グリフォンに転生した...らしい。

キンドル・ファイバー

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融和派魔王の娘とおてんば対決!?

融和派魔王の娘と勝負することになったらしい

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 玉座の間で魔王に話しかけられたキィナと俺、レイヴィン。
 俺とキィナの出会いとか、どうやってテイムしたのかを主に聞いてるみたいだ。

 それに丁寧に答えるキィナ...俺としてはついカッとなってゴブリンを片付けて、助けた相手と仲良くなった程度の気持ちだったんだけど、キィナからしたら運命的な出会いに感じてたらしく、少し熱く語ってた。
 でも最後に「こんなふざけた性格だとは思わなかったけどね。」と小声で付け足してた。失礼な。


 魔王の話が終わると、次は娘の方が俺に向かって勧誘してきた。
 飼い主の目の前で堂々と引き抜きしに来たぞこの娘...流石にキィナが反発し、軽い口論に。あーもうめちゃくちゃだよ、ここ玉座の間だぞ?


 そして魔王の娘が「黒きグリフォンに決めて貰いましょう、アタシは魔物の声が解るもの...返事をなさい!」と俺に指を指してくる。

 人に指差してはいけません、と娘に教育されてないようですな魔王さんや...いや、異世界にそんな文化はないのか?まぁいい、少しおちょくってやろう。


「クエクエ。(クエクエ。)」


 困惑した顔でもう一回言ってと、言う魔王の娘。


「クククケェ。(クククケェ。)」


 今の俺は、クエクエと鳴き声を出しながらクエクエと言っている。
 魔王の娘が冷や汗を滴しながら翻訳できず困っているようだが、何を言っているのか魔王の娘が解らないのではなく、俺がまともな言語を話していないのだ。


 周囲を見ると王様や兵達にはさっぱり理解できないやり取りのようだが、緑騎士や魔王を見ると笑いを堪えてる様子が見られた。
 どうやら魔物への理解が深そうな彼らにはバレてしまったらしい。

 従魔契約してるキィナも本来は鳴き声だけで多少の意志疎通はできるのだが、今回は解らず〈モンスターテレパス〉で聞いてきたのでコッソリネタバラし。するとキィナも笑いを堪え始めた。

 その後も数回同じやり取りを繰り返し、魔王が堪えきれず大声で笑いだした所で終了。
 普通に話して魔王の娘にもネタバラしをすると、顔を真っ赤にして怒り出した。


 魔王からは他者の従魔を取ろうとする方が悪いだろうと注意されていたが、それでは収まらず彼女はキィナと俺に決闘を挑んできた。

 俺のおふざけが発端とはいえ、少々面倒なことになってしまった。
 因みに決闘を挑まれたキィナは、寧ろ嬉々とした様子で受けてた。流石は戦闘民族と誉めてやりたい所だぁ。





 今現在、俺らは城からキィナの家を目指して絶賛帰宅中で、飛びながら背中のキィナと決闘についての話をしていた。

 あの時、国の重鎮が集まる中での決闘宣言。人間の国と魔族の国の亀裂になってはいけないと、親善試合と言う形に収まった。

 そして試合形式は、まさかのレース。魔族の領域である魔境に廃城があり、そこを使ってレースを行うとのことらしい。

 魔境でのレースなんて危険じゃないかと思ったが、廃城は魔境の入り口から遠くない場所にあり、そこならば人間もそんなに影響なく出入りできるんだと。
 魔法が全く使えない人間だと酔いやすい環境みたいだけどな。

 そして、魔族達の間ではその廃城を使ったレースが今の流行りらしく、それを人間達にも知って欲しいという意図があり、今回の決闘に使われることになったんだとか。

 あと、魔王の娘はワイバーンという魔物を飼っているらしく、それに乗ってレースをするみたいだ。

 魔族のホームグラウンドで、経験のない空中レース...圧倒的に俺らが不利な条件だなとは思ったが、流石に場所を借りての練習はさせてくれるみたいだ。
 そしてハンデとして、経験のある魔王の娘は決闘当日までワイバーンに騎乗することと廃城へ行くことを禁止し、廃城を俺らの貸し切りにしてくれるとのこと。

 相手のワイバーンとやらがどれくらい強いか知らないけど、素早さの数値の高い俺がレースで負けるわけにはいかねぇな!

 一度家に帰ったら廃城へ早速特訓に行こうぜ!と意気込む俺、キィナも「当然よ!」とヤル気満々である。

 こいつのノリの良いところ、ほんと好きよ?




 一度家に帰り、キィナが両親に事情説明してから、城で貰った地図を参考に東の魔境へと飛び立った。
 相変わらず森には猿とゴリラが溢れ、石とウ○チを投げてくる...キィナと一緒に討伐するのも有りかなと一瞬思ったが、これからレースの練習をするのに糞まみれにはなりたくないので、大人しく高いところを飛んで回避することに。

 以前よりステータスが上がっているからか、急上昇すると一気に高いところまで上がれて気持ちが良かった。
 だが、合図もせずに急に高度を上げた為、キィナを少しビビらせてしまったようだ。

 キィナを乗せてこんな高く飛んだことないってのもあるかもな、スマンが猿共が諦めるまで我慢してくれ。




 高いところまで届くゴリラのウ○コを時々避けながら飛ぶこと小一時間、森の切れ目と、その奥に広がる荒れ地が見えてきた。
 それにしても、森から突然荒れ地になるなんて凄い光景だよな。


 因みにあの蟻事件の時に見かけた魔族の村が見えるが、スルーしとく。寄る理由もないし、なんか後ろめたくて顔合わせづらいし...

 魔族の村人がなんか指差したりしてきてるけど気にするなキィナ、彼らは物珍しさで興味を示しただけだ。そうに違いない。




 あの村から北方向に少し飛ぶと、廃城を見つけることができた。
 大きさはドリミドール王国程ではないが、町としてみるには大分大きい...

 他に特徴的な所と言えば、民家らしき家の全てが四角いデカイ石をくりぬいたような形をしていることだな。

 城の部分はレンガみたく四角くした小さい石を沢山積んで作られた様な城だが、随分とボロボロだ。
 元々ここは国だったんだろうが、どうして滅んだんだろうな...?

 石をくりぬいて作ったような家ばかりだし、通気性の悪さによる不衛生さとか?
 キィナにも予想してみて貰ったが、「戦争で負けでもしたんじゃない?」と俺に負けず劣らず雑な回答を頂いた。


 朽ちかけた城門前に降りると、警備してる魔族らしき兵が2人おり、俺らの事をかなり警戒しながら槍を向け、何をしに来たのか聞かれる。

 キィナが魔王からここの使用許可を得たことを話すも、そのような通達はない、と通して貰えないようだ。
 廃墟だから自由に使って良いのかと思ったが、どうやらそうではなく魔族の国が管理しているものらしい。


 キィナと相談した結果、面倒だが一度帰るしかないんじゃないかという結論に達し、渋々帰ろうとする俺ら。




 さて、飛ぼうかと空を見上げた俺らは遥か上空に、突如として隕石のようなものを発見する。

 しかも隕石のようなものはこちらの方へ飛んできており、「なんだよこの急展開!?」と思いつつ咄嗟に俺とキィナを守る為に魔法で石の壁を作るが、直撃だったら多分耐えらr...








 ...とんでもない衝撃に咄嗟に張った石の壁が少し壊れる。因みに抵抗できなかった魔族の門番たちは、少しふっ飛んでた。

 俺達のいる廃城から100mは離れた場所に落ちたであろう隕石のような物、もうもうと立ち込める砂煙の中、衝突地点から2つの影がこちらへ歩いてくる。

 影の片方が手を振ってるが...誰かの知り合いか?

 ...と思ったのも束の間、聞き覚えのある声が聞こえた。


「やぁ、驚かせてすまないね。僕の従魔で一番速いのがこの子だったものでね。」


 目を凝らすと、ペンギンのような従魔を連れた爽やかな緑のイケメンがこちらへ来ていた。






 どうやら緑騎士はペンギンに乗って飛んできた、らしい。




 いや、ペンギンなのに飛べるってなんなん!?
_________________

○ワイバーン
 両腕が翼に進化しており、首と尻尾が長く、尻尾の先端に毒針を持つリザード系の魔物。体の大きさは3~4m程度まで成長し、グリフォンより細長く大きい体をしている。さらにそこに3m近い長さの尻尾が加わり、全長は7mを越えることも。

 一人前になるまでは全長5m前後の若い個体で集まり、群れになって獲物を分け合いながら暮らす。
 その中で番を得たり、獲物を多く狩れる個体が群れから離れ、巣を作り暮らすようになる。


 両腕の翼で飛び回り、先端が楕円形の棘付き鉄球のような尻尾に付いた毒針を飛ばしたり、尻尾の先端を振り回してヒット&アウェイ戦法で敵を消耗させるのが得意。毒針は魔力を消費することで再び生えてくる。
 遠距離の攻撃手段を持たない人では対抗する術が無いと言っても過言ではない。

 成長すると火のブレスや、咆哮で衝撃波を放つ等の多芸な個体も現れる。
 だが、そこまで成長する為には多くの餌が必要になる為、楽に獲物を手に入れようと家畜を荒し始め、そのせいで冒険者ギルドに討伐依頼を出されて狩られるパターンが多いので、多芸な個体は滅多に出没しない。

 好戦的な性格で、番で人間の住む村を襲ったり、若いワイバーンの群れがグリフォン等他の魔物の群れへ縄張り争いを仕掛けることも珍しくはない。

 なお、尻尾による得意な間合いでの近接戦闘力や、筋力はグリフォンを上回っている。
 だが、知能や魔力、連携力や素早さではグリフォンに劣る為、グリフォンとの群れ同士の衝突では互いに被害を出しながらも、大体ワイバーンが大打撃を受けて負ける。
 まぁ、グリフォンの群れというのは番を見つけたグリフォン達の共同住宅みたいなもので、子育ての為に近くに複数の巣を作り助け合うスタイルなので、若いワイバーンの群れと違い戦い慣れた大人の個体が多かったり、子を守るために戦う為、手強いというのもあるが。

 味は牛肉3割鶏肉7割といった感じで、あっさり目ではあるが喰いごたえがある。ワイバーンのステーキは御馳走として振る舞われている。


○モゥメンテンギン
 流線型の空飛ぶペンギンの魔物。大きさは2m弱と結構大きい。
 自身へ掛かる重力を弱くし、慣性とばた足でゆっくり加速して空を飛ぶ特殊な生態をしている。
 だが侮ることなかれ、加速が遅いからといっても最高速度の上限がほぼ無いので、一度スピードに乗ると隕石のような勢いで飛ぶことができる。

 因みに減速は出来ないので、身体への衝撃を無効化する頑丈な嘴から地面に激突し、着地の度に地面にクレーターを作ることとなる。
 子育ての際に雛を乗せる為か、同乗者の負担となる風の抵抗や着地の衝撃も無効化するスキルがある。なので乗っても安全ではあるが...相当な度胸が必要。

 味は...脂身だらけで肉も油っぽくてベタベタしている上に、そこまで旨味が無いのでオススメはしない。

 渡り鳥のように、季節に応じてこの星の南極と北極を行ったり来たりするので、渡りの季節になると流星群のようにペンギンが降り注ぎ大地がクレーターまみれになる。
 因みに水陸両用で、水中だと普通に泳いで魚を取るし、飛行後の着地地点が水中でも問題はない。
 なお、飛行の仕方の問題で空では餌が摂れないが、普通に鳥とかの肉も食べる。
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