほしいな。ゴーレムクリエイトを使いたいけど材料が足らない。もっと、楽に…」
「今でも、リサさんはチート的な存在ですから、ゴーレムクリエイトの条件を緩和させる事は出来ません」
出来ないと言われリサは溜息を吐く。
「その代わり、サポートゴーレムについては考えておきます。どのようなタイプをご希望ですか?」
「HP、MPが無限で、それ以外は0でも構わない。MPゴーレム作成しか出来なくていいので、レベルの制限を無くしてほしい」
「つまり、死なないMPタンクゴーレムですね。自分では戦えない、MPゴーレム作成をレベル制限なしで行い、大量のゴーレムを作成すると言う事ですね」
リサの考えを把握しハーベルは怪訝そうな表情を見せる。
「その条件ですと、MPゴーレムの強さが無限になり、倒せない存在になりますね」
「それは、私が作ったMPゴーレムと同じステータスでどうだ?」
「なるほど、それでは、複製と言う事で構いませんね?」
「ん~そうだな? 複製でもいいかな? ゴーレムの兵隊を大量に作りたいし」
今のリサでは、MPゴーレムの数に制限がある。その制限無視して、同じステータスのゴーレムを大量に持つ事が出来れば? それで、リサの戦力は増す。
「わかりました。そのようにサポートゴーレムを調整いたします。入手はチュートリアルタワーを全てクリアした時、と条件を付けましょう」
「出来れば、可愛いゴーレムを希望する。見た目、人間の様なゴーレムがいいな」
「畏まりました。そのように調整いたします」
ハーベルはウィンドウを操作するような仕草をすると、リサにフレンド申請を送ってきた。
「GMなのにいいのか?」
「ええ、定期的に連絡をしたいですから、メールのやり取りで」
承認すると、リサは時刻を確認する。既に25時を過ぎていた。バイトの事を考え、そろそろログアウトしたい。
「それでは、呼び止めてしまい申し訳ございません。わたしはこれで失礼します」
「ああ、私も落ちるよ」
ハーベルはログアウトしたのか目の前で消えると、リサは急いでギルドへと向かう。今からトウジョウ君を出して狩りをする気は起きない。早くログアウトして寝たい。そう思い、2階の個室へと入ると、直ぐにログアウトを行った。
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