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第三章
全力の時間稼ぎ
しおりを挟む簡単な話し合いをした結果。タイタンゴーレムを倒すわけではなく、止める。それを目的とし、攻撃を続けるといった作戦への変更となった。
タイタンゴーレムはプレクストンに向かって少しずつ進んでる。
倒すことはできなくても時間を稼ぎフォボス、ナイアド、ヒューレがディオネを倒せばいいのだ。
そこからは、まあ消化試合だろう。あの二人がどれほどの奥の手を隠し持っているのかは知らないが、ディオネを倒して俺の魔力を治せばどうとでもなる。
「ドロップ、ヴール、ソイル、シエル。守護者をここに呼び出すことはできるか?」
まだ少し足りない。そう思い守護者を呼び出してもらうことにした。
『四精霊の鎧』が消え、四人の精霊は俺から離れた。その時に、強制的に精霊界に戻されてしまったらしい。
四人が戻ってきたのは、作戦会議の途中だ。幸い俺のような魔力が流れ出す傷を負ってはいなかった。
あの魔剣は厄介だな。解魔の剣ってとこか。ディオネを探しに行ったフォボスたちが刺されなければいいが。
ともあれ、四体の守護者は集まった。指示も出してもらったので、この場にとどまってくれるだろう。
「よし、準備はできた。魔法陣は……」
その場にいたメンバーを順に見ていく。
フォトは、魔法が使えない。リュートも魔法は得意ではない。ヴァリサさんは強化系の魔法しか使えない。
魔法を使えるのはフレンだけだ。
なんだこの偏ったパーティーは。
「フレン、頼めるか」
「……了解しましたわ」
不安そうではあるが、自分しか魔法が得意ではないと理解し了解してくれた。
俺が皆に魔力を渡すのは容易だが、それを複数人に何度も行うのは難しい。
そこで、魔法陣で陣地を作り、そこから全員が魔力供給をできるというシステムにする。
そうすれば俺は魔法陣に魔力を注ぐだけで済むし、他の皆もタイタンゴーレムに集中できる。
「魔法陣、起動しますわ!」
フレンがそう言うと、足元がぱあっと光った。
それに合わせて、俺が魔力を注ぎ込む。すると、魔法陣はどんどん大きくなった。
やがて守護者の魔法陣とも合体し、強大な魔力を内包するようになる。
よし、これで魔力が無駄にならなくなった。
「皆、作戦通りタイタンゴーレムがここを通り過ぎるまでの間、動かずに遠距離攻撃に専念する」
全員がこくんと頷いた。
それを見て、俺も魔力を送り込むことに集中する。
俺の魔力はどうやら特殊で、かなりの威力上昇が期待できるとかなんとか。
そういえば火山で大精霊に魔力をやったときも喜ばれたな。
「うっわ、すごい魔力だねこれ。よーしまずは僕から試すよ」
リュートは六体の竜を従えている。そんなリュートの全力の一撃はどうなるのか。
一人での槍のエクストラスキルは知っているが、六体のドラゴンの総攻撃は見たことがない。
話では専用のエクストラスキルを作ったと言っていたが。
なんて考えている間に、リュートのスキルチャージが完了した。
リュートは、両手を前に突き出し手首を合わせる。
そして、そこに魔力が集中する。六体の竜もまた、口を開きブレスを吐き出す準備を整えた。
「キタキタキターーーッ!!! 行くぜッ――――『七竜の大咆哮』ッッッ!!!!!」
叫びと共に、六――――いや、七体の竜がブレスを放つ。
炎、水、砂、自然、氷、雷。そして全てのブレスが含まれた一つのブレスが、リュートの手から放たれた。
絶対的な威力が込められたそのブレスは、タイタンゴーレムの胴体に直撃する。
数秒間、遠目に見てもタイタンゴーレムが押し返されたのが見えた。
やった、これでかなりの時間を稼ぐことができるだろう。
「っしゃあ!」
リュートのガッツポーズと共に、視界に緑色の何かが見えた。疲労が癒されていく。
なんだこれは、と思ったが同じ感覚を少し前に感じたことがある。
フォレストドラゴンだ。フォレストドラゴンのブレスは、空に向けて放たれていた。
それにより、回復の雨が空から降り注いだのだ。攻撃をしながら、回復も同時にできる。強力なエクストラスキルだ。
「次はあたしの番だね」
そう声を出したのは大剣を担いだヴァリサさんだった。
ヴァリサさんには遠距離攻撃をする手段がない。なので今回の作戦では俺と同じくサポートに回ってもらう予定だった。
が、この女。なんと遠距離攻撃を会得していたのだ。流石すぎる。惚れそう。
そしてその方法は、斬撃を飛ばすというもの。脳筋め。
「『風魔鬼斬』」
巨大な大剣に魔力を込め、それを思いっきり振った。
すると、赤みを帯びた巨大な風の刃が現れ高速でタイタンゴーレムに向かって飛んで行った。
かつてデュラハンが使った『黒風刃』と同じ系統だと思っていたが、どうも違うらしい。
これは異常なまでの力で空間を切り裂き、風の刃を放つ技だ。そう、力のみを求めた脳筋エクストラスキルなのだ。
「見ているか弟子たちよ……これがあたしの全力、全身全霊の刃だ」
かっこよ。
「かっこよ」
口に出てしまった。
いや、そんなことを言っている場合ではない。あの技は効くのだろうか。
高速で空を駆けた『風魔鬼斬』は、タイタンゴーレムのこれまた中心に当たる。
俺の心配は杞憂だった。その威力は十分すぎる。
タイタンゴーレムの身体を両断するように巨大な溝……いや、傷ができていたのだ。
少ししたらあの傷も戻ってしまうだろうが、それでもすごい。あれだけ削れば修復に回す魔力が多くなり攻撃も緩まるだろう。
そして、まだフォトとフレンが残っている。この二人のエクストラスキルから、再びリュートのエクストラスキル……と繰り返していく予定だ。
次の攻撃にも集中しなくては、そう思い俺は魔力の供給を続ける。
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