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第1章
お買い物4
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天幕布で四方を囲っただけの簡単な個室の中に、小さなテーブルと向かい合う様に椅子が二脚おいてある。
テーブルの上には水の入った銀色の水盆がのっていて、奥の椅子に糸目君が座る。
「どうぞおかけ下さい!お嬢様はこの水盆に両手の指先を入れて描きたい人の事を思って下さいね。僕がこちら側から手を入れて記憶を引き出すのをお手伝いしますので!」
「頭で思うだけでいいんですか?」
水に指先を浸す。波紋が少しできたけどすぐに元にもどる。ただの水だ。
「はい、大丈夫ですよ!僕もこちら側に手を浸します。僕は手のひらまで入れますがお嬢様は指先だけで大丈夫です!あっほら!お上手です!もう見えてきましたよ!!」
言われて水盆をみると、そこには祖父の懐かしい顔が浮かんでいた。
「ご親類の方ですか?お洋服はいかが致しますか?」
「ええ、祖父なんです。もう亡くなりましたが……えっと洋服って、選べるのですか?」
「はい!生前良く着ていたお召し物を選ぶ方が多いです。それも、思い出してみて下さい。希望のお洋服を想像される方もいらっしゃいますよ!」
おじいちゃんが良くきていた服?普通のシャツだったなぁ。あ、一度だけ見せてもらった自衛官だった頃の制服!あれ、かっこよかったな。
そんな事をつらつらと思い出していたら、
「軍部の方だったのですか?素敵ですね~!これでいきましょう!!では、もう少し柔らかいお顔にしたいので、おじいさまが笑っている所、思い出してもらえますか?」
おじいちゃんが笑ってる?
おじいちゃんはあはは~とかワハハハとか笑うタイプじゃなくって、ニカッと口を開けて音無しで笑うタイプだった、その顔が大好きだったなぁ。
「お嬢様、お上手ですね!最高です!もう手を抜いて大丈夫ですよ。タオル、お使い下さいね」
「お嬢様、こちらを」
備え付けのタオルを無視してじいやがハンカチを渡してくれたので少し焦る。
糸目少年はそんな事まったくきにもせず、水盆にうかんでいる絵に夢中だ。
「どのくらい大きな絵にいたしましょうか!広間に飾れるくらい!?」
「あ、えっと……小さくも出来ますか?」
「小さく?小さい肖像画をご希望の方は珍しいですね。でも拡大縮小自由自在でございますよ!!」
「じゃあ、このくらいで、棚とかに立てて置ける様にできますか?」
L版の写真程度の大きさを手で示す。
「かしこまりました!!裏に立てかける様の支柱を付けますね!では!」
水盆からゆっくり手を出すと、なかでユラユラ揺れていたおじいちゃんの写真が急にバラバラと糸になって別れていき、空中で織られてまた元の写真のような絵になっていく。
「出来上がりです!この大きさならこのままお持ち帰りができますね!後ほどお包みいたしますのでお待ちくださいね!
しかし小さいですねぇ!移糸は大きさによって魔力の使用量が違うので、頂いた料金ほど僕、働いていない気がします。同じ様なサイズでオマケ致しますのでもうひとつどうぞ!!」
「え?いいんですか?でも、何を……別に自分の写真なんて……」
と、ここまで言って気づいてしまいました。
私には最推しがいる事を!!!
個室の布を少し開けて会場を探す。少し遠いけど会場の端の出入り口のところにいた!!!めっちゃカッコいい!!!
「あ、あの、端の出入り口の所にいる……あの方の絵が欲しいです!!!」
「あの金髪の方ですか?今横を向いていらっしゃる」
「いぇ、その方の横でドアに寄りかかって腕を組んで、ちょっぴりだるそうにしてるあの方です!!このまま、このままの絵を!!!!」
「……………………第二騎士団の団長様でございますか?」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
じいやがまたもやニコニコしてるけれど推しの写真を手に入れるためなら恥なんかいくらでも捨てられる!!
「お願いしますっっっ!!」
「実物を見て出来ますので簡単でございますよ。このままでよろしいのですか?もっと、肖像画っぽくは……」
「しなくていいです!!このままで!!」
食い気味に答えてしまった。
「あ、もう出来ますよサイズはどうされますか?」
「あの、ここにはめ込むこと、出来ますか?」
コンパクトタイプの鏡をポケットから出す。
真鍮でできた楕円形のコンパクトで、ばぁやが持たせてくれたものだ。花柄のきれいな彫りが入っていてお気に入りなのだ。
「この、鏡じゃない方に……」
「またまた小さいですねぇ~、はめ込むなんて、とってもおもしろいです!簡単だと思いますよ!やってみますね!コンパクトを開いてテーブルに置いて下さい!」
言われた通りにコンパクトを置くと、置いた瞬間に浮かび上がって糸目君の腕の中の糸達の所に混ざる。
糸達がコンパクトに一斉に集まったように見えて、コンパクト上で織りが始まった。
「はい!できましたよ~!糸移職人は魔法契約でお客様の情報を他言できない様になっているのでご安心くださいね!」
案に、好きな人漏らしません!と言われている様でじわじわと顔が熱くなる。
「は、はい、あの……ありがとうございました」
糸目君がコンパクトとおじいちゃんの肖像画をきれいな箱に詰めて渡してくれたので、それもつる籠にいれて、赤い顔を手で隠しながら糸移職人達のブースを後にした。
テーブルの上には水の入った銀色の水盆がのっていて、奥の椅子に糸目君が座る。
「どうぞおかけ下さい!お嬢様はこの水盆に両手の指先を入れて描きたい人の事を思って下さいね。僕がこちら側から手を入れて記憶を引き出すのをお手伝いしますので!」
「頭で思うだけでいいんですか?」
水に指先を浸す。波紋が少しできたけどすぐに元にもどる。ただの水だ。
「はい、大丈夫ですよ!僕もこちら側に手を浸します。僕は手のひらまで入れますがお嬢様は指先だけで大丈夫です!あっほら!お上手です!もう見えてきましたよ!!」
言われて水盆をみると、そこには祖父の懐かしい顔が浮かんでいた。
「ご親類の方ですか?お洋服はいかが致しますか?」
「ええ、祖父なんです。もう亡くなりましたが……えっと洋服って、選べるのですか?」
「はい!生前良く着ていたお召し物を選ぶ方が多いです。それも、思い出してみて下さい。希望のお洋服を想像される方もいらっしゃいますよ!」
おじいちゃんが良くきていた服?普通のシャツだったなぁ。あ、一度だけ見せてもらった自衛官だった頃の制服!あれ、かっこよかったな。
そんな事をつらつらと思い出していたら、
「軍部の方だったのですか?素敵ですね~!これでいきましょう!!では、もう少し柔らかいお顔にしたいので、おじいさまが笑っている所、思い出してもらえますか?」
おじいちゃんが笑ってる?
おじいちゃんはあはは~とかワハハハとか笑うタイプじゃなくって、ニカッと口を開けて音無しで笑うタイプだった、その顔が大好きだったなぁ。
「お嬢様、お上手ですね!最高です!もう手を抜いて大丈夫ですよ。タオル、お使い下さいね」
「お嬢様、こちらを」
備え付けのタオルを無視してじいやがハンカチを渡してくれたので少し焦る。
糸目少年はそんな事まったくきにもせず、水盆にうかんでいる絵に夢中だ。
「どのくらい大きな絵にいたしましょうか!広間に飾れるくらい!?」
「あ、えっと……小さくも出来ますか?」
「小さく?小さい肖像画をご希望の方は珍しいですね。でも拡大縮小自由自在でございますよ!!」
「じゃあ、このくらいで、棚とかに立てて置ける様にできますか?」
L版の写真程度の大きさを手で示す。
「かしこまりました!!裏に立てかける様の支柱を付けますね!では!」
水盆からゆっくり手を出すと、なかでユラユラ揺れていたおじいちゃんの写真が急にバラバラと糸になって別れていき、空中で織られてまた元の写真のような絵になっていく。
「出来上がりです!この大きさならこのままお持ち帰りができますね!後ほどお包みいたしますのでお待ちくださいね!
しかし小さいですねぇ!移糸は大きさによって魔力の使用量が違うので、頂いた料金ほど僕、働いていない気がします。同じ様なサイズでオマケ致しますのでもうひとつどうぞ!!」
「え?いいんですか?でも、何を……別に自分の写真なんて……」
と、ここまで言って気づいてしまいました。
私には最推しがいる事を!!!
個室の布を少し開けて会場を探す。少し遠いけど会場の端の出入り口のところにいた!!!めっちゃカッコいい!!!
「あ、あの、端の出入り口の所にいる……あの方の絵が欲しいです!!!」
「あの金髪の方ですか?今横を向いていらっしゃる」
「いぇ、その方の横でドアに寄りかかって腕を組んで、ちょっぴりだるそうにしてるあの方です!!このまま、このままの絵を!!!!」
「……………………第二騎士団の団長様でございますか?」
「ふぉっふぉっふぉっふぉっ」
じいやがまたもやニコニコしてるけれど推しの写真を手に入れるためなら恥なんかいくらでも捨てられる!!
「お願いしますっっっ!!」
「実物を見て出来ますので簡単でございますよ。このままでよろしいのですか?もっと、肖像画っぽくは……」
「しなくていいです!!このままで!!」
食い気味に答えてしまった。
「あ、もう出来ますよサイズはどうされますか?」
「あの、ここにはめ込むこと、出来ますか?」
コンパクトタイプの鏡をポケットから出す。
真鍮でできた楕円形のコンパクトで、ばぁやが持たせてくれたものだ。花柄のきれいな彫りが入っていてお気に入りなのだ。
「この、鏡じゃない方に……」
「またまた小さいですねぇ~、はめ込むなんて、とってもおもしろいです!簡単だと思いますよ!やってみますね!コンパクトを開いてテーブルに置いて下さい!」
言われた通りにコンパクトを置くと、置いた瞬間に浮かび上がって糸目君の腕の中の糸達の所に混ざる。
糸達がコンパクトに一斉に集まったように見えて、コンパクト上で織りが始まった。
「はい!できましたよ~!糸移職人は魔法契約でお客様の情報を他言できない様になっているのでご安心くださいね!」
案に、好きな人漏らしません!と言われている様でじわじわと顔が熱くなる。
「は、はい、あの……ありがとうございました」
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