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81話 初キスの感触
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頭が真っ白になる。
え?今なんて言った?一緒に寝ればいい……?一緒に寝れば!?!?
「えっ……?え?えぇええ!?!?」
「ちょっ、声が大きい!!」
そう言うクロエも俺に負けないくらい声が大きくて、顔が真っ赤になってすぐにでも爆発しそうだった。
それでも、クロエは俺の頬を包んでいる両手を、離さなかった。
「…………」
「…………」
俺たちはまたしばらく、何も言わずに互いを見つめ合う。
いや、正直に何を言えばいいかが分からなかった。ただただ頭がぼうっとして、顔に熱が上がってくる。
だって、俺もこういう経験は初めてだから……!女の子に、こんな直接的にアピールされたこともなかったから!
「………い、いや、なの?」
「……………」
そして、その経験のなさはクロエも同じなのか。
彼女は普段の凛々しい姿からは思えないほど緊張した顔で、手を震わせていた。
金色の瞳には不安が滲んで、段々とクロエの指先が冷たくなっていく。その変化を感じた瞬間、俺は反射的にクスッと笑ってしまった。
「ちょっ、なんで笑うのよ!!」
「あはっ、あははっ……ごめん、ごめん。なんか、普段のクロエと違いすぎて」
「……それ、どういう意味」
「こんな小動物みたいなクロエは初めてだから、逆にちょっと落ち着いたかもしれない」
「うぐっ……!!も、もういい!!期待した私がバカだった!早く自分の部屋行け、この鈍感男!言っとくけど、次もまた私の部屋入ってきたら容赦しないから―――」
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。俺ができるだけ優しく、クロエを抱き寄せたから。
いきなりハグをされたクロエは体をビクンと跳ねさせてから、顔を上げようとする。
しかし、俺はその行動ができないようにさらに強く、クロエを抱きしめた。
……俺だって、人様に見せられない程度には顔が赤くなってるから。
「……カ、カイ?」
「…………」
「………なにか、言ってよ」
「…………ごめん、今は無理」
「………あの、さ」
そして、俺に拒絶されてないと気づいたクロエは。
さらに俺の懐に顔をうずめながら、言ってくる。
「一緒に、寝てくれるんだよね?」
「……………い、一応は」
「やだ、はっきり答えてよ……こう見えて私、けっこう覚悟してるんだからね?」
「……………」
この流れで、さすがにノーとは言えないだろうな………いや、違う。
流れとか雰囲気とかはどうでもいい。俺が単に……もっと、クロエと一緒にいたいだけだ。
俺はクロエを抱きしめている腕にもっと力を入れてから、答える。
「じゃ、今夜だけ……今夜だけ、二人きりで寝ようか」
「…………………………」
「……なんでなにも言わないの?クロエ?」
「……納得いかない。なんで今夜だけなの?」
「いきなり肉食系になったな!?クロエさん!?」
「本当、女の子の気持ちとか全然分かんないんだよね、カイって」
ゆっくりと体を離した後、クロエは恨みがましい目で俺を睨んでくる。俺は視線を合わせる自信がなくて、反射的に顔をそむけた。
「ぶぅ………」
しかし、それがまた気に食わなかったのか、クロエは頬を膨らませて再び俺の顔を両手で包む。
それから、急にぐっと引き寄せ始めた。互いの息遣いが当たりそうなほどの距離まで、俺の顔を引き寄せたのだ。
「ちょっ、クロエ……!?」
「………」
こんなことをされるとは思ってなかったから、俺は慌てて顔を離そうとする。
しかし、クロエは俺の顔を手でぎゅっと固定したまま、離してくれなかった。
「………クロ、エ?」
「……なに?」
「えっと、その……きゅ、急にどうしたのかなって……」
「……カイって、絶対童貞だよね」
「……………………………………………………………」
「普段はあんな饒舌に喋るくせに、肝心な時は黙ったり逃げたりする。言っとくけど、女の子はけっこう傷つくんだからね?そういう行動一つ一つに」
不満がたくさんあるのか、クロエは頬を染めながらも次々と小言を言ってくる。だけど、クロエの言葉は耳を通り抜けるだけでちっとも頭の中には入らなかった。
目の前にいるクロエの顔が、綺麗すぎるから。
それに、急に顔を寄せられたから。少しでも前に動いたら、唇が……互いの唇が触れちゃうほどの距離に、クロエがいるから。
「………」
「………あんまり、ジロジロ見るなぁ」
「………」
「………………バカ」
月の明かりが窓際から差し込んできて、クロエの顔を照らす。絵に描いたような乙女の顔だった。
頬を真っ赤に染めて、唇を震わせていて。その切実さと緊張がもろに伝わってきて、俺は目を見開く。
その表情には冷酷な暗殺者の面影がなかった。ただの………ただの、女の子の大事な感情がにじみ出ていて。
気づけば、俺は取りつかれたように自然と、クロエの頬に手を添えていた。
「ぁ………」
クロエは一瞬目を見開くけど、間もなくして俺の手に自分の手を重ねて、瞳を閉じた。
心臓がドクン、ドクンと鳴り出す。クロエはもう全身に力を抜いて、少しだけ唇を開いているだけだった。
俺は、鼻の先が当たらないように少しだけ首を傾げてから――――
「…………」
「…………」
クロエの唇に、自分の唇を重ねた。
初めてのキスは思っていた以上に暖かくて、柔らかかった。それ以上の感想は浮かばなかった。
ただただ、胸の鼓動がうるさすぎて、頭が真っ白になってしまって。
細かい感触に気を配れないほど、緊張しているからだ。
「ん、ちゅっ………………ふぅ」
「………」
唇が離れた後、クロエは耳まで真っ赤になったまま深呼吸をする。唇は相変わらず震えていて、瞳も揺れていた。
でも、今回のクロエは不安より期待に満ちた顔になって、再び俺を見つめてくる。
「…………カイ」
「…………うん」
「……もう一回、して?」
今度は体まで密着させてから、クロエはとんでもない頼みごとを口にする。
だけど、それを断れるほどの理性は、もう俺に残っていなかった。
俺はクロエを抱き寄せながら、再び唇を重ねる。
「…………んん、ちゅっ、ちゅ……」
クロエの息遣いとキスの音が、鮮明に鳴り響く。
体はくっついたままで、クロエは絶対に離さないとばかりにぎゅっと抱き着いて何度もキスをしてきた。
初めての刺激に酔ったように、恍惚とした顔をしながら。
「もう一回……やだ、もう一回………」
「………………」
「カイ……カイ………んちゅっ、ちゅっ………」
クロエは完全に暴走状態になって、俺はそんな彼女の気持ちをすべて受け入れられるよう、優しいキスを繰り返す。
それから、どれくらいの時間が経っただろう。
触れ合うだけのキスを10回以上はした気がする。クロエは未だに目を閉じながらも懸命に俺に抱き着いてきて、俺もまたクロエを離さなかった。
そして、互いの唇を少しついばむような濃いキスをした後。
クロエは、俺の懐に顔を埋めてから言う。
「……好き」
「…………」
「好き、好き………ずっと、好きだった。私の命を救ってもらったあの日から、ずっと好きだった……」
彼女は、俺がプレイしたゲームの中で早死にする運命のキャラだった。
だけど、俺がこの世界に転生してから真っ先に思い浮かんだキャラでもあるし、今は俺にとってかけがえのないパートナーでもある。
だから、俺の答えは決まっている。
「………俺も」
「………うん」
「俺も、好きだよ。俺もずっと前から、クロエのこと好きだった」
「………うん」
クロエはようやく顔を上げて、幸せそうな表情を見せてくれる。
目じりには嬉しさによる涙が少し滲んでいて、俺は親指でそれを優しく拭きながら、もう一度言った。
「好きだよ、クロエ」
「………私も、大好き」
次の瞬間、クロエはびっくりするくらいの勢いで、自分からキスをしてくる。
俺は一瞬慌てたけど、すぐに彼女を抱きしめている腕に力を入れた。
「好き………好き、大好き……カイ、大好き……」
それから俺たちは、理性のネジを外したままずっと唇を重ね続けた。
え?今なんて言った?一緒に寝ればいい……?一緒に寝れば!?!?
「えっ……?え?えぇええ!?!?」
「ちょっ、声が大きい!!」
そう言うクロエも俺に負けないくらい声が大きくて、顔が真っ赤になってすぐにでも爆発しそうだった。
それでも、クロエは俺の頬を包んでいる両手を、離さなかった。
「…………」
「…………」
俺たちはまたしばらく、何も言わずに互いを見つめ合う。
いや、正直に何を言えばいいかが分からなかった。ただただ頭がぼうっとして、顔に熱が上がってくる。
だって、俺もこういう経験は初めてだから……!女の子に、こんな直接的にアピールされたこともなかったから!
「………い、いや、なの?」
「……………」
そして、その経験のなさはクロエも同じなのか。
彼女は普段の凛々しい姿からは思えないほど緊張した顔で、手を震わせていた。
金色の瞳には不安が滲んで、段々とクロエの指先が冷たくなっていく。その変化を感じた瞬間、俺は反射的にクスッと笑ってしまった。
「ちょっ、なんで笑うのよ!!」
「あはっ、あははっ……ごめん、ごめん。なんか、普段のクロエと違いすぎて」
「……それ、どういう意味」
「こんな小動物みたいなクロエは初めてだから、逆にちょっと落ち着いたかもしれない」
「うぐっ……!!も、もういい!!期待した私がバカだった!早く自分の部屋行け、この鈍感男!言っとくけど、次もまた私の部屋入ってきたら容赦しないから―――」
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。俺ができるだけ優しく、クロエを抱き寄せたから。
いきなりハグをされたクロエは体をビクンと跳ねさせてから、顔を上げようとする。
しかし、俺はその行動ができないようにさらに強く、クロエを抱きしめた。
……俺だって、人様に見せられない程度には顔が赤くなってるから。
「……カ、カイ?」
「…………」
「………なにか、言ってよ」
「…………ごめん、今は無理」
「………あの、さ」
そして、俺に拒絶されてないと気づいたクロエは。
さらに俺の懐に顔をうずめながら、言ってくる。
「一緒に、寝てくれるんだよね?」
「……………い、一応は」
「やだ、はっきり答えてよ……こう見えて私、けっこう覚悟してるんだからね?」
「……………」
この流れで、さすがにノーとは言えないだろうな………いや、違う。
流れとか雰囲気とかはどうでもいい。俺が単に……もっと、クロエと一緒にいたいだけだ。
俺はクロエを抱きしめている腕にもっと力を入れてから、答える。
「じゃ、今夜だけ……今夜だけ、二人きりで寝ようか」
「…………………………」
「……なんでなにも言わないの?クロエ?」
「……納得いかない。なんで今夜だけなの?」
「いきなり肉食系になったな!?クロエさん!?」
「本当、女の子の気持ちとか全然分かんないんだよね、カイって」
ゆっくりと体を離した後、クロエは恨みがましい目で俺を睨んでくる。俺は視線を合わせる自信がなくて、反射的に顔をそむけた。
「ぶぅ………」
しかし、それがまた気に食わなかったのか、クロエは頬を膨らませて再び俺の顔を両手で包む。
それから、急にぐっと引き寄せ始めた。互いの息遣いが当たりそうなほどの距離まで、俺の顔を引き寄せたのだ。
「ちょっ、クロエ……!?」
「………」
こんなことをされるとは思ってなかったから、俺は慌てて顔を離そうとする。
しかし、クロエは俺の顔を手でぎゅっと固定したまま、離してくれなかった。
「………クロ、エ?」
「……なに?」
「えっと、その……きゅ、急にどうしたのかなって……」
「……カイって、絶対童貞だよね」
「……………………………………………………………」
「普段はあんな饒舌に喋るくせに、肝心な時は黙ったり逃げたりする。言っとくけど、女の子はけっこう傷つくんだからね?そういう行動一つ一つに」
不満がたくさんあるのか、クロエは頬を染めながらも次々と小言を言ってくる。だけど、クロエの言葉は耳を通り抜けるだけでちっとも頭の中には入らなかった。
目の前にいるクロエの顔が、綺麗すぎるから。
それに、急に顔を寄せられたから。少しでも前に動いたら、唇が……互いの唇が触れちゃうほどの距離に、クロエがいるから。
「………」
「………あんまり、ジロジロ見るなぁ」
「………」
「………………バカ」
月の明かりが窓際から差し込んできて、クロエの顔を照らす。絵に描いたような乙女の顔だった。
頬を真っ赤に染めて、唇を震わせていて。その切実さと緊張がもろに伝わってきて、俺は目を見開く。
その表情には冷酷な暗殺者の面影がなかった。ただの………ただの、女の子の大事な感情がにじみ出ていて。
気づけば、俺は取りつかれたように自然と、クロエの頬に手を添えていた。
「ぁ………」
クロエは一瞬目を見開くけど、間もなくして俺の手に自分の手を重ねて、瞳を閉じた。
心臓がドクン、ドクンと鳴り出す。クロエはもう全身に力を抜いて、少しだけ唇を開いているだけだった。
俺は、鼻の先が当たらないように少しだけ首を傾げてから――――
「…………」
「…………」
クロエの唇に、自分の唇を重ねた。
初めてのキスは思っていた以上に暖かくて、柔らかかった。それ以上の感想は浮かばなかった。
ただただ、胸の鼓動がうるさすぎて、頭が真っ白になってしまって。
細かい感触に気を配れないほど、緊張しているからだ。
「ん、ちゅっ………………ふぅ」
「………」
唇が離れた後、クロエは耳まで真っ赤になったまま深呼吸をする。唇は相変わらず震えていて、瞳も揺れていた。
でも、今回のクロエは不安より期待に満ちた顔になって、再び俺を見つめてくる。
「…………カイ」
「…………うん」
「……もう一回、して?」
今度は体まで密着させてから、クロエはとんでもない頼みごとを口にする。
だけど、それを断れるほどの理性は、もう俺に残っていなかった。
俺はクロエを抱き寄せながら、再び唇を重ねる。
「…………んん、ちゅっ、ちゅ……」
クロエの息遣いとキスの音が、鮮明に鳴り響く。
体はくっついたままで、クロエは絶対に離さないとばかりにぎゅっと抱き着いて何度もキスをしてきた。
初めての刺激に酔ったように、恍惚とした顔をしながら。
「もう一回……やだ、もう一回………」
「………………」
「カイ……カイ………んちゅっ、ちゅっ………」
クロエは完全に暴走状態になって、俺はそんな彼女の気持ちをすべて受け入れられるよう、優しいキスを繰り返す。
それから、どれくらいの時間が経っただろう。
触れ合うだけのキスを10回以上はした気がする。クロエは未だに目を閉じながらも懸命に俺に抱き着いてきて、俺もまたクロエを離さなかった。
そして、互いの唇を少しついばむような濃いキスをした後。
クロエは、俺の懐に顔を埋めてから言う。
「……好き」
「…………」
「好き、好き………ずっと、好きだった。私の命を救ってもらったあの日から、ずっと好きだった……」
彼女は、俺がプレイしたゲームの中で早死にする運命のキャラだった。
だけど、俺がこの世界に転生してから真っ先に思い浮かんだキャラでもあるし、今は俺にとってかけがえのないパートナーでもある。
だから、俺の答えは決まっている。
「………俺も」
「………うん」
「俺も、好きだよ。俺もずっと前から、クロエのこと好きだった」
「………うん」
クロエはようやく顔を上げて、幸せそうな表情を見せてくれる。
目じりには嬉しさによる涙が少し滲んでいて、俺は親指でそれを優しく拭きながら、もう一度言った。
「好きだよ、クロエ」
「………私も、大好き」
次の瞬間、クロエはびっくりするくらいの勢いで、自分からキスをしてくる。
俺は一瞬慌てたけど、すぐに彼女を抱きしめている腕に力を入れた。
「好き………好き、大好き……カイ、大好き……」
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