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家族編
旅行
しおりを挟む温泉旅行のやり直しに、レスターの子育てで助けてくれたお母さんへのプレゼントもかねて、お母さんの希望する場所への旅行が決まった。
「体、大丈夫か?」
過保護な私の旦那様がもう何度目かになる質問を私にする。
今回の行き先はサイ獣人の国リルベスにあるお酒の温泉?らしい。よくわからないけど、お酒が湧き出る温泉なんだって。
お肌がツルツルになるらしく、お母さんは張り切っていた。
リルベスまでは比較的近いけれど、敷地の広いリルベス国土の端にあるらしく、移動距離が長い。
みんなは長距離移転装置一回で済むところを、私は三回に分けて、一日一回短い距離の移転装置を通る事になった。それ以上はルルリエさんが許してはくれなかった。
申し訳ないので私達だけ先発隊として出て、お母さんとクレアちゃん、レアットちゃんとは現地で落ち合う事になっている。
家族といつもの幹部のメンバーとルルリエさんだけの内輪のメンバーでちょっとした旅行になっていて楽しい。
最後の三個目の移転をくぐり終えたので、ルルリエさんによる矯正的な休憩が終わればあとは馬車で一時間程度でお宿に着くらしい。
「リヒト様、あとで久しぶりにテトに乗せて?」
「ああ。テルガードが喜ぶな」
「ツキがいればば母上を乗せれたのに!!」
「レスター殿下~それは無理だよ~ツキ小さすぎ~~~」
ルース君が大笑いしてレスターが悔しがる。
ツキとケイを連れていくことはルルが嫌がった。まだ離れたくないみたい。
レスターの言葉にテトは知らんぷりしてて可笑しい。
前方は岩と砂の大地が広がっていて、後ろは岩肌が露出した暗い森。本当にサイがいそうな感じ。
移転ゲート側の小さなオアシスで、リツさんがお茶を淹れてくれて人心地ついた。
「そういえば象徴華、どうなってる?」
旅行でテンション上がりすぎて忘れてた!
今回はちゃんと神様に申請をしたらしい。
この世界の神様システムはお役所的な面が大きいと思う。何でも書面で神様に提出する。すごく変わった世界だと思う。
リヒト様が覗き込もうとしたのをレスターが吹っ飛んできて体当たりし、クロム君と一緒に確認し出した。
「母上!いつも通りです!綺麗なお花です!」
「ははうえ、きれい」
「クソガキども…………」
「ふふ、ありがとう二人とも。リヒト様はどう?つがいの匂い、消えた?」
「弱くはなったけど消えてはないな。日に日に弱くなるような?まだ三日だから確かではないけどな」
「へぇ、気持ちは、変わる?」
リヒト様はおや?というような顔で私を見る。
「母上!クソ親父がいなくても俺がおります!!」
「ははうえ、まもる」
「レスター殿下もクロムも少しこっちに来い。俺が遊んでやるから」
クロードさんが気を利かせたのか二人を連れてオアシスの奥に歩いて行った。
「変わらないよ。婆さんの国でも俺はガンガンお前を口説いていただろ?」
「うん……」
「不安か?」
紺色の瞳が優しく細まる。私をどろどろに甘やかす顔。
「そう、だね。いつものリヒト様じゃなくなっちゃうかもしれないのは怖いかな。いろんなところへ行ってみたいって言ったのは、私なのにね」
「まかせろ。今日の宿で不安は取り除いてやる。俺の得意分野だ」
「……………………」
(本当に変わってなさそう)
オアシスの端でテト達が水を飲んでいるのが見える。
ぼんやり見ていると、みんなまったりしてる中で一頭だけソワソワしている子がいる。
立ち上がって、よく観察してみても、やっぱりいつもと違う感じがする。
「ヴァルファデ?」
十メートルほどの距離があったにも関わらず、私のつぶやきに反応してヴァルファデがかけてくる。
「ヴァルファデ?どうしたの?何かあった?」
「ヴァルファデ~?腹減ったかな?」
ルース君がのんびり答える。
濃いグレーの綺麗な背中を撫でてやり声をかけるけれど、やっぱり落ち着かない。
「ヴァルファデ?なんか落ち着かないね?どうしたんだろ」
「つむぎ?」
リヒト様が私を呼ぶけれど、それどころじゃない。
ヴァルファデはソワソワとしきりに裏手の山を気にしている。
私とヴァルファデの不安を感じ取ったのか、子供達がこっちに向かってるのが見える。
子供達を迎えに行かないとと思うのに、裏手の山が気になってしょうがない。
何か、来る。
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