グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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従魔になってみた

学校と校長の話らしい

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 俺がキィナの家に招待された日の翌日、巣の周りで朝の狩りをして、腹を満たす。

 グリフォンは腹持ちが良く、朝に腹一杯食べる事が出来れば、翌日まで空腹感を感じることはほぼ無い。(たまに小腹位は空くが)


 昼頃まで巣でゆっくりしていると、脳内にキィナの声が聞こえてきた。
 「今、呼んでも大丈夫?」と聞いてきたので了承の意を返す。

 これはテイマーが持つ、獣魔と離れていても会話ができる〈モンスターテレパス〉と言う技らしい。

 今は簡単な会話しかできないが、キィナのテイマーとしての力が上がれば、細かい会話もできるようになるらしい。


 用件としては、これから学校で獣魔を持つ者は召喚するよう先生から指示があった、とのこと。

 〈フォローサモン〉と言うスキルで、キィナの方から召喚してくれるらしいから、こちらからは何もしなくていいから楽だ。

 召喚に了承の意を返してから数秒後、足元に俺が入れるサイズの魔方陣が展開された。
 どうしても召喚を拒否したい時は、数秒以内にこの魔方陣から出れば良いらしい。

 まぁ、今は拒否する理由もないから大人しくしてるが。


 今世では始めての学校がどんなものか、少し楽しみだ。多分、前世では行っていたのだと思うが...思い出せない。




 一瞬の浮遊感を感じた次の瞬間、俺は巣とは違う場所にいた。
 どうやら転移先は建物の中のようで、体育館みたいな印象を感じる広い建物だ。

 目の前には召喚が成功したからか、ホッとした表情のキィナがいて、その後ろには生徒らしき男女の子供が群れのように大勢いる。

 そしてキィナの隣を見ると、成人男性が1人驚愕の表情で立っている。
 それなりにしっかりした服装から、恐らく先生であろう。ふむ、茶髪で冴えない顔をしている。


 取り合えず何をすればいいのか解らないため、巣から召喚された時の、足を折り畳んだ安楽姿勢のままで少し警戒しながら待つ。

 すると、先生らしい男が「本当に黒羽を...!」と驚いたように一言発した後、キィナに子供の群れに戻るように指示している。

 キィナに「着いて来て。」と案内されたため、それに続き子供の群れに混ざり、キィナの右側に腰を降ろす。

 周りをよく見ると、獣魔を連れている子供もいるが、大半はネズミや角の生えた兎、スライム等の小さいモンスターが大半で、大きくても小さめの馬程度の大きさで、俺を越えるサイズは居ないようだ。

 俺たちがさっきいた前の方のスペースでは、どうやら獣魔を持つものは、先生の指示で順番に召喚しているらしい。


 それを見ていると、キィナに誰かがまくし立てる様に話し掛ける声が聞こえた。

 そちらを見ると、森でキィナを置き去りにした男1人、女2人の糞ガキ共トリオがいた。

 彼らはキィナに対して、「何故生きている!」だの「どうせ普通のグリフォンを黒く染めたんじゃないの!」だの下らない事を言っていたので、困り顔のキィナを奴等から離すために、嘴でキィナの襟元を咥えて俺の右側に置く。

 俺の行動にキレたのか、糞ガキ共3人の内の魔法使いらしい女が、俺に小さい火を押し付ける嫌がらせをしてきたが徹底的に無視し、前で誰がどんな獣魔を召喚しているのか見る。

 キィナの家で飲んだ紅茶の方が熱いくらいだな、レベル差もあるしダメージも無いからな?


 暫く放置してると火を押し付けてきた女が諦めたようで、チラッと様子を見ると汗だくになって息も荒くしている。
 どうやら魔力が切れるまでやってた様だ。相当アホなのか?


 そんな様を眺めていると、一際目立った豪華な服を着た金髪イケメンが前に出てきた。
 先生っぽい人の話によると第2王子というやつで、王族らしい。名前は長くて聞き逃した。

 なんとかかんとかー・なんとかーみたいな名前だったような...いやすまん、全部聞き流してしまった。

 その第2王子とやらは、先生の解説によるとサモナーとしての素質があるらしく、羽毛の生えた白い竜を呼び出していた。


 それを見たキィナが、突然熱く語るから仕方なく聞いたが、サモナーとテイマーは結構違う職業らしい。

 サモナーというのは、自らのスキルで産み出した魔物を常に特殊な空間に入れて呼び出したり、自分で作り出した魔物同士を融合したりできる職業らしい。

 しかし、魔物と主人がスキルレベルに応じた距離しか離れることが出来ず、魔物のレベルが上がり難く、このスキルで産み出された魔物は、主人に完全に服従で意思が薄く、自己判断が鈍いとのこと。
 しかし、従魔が死んでも時間をかけるか、魔力を与えれば生き返るらしい。これは便利。


 テイマーというのは、魔物との絆を深め、その魔物の力を最大限に引き出す職業らしい。説明しているキィナのテンションが上がっていく。
 魔物の意思を奪わずに、使役される魔物の生活も崩さないため、魔物自身が自らを鍛えたりもできるし、いくらでも遠くに離れることが可能。

 しかし、遠くから呼び出す場合には主人の力量が高くないといけない上に、死んでしまったら基本的にはお仕舞いらしい。
 いのちを だいじに。うん。


 因みにこの世界、使い手は極僅かではあるが、死から人や生き物を甦らせることができる人もいるらしい。

 いせかいの ちからって すげー。




 少し長話になったし路線がズレたが、第2王子とやらの白竜は俺に近いサイズで、綺麗な白く滑らかな鱗と、ふわふわした羽毛が生えている。

 頭には1本太い角が生えており、蛇とは違い手足に加え背中には大きめな翼も生えている。中位の竜の子供らしく、まだまだ育つみたいだ。因みに俺もまだ生後1年+数ヶ月くらいだ。
 それでも学生の実力では本来使役できるような魔物ではないらしい。と、冴えない先生が言い、褒め称えている。


 その王子が最後の魔物を召喚する人だったらしく、先生が今生徒が召喚されたモンスターを校内で見かけても攻撃しないようにとか、魔物の主人としてのマナーを語っている。

 どうやら今回の召喚には、それぞれの従魔の顔見せ的な意図もあったらしい。

 そんな話を聞き流しつつ、周囲を見回しながら相手を刺激してしまう〈鑑定〉ではなく、〈本能〉で大体の強さを探る。
 大雑把にしか強さが解らないが、相手を少し観察するだけで、気がつかれずに強さが解るのは便利だ。

 結果、周囲には100人近い生徒+獣魔が大体30匹位と5人位の先生っぽいのがいたが、あの白竜以外は俺より弱い様だ。

 あの白竜は俺と同等...いや、少し弱い程度の様だ。
 『毒系統で嫌がらせしながら、油断せずに戦えば1VS1ならば確実に勝てるだろう』と〈本能〉が言ってる。


 姑息いずあベスト。




 そんな観察をしていると、先生の話は終わったらしく、次は校長先生が来るらしい。
 どんな先生なのかと待っていると、ヨボヨボヒョロヒョロハゲなじいさんが杖持ってやって来た。

 キィナが「あのおじいちゃん、見てて不安になるのよね...」と心配しているが、あのじじいはお前より肉体的にもかなり強いぞ?

 本能が、俺よりあのヨボヨボヒョロヒョロハゲなじいさんの方が強いとか言ってて、内心めちゃくちゃ驚いてる。


 そして長い長い校長の話が始まり、俺は居眠りをした。






 どうやら異世界でも校長の話は長い、らしい。

______________________

○キィナの家のお茶が火より熱く感じたのは、直接喉で飲んだからであって、実際は火の方が熱い。
 羽毛に防寒、断熱効果があり、外からの熱や弱い魔法程度ならば、羽毛でほぼ完全に防ぐことができる強度をもつ。(レベル差もある)
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