再会した幼馴染が記憶喪失になっていた。しかも原因が俺にあるようなので責任を取りたい

瀬口恭介

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秋野の思い出巡り計画 5

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 秋野の部屋に戻ってきた俺たちは、買ってきた駄菓子をテーブルに並べた。
 ヨーグルトっぽい駄菓子や四角いピンク色をした爪楊枝で食べる駄菓子など懐かしい駄菓子が勢ぞろいだ。
 一つ一つ手に取り、食べていく。うん、普通に美味い。案外お茶と相性がいいのかもしれない。

「思い出巡りもそうだけど、友達作りはどうするんだ?」

 思い出巡りはこうして定期的に昔行ったことがあるであろう場所を巡ればいい。
 しかし友達作りはそうはいかない。今までのように浅い関係を増やしたところで親友は現れないのだ。
 何かしら対策を取る必要がある。誰と仲良くなりたい、などはあるのだろうか。

「中学からの友達とかはいないのか?」
「いるけど、すごい仲いいってわけじゃない、かな」

 中学から関係が続いているが、それもたまに遊んだり話すくらいの関係と。
 俺とクラスメイトの関係をさらに良くした感じか。俺の場合は話す機会があれば話す程度で遊びもしないけども。
 そうなると友達だと声を大にして言える人は限られてきそうだ。

「じゃあ、仲良くなりたい子は?」
「仲良く……みんなと仲良くなりたいけど」
「だからそれは難しいんだって。今の俺や一之瀬よりももっと一緒に話をしたり遊んだりしたい相手は?」
「んー、思いつかない……」
「ま、そうだよな。そう簡単に見つかるものじゃないしな」

 よくよく考えてみれば親友なんて自分からなりたいと思うものじゃない。友達からさらに仲良くなって、気付いたらなっているようなものだ。
 友達の状態で関係がしっかりしていないと、そこまで成長はしない。
 それに、秋野は周りからみんなと友達という目で見られている。向こうから自分だけ仲良くなろうと近づいてくることはまずないだろう。

「うーん、うーん……あっ、委員長とか!」
「委員長? なんで?」

 意外や意外。秋野は委員長と仲良くなりたいらしい。
 俺からの委員長の評価は、昔の秋野と今の秋野を足したような感じだ。
 周りのみんなとも良い友好関係を持っていて、それでいて大人しい。
 とはいえ、誰かと仲良くしているところは見たことがない気がする。そう考えると交友関係は俺に近いのか。

「忙しいのか知んないけど、あんまり話す機会なくてさー」
「その割に掃除は頼まれるよな」
「うん、だから信頼されてるのかもって!」

 あんまり関りがない相手に掃除を頼む、それは信頼されているのだろうか。
 委員長本人に仲のいい友人がいないからかもしれないが、それだけで信頼されてると思うのもどうなんだ。

「どうだかなぁ、でもまあ話しかけてみたらいいんじゃねーの」
「うん、手伝ってよ」

 そんなことを言い出す秋野。
 正直秋野のコミュ力なら委員長に話しかけるくらいは楽勝だと思うんだが。
 むしろ、俺がいることで邪魔になりかねない。友達作りにおいて俺の存在が邪魔すぎる。

「邪魔にならないか?」
「大丈夫大丈夫、一緒にいるだけだから。それにまだ……怖いし」
「ああ、委員長と二人だと他の人が混ざるかもってことか」

 秋野の交友関係だと、委員長と二人でいると女子や男子に会話に混ぜてーと言われてしまう可能性がある。
 そこに俺がいたらどうだろうか。一気に近寄りにくくなる。秋野と、委員長と、俺。どんな組み合わせだよと全員が身構えることだろう。

「そゆこと。校内で一人にしないでね」
「難易度高いなぁそれ」

 秋野を校内で一人にしないってかなり難しいだろうな。
 まあ登校は仕方ないとして、朝話して、休み時間も適当に会話して、昼も一緒に食べて……まあ、俺自身動き回らないから負担は思っていたよりも少なそうだけども。

「早速明日話しかけてみようかな、お昼一緒に食べるとかどう?」
「俺に聞くなよ……まあ、最初はそんなもんだろ。普通に話しかけても話題なんてないし」

 お昼一緒に食べて、委員長としての仕事は何をしているのかとか、適当に話をすればいい。
 盛り上がる状況が想像できないが、まあ話してみたら何とかなるものだ。盛り上がらなくても会話ができればそれでいい。そこから関係が生まれるのだ。

「決まりね、一之瀬くんはどうしよっか」
「あいつ一人にすると後でめんどくさいからなぁ、かといって連れて行ったらやかましいし……仕方ない、俺が何とかしとくよ」

 適当な嘘をついて離れればいいだろう。頭は切れるが基本的にはバカなのでどうにかなるって。

「じゃあ、今後の計画はそんなもんかなぁ。思い出巡りは土日にでも行こうぜ」
「そうだね。えーっと、もう帰っちゃうの?」
「おう。流石に長居はできないからな」

 これ以上することもない。帰ったら一之瀬の奴にチャットで弁明しておこう。
 そう思いながら立ち上がり、駄菓子のゴミを片付ける。鞄に入れ、スマホを持ってドアに手を掛けた。
 ドアノブを捻り、ドアを開けようとする。
 開かない。

「え? 開かないんだけど」
「なんで? カギなんでついてないよ?」
「歪んでんのかな」

 壊れたらごめんなさい、と力を入れてドアを開けようとする。
 グッと力を込めると、ドアの後ろにある何かを押す感覚があった。

「きゃっ」
「え」

 ガタンガタンと音を立てて何かが倒れた。
 そして今の声、秋野の声ではない。
 状況を確認するため半分開いたドアから廊下を覗き込む。
 そこには、青いバランスボールと、尻もちをついた栞里さんがいた。

「ああっ、せっかく置いたのに……」
「何してんすか……」

 残念そうな顔で呟く栞里さんがいた。
 本当に何をしているんだ。軽く状況を整理してみよう。
 ドアの反対側にはバランスボール。それだけなら最初に押したときにある程度開いたはず。
 ということは、栞里さんがバランスボールを後ろから抑えてドアが開かないようにしていたということ。
 どういうことだよ。もっと分かんないよ。

「ちょっと、お母さん何やってるの!?」
「いやぁ、せっかく二人きりだしいい雰囲気にならないかなーなんて……あはは」
「お母さん何言ってるの!?」

 もう脳が上手く処理してくれない。
 え、つまり栞里さんは俺と秋野を閉じ込めようとしたってこと?
 怖くなってきた。一旦落ち着こう。軽いいたずら心かもしれない。

「とりあえず、見なかったことにしておきます。お邪魔しました」
「あ、うん。裕司くん気を付けて帰ってねー」
「ま、またね!」

 やばい。あの人はやばい。
 俺の中で危険信号が出まくっている。なんで久しぶりに会った娘の幼馴染を閉じ込めようとしてんだ。
 帰ろう。帰って妹に癒されよう。ここ最近で色々ありすぎた。

* * *

 家に帰った俺は風呂に入りくつろいでいた。
 ふー、この時間が一番いい。
 なんて思っているとインターホンが鳴った。玄関に近かった妹が向かったようだ。
 少しすると妹が帰ってくる。何だったんだ。

「お兄ちゃん、お客さん」
「俺に?」

 相手の用事はまさかの俺らしい。
 誰だろうか。もう空も暗いというのに。
 嫌がられてなかったから一之瀬ではないな。他に思いつかない。
 玄関に向かい、ドアを開ける。
 そこに立っていたのは……

「よっ、久しぶりだなぁ裕司」

 秋野のお父さんだった。
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