グランドダンジョンマスターは、ダンジョンを作らず、異世界をぶらり旅

小佐古明宏

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1章

6話 ステータス

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 奈々、マリ、リーシャの3人を連れて俺たちは、転移ルームへと向かう。転移魔方陣を設置していた部屋で、リーシャは転移ルームと呼んでいた。なので、俺もそう呼ぶ事にした。

「リーシャ、ここに来たけど何をするんだ?」

「何って、転移魔方陣を設置してもらうのよ」

 俺に指を差す。

「確かに、マスターだから設置は出来ると思うけど」

「なら、早くしなさいよ」

 急かされるが、出来ない理由がある。DPショップを開くと、購入制限と言う項目がある。ダンジョンメニューのレベルを上げないと、購入リストに追加されない。

 追加しても、10万DPもないしな。

 1つ、設置するのに10万DPも消費する。

「設置は、ダンジョンメニューのレベルが低くて制限されて買えない。それに、手持ちのDPが足らない」

 そう話すと、リーシャが大きく溜息を吐いた。

「はぁ~しょうがないわね」

 呆れられた表情でマリを見つめる。

「マリ、ダンジョンの崩壊を考えて、宝物庫を切り離したけど、残ってるわね?」

「はい、リーシャ様」

「なら、空間魔法で飛ぶわ。協力してもらうわよ」

「畏まりました」

 話が見えない俺は不思議そうに2人の話を聞く。

「何? 呆けてるのよ。新米マスターの為に準備をしてるのよ。感謝しなさいよ」

「お、おう…ありがとう」

「……御礼はいいわ」

 何故か赤くなり視線を逸らす。

 ツンデレというやつか?

 と思いながら、隣を見ると奈々がニヤニヤしていた。

「もう、リーちゃん、恥ずかしがり屋だね」

「べ、別に恥ずかしくなんかしてないわよ。世話を焼いてるだけよ!」

 否定するがその顔はますます赤くなっていた。

「リーシャ様、行かないのですか?」

「そうね。飛べるわね? 待ってなさい、皆の装備を探して持ってくるから」

 そう言いながら、リーシャはマリの手を握ると目の前から消えた。空間魔法による転移だ。残された俺は、奈々と立ち尽くす。

「どうしようか?」

「ん~テラスに行く? 日向ぼっこする?」

「…干からびたりしないか?」

 地球の真夏の日差しより、太陽の照り方は弱い。それでも、長時間、浴び続けると、奈々が蒸発しそうに思う。

「大丈夫、魔素があるから、体の修復も出来るよ。だから、行こう」

 奈々に連れられテラスへと向かう。テーブルが並べられており、俺たちは向かい合うように座る。

「待っている間に、この世界の事を聞いていいか?」

「うん? 別にいいけど何を知りたいの?」

 聞きたい事は、疑問に思う事は多いので、1つずつ尋ねる事にした。

「まずは、ステータスについてだな。ラノベ、漫画、ゲームだとHP、MPや攻撃力、防御力の様な表示があるけど、この世界ではないのか?」

「この世界、アーメルでは、HPとMPの概念がないの。首を切られたら死ぬ。知性ある遺体は、灰になり消滅する。もし、剣で刺された場合、死ぬ兆候は、傷口からの灰化で状況が分かるね」

「確かに、普通は首を切られたら即死だな。で、MPは?」

「MPは魔法を使うと体がだるくなる。眩暈が起きて気絶したら、魔力切れの兆候だね。完全に魔力が無くなると、生物は死ぬ。リーちゃんは、魔方陣の発動に、魔力を消費したけど、足らずを生命力を使ったみたいだね…」

 死ぬと灰になるらしいが、リーシャは、灰になる前に、遺体を収納されたらしい。蘇生が出来た。

「攻撃力、防御力という表示は、全くないよ。アーメルはレベル世界だから、レベルが高い方が優位なの」

「極端な話、レベル1とレベル2の人が素手で殴り合えば、レベル2の人が勝つ? みたいな感じか?」

「そうだね。レベルは経験値を得て上げるか、装備で上げるかの2つの方法があるの。レベル1の人でも、レベル10の装備を身に付けば、レベル11になるの」

 例外もあるらしい。装備でレベルを上げている人が、その装備を破壊され、レベルが下がる。レベルの低い相手より下がり、負ける。自身のレベルを上げる事が大切だと奈々に言われる。

 奈々のレベルが高いのは、彼女は装備を身に着けない。生身で戦う。装備の補正がない分、彼女は装備を身に着ける相手より強い。溶解は、相手の装備を溶かして破壊する。装備に頼りレベルを上げている冒険者を、奈々は何人も、吸収し倒していた。

「私は、冒険者の間では赤い悪魔って言われてたね~」

 奈々のスキルを見る限り、あらゆる攻撃が無効だ。そんな、彼女に狙われたら、どんな相手でも勝てない。

「…私でも勇者には勝てなかったね」

「勇者、生きてるのか?」

「うん、リーちゃんの父親を倒した時、大けがを負ったけど…。生きてるって話だよ」

 イライラした様子で話す。死んでいればいいのにと愚痴をこぼす。

「一般的にはダンジョンマスターは悪。勇者はダンジョンマスターを倒す存在。だから、いろんなダンジョンを攻略してると聞くよ」

「……サブダンジョンもか?」

「寧ろ、サブダンジョンを潰す事が目的みたいだね」

 奈々の話だと、サブダンジョンは、メインダンジョンへのDPを供給する拠点。潰さなければ、メインダンジョンが強化される。なら、メインダンジョンを潰せばいいといい話だが、攻略が難しい。

 なら、何で、リーシャの父親は倒されたのか? 攻略が難しい筈の、メインダンジョン、しかも、ダンジョンコアのある管理区画まで、勇者が乗り込んでくるのは、おかしな話だ。

「リーシャの父親が倒された時の状況が思い浮かばないが、メインダンジョンって、攻略が難しいのでは?」

 その質問に、奈々は気まずそうに話す。

「ダンジョンマスターの世代交代が始まると、ダンジョンは弱体化するの。トラップの発動も出来なくなり、ダンジョン内のモンスターも弱くなる。リーちゃんの父親は、彼女へマスター権限を移す準備をしている時に、勇者の襲撃を受けたの」

 ダンジョンマスターの世代交代は外へは厳密に秘密にされている。それが何故バレたのか? 配下のモンスターにスパイがいたからだ。モンスターは全て、ダンジョンで生まれるとは限らない。

 他の場所で生まれたモンスターを配下にしていた。その裏切りの配下のモンスターが、他のダンジョンの手先で、リーシャの父親は命を奪われた。当時、ダンジョンは3つの勢力に分けられていた。

 その中で、リーシャの父親のダンジョンが一番、勢力が大きく、サブダンジョンの数も多かった。サブダンジョンの数が多いと、メインダンジョンへのDPの収入が増える。

 その事が気に食わないのか、他勢力の1つがスパイを送り込んだ。そのスパイが、リーシャの父親が世代交代する事を知ると、勇者に知らせた。結果メインダンジョンが勇者に襲われた。

 弱体化したとはいえ、最下層のモンスターは強い。多くの兵士や冒険者を犠牲にして、勇者1人が、管理区画にたどり着いた。リーシャの父親と、勇者の戦いは、勇者に勝機があり、勝敗は勇者に軍配が上がった。

 この時、リーシャの父親は、リーシャにマスターの権限を全て移した。ダンジョンの崩壊は起きず、新たなマスターにより、弱体化したダンジョンと、モンスターが活性化した。

 満身創痍の勇者は、死に物狂いで逃げて生き延びたらしい。当時、奈々はいなかったが、マリからその話を聞いた。俺も、世代交代が起きるのか? そう思っていたが、

「大和君は、世界に1人だけの、グランドダンジョンマスターだから、世代交代はないと思うよ」

 もし、世代交代をするのなら、異世界から俺の様に召喚して、交代するしか方法がないらしい。今のところ、交代する気は全くない。

 召喚魔方陣が発動しないしな。

 魔力を流し込めば発動する。しかし、魔力不足の為、全く起動しない。呼ぶ必要は今のところないので、放置だ。
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