チョコ王子─どん・び〜・レ〜ト─

ケーニッヒ

文字の大きさ
3 / 7
2.ようこそ。ここは可笑しなお菓子の博物館 

1.話さない、歩かない、でも聞ける。

しおりを挟む
 「最近は本当に口うるさい時代になったモンだ。エイセイカンネンがなんだの、世界の恵まれない子供達になんとか……だの」

 髭を指で摘み、センセイはいつものように愚痴を溢していた。

 「食い物を粗末にするなだの。食い物で遊ぶなだの。ワシの芸術は粗末でも遊びでも無いわい。のぅ、お前もそう思うだろう?」

 ボクの身体に欠けが無いか、汚れが無いか、溶け始めていないか。ハタキで優しくホコリを落としながら点検している。

 あぁ。ゴメンね。ボクの名前はチョコ王子。普通なら王子って王様の子供って意味らしいけどボクはただのチョコの塊。けど王子様の形で作られてるからその他に呼び方はきっと無い。

 そしてボクの目の前で文句を言っているお爺さんがウォルター先生。クタクタのヨレヨレのシワシワのスーツを着た背の低いお爺さんだ。

 センセイと言っても勉強を教えたり風邪を治してくれたりするセンセイとは違う。

 センセイは芸術家。

 「山と、森と、川と、畑と、ジジババしかおらん寂れたド田舎の町にも、とうとう厄介な連中が入って来おったわ」

 センセイは……口が悪い。

 「今まではワシの博物館を町の観光名所だの新時代のヘンゼルとグレーテルだのとヨイショしておったくせに。そんなに世間体が大事か。心を無くした寂しい者たちだ」

 ボクが飾られているのは可笑しなお菓子の博物館。田舎の町にある、小さな建物。

 どれくらい経つんだろう。センセイの背中が曲がってない、髭も白くない頃からだ。

 20年か30年か前かな。

 そんな長く続いたこの博物館ももう、終わりを告げようとしていた。

 センセイが言うにはとってもキレイ好きな人達と世界平和の為にお金を沢山集めたい人達が一斉にセンセイの元へ来てボク達こんな物は芸術じゃないからやめなさい。って大騒ぎしだしたんだ。

 そんで、ボクを含めて幾つかのセンセイの子供たち作品は処分される事が決まった。

 今日は最後の営業日。

 「おいトム! ドーナツバイクはそっちじゃない! 何度言ったら分かるんだすかぽんたん! くれぐれも丁重に扱えよ! 私の芸術はお前と違ってずっと繊細なのだ!」

 「分かりました分かりましたよ。ったく、うるさいなぁ。なんだよ、すかぽんたんって……」

 重ねてもう一度言うけれど、センセイはとっても口が悪い。特にバイトのトムや鼻水のついた手でボク達展示品をベタベタと触る子供には容赦がない。

 時々、ちょっと可哀想だなって思う時もあるけれどバイトのトムに関してはあまり同情できない。

 アイツが冬に近くでストーブを焚いたせいでボクの隣に座っていたチョコ猫が首から下がデロンデロンの水たまりならぬチョコ溜まりという見るも無惨な姿にされちゃったからだ。

 こんな騒がしい日々ももう時期、聞こえなくなる。そう思うと寂しい……いや、寂しくもないかもしれない。トムの事に関してはとりあえず寂しくは無いや。

 閉館の作業が続く。

 センセイがお客さんがいてもお構いなしにトムを怒鳴りつける声が小さな建物に響いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」

山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち スピンオフ作品 ・ ウルが友だちのメロウからもらったのは、 緑色のふうせん だけどウルにとっては、いらないもの いらないものは、誰かにとっては、 ほしいもの。 だけど、気づいて ふうせんの正体に‥。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...