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番外編 クルミ
大母上
アップルパイを籠にたくさん詰めて、今度は大母上の所に連れて行ってもらう。
秋がどの天馬でもいいと言ってくれたので、ケイにお願いした。クロム兄様の一番の天馬に乗れるのは、凄く嬉しい。
「アイラちゃん!お茶しに来たの!!」
「おや、よくきたねぇ。ちょうど休憩にする所だった、嬉しいよ」
アイラちゃんはいつも休憩なんかしない。カウンターの奥でパパッと食事を済ませて常にお店にいる。それだけお店が大事な人だ。
アイラちゃんの優しさが胸にしみる。
アイラちゃんは遅くにやっと授かった子どもを沢山亡くして1人しか残らなかったから、母様の様に愛情が爆発してしまった、と言っていたことがある。
それで失敗したんだ、とも言っていたけど。
私の周りは、優しさで溢れてる。
「アイラちゃんのお茶がいい。クルミじゃなくて」
秋のセリフにケラケラと笑って一緒に二階にあがる。
前まではクレア様がお店に立っていたらしい。侯爵夫人が!!意味わからない。
今は犬獣人の平民の下働きを雇ってる。
ユアンが連れてきたんだって。
「それで?何か悩んでる風な顔だねぇ、クルミ」
「そう?いつもと変わらないけど……それより早く食べたい」
秋がへぇ?という顔で私を見る。
「シュウはもう少し大人になればわかるよ。女の子の方が、心の成長は早いからねぇ」
「クルミ、なんか悩んでんの?成績?俺の答案と交換する?」
アイラちゃんが大笑いして、お茶を淹れる。
秋が手伝ってテーブルに並べて、アイラちゃんが座る1人がけの花柄ファブリックソファーの肘置きに行儀悪く腰掛けた。
秋はおばあちゃんっ子だと思う。
いや、クロム兄様達も大概だけど、秋は分かりやすくアイラちゃんに甘える。
獣人の男が……ともおもうけど、アイラちゃんも嬉しそうだし放っておいてる。
「うまーーー俺アップルパイ好き」
アイラちゃんの真横で寄り添いながらアップルパイに夢中な秋はもう放っておこう。
アイラちゃんの前でだけ一人称が俺になる秋は、母様曰く、厨二病らしい。意味わからないけど。
アイラちゃんが秋の手を優しくポンポンとした後私に目で合図する。
まぁ、秋になら聞かれてもいいか。きっと面倒くさがってすぐ忘れる。
「私はさ、兄様達や秋みたいに優秀じゃないでしょ?何もできないし、王族の中で私だけ浮いてるもの」
「優秀になりたいのかい?」
アイラちゃんはソファーに深く腰掛けて、ソーサーをもって優雅にお茶を飲む。
「そう……じゃなくて、上手く言えないけど、役に立てないのがつらい。あとは、役立たずだと思われるのも……つらい」
「そうさねぇ、あんたはほんとに紬にそっくりだねぇ」
そうだろうか。
顔は母様寄りだと思うけれど、大人になってきた今はあんまり似てないと思う。
母様は黒目黒髪のストレート。私は紺色の目のカールがかった金髪。母様は私の事を外人顔って言う。これも意味わかんないけど。
「母様には似てないよ。私には母様みたいな特別な力もないし」
「そういう意味じゃないよ」
「うまー」
アイラちゃんはまた秋の手をさすって、それから答える。
「ジジイ共に相談してごらん」
◇◆◇
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