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私はどうして市井にいるの?
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ミシェイルは自分の身分についてよくよく理解した。
(前国王と辺境伯の子供か……わたしの予想だと母親の身分は低いのではないかと思ったけど、意外と血筋がいい。というか良すぎてこまるわね)
「希望通りに身籠った母は、それからどうしたの?」
シェーナは頷いて、悩まし気に顔をしかめた。
「ベラ様は、実は身籠った段階でさっさと辺境へ戻るおつもりだったのです。しかしやはり王家の血を受け継いだ御子を王宮の者たちから止められてしまい、うまく抜け出すことができませんでした。ベラ様は身の危険を感じて前王陛下に頼み、離宮を封鎖いたしました」
「ふーん、表向きは母のわがまま、と見せかけて実は考えられてたってわけね」
ジュダスは体をぐっと前に乗り出した。
「姫様を無事お生みになったベラ様は、女児ならばさほど問題はないだろうと考え今度こそお帰りになるつもりだったのですが……」
「王宮で権力闘争をしているものたちは、それでも安心できなかったようなのです。辺境伯は国の盾ではありますが、なまじ辺境にあるが故に裏切りやすくもあります。おおかた王家の血をもった姫様を担ぎ上げられてはたまらないと、姫様を奪おうとしたのです」
「そこでベラ様はまた驚くべきことをお考えになったのです。全王陛下もご協力いただきわたしどもに姫様をお預けになると市井にくだらせ、王宮には姫様が連れ去らわれたと報告をして行方不明ということに」
ミシェイルは目を見開いた。
「行方不明?ではわたしは、誘拐されたということになっているの?」
「はい、しかもまだ外にお披露目もされていない状態でしたので、大々的な捜索をされることもなく。ですが全王陛下は姫様をお守りするため死亡認定を阻止していらっしゃいます」
「まあ恐らく、王宮の連中は誰かがやってくれたのだろうと安心していることでしょうな」
頭の中を整理するように、ミシェイルはゆっくりと二人の言葉を咀嚼した。
「二人は母の依頼でわたしを育ててくれたということね。前王陛下は今は?」
「ベラ様と余生を過ごしたいとおっしゃっておりますが、姫様の立場を守るため離宮にとどまっていらっしゃいます」
「前王陛下がおられなければ、すぐさま死亡扱いとなってしまうでしょうからな」
そう言われ、ミシェイルはなぜかほっとした。なぜなのか考えて、自分が思っている以上に実の父と母がミシェイルを守ってくれているということが嬉しかったのだ。
「ベラ様は怪しまれてはいけないということで、連絡は一切遮断されました。ですので我々に辺境の痕跡はまったくありません、ただ姫様の見た目だけはどうしようもありませんが」
「わたしの見た目?」
「ベラ様そっくりなんですよ、しかも黄金の瞳は王家の色ときたもんだ。しかし生まれてから3年誰も知ることがないのでね、恐らく気付くやつはいないでしょう」
なるほど、とミシェイルは頷いて二人に今まで守ってくれてありがとうと伝えた。
「危険なことだったと思うわ、お母さまも無茶を言うものね」
「ベラ様の無茶には慣れっこですから」
シェーナが余裕な微笑みを浮かべ、改めて頼もしいとミシェイルは感じた。
「……いつか、会えるかしら」
誰に、とは言わずミシェイルはつぶやいた。
「姫様がこちらにいらしたのも、なにか運命が回り出したのかもしれないと思っております。公爵家ならば王宮も近いですし御身も危険になります。全王陛下とベラ様には連絡をする予定です」
「それはいいわね!」
思わず声をあげて、あ、っと思いなおしソファに座りなおす。そんな様子をシェーナとジュダスに笑顔で見られ、大人の意識があっても両親に会えるというのは心弾むものなのだ、と実感した。
(前国王と辺境伯の子供か……わたしの予想だと母親の身分は低いのではないかと思ったけど、意外と血筋がいい。というか良すぎてこまるわね)
「希望通りに身籠った母は、それからどうしたの?」
シェーナは頷いて、悩まし気に顔をしかめた。
「ベラ様は、実は身籠った段階でさっさと辺境へ戻るおつもりだったのです。しかしやはり王家の血を受け継いだ御子を王宮の者たちから止められてしまい、うまく抜け出すことができませんでした。ベラ様は身の危険を感じて前王陛下に頼み、離宮を封鎖いたしました」
「ふーん、表向きは母のわがまま、と見せかけて実は考えられてたってわけね」
ジュダスは体をぐっと前に乗り出した。
「姫様を無事お生みになったベラ様は、女児ならばさほど問題はないだろうと考え今度こそお帰りになるつもりだったのですが……」
「王宮で権力闘争をしているものたちは、それでも安心できなかったようなのです。辺境伯は国の盾ではありますが、なまじ辺境にあるが故に裏切りやすくもあります。おおかた王家の血をもった姫様を担ぎ上げられてはたまらないと、姫様を奪おうとしたのです」
「そこでベラ様はまた驚くべきことをお考えになったのです。全王陛下もご協力いただきわたしどもに姫様をお預けになると市井にくだらせ、王宮には姫様が連れ去らわれたと報告をして行方不明ということに」
ミシェイルは目を見開いた。
「行方不明?ではわたしは、誘拐されたということになっているの?」
「はい、しかもまだ外にお披露目もされていない状態でしたので、大々的な捜索をされることもなく。ですが全王陛下は姫様をお守りするため死亡認定を阻止していらっしゃいます」
「まあ恐らく、王宮の連中は誰かがやってくれたのだろうと安心していることでしょうな」
頭の中を整理するように、ミシェイルはゆっくりと二人の言葉を咀嚼した。
「二人は母の依頼でわたしを育ててくれたということね。前王陛下は今は?」
「ベラ様と余生を過ごしたいとおっしゃっておりますが、姫様の立場を守るため離宮にとどまっていらっしゃいます」
「前王陛下がおられなければ、すぐさま死亡扱いとなってしまうでしょうからな」
そう言われ、ミシェイルはなぜかほっとした。なぜなのか考えて、自分が思っている以上に実の父と母がミシェイルを守ってくれているということが嬉しかったのだ。
「ベラ様は怪しまれてはいけないということで、連絡は一切遮断されました。ですので我々に辺境の痕跡はまったくありません、ただ姫様の見た目だけはどうしようもありませんが」
「わたしの見た目?」
「ベラ様そっくりなんですよ、しかも黄金の瞳は王家の色ときたもんだ。しかし生まれてから3年誰も知ることがないのでね、恐らく気付くやつはいないでしょう」
なるほど、とミシェイルは頷いて二人に今まで守ってくれてありがとうと伝えた。
「危険なことだったと思うわ、お母さまも無茶を言うものね」
「ベラ様の無茶には慣れっこですから」
シェーナが余裕な微笑みを浮かべ、改めて頼もしいとミシェイルは感じた。
「……いつか、会えるかしら」
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