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しおりを挟む「いててて……」
さっきから、腹の調子が悪い。
その理由は、あまりにも明らかで。
僕は軋むように痛む腹を握りしめ、隣にすわっているであろう、ハイスペック野郎をパーティション越しに睨んだ。
盛った猿かっ!!
さもなきゃ、絶倫かっ!!
昨日もガンガンにヤッタよな?!
腹いせか知らんが、平日の真昼間、職場でヤルってどういうことなんだよ、このバカッ!!
……あぁ、でも。
腹痛くて、しんどい……。
最近、残業も続いてたしなぁ……。
上も休め、って言ってるし。
僕は、社内コミュニケーションツールにアクセスして、こっそり有給休暇を申請したんだ。
帰る、絶対に帰る。
帰って、ひとまずトイレに篭る!!
スッキリしたら、取り敢えずなんか食う!!
なんか食ったら、泥のように寝てやる!!
寝てやるんだーっ!!
ピンポーンーーー。
呼び鈴が部屋中に響いて、僕は目を覚ました。
カーテンを閉め忘れて寝ていたらしい。
昼だった外の風景は、真っ暗にかわり。
深く、気持ちよーく寝ていた僕を、非常識な呼び鈴が邪魔をしてくる。
……ったく、何時だと思っているんだ!!って、20時か……。
何だ? 宅配か?
腹はスッキリしているけど、頭がぼんやりしていて。
その頭を掻きながら、僕は玄関のドアを開けた。
「はぁい」
「なんだよ、その頭」
玄関のフレームいっぱいに、ハイスペック野郎が映し出されて、僕は思わず玄関を閉めてしまった。
……んだ? なんだ?? あれ?! 夢か?!
ドアノブの握りしめたまま、回らない頭で考えあぐねていると、いきなりドアが開いた。
ドアノブを握りしめた僕は、ドアごと引っ張られる。
「どあっ!?」
思わず出た言葉が、どあっ!?てなんだよ、どあっ!?って。
この期に及んで、無意識に昭和なオヤジギャグを言ってしまうなんて……!!
「……腹、痛ぇの?」
この……ムカつく声!!
夢でも、幻覚でも、幽霊でもない!
本物の、ハイスペック野郎だっ……!!
「帰れっ!」
「いや、帰らない」
ハイスペック野郎は、僕を相撲のように寄り切ると、玄関まで難なく侵入して玄関の鍵をかけた。
「……石鹸の香り。でも頭、爆発してんな」
「うるさい!! 帰れ!! 俺は病気なんだよ!!」
そう言ってハイスペック野郎の体を押した瞬間、頭がファーッと熱を発してクラクラしてきた。
不覚にも、絶対に許せないことに、僕はハイスペック野郎の腕にしがみついて体を支えてしまった……。
なんだよ、これ。
思いっきり、頼ってんじゃねぇか……。
オワタ、オワタヨ……ボク。
「おい、熱あるぞ?」
「うるせーっ!! 全部お前のせいだろ!! おまえが中に出して放置したりなんかするから……。するから……。ぁああ……やべ……」
足が立たなくなって。
興奮して一気に捲し立てたから、日頃冷たいほっぺたや脛のあたりまで熱くなってきた……。
こんなに熱がでるのって……20年ぶりくらいか?
……天パ以外は、健康でそれなりに勉強も好きで、それとなく彼女もいて。
ハイスペック野郎みたいに偏差値75なんてところにいるわけじゃないけど、偏差値51くらいににはいた僕の人生が。
ハイスペック野郎のせいで、ガタガタに崩れていく。
……なんか、だから。
腹が立った。
腹が立って、妙なこと口走った……ような気がする。
「責任、とれ~! 嫁にいけなくなったじゃないかぁ~! バカぁ~!」
…………一連のことが、遠い昔のような感じがするくらい。
深く、眠った気がする。
おでこにはぬくるなった冷却剤が貼られていて、シャツも着替えさせられている。
枕元には経口補水液がゴロンと転がっていて、何口か飲んだような形跡があった。
こんなことをしてくれる彼女もいなければ、親もいないのに。
体を起こして、辺りを見渡すと。
ソファーに寝ているハイスペック野郎の姿が……。
…………マメなやつ。
普段から、このマメさを発揮しろって。
そしたら、受け入れてやらないことも………ない、ことはない……んだぞ?
そんなことを考えながら、ハイスペック野郎を眺めていたら、よりにもよってハイスペック野郎が目を覚ました。
「もう、いいのかよ」
「まぁ、な」
「昨日のアレ、何?」
「アレ?」
「〝嫁にいけなくなったじゃないか〟ってヤツ」
「……あー」
「誰の〝嫁〟に行くつもりだったわけ?」
え?
聞くとこ、そこ?
「いや……具合悪くて、口走っただけだし」
「誰?」
「いや、だから……」
「誰なんだよ!!」
いつも、どんな時でも暖簾に腕押しみたいなハイスペック野郎が、めずらしく声を荒げた。
ソファーからワープしたんじゃないか、ってくらいのスピードで。
ハイスペック野郎は、ベッドの僕の肩を押さえ込みそのまま馬乗りに組み敷く。
「俺じゃダメなのかよ!!」
「はぁ?」
「おまえを嫁にするの、俺じゃダメなのかって聞いてんの!!」
「はぁぁ?!」
「オラ、嫁にしてくださいって、言え!!」
「はぁぁぁっ?!?!」
おそらく、ハイスペック野郎が欲しいであろう、僕の言葉を待たずして。
ハイスペック野郎は、病み上がりの僕の衣類をひっぺがえし。
光の速さの如き勢いで、行為に及ぶ。
「……っあ、や……病み……上がりぃ……」
「関係ない!! 早く言えっ!!」
「……んぁあ、やっ……むりぃ………むりぃ」
そこから、ハイスペック野郎の、拷問のような激しいセックスが延々と続いたのは言うまでもない。
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