雨上がりのブレイクタイム

九鈴小都子

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部屋の乱れは心の乱れ

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アパートに帰った笹花は、ぐるりと自分の部屋を見回した。1DKで10畳ある多少広めの部屋は、笹花と同様にくたびれたような有様だった。
 
敷いたままの布団、ひと月は洗っていないシーツ、畳まずに積み上げられた衣服。部屋の隅にはホコリかぶってからからに枯れた観葉植物、テーブルに空になったコンビニ弁当。

今までまあいいやと思っていたものが、途端に目につくようになった。

これはダメだと、今なら思える。これをなんとかしなければと思える自分にほっとした。


笹花はさっそくTシャツと短パンに着替え、ベランダの戸をあけて玄関も開いた。空気が入り込んでホコリがふわふわと動く。

まずはゴミをまとめて捨てることにした。なるべく小さくして、有料ゴミ袋に最大限詰め込むのだ。
最初は目に見える範囲で捨てていたが、もはや伸びきった下着や雑誌の付録など、あれもこれも捨てはじめ、ギリギリ口が結べる程度にぱんぱんとなった。

これだけで汗が背中を流れ落ち、Tシャツが湿った。
洗濯物の山からタオルを引っ張り出して額を拭うと、そのまま首へかけた。

次に収納すべきものをしまっていく。観葉植物の鉢はベランダへ移動させた。一時期熱心に取り組んでいた崩れにくいたたみ方でこまごまとたたみ、クロゼット内にしまう。
散らばったメイク道具、爪切り、耳かき。手の届く範囲に散逸していたものを、元のボックスへ。


物が片付いたら埃落としにとりかかる。カーテンレール、棚の上、テーブルの上、ハンディモップを滑らせ、フローリングに散らばったほこりを掃除機で隅々まで吸い込む。そして仕上げにこれでもかとフローリングワイパーをかけ、シートをを取り外すときにはその黒さとゴミの付着にもはや清々しい気持ちとなった。


気づけばすっかり夜となり、シャワーで一汗流した笹花は冷蔵庫から冷え切ったビールを取り出す。プシュッと開けて思い切り飲む。

「さいこぉー……」


程よい疲れが心地よく、ビールが体に染み込んだ。スーパーで買った割引の鴨肉燻製を頬張りながら、スマホでネットニュースを流し読みする。いくつか見た中で、滑らせていた指がふと止まった。

「自分のための自分図鑑が熱い?」

内容は、自分がこだわっているものについて写真や絵とともに解説をつけて、自分だけの図鑑を作るというものだった。中には電子書籍で売っている人もいて、おすすめコスメ系や生き物系など様々あるようだ。


笹花はぐるりと自分の部屋を見回した。

「んー、そんなこだわってる趣味もないしなぁ」

しかし、なんとなく惹かれる。なんとなくやってみたい。


「新しい趣味を探しにいくか」


笹花は明日からの予定を考えはじめた。








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