【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

文字の大きさ
30 / 173
番 編

再会

しおりを挟む

 スルスルと御簾が下から上がっていく。
お兄さんは脚を組んで椅子の肘掛けに肘をついて、手に頭を乗せるという超絶ダルそうな格好のままだ。

 私達から五メートルほど離れた所に、見慣れたラディアンの騎士服を着た人達が片膝をつき頭を下げて跪いている。

————先頭に、ユリウス様。

 下を向いているからお顔は見えない。
銀色のサラサラとした髪と三角の耳が見えるだけ。

 ユリウス様の後ろには八人の騎士達が同じ格好で跪いて頭を下げていた。

「顔を上げることは許さん」

 いつもより低い声。

 壇の両脇にはクロードさんとルース君が使節団の方を向いて立っている。

 クロードさんは槍を持ち、ルース君はやけに長い刀を一本帯刀していて、左手でつばの元を押さえ、右手はつかの上あたりにピタッと空中で止めている。 
いつでも動ける様にしているのかもしれない。

 一番後ろの両開きの扉の前にはユアンさんが同じく刀に手をかけて立っていて、騎士服を着た使節団の人を軍服を着た人たちが挟み撃ちにしている感じがして落ち着かない。ユリウス様達は帯剣してないから余計にそう思うのかもしれない。

 「お前の言う番とは、ここに連れてきた俺の至宝のことか。お前達は我が国の国民を送って来ただけだと思ったが」

「……っ!もう一度発言を、お許し下さいますか、竜国……王弟殿下」

「許す」

 ユリウス様は侯爵様だ。後ろにいる騎士達も近衛騎士団の制服を着ているということは貴族の方達なはず。その人達が、跪いてお兄さんの顔すら見れずに喋らされている。

 見えている物が非現実的すぎて頭がふらふらする。
ユリウス様が跪いたまま続ける。

「そこの人間はわたくしの番。尊き竜国王弟殿下も獣人でございます。番の大切さは、分かっていただけるものと……!ラディアンの至宝、わたくしの番をどうか!どうかお返し下さいませ!」

「そこの人間……」私がボソッと呟くと、お兄さんがチラッと私を見た。

 ユリウス様は最初から最後まで私に対して甘い言葉を使ってた。〝そこの人間″なんて初めて言われた。 

「何度も言わせるな、俺の至宝だと言ったはず」

「ですが!!番を引き離すなどと、世界の中立者たる竜族がっ!!お願いでございます!その者と話を!!!」

「その者……」またぼそっと呟いた私を今度は優しい目で見てくる。

「ヴィクトランにのみ拝顔の栄を与える。既にお前の手を離れている事、自覚せよ」

 ユリウス様がガバッと前を向いて、私を射る様に見つめてくる。
あんなに甘かった目は座っていて、視線が鋭く怯んでしまう。少し痩せたのかもしれない。相変わらず、王子様の様な綺麗さではあるけれど。

 お兄さんは引導を渡してやれと言ったけれど、こんな状況でどうしたらいいのか分からない。私の知ってる穏やかなユリウス様じゃない。

 「つむぎ、ここに来い」

 お兄さんが優しく言う。
真隣にいるのに呼ばれる意味がよく分からず、おずおずと立ち上がるとひょいと横抱きに膝の上に抱き上げられた。

 お兄さんの胸の中にいるのでユリウス様達には背中をむけてしまっている。

「紬はエルダゾルクの聖女。俺の番だ。左肩の象徴華は我が王家の物。何人たりとも触れる事は許さない」

 え?お兄さんはなんでそんな嘘を言うの?
左肩に、何?

 首をねじって透けた羽織の上から自分の左肩を見る。

————私の左の肩、背中側

————梅の花

 花びらの波打ちまで再現された、梅の花。痣なのに何故か白っぽいピンク色で、本物の梅の花が肩に乗った様に見えた。

「え?」私が焦って羽織を脱いで確かめようとするとお兄さんが手で止めた。

「言えなくて、悪かった。嫌われると思った」

 絞り出すみたいな声が耳元できこえた。

 散々番なんて、と言って来た。
番なんて馬鹿な事から解放されたいと。

「俺の至宝を追うことは今後一切禁ずる」
 
 私が唖然としている間にお兄さんが話す。
ユリウス様は何も言わないけれど、背中に凄く視線を感じる。

「謁見は以上だ」

「——っ!王弟殿下!しばしの滞在の許可を!我が同志だった者達の破棄の儀、ラディアン王に変わりわたくしが!」

「許す。下がれ」

 冷たい声で言い捨てたお兄さんに腕の中に抱き込まれてしまったため、もう振り返る事が出来なくて、バタンと部屋のドアが閉まる音だけ聞こえた。

「ごめん」

「お兄、さん?」

「番なんて嫌なの、俺が一番よく知ってるのに。それでも、俺は幸せだと、思ってしまう」

 凄く苦しそうで、どうしたらいいか分からない。

「殿下、ここまでに」

 ユアンさんが声をかけてくる。

「ああ。つむぎ、よく休め。頑張ったな」

 私は何もしてない。はぁはぁと息をするお兄さんから目が離せない。

「主治医の権限で壇上に上がらせて頂くわ。緊急事態のため、ご容赦を」

 ルルリエさんにひょいと抱き上げられて部屋を出された。
私を軽々お姫様抱っこしたルルリエさんが早足で私を離れに連れていく。

————部屋を出る時最後に見たお兄さんは、また翼が生えていた。


























しおりを挟む
感想 1,233

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...