29 / 52
大氾濫!?魔物が攻めてきた!!
大氾濫と大乱闘と大援軍らしい
しおりを挟む
オーガと睨み合う俺、グリフォン。
しかし相手はただのオーガではない、オーガジェネラルで、ガジェルと言う名前を持つ元日本人だ。
最悪、こいつを放置してもこの国最強の緑騎士様とやらがいるから、城はまぁ大丈夫なんだろうとは思う。
だが、城壁は破壊されるし町も荒らされ、犠牲者はどうしても出る。
だから俺は、援軍が来るまでコイツを引き付けておくことにした。
こいつが独断で突っ込んで来たから、それを追いかけてきている魔族の小隊とは、随分と距離が空いているのはラッキーだ。
これなら後ろに下がりながら戦って時間を稼げば、冒険者達の援護が期待できそうだ。
奴が大剣を構えて突っ込んで来た、俺は後ろに低空飛行しながら〈眠羽〉を飛ばして牽制する。
しかし、奴は大量の眠羽を全て、大剣を盾にしながら突っ込んでくる。
距離を詰められてしまい、奴は大剣で縦に大振りな一撃を放ってくる。
しかし、素早さでは俺がかなり上。俺は低空飛行を止めて地に降りると、右方向へのステップで回避、右前足の鳥の爪で反撃する。
奴は俺の素早い攻撃に、大剣を動かして防ぐことはせず、先程の大振りな一撃の勢いで地に刺さった大剣の後ろに隠れるようにして、俺の攻撃を防ぐ。
大剣を地に刺し、すぐに剣は使えないだろうと考えた俺が距離を詰めようとすると、奴は右にステップしながら大剣を抜き、迎撃体勢を整えてしまう。
しかし俺としては早めに毒を仕込んでおきたい。
と言うわけで俺は大剣を持つオーガ相手に素手(?)によるインファイトを仕掛ける。
〈毒嘴〉で噛みついたり毒の唾液を吐き出したり、両手足の〈麻痺爪〉で裂いたり刺したり、翼からは至近距離で眠羽を放ち、インファイト中は常に叫び〈乱声〉を振り撒く。
これが俺の全力のインファイト(毒物乱用)である。
だが、レベルが上の俺がこれだけやっているのにも関わらず、奴はそれらを防ぎながらも楽しそうな顔をしてやがる。
まぁ奴の体には所々眠羽が刺さったり、掠り傷も増えてきているし、後は時間を稼ぐだけでもなんとかなる。計画通りだな。
インファイトを終え、牽制混じりに打ち合っていると、時々奴の足元がふらつき始めている。
後はもう距離を取って様子を見れば...と思い、攻撃の手を緩め大きく後ろに下がろうとしたとき、それを隙と見たのか大剣による大振りな一撃を再び放ってくる。
しかし、どうせ後ろに下がり始めてる俺には当たらない、そう考えていた。
だが、奴の大剣は状態異常で弱った握力で支えきれず、すっぽ抜けて俺の方に真っ直ぐと、風を切り裂きながら猛烈な勢いで飛んできたのだ。
至近距離で放たれた、両者予想すらできなかった不意打ちとも呼べる一撃。
体を捻り、避けようとするも避けきれず、せめて致命傷は避けようとしたものの、左前足の根元に大剣が直撃し突き刺さる。
俺の羽毛で守られていた部分にも関わらず、左前足が深く傷付き強烈な痛みを俺を襲う。
なかなかに過酷だった旅期間を含めても、ここまで深い傷を負ったのは始めてだ。
野生の時にこんな怪我をしていたら、最低でも左足は切除、若しくはそのまま出血多量で死んでいたかもしれない。
人間の町ならば、治癒魔法や回復アイテムで治してくれる可能性もある。ここを乗りきればなんとかなるだろう...希望的観測ではあるが。
痛みに耐えながらも刺さった大剣を右前足で投げ捨て、無防備になった奴に眠羽を放ちまくる。
防ぐ大剣も、体の状態異常で全てを避ける自由もないガジェルの体に、大量の眠羽が体に刺さり膝をつく。
それを見た俺は、まともに動かない左前足の痛みに耐えつつ、奴に止めを刺そうと低空飛行で向かおうとする。
すると突然、俺に向かって大量の火の玉が飛んできた。
俺は必死に痛む足を庇いながらも、空中で急停止からの急降下、3本の足で着地し背後へ跳ぶも避けきれず、数発受けてしまった。
この火の玉はかなり痛い。翼の細い骨が折れたかもしれない。
鳥の骨はデリケートなんだぞ。
火の玉の発生源を見ると、あの時のぽっちゃり系魔族と杖を持った大量のホブゴブリンがおり、追い付いてきた奴らの魔法らしい。
ガジェルを倒すことしか考えていなかったから、全然気が付かなかった...
ボロボロの俺を見て、ぽっちゃり系魔族はニチャァって感じの顔しながら、降伏して俺のものになれば命は助けてやるとか抜かし始めた。
俺は、今。確かに絶体絶命である。左前足は千切れそうなほど深い傷を負い、翼は細かい骨が折れて飛ぶのは困難、周囲にはホブゴブリンやオークと糞猿の群れ、奥にはオーガと魔法が使えるホブゴブリンとあの魔族。
負傷者(負傷鳥?)1匹VS約100匹の魔物、いくら俺が強くとも今か状況じゃあ勝てるわけがない。
だが、奴らは先程の俺と同じように視野が狭まっているようだ。
後ろから迫る存在に気がつかないとはな。
「私の従魔になんて事してくれちゃってるのよ!このデブ魔族!!」
そう、奴の背後にキィナが来ていたのだ。そして始まる、デブとキィナの唐突な一騎討ち。
周囲の魔物は突然の襲撃に戸惑いながらも、魔族の近くにいた複数のオーガが魔族を守ろう動き出す。
が、そこに割り込む1人のテイマーとその従魔。
「ワシも仲間に入れてくれや、あ^~、早くワシと一緒に触手まみれになろうぜ!」
イソギンチャクのような、ローパー的な触手型の魔物を連れた例のおっさんだ。
触手が複数のオーガを絡めとり、透明な液体で濡らす。するとオーガが発情し始め、口では言えないような行為を触手やオーガ同士で始める。
誰得。おぇっ。
い、いや、それより俺の回りには糞猿やホブゴブリン、オークの群れが残っている。だが、今の俺では倒しきれず、やられてしまうだろう。彼らの援護も遠くて期待できなさそうだ。
...仕方ない、覚悟を決めて少しでも魔物共を狩ってやろうか、と踏ん張った途端、街道の方から聞こえる戦闘音。
他国のギルドの援軍が到着し、魔物の群れと戦い始めたようだ。
タイミングが良すぎて、「何このご都合主義?」とか思ってしまうが、凄くありがたい。今回ばかしは創造神様とやらに感謝してもいいかもな。
...あれ?このままだと他国のギルドの人達に俺も討伐されない?
だ、大丈夫だよな?従魔だって分かるように俺、鞍着けてるし...大人しくこの場から動かず無害アピールしておくか。怪我で動くと痛いし。
散発的に襲いかかる魔物を眠羽で撃退しながらも、余裕ができたんで周囲を眺めてみる。
近くで膝を着いてたはずのガジェルは、どこにも見当たらない。魔物達にでも回収されたか、眠気に耐えながら撤退したか。
少し遠くを見ると、魔族との一騎討ちを優勢に進めるキィナがいる。魔族に上手く手傷を与えてるし、もうすぐ勝てそうだな。あのデブ、あんなに弱かったのか...
オーガやホブゴブリンの群れを、媚薬らしき液体の滴る触手で快楽堕ちさせる触手のローパー。
因みにおっさんは絡め取られた魔物と一緒に触手の中で混ざって盛りあってる。完全にやべーやつ。
あんなもの見続けたら、グリフォンからオエー鳥に進化してしまうかもしれない。
そして街道側から魔物を蹴散らしてくれている、他国のギルドの人達。
先頭に立っている全身金属鎧の男と、その近くにいる女の子2人...キィナよりも年下っぽいのが凄く目立つ。
先頭の男がなかなかに強い。全身の金属鎧の一部が伸びて、周囲の魔物を突き刺している。鎧の効果か?それともスキルなのか?
そして片手には、鉄パイプ。
剣じゃないのかよ、と思うがその鉄パイプもぐにゃぐにゃと変形し、鋭くなったり、ハンマーのような鈍器になったりして、周囲の魔物を少しずつ殲滅している。
あの鎧男は多分、俺と大差ない強さかもしれない。
あの鎧で状態異常が通りにくいと考えると、若干不利か?万全の状態であれば、逃げるだけなら余裕そうだが。
そしてその近くの、戦場が似合わないロリ2人。
1人は忍者みたいな服装をしてる黒い髪のロリだ。
時々一瞬姿を消して、突然魔物の後ろに現れ、首をナイフで刺している。あれは透明になっているのか...?転移じゃなさそうだが。
確かに強いがこのロリは常識の範疇だ。真っ向勝負の試合ならキィナが有利で、あの技能を使われる殺しあいなら、キィナより強い位だろう。
そして一番おかしいのがもう1人のロリ。服装は薄着で色素の薄い髪をしている、だがあれは人間じゃない。間違いない。
だって、顔が竜みたいになって火を吐いたり、手から巨大な顔が生えてきてゴブリンを喰い殺したり、突然背中から蟷螂の鎌みたいなのが生えて周囲を凪払って、また体内に引っ込んでいったり...俺より余裕で化け物じゃないか。
本能さんでも上手く強さを測れない、変形する度に脅威度が上がったり下がったりしている。
あれは本当に人間の味方でいいんだよな?
彼らの後ろで戦っている冒険者達は、殆ど普通なので省略させて頂く。寧ろ先頭で戦う3人を見て、引き気味なようだしな。
戦いを眺めていると、魔族を倒し終わったキィナが、その魔族の首を槍の先に刺して目立つようにしたまま俺のところに来た。
俺の傷の深さを見ると、回復薬である高そうなポーションとやらをかけてくれた。
ははっ、これじゃ出会った時とは逆だな。あのとき俺が使ったのはそこらに生えてる薬草だがな。
つい少し笑ってしまったが、キィナを見ると同じく少し笑っている。お互いに同じことを思い出しているようだ。
傷が癒えたのを確認したキィナは俺に乗り、「今のポーション、高かったんだからね?」と冗談めかして言ってきた。
俺はポーションを使ってくれたことの感謝を伝えつつも、「この戦場で稼いで返済しよう。」と強気に答えとく。
その返事にニヤリと笑い満足するキィナ、そして唐突に「レイヴィン」と呼ぶ。
それがキィナが考え抜いた俺の名前らしい。今までの、なんとかオブなんたらよりも圧倒的に馴染みやすいし、中々に気に入った。
さぁ!俺、レイヴィンはこれよりテイマーのキィナと共に、殲滅戦を開始する!!
どうやら大氾濫は、無事に終わりを向かえることができそう、らしい。
あ、それとその槍の先の魔族の生首は、捨てておきなさい。
____________________
Lv 90
名前:ガジェル
種族名:オーガジェネラル
体力:1100/1100
魔力:300
攻撃:850
防御:550
魔攻:350
魔防:350
速さ:600
スキル
身体強化Lv7 咆哮Lv4 指揮Lv3 腕Lv7
牙Lv3 大剣Lv4 格闘Lv5 投擲Lv5
毒耐性Lv3 状態異常耐性Lv3 気配錯誤Lv2
SPスキル
感覚 言語理解
EXスキル
荒れ地の元ボス
○咆哮
声の音量が上がる。相手を怯ませたり威圧するのに使える。
極めると、音の圧で相手に物理的なダメージを与えられ、鼓膜の破壊も狙えるようになる。
○気配錯誤
相手に自分の気配を誤認識させる。気配隠蔽とは少し違う。
気配を隠すわけではなく、前にいるのに相手の後ろで気配を感じさせ振り向かせたりできる。
また、誰もいない所に自分の気配を強く置いておくことで、結果的に自分の気配を誤魔化すことができる。
今回ガジェルは、このスキルを利用し逃亡している。
○感覚
物事の感覚が掴みやすくなる。色々な戦い方や物の仕組み、原理が少し理解しやすくなる。
戦闘中も後ろから攻撃が来そうな時に、なんとなく防げたり、無意識にも良い選択を引き寄せ易くなる。
今回ガジェルは、このスキルの影響で素早さが上の主人公からの攻撃を防いだり、剣がすっぽ抜けたり、逃走のタイミングを見計らい、成功したりしている。
主人公で言う本能さんポジションだが、語り掛けるのではなく、本人の無意識の「なんとなく」と言う部分に強く作用している。
※グリフォンの骨は普通にそこそこ硬い。飛ぶ時には体内の魔力を多少使用することで補助が受けられるので、骨を軽くする必要がない。異世界クオリティなのだ。
しかし相手はただのオーガではない、オーガジェネラルで、ガジェルと言う名前を持つ元日本人だ。
最悪、こいつを放置してもこの国最強の緑騎士様とやらがいるから、城はまぁ大丈夫なんだろうとは思う。
だが、城壁は破壊されるし町も荒らされ、犠牲者はどうしても出る。
だから俺は、援軍が来るまでコイツを引き付けておくことにした。
こいつが独断で突っ込んで来たから、それを追いかけてきている魔族の小隊とは、随分と距離が空いているのはラッキーだ。
これなら後ろに下がりながら戦って時間を稼げば、冒険者達の援護が期待できそうだ。
奴が大剣を構えて突っ込んで来た、俺は後ろに低空飛行しながら〈眠羽〉を飛ばして牽制する。
しかし、奴は大量の眠羽を全て、大剣を盾にしながら突っ込んでくる。
距離を詰められてしまい、奴は大剣で縦に大振りな一撃を放ってくる。
しかし、素早さでは俺がかなり上。俺は低空飛行を止めて地に降りると、右方向へのステップで回避、右前足の鳥の爪で反撃する。
奴は俺の素早い攻撃に、大剣を動かして防ぐことはせず、先程の大振りな一撃の勢いで地に刺さった大剣の後ろに隠れるようにして、俺の攻撃を防ぐ。
大剣を地に刺し、すぐに剣は使えないだろうと考えた俺が距離を詰めようとすると、奴は右にステップしながら大剣を抜き、迎撃体勢を整えてしまう。
しかし俺としては早めに毒を仕込んでおきたい。
と言うわけで俺は大剣を持つオーガ相手に素手(?)によるインファイトを仕掛ける。
〈毒嘴〉で噛みついたり毒の唾液を吐き出したり、両手足の〈麻痺爪〉で裂いたり刺したり、翼からは至近距離で眠羽を放ち、インファイト中は常に叫び〈乱声〉を振り撒く。
これが俺の全力のインファイト(毒物乱用)である。
だが、レベルが上の俺がこれだけやっているのにも関わらず、奴はそれらを防ぎながらも楽しそうな顔をしてやがる。
まぁ奴の体には所々眠羽が刺さったり、掠り傷も増えてきているし、後は時間を稼ぐだけでもなんとかなる。計画通りだな。
インファイトを終え、牽制混じりに打ち合っていると、時々奴の足元がふらつき始めている。
後はもう距離を取って様子を見れば...と思い、攻撃の手を緩め大きく後ろに下がろうとしたとき、それを隙と見たのか大剣による大振りな一撃を再び放ってくる。
しかし、どうせ後ろに下がり始めてる俺には当たらない、そう考えていた。
だが、奴の大剣は状態異常で弱った握力で支えきれず、すっぽ抜けて俺の方に真っ直ぐと、風を切り裂きながら猛烈な勢いで飛んできたのだ。
至近距離で放たれた、両者予想すらできなかった不意打ちとも呼べる一撃。
体を捻り、避けようとするも避けきれず、せめて致命傷は避けようとしたものの、左前足の根元に大剣が直撃し突き刺さる。
俺の羽毛で守られていた部分にも関わらず、左前足が深く傷付き強烈な痛みを俺を襲う。
なかなかに過酷だった旅期間を含めても、ここまで深い傷を負ったのは始めてだ。
野生の時にこんな怪我をしていたら、最低でも左足は切除、若しくはそのまま出血多量で死んでいたかもしれない。
人間の町ならば、治癒魔法や回復アイテムで治してくれる可能性もある。ここを乗りきればなんとかなるだろう...希望的観測ではあるが。
痛みに耐えながらも刺さった大剣を右前足で投げ捨て、無防備になった奴に眠羽を放ちまくる。
防ぐ大剣も、体の状態異常で全てを避ける自由もないガジェルの体に、大量の眠羽が体に刺さり膝をつく。
それを見た俺は、まともに動かない左前足の痛みに耐えつつ、奴に止めを刺そうと低空飛行で向かおうとする。
すると突然、俺に向かって大量の火の玉が飛んできた。
俺は必死に痛む足を庇いながらも、空中で急停止からの急降下、3本の足で着地し背後へ跳ぶも避けきれず、数発受けてしまった。
この火の玉はかなり痛い。翼の細い骨が折れたかもしれない。
鳥の骨はデリケートなんだぞ。
火の玉の発生源を見ると、あの時のぽっちゃり系魔族と杖を持った大量のホブゴブリンがおり、追い付いてきた奴らの魔法らしい。
ガジェルを倒すことしか考えていなかったから、全然気が付かなかった...
ボロボロの俺を見て、ぽっちゃり系魔族はニチャァって感じの顔しながら、降伏して俺のものになれば命は助けてやるとか抜かし始めた。
俺は、今。確かに絶体絶命である。左前足は千切れそうなほど深い傷を負い、翼は細かい骨が折れて飛ぶのは困難、周囲にはホブゴブリンやオークと糞猿の群れ、奥にはオーガと魔法が使えるホブゴブリンとあの魔族。
負傷者(負傷鳥?)1匹VS約100匹の魔物、いくら俺が強くとも今か状況じゃあ勝てるわけがない。
だが、奴らは先程の俺と同じように視野が狭まっているようだ。
後ろから迫る存在に気がつかないとはな。
「私の従魔になんて事してくれちゃってるのよ!このデブ魔族!!」
そう、奴の背後にキィナが来ていたのだ。そして始まる、デブとキィナの唐突な一騎討ち。
周囲の魔物は突然の襲撃に戸惑いながらも、魔族の近くにいた複数のオーガが魔族を守ろう動き出す。
が、そこに割り込む1人のテイマーとその従魔。
「ワシも仲間に入れてくれや、あ^~、早くワシと一緒に触手まみれになろうぜ!」
イソギンチャクのような、ローパー的な触手型の魔物を連れた例のおっさんだ。
触手が複数のオーガを絡めとり、透明な液体で濡らす。するとオーガが発情し始め、口では言えないような行為を触手やオーガ同士で始める。
誰得。おぇっ。
い、いや、それより俺の回りには糞猿やホブゴブリン、オークの群れが残っている。だが、今の俺では倒しきれず、やられてしまうだろう。彼らの援護も遠くて期待できなさそうだ。
...仕方ない、覚悟を決めて少しでも魔物共を狩ってやろうか、と踏ん張った途端、街道の方から聞こえる戦闘音。
他国のギルドの援軍が到着し、魔物の群れと戦い始めたようだ。
タイミングが良すぎて、「何このご都合主義?」とか思ってしまうが、凄くありがたい。今回ばかしは創造神様とやらに感謝してもいいかもな。
...あれ?このままだと他国のギルドの人達に俺も討伐されない?
だ、大丈夫だよな?従魔だって分かるように俺、鞍着けてるし...大人しくこの場から動かず無害アピールしておくか。怪我で動くと痛いし。
散発的に襲いかかる魔物を眠羽で撃退しながらも、余裕ができたんで周囲を眺めてみる。
近くで膝を着いてたはずのガジェルは、どこにも見当たらない。魔物達にでも回収されたか、眠気に耐えながら撤退したか。
少し遠くを見ると、魔族との一騎討ちを優勢に進めるキィナがいる。魔族に上手く手傷を与えてるし、もうすぐ勝てそうだな。あのデブ、あんなに弱かったのか...
オーガやホブゴブリンの群れを、媚薬らしき液体の滴る触手で快楽堕ちさせる触手のローパー。
因みにおっさんは絡め取られた魔物と一緒に触手の中で混ざって盛りあってる。完全にやべーやつ。
あんなもの見続けたら、グリフォンからオエー鳥に進化してしまうかもしれない。
そして街道側から魔物を蹴散らしてくれている、他国のギルドの人達。
先頭に立っている全身金属鎧の男と、その近くにいる女の子2人...キィナよりも年下っぽいのが凄く目立つ。
先頭の男がなかなかに強い。全身の金属鎧の一部が伸びて、周囲の魔物を突き刺している。鎧の効果か?それともスキルなのか?
そして片手には、鉄パイプ。
剣じゃないのかよ、と思うがその鉄パイプもぐにゃぐにゃと変形し、鋭くなったり、ハンマーのような鈍器になったりして、周囲の魔物を少しずつ殲滅している。
あの鎧男は多分、俺と大差ない強さかもしれない。
あの鎧で状態異常が通りにくいと考えると、若干不利か?万全の状態であれば、逃げるだけなら余裕そうだが。
そしてその近くの、戦場が似合わないロリ2人。
1人は忍者みたいな服装をしてる黒い髪のロリだ。
時々一瞬姿を消して、突然魔物の後ろに現れ、首をナイフで刺している。あれは透明になっているのか...?転移じゃなさそうだが。
確かに強いがこのロリは常識の範疇だ。真っ向勝負の試合ならキィナが有利で、あの技能を使われる殺しあいなら、キィナより強い位だろう。
そして一番おかしいのがもう1人のロリ。服装は薄着で色素の薄い髪をしている、だがあれは人間じゃない。間違いない。
だって、顔が竜みたいになって火を吐いたり、手から巨大な顔が生えてきてゴブリンを喰い殺したり、突然背中から蟷螂の鎌みたいなのが生えて周囲を凪払って、また体内に引っ込んでいったり...俺より余裕で化け物じゃないか。
本能さんでも上手く強さを測れない、変形する度に脅威度が上がったり下がったりしている。
あれは本当に人間の味方でいいんだよな?
彼らの後ろで戦っている冒険者達は、殆ど普通なので省略させて頂く。寧ろ先頭で戦う3人を見て、引き気味なようだしな。
戦いを眺めていると、魔族を倒し終わったキィナが、その魔族の首を槍の先に刺して目立つようにしたまま俺のところに来た。
俺の傷の深さを見ると、回復薬である高そうなポーションとやらをかけてくれた。
ははっ、これじゃ出会った時とは逆だな。あのとき俺が使ったのはそこらに生えてる薬草だがな。
つい少し笑ってしまったが、キィナを見ると同じく少し笑っている。お互いに同じことを思い出しているようだ。
傷が癒えたのを確認したキィナは俺に乗り、「今のポーション、高かったんだからね?」と冗談めかして言ってきた。
俺はポーションを使ってくれたことの感謝を伝えつつも、「この戦場で稼いで返済しよう。」と強気に答えとく。
その返事にニヤリと笑い満足するキィナ、そして唐突に「レイヴィン」と呼ぶ。
それがキィナが考え抜いた俺の名前らしい。今までの、なんとかオブなんたらよりも圧倒的に馴染みやすいし、中々に気に入った。
さぁ!俺、レイヴィンはこれよりテイマーのキィナと共に、殲滅戦を開始する!!
どうやら大氾濫は、無事に終わりを向かえることができそう、らしい。
あ、それとその槍の先の魔族の生首は、捨てておきなさい。
____________________
Lv 90
名前:ガジェル
種族名:オーガジェネラル
体力:1100/1100
魔力:300
攻撃:850
防御:550
魔攻:350
魔防:350
速さ:600
スキル
身体強化Lv7 咆哮Lv4 指揮Lv3 腕Lv7
牙Lv3 大剣Lv4 格闘Lv5 投擲Lv5
毒耐性Lv3 状態異常耐性Lv3 気配錯誤Lv2
SPスキル
感覚 言語理解
EXスキル
荒れ地の元ボス
○咆哮
声の音量が上がる。相手を怯ませたり威圧するのに使える。
極めると、音の圧で相手に物理的なダメージを与えられ、鼓膜の破壊も狙えるようになる。
○気配錯誤
相手に自分の気配を誤認識させる。気配隠蔽とは少し違う。
気配を隠すわけではなく、前にいるのに相手の後ろで気配を感じさせ振り向かせたりできる。
また、誰もいない所に自分の気配を強く置いておくことで、結果的に自分の気配を誤魔化すことができる。
今回ガジェルは、このスキルを利用し逃亡している。
○感覚
物事の感覚が掴みやすくなる。色々な戦い方や物の仕組み、原理が少し理解しやすくなる。
戦闘中も後ろから攻撃が来そうな時に、なんとなく防げたり、無意識にも良い選択を引き寄せ易くなる。
今回ガジェルは、このスキルの影響で素早さが上の主人公からの攻撃を防いだり、剣がすっぽ抜けたり、逃走のタイミングを見計らい、成功したりしている。
主人公で言う本能さんポジションだが、語り掛けるのではなく、本人の無意識の「なんとなく」と言う部分に強く作用している。
※グリフォンの骨は普通にそこそこ硬い。飛ぶ時には体内の魔力を多少使用することで補助が受けられるので、骨を軽くする必要がない。異世界クオリティなのだ。
5
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる