弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

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第二章『黄金の羊毛編』

079 コレクター、選択をする

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 そこに立っていたのは、瞳が紫色になったルディオだった。
 目に光はなく、ただポツンとそこに立っている。
 それだけならまだしも、気になることがあった。チョーカーを付けていないのだ。

「なんでチョーカーを付けてないのさ」
「簡単な話だよぉ、あたしの魔法があれば道具が無くても操れるの。こうやって操ると魔力を使いすぎちゃうからねぇ~」

 そうなると、チョーカーを外しての洗脳解除は難しそうだ。

「それに、ここに立っているのは彼の意志だよ? あたしは手助けをしているだけなの」
「……まあ、確かにそれは納得できちゃうね」

 俺に対し何の思い入れもない獣人たちはチョーカーを使って洗脳していたが、最初から俺への憎悪が大きいルディオは魔法で操りやすかったと。
 その憎悪を大きくして、力を与えた。それだけなのだろう。
 目に光はないのに、明確に殺意を感じる。

「彼を倒したらここから出してあげる」
「そんな簡単なことでいいの? ルディオが魔法を使う俺に勝てるとは思えないんだけど……」

 ルディオを倒すだけでここから出ることができるのだ。
 あまりにも簡単すぎる。ルディオの実力は知っているし、強化されていると言っても限度がある。

「勝てないだろうねぇ~でも、殺せるのかなぁ?」
「どういう意味?」
「そのままの意味だよっ! ミカゲさんが言ってたんだ~。いくら強くても相手は日本人だって。日本人? とかいうのは良く分からないけど、向こうの人間は人を殺せないんでしょ?」
「……さあね」

 そう来たか。
 向こうの神様は日本人である俺は、同じ人間のルディオを殺せないと考えているのだ。
 実際、その考えは間違っていない。どうあがいても躊躇いは生まれるし、人間を殺したら後戻りができなくなる。

「だからさ、あたしの物になってよ。そうしたら殺さずに済むし、死なずに済むよ?」

 先程までニヤニヤしていたリスティナは、真剣な表情でそう言ってきた。
 リスティナの物になるか、ルディオを殺してこの場から逃げ出すか。
 だったら、俺はそれ以外の選択肢を選ぶ。

「どっちも嫌だね。ルディオもリスティナも、今ここで無力化する……っ!」

 俺は『パラリシスダガー』を構えると、一気にルディオとの距離を詰める。
 そして、ちくりと首元を刺した。これでルディオは麻痺毒で動けなくなるはずだ。
 リスティナは悪魔族なので効くかは分からないが、一応刺してみてもいいかもしれない。
 早速隣にいるリスティナにも攻撃を……

「ココデ、コロス……!」
「んなっ!?」

 麻痺毒に掛かっているはずのルディオが俺に向けて剣を振るってきた。
 そんな、麻痺毒を無効化する装備なんて付けていないはずなのに。

「麻痺毒が効いてない? そんな、対毒スキルなんて簡単に上げられるわけが……」
「ざぁ~んねぇ~ん。対策済みだよ? あたしは上位種族? だから麻痺毒は効かないの。それは眷属になった彼も一緒」

 麻痺毒の効かない高ランクモンスターと同じ扱いってことか。
 気絶させるにしても体力が多そうだし、リスティナが回復してくるかもしれない。
 他にもルディオを無力化させる方法を考えるが思いつかなかった。いっそのこと本当に殺してしまおうか。
 いや、むしろルディオを攻撃せずにリスティナを攻撃すればいいんじゃないか?

「無駄だよぉ? あたしを殺したら彼も死んじゃうから」
「くそっ……どうすれば……」

 リスティナを殺したらルディオを殺したことになる。
 ルディオを無力化する方法は思いつかない。
 考えれば考えるほど正解が出てこない。

「レクトオオオオオオオ!!!!」
「うおっと!?」

 考えている間にルディオが攻撃を始めた。
 俺は『パラリシスダガー』をストレージに入れ、普段使っている短剣を二本取り出す。
 ルディオの剣技は以前よりも強化されているが、こちらも成長しているため短剣でも簡単に捌くことができた。
 一度蹴りを入れて遠くまで吹き飛ばし、息を整える。再びやってきたルディオを再び吹き飛ばす。これを繰り返せばしばらくは大丈夫そうだ。

「ほら、殺せないでしょ~? 早くあたしの物になってよぉ。一生大切にしてあげるからさぁ~」
「断る!」
「……ムカつくなぁ。なんでそんなに必死なのぉ?」
「俺は元の世界に帰るんだ! だから、お前の物にはなれない!」
「あの世界は確かに魅力的だけど、そうまでして帰りたいの? もう、レクト様は元の見た目じゃないんだよ?」

 ……それは前から思っていたことだ。
 元の世界に帰る方法が分かったとして、俺はこの身体のまま帰ってしまうのではないかと。
 そもそも、俺の肉体が残っているのかどうかすら何も分かっていないのだ。
 だから、帰ることにも不安があった。しかし、それでも俺は帰りたい。帰る理由があるのだ。

「関係ない。約束が守れるのなら、俺は絶対に元の世界に帰ってみせる」
「でもさ、この世界ですごく楽しそうだったよねぇ~?」
「……まあね」

 楽しかった。それは間違いない。
 約束が無かったら、あの世界には帰ろうとは思わなかっただろう。
 エリィやカリウス、村の皆には申し訳ないがそれでも俺は帰りたいのだ。

「ならさぁ……そういう厄介なのもぜーんぶ、あたしが消してあげるよぉ?」
「……は?」

 消す……? 全部って、どういうことだ?

「そうすればあたしの物にならない理由は無くなるよねぇ~?」
「おい、消すってどういう……」
「この世界丸ごと、レクト様の仲間もだよぉ? 向こうの世界に行ったら、その約束もぶっ壊してあげる!」

 純粋な笑顔で、リスティナはそう言ってきた。
 リスティナは、俺の約束も、エリィやカリウスも全て無くすと言っているのだ。
 そんなことになってしまったら、本当に終わってしまう。その状態で俺だけ生きていたとしても、俺はそんなことには耐えられない。

「オレヲワスレルナアアアアア!!!」

 吹き飛ばされたルディオが突撃してくる。
 今はそれどころじゃない。俺は気付いていなかった。もし世界が破壊されたら、俺は何もかもを失うことになる。
 人殺しになるかならないか、か。そもそも、相手を殺さずに世界を救う、という方が難しいのだ。
 なら、答えは一つ。

 ルディオの首を深く切り裂いた。

「ア、ガアアアアアア!!!」
「来世はまともになりなよ」

 血をだくだくと流しながら悶えるルディオに心の中で合掌しながら、リスティナに視線を向ける。
 リスティナは酷く驚いた顔をしながら数歩後ずさった。

「あれぇ……??? ミカゲさん、話が違うよぉ!?」
「女の子は殺したくないけど、仕方ないよね……」

 世界を救うためだ。悪く思わないで欲しい。
 理由は謎だが、俺を好きでいてくれた相手を殺す。嫌な気持ちが爆発しそうだが、やるしかない。
 俺は短剣を仕舞い、魔法使いモードで戦闘を始めるのだった。
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