2 / 9
#2
しおりを挟む「ぬわっ!?」
さっきまで風呂の中でヤられまくっていたのに、いつの間にかパジャマを着てベッドにワープしていたということより。
〝ジャンケンで決まった、かつて犬猿の仲だった自称・義兄〟の健やかな寝顔が目の前にあったということより。
縛られていた自分の手首の変色っぷりに、目ん玉が飛び出すんじゃないかってビックリして、思わず変な声が出てしまった。
青アザを通り越して、赤紫色のアザになっている。
………うわぁ、これさぁ。
位置的に、長袖着てても分かんじゃん。
こんなんで外に出たら、変な目で見られるのは友哉ではなく、間違いなく僕の方じゃないか!!
しかもコレ。
やたら既視感を覚えると思ったら、アレだ。
親父が先日捨てた、親父がたいへんお世話になっていたであろうパッケージがボロボロのアダルトなDVDのお姉さんが、手首にこんなアザをつけてにっこり笑って写真におさまっていたヤツと、同じじゃないかぁ!!
その時は、親父がアブノーマルな性癖の持ち主なんじゃないか、友哉のお母さんにバレたらこの結婚の話は無かったことになってしまうんじゃないかって、気が気じゃなかったけど。
ところが、どうして。
アブノーマルな性癖は、友哉の方が上手だったんだ。
縛る、犯す、男相手に。
アブノーマルな条件が、見事に三拍子揃ってる。
………いや、きっと……気の迷いだ。
親父に家を追い出されて虫の居所が悪かったに違いない。
気の迷いで、怒りをセーブできずに僕に八つ当たりをしたんだ。
そうじゃなきゃ、多分夢だ。
この手首のアザはもう一眠りしたら消えるハズ。
そうだ……そうに違いない!!
そう、頭の中で言い聞かせるように自己完結して、僕は体を反転させて視界から友哉を消すと、また目を閉じて………。
何も考えないように、頭を真っ白にした。
「おまえん家の卵焼きって、甘いのな」
「…………」
「今度コレで〝卵焼きサンド〟作ってくれよ。なぁ、弟くん?」
………自分でやれーっ!!
朝ごはんは、ご飯と味噌汁。
それに、最低でもおかずは2品以上。
偉そうに宣った挙句、上手いとも何とも言わず、〝卵焼きサンド〟を作れ……だと?
コイツ………こんなに図々しいヤツだったか?!
僕の知っている友哉は、優しくていいヤツで、本当に親友と呼べるようなヤツだったのに。
僕と離れていた中学3年間、コイツに一体何が起こったんだ………。
そこんとこ、誰か僕に三行で簡潔に教えてほしい。
目が覚めたら全部夢で、手首のアザもなくなってると期待して僕は目を開けたのに。
アザも、体に残る噛み跡や痛さも、全部鮮明に残っていた。
朝、洗面台の鏡に写る僕の体が、昨日の生々しい記憶を呼び起こす。
………減るもんじゃない、し。
と、諦めてはみたものの。
悲しみという感情ではなく、ムカつくという感情が僕に芽生えていたんだ。
今後、少なくとも親父か友哉のお母さんのどちらかが天に召されるまで続く義兄弟関係……基、主従関係を、軽々しくもジャンケンで決めてしまったことにムカついて。
全く抵抗できなかったことにもムカついて。
アザを隠す為に付けたリストバンドを見るたびに、僕の胸の中はザワついて、平常心でいられなくなってくる。
不自然に両手首につけられたリストバンドは、部活をしていた時に愛用していたウエイトが入ったもので。
部活なんかもうしない身分になってから、またこんなのをつけるなんて、思いもよらなかった。
………今更、腕鍛えてどうすんだよ、僕は。
おかげで、たかだか料理をするだけで、腕が強張って乳酸が溜まる感じがする。
普通のリストバンド、買わなきゃ。
「円佳」
「…………」
「返事」
「…………」
「いいのか?おまえの父親に」
「なんだよ!!まだ何か用があんのかよ!!」
意外としつこい脅迫をする友哉に、僕は半ばキレ気味に返事をした。
………っ!!………面倒くせぇ!!
それに、しつこいっ!!
一緒に暮らしてたった半日で、僕の記憶に残されていた幼い頃の友哉とのキラキラした美しい記憶は、悪魔の申し子のように変貌を遂げた現在進行形の友哉に真っ黒に塗り替えられて。
………めちゃめちゃ、キライになりそうだ。
「おまえ、今日何すんの?」
文句も言わず、かと言って褒めることもしないくせに、きれいに朝ごはんを平らげた友哉が、無駄に整ったその顔に薄い笑みを浮かべて言った。
「何って………昼から車校、行くんだよ。あともう少しで卒検だし」
「まだ免許取ってなかったのかよ」
「うっせぇな!準中型なんだよ!!」
「俺もだよ」
「…………」
「おまえが、ヘッタクソなバレーボールになんか、かまけてるからだよ。貴重な夏休みを棒に振りやがってさ」
「………なんだよ、いつまで根に持ってんだよ」
「は?」
「僕が、そんなに僕がバレーしてたのが気にくわねぇのかよ………。いちいち突っかかってくんなよ!!」
………もう、止まらなかった。
小6のあの日から、ずっと友哉に言いたかったこと、聞きたかったことが溢れ出して………。
友哉を貶めるつもりもない、のに。
昨日から我慢していた寂しいことか、苦しいことかが………大爆発した。
「だいたいおまえが最初に僕から離れていったんじゃないか!!膝を壊したのだって、僕のせいじゃないだろっ!!………僕が一体何をしたんだよ!!なぁ!!何をしたんだよっ!!友哉っ!!」
一気に爆発した僕の感情は、強い言葉に勢いよく乗って友哉の体に襲いかかる。
殴られる、か。
怒って出ていく、か。
いずれにせよ、親父には「親父の最愛の人の息子と、この先うまくやっていける自信がありません」って、自己申告しようと考えてた。
………なのに。
次の瞬間の、友哉の表情に………。
僕は、動けなくなってしまった。
スッとした切れ長の瞳が涙をいっぱいにためて、瞬きをする度に、瞳がユラユラ揺れて………。
久しぶりに見た。
ガキの頃、バレーボールがうまくできなくて監督にこっぴどく叱られた時に、友哉が見せていたあの顔。
悔しくて、苦しいのを我慢して………。
………その表情、反則だ。
僕は、動けなくなった。
でも、その懐かしい表情は、一瞬で消えて。
いつもの小馬鹿にしたような表情が、僕の知っている友哉の表情をかき消す。
………ヤバッ…!!
って、思った時には、もう遅かった。
友哉にキッチンの床に倒されて、僕は頭を強く打ちつけた。
………目が、チカチカして………。
体に、力が入んない。
「………おまえのせい?……おまえのせいだよ。おまえの下手くそなバレー見てると反吐が出る。ヘラヘラして………俺の気持ちも知らないくせにっ!!」
………また、だ。
昨日の今日で………また、僕は友哉にヤられてる。
怒りに任せた友哉は、僕を組み敷いて僕の内側に乱暴に突っ込むと、深いとこまでその熱を撒き散らす。
頭をぶつけて、ろくに抵抗もできない………と、いうか………。
友哉を、僕は本気で怒らせてしまった。
結局、僕はずっと友哉を無意識に傷つけていたんだ。
バレーボールを続けていたら、友哉との距離を縮められると思っていたのは、僕のエゴで。
こんな風に友哉をさせてしまったのは、僕の存在で。
……………僕が………悪い……のかも。
「……んんっ………ん、とも…やぁ……」
「んだよっ!!………よがれよ、円佳」
「ごめ……ん………許して………ともや」
ハッキリしない思考と視界は、僕の意思や疑問を握りつぶして………。
友哉にまた犯されながら、僕は友哉が落ち着くまで、ひたすら謝り続けていたんだ。
13
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
知らないうちに女神になってた義兄と綺麗でおかしな義弟の話
月丘きずな
BL
平凡に高校生活を送る花岡悠は、学校一の人気者である花岡蓮の義兄だった。いつでも悠を守ってくれる優しい義弟との義兄弟ライフは、側から見たら少しおかしいようで…!?
義兄弟とその優しい友人たちが繰り広げる、怪しい義兄弟ラブロマンス
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる