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2-2 江戸へ(1)
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「この辺は、全く変わらないなぁ」
日はまだ若干東に傾き、朝からさほど時間も経っていないというのに。南国特有の大きな太陽は、土埃の舞う道を容赦なく照らし焼く。
日陰の多い山間の道を抜けると、菅笠の向こう側には湯気が立ち上らんばかりに太陽光を含んだ開けた土地が見えた。袖を捲り上げ一息ついた侍は、菅笠の下から流れ落ちる汗を手拭いで拭いて独言る。
空高く輝く太陽は南の大地をジリジリと照らし、正午を待たずして気温が急激に上昇し始めた。
ジワリと滲んでいた汗が一気に吹き出し背中をつたう。侍が視線を上げると、青々と茂るハスイモの瑞々しい緑が、目の奥を刺激し、輝きを放つほど眩くうつった。
その奥には、ひょろっとした二才(※成人した男)が、大きく鍬を振るのが見える。
「利良殿ーっ!!」
田舎侍の呼ぶ声に反応した若二才が、目を見開いて振り返った。
「晋祐殿かーっ!!」
六尺(約百八十センチメートル)の超える長身。
それを感じさせない細身の若二才の体が弾けるように躍動する。鍬を放り投げ、木々の間から姿を現した侍・有馬新太郎改め、有馬晋祐に飛びついた。
「あれ? 晋祐殿、背ェが伸びもしたか?」
「それいうなら、利良殿もだろ?」
「いや! もう二寸(約六センチ)も変わらんど!?」
「俺も自分でも伸びたなぁって思ってたのに。まだ、利良殿に追いつかない」
犬のように飛びかかり、晋祐にしがみついた利良は、まじまじと久しぶりに見る姿を眺めては、仕切りに頷く。
そして何かに気づいたように、目を見開いた。
「晋祐殿……。江戸から帰ってきたばっかじゃなかと!?」
「あぁ。帰郷報告後だ」
「まこて、信じられん!! キヨーッ! 晋祐殿が帰っきもしたどーっ! 茶と風呂の準備しっくいやい!」
利良は振り返ってと、母家に向かって叫ぶ。すると母家から「はーい」という女の子の声がした。同時に、ドタバタと慌しい音が響く。
「早よ言っかせんな! 疲れもうしたなぁ。お勤め、おつかれさまでごわした」
「いや実のところ、あまり疲れてないよ」
晋祐はにこりと笑って、利良に答えた。
利良と出会って、十年。晋祐は二十三になった。
気の小ささは未だ変わらないが。小さく弱かった体は、父母がひっくり返って驚くほど大きく丈夫に成長した。
今春晴れて、新屋敷組若二才となった晋祐は、勘定役として初めて島津斉彬の参勤交代に帯同したのだった。
晋祐は、横を歩く利良をチラッと見上げる。横を歩く利良が、体格も頭脳も突出しているのに、己より一つ下なんて未だに信じられない。
先日ようやく二十二になり。遅ればせながら、名を正之進から利良に改めた。
汗ばみ日に焼けた利良の横顔は、成長し精悍さが増したにも拘らず。出会った頃と全く変わない、新世界を捉えているような純粋な輝きを放つ。晋祐は、ついその横顔に見惚れてしまった。
晋祐が先に要職に抜擢されることを聞いても、利良は妬むことも不貞腐れることしなかった。そればかりか涙を流して、晋祐の出世を喜んだ。さらには、有乎無乎の石を金子に替えて、「参勤交代はないがあっかもわかいもはんで! 持っていっきゃんせ!」晋祐に握らせた。
その時の一部始終を思い出し、晋祐は無意識に口元を緩める。
「晋祐殿?」
「え?」
笑う晋祐を困ったように見下ろす利良は、手で己が頬を擦った。
「俺が顔に、何かついちょっどかい?」
「い……いや、そうじゃない」
利良の横顔に見惚れていた、とは口が裂けてもいけず。晋祐は不自然に首を振って答えた。
話題を……話題を、変えねば!
晋祐は不自然に声を上擦らせる。
「あ! キヨさんに土産を持ってきた! 喜んでくれるといいが!」
妙に早口になって、急に恥ずかしくなった新太郎は母家に向かって歩を速める。利良はその様子に首を傾げながらも、晋祐の後を追った。
「わぁ! 晋祐殿! あいがともさげもす!(※ ありがとうございます)」
牡丹の花が描かれた薄紅色の玉簪を手に、キヨは満面の笑みで頭を下げた。
結った髪に飾ることなく。恭しく簪を手にしたキヨは、その簪を陽の光をあてて反射する五色の光を眺めている。
風呂で汗を流し、縁側に座した晋祐は麦湯で喉を潤しながら、そのキヨの様子を目を細めて見ていた。
「見事(※ 綺麗)てもんごわんさぁ!」
「よかもんをもろたな、キヨ!」
晋祐に続き、風呂で汗を流した利良が、無邪気に喜ぶキヨに声をかける。キヨは盆か正月がいっぺんに来たような顔をして振り返った。
「うん! こげな見事て簪、初め見ったぁ!」
利良は縁側に腰を下ろすと、湯呑みに濯がれた麦湯を飲み干す。
はぁと一息ついた利良とすっかり気が抜けた新太郎は、互いに視線を交わして笑みを浮かべた。
「キヨさんも大きくなったなぁ」
「もう十五やっでやなぁ。女子は大なっとが早でなぁ」
海から穏やかな風が凪いだ瞬間、僅かな空震と心臓を打つような爆音が響く。
暫くして、生い茂る山間の木々の向こうに僅かに臨む桜島の頂上から、灰色の噴煙が上がった。
桜島の爆発--。
桜島とは、鹿児島県の真ん中・鹿児島湾(※ 錦江湾)に聳え立つ火山である。現在は大隅半島と陸続きになってはいるが、かつてはその名のとおり、海抜から生えたような島だった。
大正三年の大噴火により、流れ出た溶岩や火山灰が堆積、陸続きとなったのだ。
江戸に行き故郷を離れていた新太郎は、モクモクと上がる噴煙に目を輝かせる。
「お! 久しぶりに見たなぁ! こっちの方(現・鹿児島市街地)に噴煙が来るかな?」
「谷山の方じゃろ。大丈夫っじゃが」
徐々に大きく膨らみ、覆いかぶさるように迫る噴煙を気にすることなく。利良は麦湯を一気に飲み干した。
簪を懐にしまい、パタパタと洗濯物を取り入れるキヨとは反対に。縁側に座した二人は、黙って噴煙の行方を見守る。
「なぁ、利良殿」
晋祐は静かに口を開いた。同時に、崩していた足を整え正座をして、真っ直ぐに利良を見据える。
「ないごんな、急に改まって」
「江戸に、行かないか?」
「え!?」
突然の言葉に、利良は目を見開いて晋祐を見上げた。
力強い晋祐の視線に利良は、咄嗟に身をひいて息を呑んだ。
強い覇気。
これほどの威圧感を表に出した晋祐を、利良はいままで見たことがない。江戸に行く、という大役を終えて。利良には、晋祐が追いつけないほど大人になったように思えた。
「晋祐殿……? 今、何ち……」
「江戸に行かないか?」
晋祐は、同じ言葉を繰り返す。想像しえなかった、思いもよらない言葉に、利良は思わず言葉を失った。
「上役には話をつけてある。勿論、利良殿の親父様にも今朝、話をつけてきた」
「……」
藩の要職に就くこと、兄弟のこと。
色んなことが、利良の頭をよぎる。
江戸に行っている間、仕事はどうなる?
家のことは?
自分が抜けたらどうなってしまうのか?
知らない世界を見たいと、切実に願っていたはずなのだ。しかし、いざ目の前に現れた機会に。自らの柵を断つこともできず、一歩を踏み出すのに躊躇する自分がいた。
二の足を踏ませる、自らの柵が、余計に言葉を失わせる。
押し黙る利良に、晋祐は手を差し出した。
十年前とは比べ物にならないほど、大きく厚くなった右手。その右手は、誘うように利良の目の前にある。
「知らん世界を、見っごちゃないもはんか?」
十年前、利良が晋祐に投げた言葉。その言葉が、投げた相手から、ぎこちない郷言葉で返ってくるとは。
--見たい!……見てみたい!
反射的に、心が叫ぶ。
躊躇し、全身が固まる利良の体に反し。意外にも利良の心の声は、明るく素直だった。一気に強張った体から、力が抜ける。
利良の体が動いた。
「見たかっ! 晋祐殿、見たかっ! 俺は、見ってんよかどかい?」
立ち上がるように晋祐の手を握った利良は、無我夢中で叫ぶ。
「いいに決まってるだろ。行くぞ、利良殿! 江戸へ!」
晋祐は、屈託なく笑うと利良の手を握り返した。
日はまだ若干東に傾き、朝からさほど時間も経っていないというのに。南国特有の大きな太陽は、土埃の舞う道を容赦なく照らし焼く。
日陰の多い山間の道を抜けると、菅笠の向こう側には湯気が立ち上らんばかりに太陽光を含んだ開けた土地が見えた。袖を捲り上げ一息ついた侍は、菅笠の下から流れ落ちる汗を手拭いで拭いて独言る。
空高く輝く太陽は南の大地をジリジリと照らし、正午を待たずして気温が急激に上昇し始めた。
ジワリと滲んでいた汗が一気に吹き出し背中をつたう。侍が視線を上げると、青々と茂るハスイモの瑞々しい緑が、目の奥を刺激し、輝きを放つほど眩くうつった。
その奥には、ひょろっとした二才(※成人した男)が、大きく鍬を振るのが見える。
「利良殿ーっ!!」
田舎侍の呼ぶ声に反応した若二才が、目を見開いて振り返った。
「晋祐殿かーっ!!」
六尺(約百八十センチメートル)の超える長身。
それを感じさせない細身の若二才の体が弾けるように躍動する。鍬を放り投げ、木々の間から姿を現した侍・有馬新太郎改め、有馬晋祐に飛びついた。
「あれ? 晋祐殿、背ェが伸びもしたか?」
「それいうなら、利良殿もだろ?」
「いや! もう二寸(約六センチ)も変わらんど!?」
「俺も自分でも伸びたなぁって思ってたのに。まだ、利良殿に追いつかない」
犬のように飛びかかり、晋祐にしがみついた利良は、まじまじと久しぶりに見る姿を眺めては、仕切りに頷く。
そして何かに気づいたように、目を見開いた。
「晋祐殿……。江戸から帰ってきたばっかじゃなかと!?」
「あぁ。帰郷報告後だ」
「まこて、信じられん!! キヨーッ! 晋祐殿が帰っきもしたどーっ! 茶と風呂の準備しっくいやい!」
利良は振り返ってと、母家に向かって叫ぶ。すると母家から「はーい」という女の子の声がした。同時に、ドタバタと慌しい音が響く。
「早よ言っかせんな! 疲れもうしたなぁ。お勤め、おつかれさまでごわした」
「いや実のところ、あまり疲れてないよ」
晋祐はにこりと笑って、利良に答えた。
利良と出会って、十年。晋祐は二十三になった。
気の小ささは未だ変わらないが。小さく弱かった体は、父母がひっくり返って驚くほど大きく丈夫に成長した。
今春晴れて、新屋敷組若二才となった晋祐は、勘定役として初めて島津斉彬の参勤交代に帯同したのだった。
晋祐は、横を歩く利良をチラッと見上げる。横を歩く利良が、体格も頭脳も突出しているのに、己より一つ下なんて未だに信じられない。
先日ようやく二十二になり。遅ればせながら、名を正之進から利良に改めた。
汗ばみ日に焼けた利良の横顔は、成長し精悍さが増したにも拘らず。出会った頃と全く変わない、新世界を捉えているような純粋な輝きを放つ。晋祐は、ついその横顔に見惚れてしまった。
晋祐が先に要職に抜擢されることを聞いても、利良は妬むことも不貞腐れることしなかった。そればかりか涙を流して、晋祐の出世を喜んだ。さらには、有乎無乎の石を金子に替えて、「参勤交代はないがあっかもわかいもはんで! 持っていっきゃんせ!」晋祐に握らせた。
その時の一部始終を思い出し、晋祐は無意識に口元を緩める。
「晋祐殿?」
「え?」
笑う晋祐を困ったように見下ろす利良は、手で己が頬を擦った。
「俺が顔に、何かついちょっどかい?」
「い……いや、そうじゃない」
利良の横顔に見惚れていた、とは口が裂けてもいけず。晋祐は不自然に首を振って答えた。
話題を……話題を、変えねば!
晋祐は不自然に声を上擦らせる。
「あ! キヨさんに土産を持ってきた! 喜んでくれるといいが!」
妙に早口になって、急に恥ずかしくなった新太郎は母家に向かって歩を速める。利良はその様子に首を傾げながらも、晋祐の後を追った。
「わぁ! 晋祐殿! あいがともさげもす!(※ ありがとうございます)」
牡丹の花が描かれた薄紅色の玉簪を手に、キヨは満面の笑みで頭を下げた。
結った髪に飾ることなく。恭しく簪を手にしたキヨは、その簪を陽の光をあてて反射する五色の光を眺めている。
風呂で汗を流し、縁側に座した晋祐は麦湯で喉を潤しながら、そのキヨの様子を目を細めて見ていた。
「見事(※ 綺麗)てもんごわんさぁ!」
「よかもんをもろたな、キヨ!」
晋祐に続き、風呂で汗を流した利良が、無邪気に喜ぶキヨに声をかける。キヨは盆か正月がいっぺんに来たような顔をして振り返った。
「うん! こげな見事て簪、初め見ったぁ!」
利良は縁側に腰を下ろすと、湯呑みに濯がれた麦湯を飲み干す。
はぁと一息ついた利良とすっかり気が抜けた新太郎は、互いに視線を交わして笑みを浮かべた。
「キヨさんも大きくなったなぁ」
「もう十五やっでやなぁ。女子は大なっとが早でなぁ」
海から穏やかな風が凪いだ瞬間、僅かな空震と心臓を打つような爆音が響く。
暫くして、生い茂る山間の木々の向こうに僅かに臨む桜島の頂上から、灰色の噴煙が上がった。
桜島の爆発--。
桜島とは、鹿児島県の真ん中・鹿児島湾(※ 錦江湾)に聳え立つ火山である。現在は大隅半島と陸続きになってはいるが、かつてはその名のとおり、海抜から生えたような島だった。
大正三年の大噴火により、流れ出た溶岩や火山灰が堆積、陸続きとなったのだ。
江戸に行き故郷を離れていた新太郎は、モクモクと上がる噴煙に目を輝かせる。
「お! 久しぶりに見たなぁ! こっちの方(現・鹿児島市街地)に噴煙が来るかな?」
「谷山の方じゃろ。大丈夫っじゃが」
徐々に大きく膨らみ、覆いかぶさるように迫る噴煙を気にすることなく。利良は麦湯を一気に飲み干した。
簪を懐にしまい、パタパタと洗濯物を取り入れるキヨとは反対に。縁側に座した二人は、黙って噴煙の行方を見守る。
「なぁ、利良殿」
晋祐は静かに口を開いた。同時に、崩していた足を整え正座をして、真っ直ぐに利良を見据える。
「ないごんな、急に改まって」
「江戸に、行かないか?」
「え!?」
突然の言葉に、利良は目を見開いて晋祐を見上げた。
力強い晋祐の視線に利良は、咄嗟に身をひいて息を呑んだ。
強い覇気。
これほどの威圧感を表に出した晋祐を、利良はいままで見たことがない。江戸に行く、という大役を終えて。利良には、晋祐が追いつけないほど大人になったように思えた。
「晋祐殿……? 今、何ち……」
「江戸に行かないか?」
晋祐は、同じ言葉を繰り返す。想像しえなかった、思いもよらない言葉に、利良は思わず言葉を失った。
「上役には話をつけてある。勿論、利良殿の親父様にも今朝、話をつけてきた」
「……」
藩の要職に就くこと、兄弟のこと。
色んなことが、利良の頭をよぎる。
江戸に行っている間、仕事はどうなる?
家のことは?
自分が抜けたらどうなってしまうのか?
知らない世界を見たいと、切実に願っていたはずなのだ。しかし、いざ目の前に現れた機会に。自らの柵を断つこともできず、一歩を踏み出すのに躊躇する自分がいた。
二の足を踏ませる、自らの柵が、余計に言葉を失わせる。
押し黙る利良に、晋祐は手を差し出した。
十年前とは比べ物にならないほど、大きく厚くなった右手。その右手は、誘うように利良の目の前にある。
「知らん世界を、見っごちゃないもはんか?」
十年前、利良が晋祐に投げた言葉。その言葉が、投げた相手から、ぎこちない郷言葉で返ってくるとは。
--見たい!……見てみたい!
反射的に、心が叫ぶ。
躊躇し、全身が固まる利良の体に反し。意外にも利良の心の声は、明るく素直だった。一気に強張った体から、力が抜ける。
利良の体が動いた。
「見たかっ! 晋祐殿、見たかっ! 俺は、見ってんよかどかい?」
立ち上がるように晋祐の手を握った利良は、無我夢中で叫ぶ。
「いいに決まってるだろ。行くぞ、利良殿! 江戸へ!」
晋祐は、屈託なく笑うと利良の手を握り返した。
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