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想像以上に複雑だった私の出生の秘密
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そうして聞いた話は、ミシェイルが思った以上に面倒で複雑な身の上だった。
ことは前国王が妻である前王妃をなくして一人楽隠居を決め込んでいた時のこと、王家の性なのか侍女としてやってきたピンク髪の女に骨抜きにされたことが発端だった。
離宮で悠々自適な生活を送っていた前国王が、まさか侍女と享楽にふけっているとは露ほども思わなかった王宮の人々は、侍女が妊娠したことによって恐慌に陥った。
生まれてくる子は庶子とは言え現王の兄弟ということになる。王にはすでに王妃との間に第一王子が生まれていたため王位が脅かされることはほぼないと思われたが、身分としては微妙な立ち位置になることは予想された。
侍女は暗殺を警戒して全く人を寄せ付けず、前国王もまた侍女の言葉を受け入れて離宮の中はなぞに包まれていた。男児か、女児か、王宮の人間たち固唾をのんで待つ中、生まれてきたのは王女だった。
「それがわたしってこと?」
「そういうことになりますな」
「なんて面倒なの……それで、わたしのお母さまはどうなったの?」
「それは……姫様が3歳ながらすでに大人の意識をお持ちであるから伝えさせていただきますが」
気になる母がどうなのか一応心配したミシェイルだったが、母のベラはとんでもない女傑だったのだ。
母はどこの馬の骨とも知れない女……ではなく、なんと正真正銘ギウルド辺境伯家当主の長女だったのだ。
「辺境伯……つまり、母は王宮へ行儀見習いに?」
「いえ、その……」
ものすごく言い辛そうにしているシェーナに嫌な予感がしながら先を促すと、唸るような呻き声を出してしぶしぶ言い出した。
「ベラ様は、辺境伯の一人娘でいらっしゃいまして、次期辺境伯に指名されていたのです」
「女性で辺境伯なんて無謀な気もするけど」
「めちゃくちゃお強いんですよ、あの方は。俺も実は何度か負けたことがありましてね」
恥ずかし気に苦笑してジュダスが言った。男を負かすと聞いてミシェイルの母像はムキムキの女戦士となった。
「親戚にも候補はいたのですがね、その方々を蹴散らしてしまって。だったらベラ様と結婚して辺境伯家を乗っ取ってやろうとする輩もいましたが、軟弱ものなどいらんと追い払ってしまわれて」
「ひええ……」
どうやらベラは相当強い女であるようだった。
「そんな母がいったいどうして離宮で侍女を?」
「それが、結婚するにあたっては頭・血筋・健康全てを兼ね備えた男がいいと言いだされ。お父上である前伯爵が『そのような者は国王陛下しかいないだろう』と冗談で言われたのですが、ベラ様は本気にされまして」
「はぁ?」
「『子種だけもらってくるわ!』と家を飛び出されて、離宮に侍女として忍び込んだのです」
「……」
これは、前世で言うヤンキーみたいな感じでは?と衝撃で頭をくらくらさせながらミシェイルは思った。
(強えー奴に会いに行くみたいなノリで子供をつくりに行くなんて)
とくにこんな時代であれば常軌を逸している行動だが、ベラはやり遂げてしまったのだ。
「身分は明かさず辺境伯家推薦でやってきた娘として普通に入り込んだようです。最初は現国王を狙っていたようなのですが、まあ王妃様がいらっしゃいましたからさすがにダメだと。ええ一応略奪はダメだという思いはあって本当にようございました」
当時のことを思い出しているのかシェーナが遠い目をしている。
「それならばもう一人おられる、と思い出したベラ様は持ち前の体力を活かして信頼を勝ち取り、前王がいらっしゃる離宮にもぐりこんだのです。そしてまあお話した通り見事に思惑通りとなったわけです」
「前王陛下はその……どういった方?」
「ベラ様の愚かな野望を面白がって協力するような方ですね」
「うわあ」
それはきっと気が合ってしまったのだろうなとミシェイルは思った。母は力がみなぎって溢れてしまいそうなバイタリティをもっていて、ある程度お年を召していた前王は器が大きく受け止めてくれたのだろう。
ことは前国王が妻である前王妃をなくして一人楽隠居を決め込んでいた時のこと、王家の性なのか侍女としてやってきたピンク髪の女に骨抜きにされたことが発端だった。
離宮で悠々自適な生活を送っていた前国王が、まさか侍女と享楽にふけっているとは露ほども思わなかった王宮の人々は、侍女が妊娠したことによって恐慌に陥った。
生まれてくる子は庶子とは言え現王の兄弟ということになる。王にはすでに王妃との間に第一王子が生まれていたため王位が脅かされることはほぼないと思われたが、身分としては微妙な立ち位置になることは予想された。
侍女は暗殺を警戒して全く人を寄せ付けず、前国王もまた侍女の言葉を受け入れて離宮の中はなぞに包まれていた。男児か、女児か、王宮の人間たち固唾をのんで待つ中、生まれてきたのは王女だった。
「それがわたしってこと?」
「そういうことになりますな」
「なんて面倒なの……それで、わたしのお母さまはどうなったの?」
「それは……姫様が3歳ながらすでに大人の意識をお持ちであるから伝えさせていただきますが」
気になる母がどうなのか一応心配したミシェイルだったが、母のベラはとんでもない女傑だったのだ。
母はどこの馬の骨とも知れない女……ではなく、なんと正真正銘ギウルド辺境伯家当主の長女だったのだ。
「辺境伯……つまり、母は王宮へ行儀見習いに?」
「いえ、その……」
ものすごく言い辛そうにしているシェーナに嫌な予感がしながら先を促すと、唸るような呻き声を出してしぶしぶ言い出した。
「ベラ様は、辺境伯の一人娘でいらっしゃいまして、次期辺境伯に指名されていたのです」
「女性で辺境伯なんて無謀な気もするけど」
「めちゃくちゃお強いんですよ、あの方は。俺も実は何度か負けたことがありましてね」
恥ずかし気に苦笑してジュダスが言った。男を負かすと聞いてミシェイルの母像はムキムキの女戦士となった。
「親戚にも候補はいたのですがね、その方々を蹴散らしてしまって。だったらベラ様と結婚して辺境伯家を乗っ取ってやろうとする輩もいましたが、軟弱ものなどいらんと追い払ってしまわれて」
「ひええ……」
どうやらベラは相当強い女であるようだった。
「そんな母がいったいどうして離宮で侍女を?」
「それが、結婚するにあたっては頭・血筋・健康全てを兼ね備えた男がいいと言いだされ。お父上である前伯爵が『そのような者は国王陛下しかいないだろう』と冗談で言われたのですが、ベラ様は本気にされまして」
「はぁ?」
「『子種だけもらってくるわ!』と家を飛び出されて、離宮に侍女として忍び込んだのです」
「……」
これは、前世で言うヤンキーみたいな感じでは?と衝撃で頭をくらくらさせながらミシェイルは思った。
(強えー奴に会いに行くみたいなノリで子供をつくりに行くなんて)
とくにこんな時代であれば常軌を逸している行動だが、ベラはやり遂げてしまったのだ。
「身分は明かさず辺境伯家推薦でやってきた娘として普通に入り込んだようです。最初は現国王を狙っていたようなのですが、まあ王妃様がいらっしゃいましたからさすがにダメだと。ええ一応略奪はダメだという思いはあって本当にようございました」
当時のことを思い出しているのかシェーナが遠い目をしている。
「それならばもう一人おられる、と思い出したベラ様は持ち前の体力を活かして信頼を勝ち取り、前王がいらっしゃる離宮にもぐりこんだのです。そしてまあお話した通り見事に思惑通りとなったわけです」
「前王陛下はその……どういった方?」
「ベラ様の愚かな野望を面白がって協力するような方ですね」
「うわあ」
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