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第1章
出会い
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身体が落ちているのに浮遊感はない。
何度か薄い透明な膜の上に落ちて、バリーンと小気味いい音を立ててバラバラと私と共に砕け落ちる。二度、三度それを繰り返しているうちに私の長い髪から黒色が抜け、綺麗な銀糸の様なキラキラとひかる銀髪が現れる。
非現実的な光景に、あ、夢なんだなと逆に安心できる。
夢の中なのに、まどろむ様な眠気を感じて瞼を閉じる。ゆっくりゆっくり堕ちていく。
◇◆◇
「ここ、どこ…………?まだ、夢??」
夢にしては土の匂いと植物の匂いが強烈に鼻を刺す。
「も……森??」
日差しは密集した木々の葉で遮られているのか昼間なのに鬱蒼として仄暗い。
強烈な視線を感じて振り向くと、黒い虎?のような動物が五メートル先で私を見据えている。紅色の目が光っていて、息をのむ。
トラックよりも大きな黒い虎って、なんだ?
やっぱり夢?
けれど心臓の打ち付ける音と冷や汗が現実だと警鐘をならしている。
足がガクガクして動けない。
「い、嫌——こないで…………」
次の瞬間背中に凄まじい痛みを感じ、硬い岩盤の地面にしたたかに押し倒されていた。
黒い獣の口の中の赤い色と生臭い息をすぐ近くに感じ肌が泡立つ。
「動くなよ」
どこかで人の声が聞こえた様な気がしたけれど恐怖でギュッと目をとじていたのと、耳なりがゴーっとうるさいのでよくわからない。
不意に重さが無くなって、熱いシャワーを頭から浴びていた。
「あ、わりぃ。大丈夫か?」
ぼんやりした頭で目を開けると視界が赤い。
むわっとする血液の匂いが鼻に付く。
涙が目に入った血を洗い流すたびに視界がクリアになってくる。
果たして、トラックサイズの黒い虎は首から上が無くなっていた。
「な…………に……?」
「緊急事態で血の事まで頭が回らなかった、わりぃ」
「だ……誰?」
「あ~~、怖いよな、今怖くないやつ来るからな、待ってろ」
「…………私……助かったの?」
「助かったけどな、まずは血を洗い流そうな。あぁ、こっちだクリフ!!」
「団長、何事です?おや、派手にやりましたね」
「緊急事態だったんだよ。間に合ってよかった」
「急に移転魔法を雑に展開するのでびっくりしました。こちらの女性は?」
「わからん、怖い思いをさせた。手当てしてやれ」
「では私は移転魔法の準備を致しますので団長は彼女を起こしてあげて下さい」
「俺がやると無駄に怖がらすだろ、お前がやれ」
「はぁ…………。今私は団長と話しながら雑な移転魔法の入り口を閉じてる所なんですが。街の通行人が間違えて迷い込んだらどうなさるおつもりですか」
「チッ…………」
視界がどんどんクリアになって、外の音も聞きとれるようになってきた。
「あ~~~、嫌だと思うけどな、ちょっと我慢な」
そう言って顔の血をハンカチで拭いてくれる。血のプールに入ったかの様なずぶ濡れの私がハンカチで綺麗になるとは思えないけれど、優しい気持ちが伝わって、嬉しいのとホッとしたので、ポロポロと涙が止まらない。
「悪い、怖いよな。すぐあいつと変わるからな」
目の前の男の人はサラサラとした黒髪の凄まじいイケメンで、びっくりしすぎて声が出ない。濃い琥珀色の瞳が優しくこちらを見ている。 お話の中に出てくる様な騎士の隊服を着ているがどうみてもコスプレには見えない。帯剣している剣も本物だった。
「チッ、まだ終わらねぇのか、クリフ!」
「無茶を仰る。団長の魔力を抑え込むのは骨が折れるんですよ。新しい移転枠はやっぱり団長が出してくださいね。雑じゃない、時間制で綺麗に消える物をお願いしますよ」
もう一人のクリフと呼ばれた男の人も種類の違うイケメンさんだ。
長い金髪の髪が華奢な身体によく似合う。
絵本の中のエルフみたいだ。
「嫌だろうが我慢してくれ」
そう言ってイケメンさんは左肩にかけていた襟のついたマントの様な物を外し、私にぐるぐる巻きつけてくれた。イケメンさんの身体が大きいのでシーツを巻き付けた様になる。
「嫌、じゃ、無いです…………。助けて頂いて、ありがとうございます」
私の言葉にイケメンさんはおや?という顔をしたけれど、何にも言わなかった。
「終わりましたよ、返り血を流すのに公爵家にまいりますか?」
「あー、そうだな、本当ならお前んちの方がいいんだろうが……しょうがねぇ」
「我が家は無理ですよ。縁を切っておりますので」
「悪かったよ。んじゃ、もうしばらく我慢してもらうか」
「展開していただければ、先ぶれとして参りますが」
「お前が抱いた方がいいだろ」
「助けたのなら最後まで責任を持ってくださいよ」
「チッ…………」
イケメンさんが不機嫌そうに右手を振ると何も無い空間に長方形の板の様なものがでてきた。
板は透明なのにマーブルに何色もの光がまざっていて、堕ちた時に何度も突き破った透明な膜に似ている。
あれにあたって、何度もくぐったからこんな知らない世界に来てしまった。
「私はスラン殿に用意をお願いしてまいります」
「あぁ頼む」
クリフと呼ばれた人は板の中に消えていく、
あの人も堕ちていってしまうのだろうか。
わからないけれど、あれは怖い。
何度か薄い透明な膜の上に落ちて、バリーンと小気味いい音を立ててバラバラと私と共に砕け落ちる。二度、三度それを繰り返しているうちに私の長い髪から黒色が抜け、綺麗な銀糸の様なキラキラとひかる銀髪が現れる。
非現実的な光景に、あ、夢なんだなと逆に安心できる。
夢の中なのに、まどろむ様な眠気を感じて瞼を閉じる。ゆっくりゆっくり堕ちていく。
◇◆◇
「ここ、どこ…………?まだ、夢??」
夢にしては土の匂いと植物の匂いが強烈に鼻を刺す。
「も……森??」
日差しは密集した木々の葉で遮られているのか昼間なのに鬱蒼として仄暗い。
強烈な視線を感じて振り向くと、黒い虎?のような動物が五メートル先で私を見据えている。紅色の目が光っていて、息をのむ。
トラックよりも大きな黒い虎って、なんだ?
やっぱり夢?
けれど心臓の打ち付ける音と冷や汗が現実だと警鐘をならしている。
足がガクガクして動けない。
「い、嫌——こないで…………」
次の瞬間背中に凄まじい痛みを感じ、硬い岩盤の地面にしたたかに押し倒されていた。
黒い獣の口の中の赤い色と生臭い息をすぐ近くに感じ肌が泡立つ。
「動くなよ」
どこかで人の声が聞こえた様な気がしたけれど恐怖でギュッと目をとじていたのと、耳なりがゴーっとうるさいのでよくわからない。
不意に重さが無くなって、熱いシャワーを頭から浴びていた。
「あ、わりぃ。大丈夫か?」
ぼんやりした頭で目を開けると視界が赤い。
むわっとする血液の匂いが鼻に付く。
涙が目に入った血を洗い流すたびに視界がクリアになってくる。
果たして、トラックサイズの黒い虎は首から上が無くなっていた。
「な…………に……?」
「緊急事態で血の事まで頭が回らなかった、わりぃ」
「だ……誰?」
「あ~~、怖いよな、今怖くないやつ来るからな、待ってろ」
「…………私……助かったの?」
「助かったけどな、まずは血を洗い流そうな。あぁ、こっちだクリフ!!」
「団長、何事です?おや、派手にやりましたね」
「緊急事態だったんだよ。間に合ってよかった」
「急に移転魔法を雑に展開するのでびっくりしました。こちらの女性は?」
「わからん、怖い思いをさせた。手当てしてやれ」
「では私は移転魔法の準備を致しますので団長は彼女を起こしてあげて下さい」
「俺がやると無駄に怖がらすだろ、お前がやれ」
「はぁ…………。今私は団長と話しながら雑な移転魔法の入り口を閉じてる所なんですが。街の通行人が間違えて迷い込んだらどうなさるおつもりですか」
「チッ…………」
視界がどんどんクリアになって、外の音も聞きとれるようになってきた。
「あ~~~、嫌だと思うけどな、ちょっと我慢な」
そう言って顔の血をハンカチで拭いてくれる。血のプールに入ったかの様なずぶ濡れの私がハンカチで綺麗になるとは思えないけれど、優しい気持ちが伝わって、嬉しいのとホッとしたので、ポロポロと涙が止まらない。
「悪い、怖いよな。すぐあいつと変わるからな」
目の前の男の人はサラサラとした黒髪の凄まじいイケメンで、びっくりしすぎて声が出ない。濃い琥珀色の瞳が優しくこちらを見ている。 お話の中に出てくる様な騎士の隊服を着ているがどうみてもコスプレには見えない。帯剣している剣も本物だった。
「チッ、まだ終わらねぇのか、クリフ!」
「無茶を仰る。団長の魔力を抑え込むのは骨が折れるんですよ。新しい移転枠はやっぱり団長が出してくださいね。雑じゃない、時間制で綺麗に消える物をお願いしますよ」
もう一人のクリフと呼ばれた男の人も種類の違うイケメンさんだ。
長い金髪の髪が華奢な身体によく似合う。
絵本の中のエルフみたいだ。
「嫌だろうが我慢してくれ」
そう言ってイケメンさんは左肩にかけていた襟のついたマントの様な物を外し、私にぐるぐる巻きつけてくれた。イケメンさんの身体が大きいのでシーツを巻き付けた様になる。
「嫌、じゃ、無いです…………。助けて頂いて、ありがとうございます」
私の言葉にイケメンさんはおや?という顔をしたけれど、何にも言わなかった。
「終わりましたよ、返り血を流すのに公爵家にまいりますか?」
「あー、そうだな、本当ならお前んちの方がいいんだろうが……しょうがねぇ」
「我が家は無理ですよ。縁を切っておりますので」
「悪かったよ。んじゃ、もうしばらく我慢してもらうか」
「展開していただければ、先ぶれとして参りますが」
「お前が抱いた方がいいだろ」
「助けたのなら最後まで責任を持ってくださいよ」
「チッ…………」
イケメンさんが不機嫌そうに右手を振ると何も無い空間に長方形の板の様なものがでてきた。
板は透明なのにマーブルに何色もの光がまざっていて、堕ちた時に何度も突き破った透明な膜に似ている。
あれにあたって、何度もくぐったからこんな知らない世界に来てしまった。
「私はスラン殿に用意をお願いしてまいります」
「あぁ頼む」
クリフと呼ばれた人は板の中に消えていく、
あの人も堕ちていってしまうのだろうか。
わからないけれど、あれは怖い。
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