グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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生まれから巣立ち

巣立ちの試験らしい

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 ついに、初めて外で狩りを行う日が来た。狩り試験だ。天気は快晴で、絶好の狩り日和と言えるだろう。

 内容としては、自分1匹で獲物を探し狩る。それを遠くから大人グリフォンが見て合否を決めると言うものだ。


 今、俺は飛行練習により、動かすのが慣れてきた翼を羽ばたかせ、空を飛んでいる。
 前世では夢にまで見た光景に心を踊らせるのだが、本能は『こんなこと、当たり前だろう』と語りかけてくる。複雑な気分だ。

 ボーッと空を飛んでいると、つい余計なことを考えてしまう。
 前世では、金属で出来た大きい乗り物に乗って飛ぶことが出来たみたいだが、この世界ではあるのだろうか?

 と言うか、前世では人間だった筈だが、今の俺のような魔物の住む世界に、人間はいるのか?と言うか生きていけるのか?

 そういや巣で別れた兄弟、特に母に連れていかれた白い子はどこへ連れていかれたのか、大丈夫なのだろうか?母は怒ると怖いが、優しいから大丈夫なんだろうとは思うのだが...
 

 そんな事を考えながらも、獲物を探す為に森を見下ろしながら飛んでいると大きな肌の赤い鬼の様な生き物が一匹見える。
 
毛皮のパンツを履き、ゴブリンとかと同じようにハゲで角が生えている。大きさは...2m位か?

 餌として、小さい緑色の鬼のゴブリンは食べたが、あの大きい赤い鬼は何だろうか?
 鑑定を使ってしまうと、何かしらされていると気がついてしまうようなので、鑑定せずに赤鬼の後方の空から襲いかかる。

 本能が『不意打ちをすれば余裕だ、気にすることはない』と言っているし、大したモンスターではないのだろう。




 俺は赤鬼の背後から低空飛行で迫り、鷲の前足の爪で赤鬼の肩を鷲掴みにし、爪を食い込ませる。
 突然の奇襲に驚き怯む赤鬼に、追撃とばかりに首元を嘴で噛む俺。
 暴れ始めた赤鬼の反撃を警戒した俺は、ライオンの様な後ろ足で爪を立てながら赤鬼の背中を蹴飛ばし間合いを取る。

 その際に後方へ下がりながら翼を羽ばたかせ、まるで投げナイフのような羽を何本も飛ばす。
 俺の飛ばした無数の羽は、大半が赤鬼の背中に突き刺さる。
 因みにこの羽は魔力でまた生えてくるので、禿げ鷲になる心配はない。実証済みだ。

 赤鬼がやっと俺を視認し、向かって来ようとするが足取りが覚束無い。バランスを崩し転び、そのまま鼾を掻いて寝始めた。


 俺は今のステータスを表示する。


Lv 40
名前:なし
種族名:グリフォン(黒羽種)
体力:400/400
魔力:200
攻撃:300
防御:250
魔攻:150
魔防:200
速さ:350
 SPスキル 
鑑定 言語理解 本能 特殊毒 免疫
 スキル
毒嘴Lv1 眠羽Lv3 麻痺爪Lv1 乱声Lv1
羽矢Lv5
 魔法
火Lv1 水Lv2 風Lv3 電Lv1 土Lv1


 魔法は、鑑定からこの世界では魔法が使えると聞いたので、必死に練習して沢山覚えた。(本能に従いながら魔力を使い、適正のあった風を重点的に練習した)
 今回の狩りでは、羽矢を風で加速させる位しか使い道はなかったが。

 それ以外の状態異常に関係しているスキルは、成長と共に勝手に使えるようになってた。


 さて、赤鬼がなぜ倒れたかと解説すると、まず麻痺爪で動き難くし、毒嘴で苦しませ、大量の眠羽を体に刺すことで睡眠毒を流し込んだからだ。つまり状態異常のオンパレードってことだ。

 俺は眠り続けている赤鬼の喉元を、嘴で突き止めをさす。

 生き物を殺すことに最早忌避感は無い。本能が俺を肯定する。『殺さねば死ぬのはお前だ、喰らえ』と。

 獲物を試しに鑑定してみる。


Lv 35
名前:なし
種族名:オーガ
体力:500/0【死亡】
魔力:50
攻撃:330
防御:200
魔攻:50
魔防:180
速さ:200
 スキル
身体強化Lv3


 狩った獲物を前足で運び、距離を置いて飛んでいた大人グリフォンに見せに行く。
 大人グリフォンは「若いのにオーガを無傷で仕留めるとは...流石黒翼だ」と言うが、そんなに俺の元々の評価が高かったのだろうか?確かに訓練の際は高評価だったが。

 ヒポグリフも狩りに成功したようだ。大きい牛みたいなのを食べていた。
 美味しそうで羨ましいな。と思っていたら分けてくれた。本人曰く少食だから一緒に食べようとの事。

 オーガを食べ切った後だが、俺は大食いである、有り難く頂くとしよう。オーガより旨い。




 今回の狩りで、十分な実力があると判断された俺とヒポグリフの二体は巣立ちの許可を得た。

 しかし俺は、少し試してみたいことがあったので、直ぐには出ていかず、ヒポグリフにも少し試したいことがあると伝え、時間を貰い一ヶ月位の間はこの巣で暮らす事にした。

 ヒポグリフにも魔法を教えてみたかったのだ。もし出来たら、他の生き物にも魔力の感じを教えられるかもしれない。


 結果...






 ヒポグリフの、此方が引くほどの熱意と、グリフォン系統の素質なのか、風属性魔法を短期間で使えるようになった。
 かなりの努力家で、魔法が使えるようになったときには、俺も思わず涙腺が弛んでしまった。

 心の中で、最初に単純で頭悪そうと思っててごめんなさい。
 



 そして、俺もヒポグリフも巣立ちの時が来た。ヒポグリフに魔法を教えるのに暫くは掛かったものの、他の雑色種のグリフォン達は狩りの試験で獲物に反撃にあったり、そもそも飛行が安定しないものが多く、未だに巣立ちの合格が貰えてない為、俺達が一番乗りだ。

 また会おう、と伝え「また あお ありがと」と返してくれるヒポグリフ。
 俺達グリフォンは、ある程度育つと本能的に仲間との共同生活に不快感を持つようになり、他のグリフォンに攻撃的になりやすい為、共に暮らすことは難しいとのこと。

 気が合うグリフォン同士でも、番でない限りは互いにイライラしてしまい、ストレスが溜まり、喧嘩別れすることが大半だと大人グリフォンが言っていた。

 繁殖期や、年を取ったグリフォンだとそう言うことは無くなるらしい。
 本能的に近親婚を防いでいるのかもしれないし、外の世界を見てから繁殖する習性なのかもしれない。

 因みに、繁殖期の雄は雌が見つけられないと、希に雌馬と交尾するものがおり、結果ヒポグリフが生まれる、らしい。
 馬を飼う農家にとっては空の輸送手段にもなるヒポグリフが生まれるのは望ましいらしく、グリフォンの繁殖期に多くの雌馬が放牧されている時は、交尾してくれても構わないと言う意味が多いらしい。

 大人のグリフォンが教えてくれたが、これはヤれと?
 ヒポグリフが複雑な顔しているから、雌の前でそんな話をしないで欲しいものだ。


 

 そして俺達はそれぞれの空へと旅立った。






 どうやら俺は無事に巣立ちすることが出来た、らしい。
______________________

○オーガ
筋肉隆々で身長は2m近くあり、額に1本の鋭い角、口には長い牙が生えた赤鬼。服は腰に毛皮を巻いていることが多い。
 武器として人から奪った物や、太い木の棍棒等を持つことがあり、中級冒険者が1人で倒すのは難しいとされている。

 肉質が固く脂肪が少ない、硬く雑味のあるササミ的な感じであまり美味しくない。お勧めできない。

○特殊毒
 このスキルをもつ者が使用する状態異常スキルは、耐性を半減した数値で相手を蝕む。
 つまり毒無効スキルを持っていても、半減されるだけ。実質耐性スキルを弱体化しているようなもん。

 毒と名前についてはいるが、声で相手を混乱させる乱声にも適応される。
 別ゲーで例えると、D○MJシリーズの○○ブレイクに近い。

 因みに、このスキルを持つと毒の効果が少し弱くなるというデメリットがある。つまり、多くの毒を敵に摂取させないと効果が出にくかったり、弱かったりする。
 これは別ゲーで例えると、モン○ンシリーズの状態異常の蓄積値システムに近い。

○免疫
 自分が生み出した毒を、吸収し無効化することが出来るようになるスキル。
 特殊毒のスキルを持っていても、完全に自分への害を無くすことが出来る。
(吸収だと、耐性を半減出来ないから。)

 自分と全く同じ毒を敵が使用しない限り、敵が使う毒を無効化することは出来ない。地味に欠陥スキルのようにみえる。


○毒嘴
嘴から毒を生み出すことが出来る。一度噛みつけば毒で相手の体力をある程度削ることが出来るから、ダメージソースとして優秀。

○眠羽
 羽から睡眠作用のある毒を生み出すことが出来る。羽の芯(羽軸)から生み出され、羽のふさふさの部分(羽弁)から周囲に散布される。
 羽矢で芯を相手にぶっ刺して、直接注入すると効果が大きい。

○麻痺爪
 爪から麻痺作用のある毒を生み出すことが出来る。爪全体から滲むように出てきて、傷付けた相手を少しずつ動けなくする。

○乱声
 自身の声に脳を揺さぶり混乱させる効果を付与出来る。
 音量やスキルレベル効果が上昇し、車酔いのように少し気持ち悪くする程度から、レベルによっては脳味噌を激しくシェイクされたような頭痛も引き起こせる。

○羽矢
 羽ばたきと共に羽を飛ばし、羽の芯を敵に突き刺す攻撃スキル。
 刺されても凄く痛いわけでなく、刺さりどころが悪くなければ無視しても良さそうに見えるが、刺さる度に羽の芯の空洞部分が血を少し吸い取る為、やられ過ぎると血を失い、だんだん動けなくなっていく地味にえぐい技。
 このスキルで飛ばした羽は、魔力ですぐ生やせるから安心して欲しい。だが、歳で禿げた羽は戻らない。世界は禿げに厳しいのだ...

○身体強化
 魔力を消費し、肉体を強化するスキル。消費した魔力に応じてどんどん強化できるが、やり過ぎると筋肉が壊れるから加減が重要。
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