2 / 97
第1章
公爵家
しおりを挟む
「立てるか? 見た感じ怪我はないがちゃんと医者にみてもらおうな」
言われて立ちあがろうとしたけれど、足が全く言う事をきかない。産まれたての子鹿のようで情けない。
「あ~、無理そうだな。少し触るけど、いいか?」
私がこくんと頷くと、イケメンさんはまた以外そうな顔をし、やっぱり何にも言ってくれなかった。
「じゃ、行くか。綺麗にしてもらおうな」
フワッと横抱きに抱き上げられてジワジワと顔に熱が集まる。赤くなっても、どうせ血まみれなんだけど。
「大丈夫だ、すぐ付く」
低音の声からイケメンさんの優しさが伝わってきて無意識に首に手を回して抱きついてしまう。
イケメンさんは一瞬ビクッとしたけれど私の好きにさせてくれた。私についた獣の血が彼についてしまった事に今更気がついて申し訳なくなる。綺麗な制服に血が付いてしまいたまらない気持ちになるけれど、イケメンさんは全く気にしていない素振りだった。
演技だったとしても、その優しさが嬉しい。
「怖く無いか?俺で悪いな」
なぜさっきから謝ってくれるのだろう。
嫌な事なんて何もないのに。
「あ、あれが怖いです。あなたは、怖く無い」
「………………気を使わせたな。あれはただの移転魔法だ。見た事ないか?」
ブンブン首を振る。
「見た事ない?へぇ。大丈夫、怖くはない」
「で、でも……あれに似たものを通って高いところから落ちたの……だからっ……」
ガタガタと身体が震え出す。イケメンさんが抱いた腕で器用にポンポンと身体をさすってくれた。
「目、つぶってろ。魔獣の血は体に良くない。早く落とすためには移転するしかない。大丈夫、落とさない」
イケメンさんが歩き出したので私はギュッと目をつぶってやりすごそうとしたけれど、カタカタとした震えは治らなかった。
「着いたぞ、もう大丈夫だ」
「坊ちゃま、用意はすんでおります。そのまま浴室まで運んで頂ければ。後はメイルにお任せを」
「あぁ、頼む。あと坊ちゃまはやめろ」
「さぁこちらです、坊ちゃま」
「…………チッ」
終わったの?またあの膜みたいなやつに通ったの?何かが割れた音はしなかったし、私はイケメンさんにくっついたまま。大丈夫。大丈夫だ。
自分に言い聞かせているのに、身体の奥から沸き起こる小刻みの震えは治らなかった。
「んまぁ~~~~、お可哀想に、今綺麗にして差し上げますわ。メイルにお任せくださいな!」
大きな声がかかるけれど、身体が重くて動かない。ぎゅうぎゅうとイケメンさんにしがみつく力ばかりは湧き起こるので生物の本能だろうか。この人は、安心だ。
「あらあらあらあら、シェイド様を離しませんねぇ。シェイド様、そのまま浴室へお願いしますわ」
「あぁ、一番広い浴室をつかってやれ、体温がさがっている。魔熱が出るかもしれない。血を早く落としてやりたい」
「承知しておりますわ。お任せ下さいませ」
浴室に入ったのだろう、湿度の高い暖かい空気に変わったのが分かった。
この人から離されるのが怖い。
もう、おかしな事はたくさんだ。
「シェイド様……もうようございますよ、といいたい所ですが、ガッチリくっついておりますねぇ」
「…………もう大丈夫だから、綺麗にしてもらおうな」
力なくふるふると首を横にふる。
「お身体が強張ってるんですわ、ちょっと失礼しますね」
そぉっと優しい腕が私の顔を包み、メイルと名乗った人のあったかい胸元に顔だけ抱き込まれる形になった。メイルさんの胸元に獣の血がつく。
人の体温が心地いい。うとうとと瞼が重くなり力が抜ける。
その間に私は浴室におろされて、イケメンさんはいなくなっていたけれど、うとうととまどろんでいた私は気が付かなかった。
言われて立ちあがろうとしたけれど、足が全く言う事をきかない。産まれたての子鹿のようで情けない。
「あ~、無理そうだな。少し触るけど、いいか?」
私がこくんと頷くと、イケメンさんはまた以外そうな顔をし、やっぱり何にも言ってくれなかった。
「じゃ、行くか。綺麗にしてもらおうな」
フワッと横抱きに抱き上げられてジワジワと顔に熱が集まる。赤くなっても、どうせ血まみれなんだけど。
「大丈夫だ、すぐ付く」
低音の声からイケメンさんの優しさが伝わってきて無意識に首に手を回して抱きついてしまう。
イケメンさんは一瞬ビクッとしたけれど私の好きにさせてくれた。私についた獣の血が彼についてしまった事に今更気がついて申し訳なくなる。綺麗な制服に血が付いてしまいたまらない気持ちになるけれど、イケメンさんは全く気にしていない素振りだった。
演技だったとしても、その優しさが嬉しい。
「怖く無いか?俺で悪いな」
なぜさっきから謝ってくれるのだろう。
嫌な事なんて何もないのに。
「あ、あれが怖いです。あなたは、怖く無い」
「………………気を使わせたな。あれはただの移転魔法だ。見た事ないか?」
ブンブン首を振る。
「見た事ない?へぇ。大丈夫、怖くはない」
「で、でも……あれに似たものを通って高いところから落ちたの……だからっ……」
ガタガタと身体が震え出す。イケメンさんが抱いた腕で器用にポンポンと身体をさすってくれた。
「目、つぶってろ。魔獣の血は体に良くない。早く落とすためには移転するしかない。大丈夫、落とさない」
イケメンさんが歩き出したので私はギュッと目をつぶってやりすごそうとしたけれど、カタカタとした震えは治らなかった。
「着いたぞ、もう大丈夫だ」
「坊ちゃま、用意はすんでおります。そのまま浴室まで運んで頂ければ。後はメイルにお任せを」
「あぁ、頼む。あと坊ちゃまはやめろ」
「さぁこちらです、坊ちゃま」
「…………チッ」
終わったの?またあの膜みたいなやつに通ったの?何かが割れた音はしなかったし、私はイケメンさんにくっついたまま。大丈夫。大丈夫だ。
自分に言い聞かせているのに、身体の奥から沸き起こる小刻みの震えは治らなかった。
「んまぁ~~~~、お可哀想に、今綺麗にして差し上げますわ。メイルにお任せくださいな!」
大きな声がかかるけれど、身体が重くて動かない。ぎゅうぎゅうとイケメンさんにしがみつく力ばかりは湧き起こるので生物の本能だろうか。この人は、安心だ。
「あらあらあらあら、シェイド様を離しませんねぇ。シェイド様、そのまま浴室へお願いしますわ」
「あぁ、一番広い浴室をつかってやれ、体温がさがっている。魔熱が出るかもしれない。血を早く落としてやりたい」
「承知しておりますわ。お任せ下さいませ」
浴室に入ったのだろう、湿度の高い暖かい空気に変わったのが分かった。
この人から離されるのが怖い。
もう、おかしな事はたくさんだ。
「シェイド様……もうようございますよ、といいたい所ですが、ガッチリくっついておりますねぇ」
「…………もう大丈夫だから、綺麗にしてもらおうな」
力なくふるふると首を横にふる。
「お身体が強張ってるんですわ、ちょっと失礼しますね」
そぉっと優しい腕が私の顔を包み、メイルと名乗った人のあったかい胸元に顔だけ抱き込まれる形になった。メイルさんの胸元に獣の血がつく。
人の体温が心地いい。うとうとと瞼が重くなり力が抜ける。
その間に私は浴室におろされて、イケメンさんはいなくなっていたけれど、うとうととまどろんでいた私は気が付かなかった。
859
あなたにおすすめの小説
異世界から来た華と守護する者
桜
恋愛
空襲から逃げ惑い、気がつくと屍の山がみえる荒れた荒野だった。
魔力の暴走を利用して戦地にいた美丈夫との出会いで人生変わりました。
ps:異世界の穴シリーズです。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる