再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

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幼馴染との再会 1

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 幼馴染、という言葉を聞いてどこまでの関係を思い浮かべるだろうか。

 幼い頃からいつも一緒で、親友のようになった関係。
 幼い頃によく遊んだことがあるという関係。
 幼い頃ほんの少し会ったことがあり、それ以来会っていない関係。

 漫画やアニメ、ライトノベルでの幼馴染といえばこんなところだろう。
 その全てが幼馴染であり、誰もが憧れる存在だ。
 かくいう俺にも幼馴染がいる。

 いや、いたが正しいか。

 幼稚園から小学校低学年の頃の話だ。俺とその子はいつも一緒に行動し、時には二人で、時には他の友達も交えて遊んでいた。
 あの頃は毎日が楽しかった。もしあの時俺が転校していなければ、なんてことを考えてしまうほどに。
 中学で再び転校し地元に戻ってきたが、かつての友達とは連絡を取り合っていない。
 幼馴染とは……今更会えない。きっと向こうも俺のことなんて忘れているだろう。

 そんなことを時折思い出す生活を続け、俺は高校二年生になった。
 中学の頃は友達という友達はいなかったが、高校に入ってからは毎日馬鹿話をする友達ができた。
 おかげで学校生活はある程度充実している。が、本人には絶対に言いたくない。
 言っておくがその友達は男だ。残念。

「やー杉坂すぎさか。また席近くだねぇ。これは運命でしょ」

 親友、いや、悪友の一之瀬いちのせみなとが笑顔で話しかけてくる。
 茶髪でお調子者だが、俺と同じく友達がいない変な奴だ。

「一之瀬、悪いけど俺の恋愛対象は女なんだ」
「僕もだわ!!! ちょっとは乗れよ!」
「久々の早起きでテンションおかしくなってんなお前。あー、春休みが永遠に続いてほしい……」

 一之瀬は遅刻の常習犯でもある。あるのだが、流石に新学期早々遅刻はしないらしい。
 馬鹿なのに無駄にずる賢いところがこいつの面倒なところ。
 基本自由な人間だがその裏色々と考えているところは少し憧れていたりする。

「杉坂は僕と違って遅刻しないからねぇ。彼女でも作れば学校生活も楽しくなるんじゃないの?」
「彼女、ね。そんなにいいものか?」

 彼女欲しいが口癖の奴は山ほどいるが、実際に彼女ができたら何をするのだろう。
 俺はどうしても気を使ってしまいそうだ。今更親しく話す相手ができるとも思えない。

「……いや、軽い気持ちで手を出したら痛い目を見るよ。やっぱりおすすめしない」

 彼女を作る魅力を力説するものだと思っていたのだが、意外にも一之瀬は顔を青くさせながら震え始めた。

「経験談?」
「聞かないでくれぇ!」
「答えだろそれ」

 あの一之瀬に彼女か。相手はどんな女の子だったのだろうか。
 やはり奇人か。そうじゃなきゃこいつの彼女になんかなりたいとは思わない。
 いや、すでに別れているのなら常識人か? どちらにせよ会ってみたいものだ。興味がある。

「って、僕のことはいいんだよ。彼女は別として、異性の友達くらい作ってもいいんじゃないの?」
「異性の友達か……」

 ふと隣の席を見る。
 そこには、いかにも染めてますよ、とでも言いたそうなほど眩しい金髪の女子生徒が座っていた。
 制服を着崩しており、ピアスも付けている。所謂ギャル、という奴だろう。
 隣の席なら、それなりに会話くらいはするし、仲良くなるチャンスはあるかもしれない。
 ……いや、別に仲良くなりたいわけではない。遊びに誘われても面倒だ。やはりほどほどの関係を築くのが一番いい。
 そう結論付け、視線を一之瀬に戻す。その一之瀬は、にやりと口元を歪ませた。

「ねぇねぇ、去年別のクラスだったよね? 席も近いしさ、自己紹介しない?」
「……あたし?」

 面倒なことを。
 突如一之瀬に話しかけられた金髪のギャルは、戸惑いながらも自分の顔を指さした。
 無駄にコミュ力の強い一之瀬のおかげで、次第にその戸惑いも薄れていく。

「そうそう。僕は一之瀬湊。よろしく!」

 しかしこいつは何故普通に会話ができるのだろうか。
 初対面の女子相手に臆することなく話しかけることができる時点で俺とは生きる世界が違う。
 生きる世界違うのに悪友やってる件については触れないでおく。

「あたしは秋野あきの沙織さおりだよー。よろしくね」
「……っ!?」

 秋野沙織、だと?
 俺が驚くのも無理はない。今もなお時折思い出す幼馴染こそが、秋野沙織なのだ。
 俺の知っている秋野沙織は、もっと大人しかった。いつもニコニコしていて、俺の後ろについてくる。そんな奴だった。
 よく観察してみると、顔つきに面影がある。
 なら本当に……? 本当にこのギャルが沙織なのか?

「ん? どした? 杉坂」
「……何でもない。杉坂裕司ゆうじだ」
「うん、杉坂くんね。よろしくよろしくー」

 俺の名前を知っても、秋野は一切動揺する素振りを見せなかった。
 完全に忘れているのか。それならこっちも都合がいい。中途半端に覚えていて気まずくなるよりは何倍もマシだ。

「あ、そうだ! 友達登録したいんだけど、どう?」
「マジ? いいの?」
「まじまじ。あたし、クラス全員と交換しようと思ってんだよねー」

 俺の知っている秋野は全員と連絡手段を交換するような、積極的な性格ではなかった。
 年月が経てば性格は変わる。それは分かっている。俺だって、昔とは正反対の大人しい性格になっているのだから。
 だとしても、ここまで変わるのだろうか。何があったのだろう。なんて余計な想像をしてしまう。

「だってさ杉坂。……杉坂?」
「あ、いや。そうだな。交換しとくか」

 流石に様子がおかしいと思ったのか一之瀬が訝し気な視線を向けてくる。
 こんな話を伝えるわけにはいかない。適当に流した俺は、一之瀬と一緒に秋野の連絡先を交換した。
 チャットアプリに友達登録された『秋野沙織』という名前を眺めながら、今後の付き合い方を考える。
 やはり、幼馴染であることは隠しながら話したほうがいいだろう。そのほうが、きっとお互いのためになる。

 同時に、寂しさも感じていた。
 あの濃く、楽しかった日々を本当に忘れてしまったのか、と。
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