グランドダンジョンマスターは、ダンジョンを作らず、異世界をぶらり旅

小佐古明宏

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1章

12話 ルイズ村→ルイズ町

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 奈々の記憶を元に、リーシャの空間魔法で転移した俺たちは、村の入り口付近で立ち尽くす。

「村より町だな」

「すごい…暫く来てなかったから、知らなかったよ」

 奈々も驚いている。

「あの石壁、私が作ったオブジェクトじゃない?」

「うん、リーちゃんが作った石板だよ」

 厚さ30センチ、幅2メートル、高さ3メートルの石板が立てられて周囲を囲んでいる。

「ダンジョンのオブジェクトなら、ダンジョンの消滅で消えるんじゃ?」

「消えるのはダンジョンの中に設置されたオブジェクトだよ」

「ダンジョンの外に置かれたオブジェクトは、消える事はありませんマスター」

 奈々とマリの説明を聞き、リーシャが頷く。

「私が解除を命じない限り残るわ。今は、大和が命じなければいけないけど」

 町を取り囲む石壁を見ながら、ダンジョンメニューを開く。設置オブジェクトの一覧をみると、石板×10万個という表示が出る。1つにつき10DPが必要で全部で100万DPを使っている。

「私は周囲に置いただけだね」

「それが町を守る壁になっているわけか」

 しかも、ダンジョン産のオブジェクトの為、劣化も破損もしない、強固な守りとなっている。良く見ると石板は3枚重ねでずらして立てられているように見える。

「中に入る?」

「見た限り、襲撃を受けたという感じはないな」

 俺たちは村、否、町へと発展した場所へと歩いていくと、入り口で獣人の男が立っていた。木製の頑丈な開けた門の傍で、門番に止められる。

 軽鎧姿で長槍を抱える獣人の男は、怪訝そうな表情を見せる。

「止まれ」

 狼の獣人の様で、厳つい犬顔をしていた。

「人間が何の用だ」

「俺たちは…」

「やっほ~ジョーさん、元気にしてた?」

 奈々が飛び出し、ジョーと言われた黒い毛並みの獣人の手を取る。行き成りの事に困惑しているジョーに、もう1人の獣人が話しかける。

「なぁ、ジョー、知り合いなのか?」

「いや…身に覚えが…」

「もう…分からない? 私だよ」

 そう言いながら、奈々の顔面が溶けた。

「「ぎゃああああああ!!!!!」」

 大の大人が、しかも、獣人の男が悲鳴を上げて腰を抜かし倒れる。

「いや、俺も驚くぞ」

「そうかな?」

 何食わぬ顔で、頭の部分を赤いスライムに戻して奈々が首を傾げる。

「情けない男たちね」

 呆れるリーシャに、

「大丈夫です。驚いているだけです」

 冷静に分析するマリ。怯えた子犬の様に、ジョーと、もう1人の男が奈々を見上げる。

「もしかして、スライムの嬢ちゃんか?」

「そうだよ。久しぶりだねジョーさん」

 顔を元に戻すと、手を差し伸べる。ジョーは奈々の手を取り立ち上がる。俺ももう1人の男に手を差し伸べた。

「いや、情けない姿を見せて悪かった」

「…ドンマイ」

「あははは…」

 声をかけると、苦笑いを浮かべ、ジョーは相方に見張りを頼み、俺たちを中へと入れてくれた。

 石壁に囲まれた町は、東西南北に2メートル程の十字道が伸びている。その道に沿って建物や商店が建てられ、住民体が生活をしている。ジョーに連れられた俺たちを珍しそうな、又は、警戒した眼差しで見つめていた。

「気を悪くしないでくれよ。嬢ちゃん」

「うん、敵意は感じないから」

 奈々に話しかけるジョーは申し訳なく頭を下げる。奈々の言う通り、俺たちに危害を加えようとする者はいなかった。強者なのが本能的に分かるのか、リーシャをみて怯える大人たちが多かった。

「リーシャ、何かしてる?」

「ん? 軽く魔力を放出してるわね。対象にのみ感じられるように」

 ジョーが平気な顔で歩いていたので、おかしいと思っていた。建物の影から覗く小さな子供は逆に、興味津々に見ている。

「可愛いですねマスター」

「おう…マリも何かしてるのか?」

「警戒を和らげる臭いを少し」

 俺には感じないが、嗅覚が鋭い獣人には分かったのだろう。ピンポイントで、しかも、子供の獣人にターゲットを向けている事から、忍術か何かを使用していると思う。

 ジョーさんの話を聞いていると、ルイズ村は、奈々のおかげでルイズ町へと発展した。外敵を防ぐ、石板の提供で、町を守る事が出来る様になり、安心して暮らせるようになったと話す。

「ところで、そちらの方は?」

 ジョーが訪ねてきたので、俺は答える。

「俺は、大和だ」

「私はマリと申します」

「私はリーシャよ。よろしく」

 自己紹介をすると、

「で、私は奈々だよ。ジョーさん」

「そうか、名前を持つようになったんだな」

「うん!」

 名無しだったので、奈々は皆から嬢ちゃんと呼ばれていたらしい。

「奈々ちゃんのおかげで、俺たちは安心して暮らせるようになったよ」

「えへへへ…」

 嬉しそうにする奈々を見ながら、俺はジョーに話しかける。

「何か不便な点はありますか? 不足している材料があれば、提供しますよ」

 ダンジョンメニューに慣れる為に、オブジェクトの作成を行いたい。それにはDPを集める必要があるが、周辺にモンスターがいると思うので、後で倒しに行く。

「そうだな…建築資材か? ドワーフの大工に頼んで建物を建ててもらったが、古くなった箇所の補修に資材が必要だ。まぁ、建築してくれたドワーフがいないから、簡単な補修しかできないけどな」

「ドワーフ? この町に住んでいたのか?」

「滞在していた。カサンディアからの依頼を受けて、俺たちの住む場所を作る様に言われたらしい」

 俺はリーシャに視線を向ける。何故か、気まずそうに視線を逸らした。

『リーシャが手をまわしたのか?』

『そうよ。奈々がオブジェクトの提供を言ってきた時点で、カサンディアに根回しをしたわ』

 いいところがある。素直じゃないが、優しい娘だ。慈愛の視線を向けると、

「なによ」

 ジト目で睨まれた。俺は笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でる。

「偉い偉い」

「こ、子ども扱いするな!!!」

 真っ赤にして起こるリーシャに、周りが微笑む。ジョーも楽しそうに笑っていた。俺たちは、彼に案内され、中央の建物へと向かう。

 町の中央に大きな3階建ての建物がある。

「ギルドを兼ね揃えた、町長の家だ」

 町長はギルドのマスターも兼ねていると話す。実力者主義の獣人の社会で、町長は凄い人物だと思いながら俺たちは建物の中に入る。ついでに、ここでギルドカードの発行も行って貰えるか尋ねる。


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