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氷魚(ひお)

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7/30 天気雨と早起き

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 晴れ間から、パラパラと雨が降ってくる。
「天気雨だ」
「なんかいいことありそうだね」
 彼女は嬉しそうに空を見上げる。
 青空が見えるのに、落ちてくる雨。
 滅多にないことだからと、無邪気に喜ぶ彼女が可愛い。
 僕たちは雨をやり過ごす為に、車に戻った。
 だけどすぐに出発はせず、他愛ない会話を楽しむ。
 二人きりの旅行は、素晴らしい時間だった。
 大好きな彼女と、ずっと一緒にいられるのだから。
「ホテルまで、あとどれくらい?」
「一時間くらいかな。他に寄りたいところある?」
「ううん。ホテル着いたら休もう。明日は早起きだし」
「そうだな」
 明日は、彼女が行きたがっていた観光地を車で回る。
 テーマパークにも行くので、スケジュールはギリギリだ。
「ねえ」
「うん?」
「結婚しても、こうやってまた旅行いこうね?」
 助手席の彼女が、ニコニコと僕を見る。
 その言葉に舞い上がって、僕は彼女にキスをした。
「もちろん。君が行きたいところなら、どこへだって連れて行くよ」
「約束ね」
「約束する」
 差し出された小指に、自分の小指を絡めて、彼女に誓った。




(終)



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