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2.ようこそ。ここは可笑しなお菓子の博物館
3.彼女は陽の光に透き通る
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「ママぁ、この王子様、いい匂いがするよー」
「えぇ、甘い香りで美味しそうね」
動く事の出来ない僕が出来る事はたった三つ。
まずは見る事。
例えば今、僕の目の前に居るのは裕福そうでも貧乏そうでも無い、普通の身なりの親子。
お母さんは背が高くて三編みで、背中には赤ちゃんをおんぶしている。お腹がぷっくりと膨らんでいるからきっと、その赤ちゃんの弟か妹も居るんだろう。
そのお母さんと手を繋いでいる女の子は短い髪をツインテールに結っていて、鼻水を垂らしている。後、前歯が無くて鼻水が口に流れていてしょっぱそうだ。ぜひとも、ボクには触らないで欲しい。
「さ、もう行きましょ?」
「えー! まだいたいー!」
親子が手を繋いで、僕の前を去っていく。他に、お客さんが居なかったので一瞬にして空気がすんとする。
2つ目は聞く事。
お客さんが居なくなった後、僕の穴の空いていない耳に響くのはセンセイの好きなアニメの歌や童謡のオルゴール版の奴。それと空調のゴォという音。数分に一回ガコンって言う。そこにたまにちゃちゃを入れるのは空を飛ぶ。カラスの鳴き声。流石にカラス語は分からない。
耳は結構いい方だと思ってる。
博物館の外で、さっきの女の子がパックの上手く入っていない掃除機みたいな声で泣き叫んでいるのが聞こえる。転びでもしたんだろう。
いいや。ボクの耳が良いんじゃなくてさっき子の声が物凄いだけの気がしてきたな。
センセイの怒鳴り声と、子供の叫ぶ声だけはどうしても慣れない。耳を塞いでしまいたくなる。まぁ、塞がってるんだけど。しつこいね、ゴメン。
見る事、聞く事。そして最後に紹介するあと1つがあるからボクは動くことが出来なくても退屈せずに日々を過ごす事が出来る。でも、行き交う人々や時間はオマケに過ぎないんだ。この3つが出来て良かったと思う理由は他にある。
あぁ、今日もキミは本当にキレイだな。
僕の向かいには一人の女の子。
女の子って言っても人間じゃない。僕達と同じセンセイの作品。建物の中なのに風になびく長い髪を麦わら帽子で抑えるワンピースを着た飴細工の少女像。
その身体は水色の飴で出来ていてその姿は陽の光で透き通っていて、とってもキレイなんだ。
僕より先にこの博物館に居るはずなのに残念な事にボクは彼女の顔を一度も見た事がない。
何故から彼女はボクに背を向けてお日様を見上げているから。人間だったら文字通りの目玉焼きになってるんだろうな。
ここでボクにできる3つ目の事。
それは、考える事。
センセイの今日のご機嫌はどうかとか、トムはまたガールフレンドにフラれちゃったのかみたいなしょうもない事から、生き物じゃないのに心があるボクは生きてるのか、生きてないのかとかみたいな途方も無い事。それと……。
あの子はどんな顔をしているんだろう。笑ってるの? 怒ってるの? 悲しんでいるの? とか。
もうすぐ待ち受けているボクの運命を知ってからボクはその事で頭がいっぱいだった。
ボクはお日様が羨ましかった。いつも、彼女の視線を独り占めにして彼女の顔を偉そうに空の特等席で見る事が出来るアイツが。
でも、ボクにはどうしてもアイツには敵わない。
もし奇跡とか魔法があったら。なーんて。
悲しげなオルゴールの曲が館内に響く中、ボクはいつもよりちょっと切ない気持ちで彼女を見つめ続けた。
「えぇ、甘い香りで美味しそうね」
動く事の出来ない僕が出来る事はたった三つ。
まずは見る事。
例えば今、僕の目の前に居るのは裕福そうでも貧乏そうでも無い、普通の身なりの親子。
お母さんは背が高くて三編みで、背中には赤ちゃんをおんぶしている。お腹がぷっくりと膨らんでいるからきっと、その赤ちゃんの弟か妹も居るんだろう。
そのお母さんと手を繋いでいる女の子は短い髪をツインテールに結っていて、鼻水を垂らしている。後、前歯が無くて鼻水が口に流れていてしょっぱそうだ。ぜひとも、ボクには触らないで欲しい。
「さ、もう行きましょ?」
「えー! まだいたいー!」
親子が手を繋いで、僕の前を去っていく。他に、お客さんが居なかったので一瞬にして空気がすんとする。
2つ目は聞く事。
お客さんが居なくなった後、僕の穴の空いていない耳に響くのはセンセイの好きなアニメの歌や童謡のオルゴール版の奴。それと空調のゴォという音。数分に一回ガコンって言う。そこにたまにちゃちゃを入れるのは空を飛ぶ。カラスの鳴き声。流石にカラス語は分からない。
耳は結構いい方だと思ってる。
博物館の外で、さっきの女の子がパックの上手く入っていない掃除機みたいな声で泣き叫んでいるのが聞こえる。転びでもしたんだろう。
いいや。ボクの耳が良いんじゃなくてさっき子の声が物凄いだけの気がしてきたな。
センセイの怒鳴り声と、子供の叫ぶ声だけはどうしても慣れない。耳を塞いでしまいたくなる。まぁ、塞がってるんだけど。しつこいね、ゴメン。
見る事、聞く事。そして最後に紹介するあと1つがあるからボクは動くことが出来なくても退屈せずに日々を過ごす事が出来る。でも、行き交う人々や時間はオマケに過ぎないんだ。この3つが出来て良かったと思う理由は他にある。
あぁ、今日もキミは本当にキレイだな。
僕の向かいには一人の女の子。
女の子って言っても人間じゃない。僕達と同じセンセイの作品。建物の中なのに風になびく長い髪を麦わら帽子で抑えるワンピースを着た飴細工の少女像。
その身体は水色の飴で出来ていてその姿は陽の光で透き通っていて、とってもキレイなんだ。
僕より先にこの博物館に居るはずなのに残念な事にボクは彼女の顔を一度も見た事がない。
何故から彼女はボクに背を向けてお日様を見上げているから。人間だったら文字通りの目玉焼きになってるんだろうな。
ここでボクにできる3つ目の事。
それは、考える事。
センセイの今日のご機嫌はどうかとか、トムはまたガールフレンドにフラれちゃったのかみたいなしょうもない事から、生き物じゃないのに心があるボクは生きてるのか、生きてないのかとかみたいな途方も無い事。それと……。
あの子はどんな顔をしているんだろう。笑ってるの? 怒ってるの? 悲しんでいるの? とか。
もうすぐ待ち受けているボクの運命を知ってからボクはその事で頭がいっぱいだった。
ボクはお日様が羨ましかった。いつも、彼女の視線を独り占めにして彼女の顔を偉そうに空の特等席で見る事が出来るアイツが。
でも、ボクにはどうしてもアイツには敵わない。
もし奇跡とか魔法があったら。なーんて。
悲しげなオルゴールの曲が館内に響く中、ボクはいつもよりちょっと切ない気持ちで彼女を見つめ続けた。
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