再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

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幼馴染との再会 3


 拳と拳がぶつかり合い、衝撃波が生まれる。

「ドゲグゴッ!!」

 隙を突いた攻撃により、鍛え抜かれた肉体が宙を舞う。

「ゴギゲグゴゴゴッ!?」

 俺は落下を許さない。そのまま空中で攻撃を叩きこみ、一気に畳みかける。

「グゲゲゲゲゲゲェェエッェェッェエェ!!!」
「うるさっ」

 奇声を発しながら悶える一之瀬を横目に、格ゲーで昨日のリベンジに成功した俺は清々しい気分でコントローラーを置いた。
 密かにコンボの練習をしてきた甲斐があった。一之瀬をボコボコにするのは楽しい。

「あー、やめやめ。面白くない」
「お前から誘ったんだろ」
「あのね、ゲームは勝てるから楽しいの! 負けたら意味ないんだよ!!!」
「当たり前のことを叫ぶな」

 よくそんなセリフを躊躇わずに大声で言えるものだ。
 勝てないから楽しくない! なら勝てるよう頑張りましょうでしかないのに。
 しかしこの正論をぶつけると一之瀬はさらにキレてしまうだろう。
 優しい俺はその言葉をそっと心の中にしまった。

「そもそもさ、なんで勝ち負けを決めなきゃいけないのさ」
「というと?」
「争いがあるから嫌な気分になるってことはさ、平和なゲームをプレイすればいいんだ!」
「平和なゲームねぇ……」

 今度は刺激が足りないと言って勝ち負けのあるゲームに戻る未来しか見えない。

「そこでこのスローライフゲームだよ! これならのんびりゆっくり楽しめるっしょ!!!」

 一之瀬が取り出したゲームソフトは、今話題の森で生活するゲームシリーズだった。
 確かにこれは自分のペースで進められるうえ、戦いもないためストレスは少ないだろう。
 自由なゲームとなれば、一之瀬と相性がいいかもしれない。
 俺はそこに参加できないので、適当に漫画でも読んでくつろいでいようか。

 ……

 …………

 ………………

「だああああああああああ!!! っんでスズキなんだよ! 今の絶対レアだろ!! おい!!! 殺すぞ!!!」
「お前ゲーム向いてないよ」

 先ほどまで静かだったのに再び奇声を上げ始めた一之瀬。
 自由に楽しむ借金くらいしか敵のいないスローライフを遊んでいるはずなのに、一之瀬はどんどんイライラを積み重ねていたようだ。
 もうこいつはゲームをしない方がいいのではないだろうか。FPSなんかやった日には発狂するぞ。

「なんでスローライフゲーで殺すぞって発言が出るんだ」
「マジでムカつく! やっぱり相手をボコボコにしている時が一番生を実感できる! というわけで杉坂。格ゲー、やろうぜっ!」
「今日はもう格ゲーの気分じゃないんだよな、俺」
「おい逃げんなよ! 勝ち逃げはずるだろ!!!」

 ああそうだ、勝ち逃げだ。
 この後戦って負けたら後味が悪いからな。今日は勝った状態で終わらせたい。
 さて、それはいいが一之瀬がうるさいんだよな。話題を変えるのも難しそうだし、もう帰ろうかな。
 なんて思っていたら、スマホが振動した。チャットアプリだ。相手は……秋野。

「ん、わり。チャット来た」
「おい! 聞けよ! 無視すんなよ!!!」
「はいはい。えーっと……」

 送られてきたメッセージを見る。
 『ごめん、しばらく遊びには行けなそう』
 短く、それだけが書かれていた。
 まあ、仕方ないか。それだけ遊びに誘われているのだ。いいことじゃないか。
 あまり一緒に居たら、俺のことを思い出してしまうかもしれない。遊びに行くなんて、それこそ危険行為だ。

「あん? 何かあったの」
「いや、掃除のときに俺らと秋野でそのうち遊びに行きたいって話になったんだけどな。予定で埋まってるのか知らんがしばらく無理そうって連絡が来た」

 遊ぶ話の中には一之瀬も入っていたので、これについては伝えておくべきだろう。
 まあ伝えようが伝えまいがこいつは何も気にしないだろうが。

「ふーん。それだけ?」
「ああ。それだけだ。でもまあ、別に遊びに行かなくてもいいよな。秋野ってクラスのみんなと仲いいし、俺たちだけ特別仲いいわけでもなかったし、むしろ、俺らと一緒にいると変に思われちまうかもしれないし……」

 そんな言葉がつらつらと出てくる。
 不安なのだ。このまま俺が秋野と話していていいのか。関わっていていいのか。
 いつか秋野が思い出したときに、なぜ教えてくれなかったのかと言われてしまうのではないかと。

「お前さ、何か隠してるだろ」
「……」
「ま、別に話さなくてもいいけどね。僕にだって話したくないことはあるし。でもさ、杉坂。秋野ちゃんとお前がどういう関係なのか知らないけど……後悔しない道を選びなよ」

 ……後悔、か。
 ここ数日、悩みに悩み続けていたのだ。どうすればいいのか、答えが分からないまま悩んだ。
 俺が幼馴染であると伝えた場合、もう関係を築けなくなる。今更言えない。これは変わらない。
 そして秋野が思い出した場合。これもダメだ。俺も気づいていなかった振りをする必要がある。
 もう、関係を切ることはできない。多少遠ざけたところで向こうから話しかけてくる。

 だったら、幼馴染であるというヒントを与えずにこのままの関係を続けていくのが一番ではないのか。
 俺も過去のことは一旦忘れて、普通に接しよう。それが、今思いつく最高の立ち回りだ。

「ああ」

 何事もない、今まで通りの学校生活を送ろう。
 それが俺にとって後悔しない道であるのかは分からないが、とにかく今はそれしかない。
 一度心の整理をするとすっきりした。いつかまた別の道が見つかったら、その時はまた悩めばいい。
 そう心に決め、俺は一之瀬を格ゲーでボコボコにした。
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